pure pure love
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翌朝。
まだベッドの中で、俺は、俺の腕枕で眠っている秋の頬に残る涙の跡を見ながら、エンドレスな自己嫌悪に陥っていた。
俺って奴は。
秋は初めてだったのに。
恥ずかしいって、何度も言ったのに。
優しくしてやらなければいけなかったのに。
彼女の身体は、内も外も、ありえないほど素晴らしくて。
好きな女を抱くという行為が、信じられないほど気持ち良くて。
……夢中になってしまった。
俺は一晩中、彼女に溺れた。
何度、彼女の中で果てたか覚えてない。
絶頂を迎えるたび、幸せで叫びたくなった。
明け方、秋が泣きながら気を失って初めて、我にかえった。
そして……血の気が引いた。
いや、顔色を失っていたのは、秋の方だったけど。
……俺って奴は。
秋
「……はい、はい、すみません。明日は必ず」
検察庁に欠勤の電話をしながら、何度も何度も頭を下げている秋。
その横で、申し訳なくて両手を合わせている俺。
風邪を引いたと言い訳しながら、こんこんと空咳をする秋の様子が痛々しい。
ああ、慣れない嘘なんかつかせてごめん。
秋
「え?……はい、居ります。でも、あの……はい」
困惑した様子で、秋が、手にした携帯電話を俺に差し出した。
秋
「葵さん……あの、ふ、藤守部長が、電話を代わってくれって……」
……藤守くんのお兄さんだ。
今朝は、東京地検に来てるのか。
秋が緊張するのも無理はない。
大阪地検の特捜部長といったら、今年、検察事務官になったばかりの秋からしたら、雲の上の人物だ。
同年代で付き合いの長い俺からすれば、ただ面倒臭いだけの人物なんだけどね。
小野瀬
「お久し振りー」
軽く電話口に出ると、相変わらず横柄な声が聴こえてきた。
藤守兄
『おい、エロ技官!』
小野瀬
「何だよいきなり」
藤守兄
『貴様、穂積の娘と結婚したそうじゃないか!』
声が大きいので、藤守アニの声は秋にまで丸聞こえだ。
小野瀬
「あれ?結婚式に呼ばなかったかな?」
藤守兄
『招待されたのは愚弟だけじゃ、ボケェ!』
藤守アニの剣幕に、秋が身体を縮める。
小野瀬
「そうだったかな?ごめーん」
藤守兄
『ふん。五十をとっくに過ぎた男の分際で、二十歳そこそこの娘を嫁にしおってからに。おおかた、毎日デレデレしてるんだろう』
俺は秋を手招きして、裸でくるまっている毛布ごと、背中から彼女を抱きかかえた。
小野瀬
「そうなんだよ。もう、可愛くて可愛くて」
アニに返事をしながら、ちゅ、と頬にキスをする。
藤守兄
『けっ。穂積の娘なら、愚弟に写真を見せびらかされた事がある。確かに可愛い子だ。貴様のようなおっさんにはもったいないが、まあ、おめでとうと言ってやろう』
小野瀬
「ありがとう」
藤守兄
『だが!貴様のせいで彼女の業務に支障をきたすようなら話は別だ!風邪を引いたならちゃんと看病してやれ!うどん食わせたか?』
藤守部長っていい人だね、と独り言のように囁いた秋に、俺は噴き出しそうになる。
小野瀬
「はいはい、了解。コンビニで鍋焼きうどん買ってきて食べさせるよ。じゃあね、アニ」
藤守兄
『おい!まだ話は終わってないぞ!JSの件だがな……』
俺は構わず通話を切った。
そのままマナーモードにして、枕元に放り投げる。
秋
「いいの?」
小野瀬
「いいんだよ」
相手をしていれば、半日でも喋り続けるんだから。仕事の話は、仕事の時にね。
小野瀬
「おいで」
抱き寄せようとすると、秋は真っ赤になって首を振る。
秋
「あの、朝ごはんの支度しないと」
小野瀬
「きみ、今、欠勤の連絡したよね?俺も、今日は休む。だから、朝食はいらない」
俺の意図をはかりかねているのか、大きな目を瞬きながら、秋が俺を見た。
小野瀬
「一緒に二度寝しよう」
ああ、この言葉は、今まで誰にも言った事が無かったな。
そんなふうに思いながら秋を見つめると、彼女は、ふふ、と笑った。
秋
「ずる休みだね」
毛布を被り直しながら横になる秋を追いかけて、俺も隣に横になる。
一つの枕に頭を乗せると、秋は楽しそうに笑った。
秋
「幸せ」
俺に擦り寄って目を閉じた秋の肩を抱きながら、俺も呟いてみる。
小野瀬
「……」
秋と同じ言葉を口にしただけで、鼻の奥がつんと痛くなった。
俺は愛しさの増した秋を抱き締めながら、目を閉じた。
今度、アニに会ったら言ってやろう。
彼女はもう、「穂積泪の娘」じゃない。
俺の、
小野瀬葵の、妻だって。
~END~
→おまけ