Pure Love
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~秋vision~
おじ様との連絡が途絶えてから、およそ二ヶ月。
おじ様はいつ訪ねても自宅マンションに居らず、携帯電話にかけても出てくれず、二週間と空けずに来てくれていた我が家にも、ぱたりと現れなくなってしまった。
千葉の科警研と警視庁との勤務は続けているようだけど、小野瀬さんの方から望まない限り、職場では会う事が出来ないのよ、というのはお母さんからの報告。
お母さんは自分の言葉や態度が悪かったからだと言って、とても後悔しているけど、会えないのだから謝りようもない。
私はお母さんのせいじゃないと知っているけど、説明出来ないので何も言えずにいる。
あの日の事は誰にも言っていない。
私は検察庁で検察事務官として毎日忙しく働くことで、出来るだけ、おじ様の事を考えないように努めた。
そうでないと、所構わず泣いてしまいそうだったから。
そんなある日の午後。
珍しく休みの重なった私とお母さんが昼食の後片付けをしていると、玄関のチャイムが鳴った。
翼
「誰かしら?秋、出てくれる?」
泡だらけの手で額を拭いながら、お母さんが言った。
秋
「うん」
私は布巾と拭きかけの食器を置いて、玄関へ向かった。
秋
「どちら様で……」
私は息を呑んだ。
インターフォンの画面に映っていたのは、紛れもなく……、
小野瀬
「小野瀬です」
秋
「おじ様!!」
私は急いでドアチェーンを外して、扉を開く。
そこには、普段のソフトジャケットではなく、フォーマルスーツで正装し、後ろ手に花束を持ったおじ様が立っていた。
小野瀬
「良かった、開けてくれた」
秋
「……おじ様……」
二ヶ月でそんなに変わるはずはないけれど、おじ様はいつもと同じ笑顔でそこにいた。
少しだけ、恥ずかしそうに。
小野瀬
「……許してくれてる、と思っていい?」
見つめられて、私はほとんど無意識に頷く。
翼
「小野瀬さん?」
さっき私が叫んだのが聞こえたのか、キッチンから、お母さんも出てきた。
小野瀬
「ずっと連絡しなくて、ごめん。……色々、ごめん」
そう言って頭を下げたおじ様から、私の前に差し出されたのは、赤い薔薇と白い薔薇の花束。
秋
「……あ」
胸の奥に、温かいものが湧いてくる。
小野瀬
「これ……秋には、分かるよね」
赤い薔薇と白い薔薇の花束の意味は、調和、結合、
そして……
小野瀬
「『 結婚してください 』」
押し付けるように花束を差し出したおじ様が、そっと私の手をとって、その甲に口づけした。
小野瀬
「……君がこのプロポーズを断ったとしても、俺は他の誰にもこの言葉は言わないから、これが生涯で最後のプロポーズ」
おじ様。
小野瀬
「愛してる、秋。俺の、本当の家族になってほしい」
秋
「おじ様……!」
私は花束を抱えたまま、おじ様が広げた腕の中に飛び込んだ。
秋
「……もう、どこへも行かない?」
小野瀬
「うん」
秋
「ずっと、そばにいてくれる?」
小野瀬
「うん」
~小野瀬vision~
腕の中に秋がいる。
俺が探し続けた相手。俺を理解し、癒し、求めてくれる、たった一人の相手。
秋
「もう、どこへも行かない?」
小野瀬
「うん」
きみのいる場所が、一番心地好い。
秋
「ずっと、そばにいてくれる?」
小野瀬
「うん」
俺は、ここから離れられない。
翼
「……おめでとう、秋、小野瀬さん」
祝福の言葉に顔を上げると、涙ぐんだ翼さんが、さあさあと手招いてくれた。
翼
「二人とも、お父さんに報告して。お祝いしなくちゃ。ああ、霜にも連絡入れなくちゃ」
翼さんは忙しく動き始める。
俺は秋と微笑みを交わしてから、立ち上がって、仏壇に向かった。
二人並んで穂積の遺影に手を合わせ、静かに祈る。
穂積。
秋をもらいに来たよ。
お前がいたら猛反対したかな。
大喜びで許してくれたかな。
秋のことは、姫君のように大切にするから心配するな。
翼さんのことも。
霜のことも。
俺の全てをかけて幸せにするから。
俺も幸せになるから。
なあ、今だから言うけどな。
お前に出会えて良かったよ。
穂積。
俺に家族をくれて、ありがとう。
お前が愛した翼さんは、これからも俺が守る。
お前の代わりにはなれなかったけれど。
秋も、霜も、一生、俺が守り続けてゆく。
いつか永遠に、時が全てを別つその日まで。
~END~
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