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最後までお読みくださいまして、ありがとうございます。
お礼の気持ちを込めて、ささやかですが、その後のお話をお届けします。
*声*
~小野瀬vision~
霜
「でもまあ、とりあえず、めでたしめでたし、だろ?」
数日後、前回と同じ店で、恥を忍んで顛末を説明した俺に、霜は苦笑いでそう言った。
小野瀬
「面目ない」
霜
「その後は?幸せなんだろ?」
小野瀬
「それはもう」
俺もさすがに反省した。
初夜に無茶させられたせいで、翌日の仕事を欠勤するはめになったばかりか、数日間は歩行にまで支障をきたした秋に、俺が平謝りしたのは言うまでもない。
けれど、あの夜以降、俺たちは、前に数倍して幸せな日々を過ごしている。
霜
「安心したよ」
小野瀬
「お前には心配かけたな」
座ったまま頭を下げると、霜はコーヒーを飲みながら、微笑んだ。
霜
「おじさん、知ってた?」
小野瀬
「うん?」
俺は、コーヒーカップを持ち上げた手を止めた。
霜
「あいつ、おじさんと結婚してから、父さんの声が聴こえなくなったんだぜ」
初耳だった。
幼い頃から、この双子には、亡くなった穂積の声を聴く事が出来た。
それは空耳のように微かな声で、しかも、こちらから求めて聴く事は出来ない。
けれど、父親を知らずに育った二人にとって、寂しい時、不安な時に聴こえたその声がどれほど心強かったかは、想像に難くなかった。
霜
「父さんが、もう、秋の事はおじさんに任せた証拠じゃないのかな」
小野瀬
「……」
穂積が、俺を認めてくれたのか。
少ししんみりしかけて、俺はふと、目の前の霜の顔を見た。
小野瀬
「待てよ。と言う事は、お前には、まだ聴こえるのか?」
霜はコーヒーを啜りながら、渋い顔をした。
霜
「悪かったな。俺は、まだ、おじさんほど頼りにはならないからね」
そんな事はないと思う。
穂積は霜を頼りにしているからこそ、翼さんの傍にいるこいつに声を届けるんだろう。
そうは思ったものの、俺は、それを口にするのは控えた。
小野瀬
「もしかして、お前に話すと穂積に通じるのか」
霜
「俺、糸電話じゃねえし。そもそも、俺たちの考えは向こうに筒抜けだし」
そう言えば、以前、穂積の仏壇の前で手を合わせた時も、声には出さなかった言葉が、穂積を経由して秋に届いたっけ。
霜の顔を眺め、秋の顔を思い浮かべると、急に、たまらなく穂積に会いたくなった。
俺にもたった一度だけ聴こえた、穂積の声。
幸せになれよ。
小野瀬
「幸せだよ」
俺が呟くと、霜が微笑んだ。
あの頃の穂積と同じ顔で。
穂積にも、きっと届いたよな。
俺はそう思いながら、霜に笑顔を返した。
~END~