クリスマス・ソングス
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如月公平
☆~そりすべり(Sleigh Ride)~如月家~☆
光輝
「お袋、明日の朝飯は、おにぎりにしてくれる?集合時間が早いから、バスの中で食う」
翼
「はい、了解」
我が家の息子は明日、高校の体験学習でスキー場へ。
北海道生まれで運動神経抜群のこーちゃんに育てられているおかげで、息子も、ウィンタースポーツは得意中の得意だ。
毎年、家族と何度もスキーに行くので、身支度も慣れたもの。
鼻歌混じりで、大きなスポーツバッグに防寒着や手袋を入れてゆく。
光輝
「体育系の行事の時だけは、親父の息子で良かったと思うよなー」
あ。
また余計な事を。
如月
「体育の時だけは、って何だよ」
案の定、TVを見ていたこーちゃんが振り向いた。
息子は、こーちゃんが見ているクイズ番組を横目で観ながら、ふふんと笑った。
光輝
「だって親父、勉強苦手じゃん。大学だってスポーツ推薦で入ったんだろ?」
……そういうあなたも、体育以外は中の上だけどね。
如月
「くっそう」
可哀想に、こーちゃんは唇を噛む。
光輝
「まあいいや。とにかく明日はスキーだもん。華麗に滑る如月くんをクラスの女子に見せるチャンスだよ。楽しみだなー」
うーん、この口の減らない感じ、若い頃のこーちゃんにそっくり。
光輝
「~♪」
黙り込んだこーちゃんを尻目に、再び鼻歌を歌いながらバッグを閉める息子。
何かとこーちゃんに反抗的な彼だけど(原因は髪)、実はもうひとつ、親譲りのものがある。
それは……
如月
「……音痴」
光輝
「何だとー?!」
そう、音痴。
さっきからの鼻歌は『そりすべり』のメロディーだと思うのだけど、彼のそりは軽やかにすべる事が出来ない。あちこち岩につまづいたりよろめいたり、時には派手に谷底に墜ちていったりする。
光輝
「親父に言われたくねえよ!」
真っ赤になって立ち上がると、息子はこーちゃんに食ってかかった。
でも、取っ組み合いになれば、彼はまだこーちゃんには敵わないわけで。
光輝
「痛てててて!」
如月
「お前こそ、黙って聞いてれば、父親の事を運動バカだの頭が滑るのと言いやがって!」
や、そこまでは言ってないよ。
如月
「どうせアレだろ?音楽の時間でもクラスの合唱でも、『如月くん、悪いけど声を出さないで、口だけパクパクしてくれる?』なんて言われてるんだろ?」
息子が、ぎくりとした顔をする。
光輝
「……なぜ、それを」
如月
「一生懸命真面目に歌ってるのに、『ふざけてんのか』なんて言われて、音楽教師に木琴のバチで頭を叩かれたりしてるんだろう?」
光輝
「……親父、どこかで見てたのか?」
如月
「俺がそうだったからだ!」
光輝
「ハッ!Σ(゜ロ゜)」
青ざめる息子。
そして、見つめあう二人の目には、いつしか涙が。
如月
「だから、お前の気持ちはよく分かる!泣くな!明日は得意のスキーで、女子のポイント稼いで来い!」
光輝
「……親父!」
二人はどちらからともなく肩を抱き合い、『そりすべり』のメロディーを口ずさむ。
Just hear those sleigh bells jingling,
聞こえてきた! そりの鈴が鳴っているよ
ring ting tingling too
リンリン シャンシャンってね
Come on, it's lovely weather
行こうよ、最高のお天気だよ
for a sleigh ride together with you,
一緒にそりで滑ろう
私は仲直りした親子の姿を見て安堵しながら、込み上げる涙を指先で拭き、それから、そっと耳を塞いだ。
~如月編 END~