いつか大人になる日まで
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藤守賢史
~翼vision~
賢太郎
「こんにちはー!」
捜査室の扉を開けて、元気よく入って来たのは、本日休みの賢史くんと、我が家の息子。
真っ先に振り返った如月さんが、大袈裟に顔をしかめる。
如月
「あれっ、藤守さん?ちょっと縮みました?!」
賢太郎
「そうそう。最近寒いから、こう、ギューッとね……って、そんなわけあるかい!」
小笠原
「ノリツッコミだ」
賢太郎
「公平さんこそ、前より縮んだんちゃうか?」
如月
「わー!気にしてる事を!」
藤守
「大丈夫や如月。春になったらまた伸びるで」
賢太郎
「伸びるかい!」
藤守・賢太郎
「もうええわ!」
揃って頭を下げる息の合ったやり取りに、如月さんは笑い、明智さんと小笠原さんは拍手をしてくれる。
私は溜め息をついて立ち上がり、顔を上げた夫と息子の額を、正面からぺちんと平手打ちした。
翼
「はい、そこまで!」
賢太郎
「あっお母ん!今のツッコミ、ナイスやで!」
翼
「賢太郎!ここは大人の仕事場です!それから如月さんに謝りなさい!」
私が睨むと、息子はくるりと向きを変えて、素直に如月さんに頭を下げた。
賢太郎
「如月さん、すんませんでした」
如月
「いいっていいって!……でも、ホントにもうじき追い越されそうだなあ」
如月さんは、小学生にしては背の高い息子と、肩を並べてみている。
賢太郎
「今、165cmや」
如月
「あれっ?翼ちゃんって確か……」
翼
「……」
はい。
もうすでに抜かれました。
明智
「子供の成長は早いな。如月じゃないが、本当に、ちょっと小さい藤守みたいだ」
小笠原
「そっくり」
はい。
賢史くんと息子は、本当によく似ているんです。
どれくらい似ているかというと、賢史くんの実家に行くたびに、玄関先に並ぶ二人を見て、ご両親が笑い転げてしまって話にならないぐらい似ている。
親子の仲も良くて、家でも、しょっちゅう二人で顔を付き合わせて、楽しそうに何かやっている。
それはプラモ作りであったり、電車旅行の計画であったり、色々だけど、私は、そんな二人を見るのが大好き。
だから、ついつい甘やかしてしまっているかも。
かえって、常識派の賢史くんの方が、きちんと息子を教育してくれている気がする。
藤守
「賢太郎、学校、今、どんな事習ってるんや?」
藤守
「最近、悩んでる事無いか?」
藤守
「賢太郎、キャッチボールしよか!」
息子の方も、そんな賢史くんによくなついている。
おかげで勉強も運動もよく出来て温厚で、ひそかに私の自慢の息子だ。
その時、廊下に話し声が近付いて来た。
急に、息子の目が輝きを増す。
穂積
「……らしいぜ」
小野瀬
「本当かよ」
談笑しながら、扉を開けて入ってきたのは、室長と小野瀬さん。
賢太郎
「隙あり!」
死角から勢いよく飛び掛かった息子は、ところが、次の瞬間には室長に捩じ伏せられて、床で悲鳴を上げていた。
賢太郎
「痛だだだだ!」
穂積
「お?誰かと思えば、チビ藤じゃねえか」
小野瀬
「毎回穂積にやられるのに、きみも全く懲りないねえ」
笑顔で賢太郎を抑え込んでいる室長の横で、しゃがんだ小野瀬さんが、息子の頬をつついた。
賢太郎
「あんたら、四十過ぎてて強過ぎや!」
穂積
「ん?」
小野瀬
「おや」
息子の発言にぴくりと反応した室長と小野瀬さんが、たちまち、息子の全身を物凄い勢いでくすぐり始めた。
賢太郎
「あっひゃっひゃっ!!」
穂積
「生意気な事を言うようになったじゃねえかこのガキはよ!あぁ?」
小野瀬
「まあまあ穂積。成長した証拠だよ。どれどれ、大きくなったかな?見せてごらん」
小野瀬さんが、笑顔で息子の服を脱がしにかかる。
すかさず手伝う室長とのコンビネーションは、藤守親子の漫才以上に年季の入った阿吽の呼吸だ。
賢太郎
「ひゃあははっ、ごめんなさい!やめてー!お父ん、お母ん、助けてー!」
数分後、賢史くんの必死のとりなしで、ようやく息子は解放された。
穂積
「で、チビ藤。今日は何しに来たんだ?」
解放されたと言っても、息子はまだ、室長の脇に抱え込まれて、拳で頭をぐりぐりされている。
小野瀬
「警視庁の見学?穂積と一緒なら、たいていの場所には入れるけど。それとも俺に恋愛相談?」
小野瀬さんが首を傾げた。
賢太郎
「うーん、ルイルイアオイと遊ぶのも楽しそやけどな。今日はこの後、お父んに鉄道博物館に連れてってもらうねん」
穂積
「何十回鉄道博物館行くんだ!」
小野瀬
「ルイルイアオイって俺たちの事かな?」
賢太郎
「あっひゃっひゃっ!」
再び、二人が息子をもみくちゃにする。
……もう放っておこう。
うちの息子は、賢史くんに負けないぐらいに、この二人の事が好きなんだよね。
穂積
「お前ら絶対、自宅でルイルイ言ってるだろ!」
藤守
「い……言うてません」
賢太郎
「たまにしかやで」
穂積
「なめてんのか!」
藤守
「すんません!」
突然、賢史くんが息子の腕を掴んで身を翻し、扉から一目散に逃げ出した。
穂積
「あっ、こら!」
藤守
「室長すんません!ホンマすんませーん!」
賢太郎
「ルイルイ、また遊んでなー!」
けらけら笑いながら、息子は賢史くんと一緒に猛ダッシュで逃げて行ってしまった。
その後、逃げそびれた私が、逃げ出した二人の代わりに、室長と小野瀬さんにさんざんくすぐられた事は言うまでもない。
ぷんぷん怒って帰宅した私だけど、反省した息子に差し出された「関東で一番美味いタコ焼き」と、賢史くんからの「ごめんな」のキスで、あっさりと機嫌を直してしまった事もまた、言うまでもない。
私、やっぱり、この二人に甘過ぎるかしら。
~藤守編END~