もうひとつの「月」 *せつな様からの頂き物
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ALL小野瀬vision
夜空に浮かぶ、『月』が欲しかった。
決して手に入れることはできないことくらい、最初から分かっていたけれど、
自分でも制御できない衝動に突き動かされた俺は、
君をこの腕に抱きしめたくて、手を伸ばさずにはいられなかった。
太陽のようなあいつの隣で、いつも淡い月光のように微笑んでいる
・・・そんな君が、欲しかった。
小笠原 「・・・これ、できた」
小野瀬 「ん?あ、あぁ、ありがとう。さすが仕事が早いな」
小笠原は相変わらずのポーカーフェイスで、淡々と仕事をこなしている。
ラボが超多忙なのは今に始まったことじゃない。
特に今日は、小笠原にヘルプに来てもらわなければならないほど仕事が山積みのはずだが、
今の俺の頭の中にはデータも依頼内容も入ってこなくて。
小笠原からプリントアウトされた用紙を受け取って、俺は形ばかりそれに目を通した。
視界に入る窓から見える空はどんよりと重く、朝から雨が降っている。
6月にしてはめずらしく肌寒いくらいに気温が下がっているが、ラボの中は通年同じ室温にコントロールされていて、外の悪天候の影響は皆無だ。
なのに、なぜか足元から凍り付くような冷感に襲われる。
理由は簡単だ。
さっき、櫻井さんが穂積と出かけた。
目的は、被疑者の勤め先への調査。
ただそれだけのことが、どうして俺をこんなに苛立たせるのか。
穂積は冷たい雨から守るように、傘を差し掛けながら彼女の肩を抱いて歩いているのだろう。
櫻井さんは少しはにかんだ笑顔であいつに寄り添っているはずだ。
見えないはずの二人の姿が簡単に想像できて、俺は窓ガラスに拳を押し付けた。
ラボの中が、まるで外界から遮断された檻のように感じる。
今すぐにでも追いかけて引き止めたいのに、枷が足に絡み付いてて動けないような錯覚。
実際は、俺も彼女も穂積も、己の職務をこなしているに過ぎない。
なのに、この状況を受け入れられない自分がいた。
小笠原 「窓ガラスに当たっても怪我するだけじゃない?」
小野瀬 「え?」
小笠原が見ているのは相変わらずPC───ナナコの画面だ。
にもかかわらず、俺の心情を的確に突いてくるとは。
大人げなくイラついていたことを見抜かれて、居心地の悪さをごまかすようにおどけてみせる。
小野瀬 「いつの間にそんな生意気な口を利くようになっちゃったんだろうねぇ?俺の可愛い諒くんは」
そう言って、小笠原を椅子ごと背中から抱きしめてやると。
小笠原 「なっ!?やめてよね!気持ち悪い」
小野瀬 「あはは。俺をからかうなんて10年早いよ」
ふざける俺の腕を思いっきり嫌そうに振りほどきながら、小笠原はそれでもきっちり止めを刺してきた。
小笠原 「・・・室長、本気だよ。たぶん」
俺はひとつため息をつく。
分かってるさ。あいつの櫻井さんに対する表情を見てれば、ね。
勘のいい小笠原なら気付いてもおかしくはない。
それくらい、穂積の櫻井さんを見守る眼差しは愛情に溢れている。
おそらく捜査室の面々も薄々感づいてはいるが、恐ろしくて口に出せない状況なんだろう。
それに、俺は知っている。
穂積が幼いころから大切に育ててきた紅葉の向こうにいる、『誰か』の存在を。
そして、その相手が・・・彼女、『櫻井翼』であることも。
小野瀬 「いくら俺でも、あいつと張り合う勇気はないな」
自嘲気味に作り笑顔で諸手を上げてみせる俺。
小笠原 「小野瀬さんは・・・もう少し室長を見習ったほうがいいかも」
小野瀬 「なんだよ?俺に穂積みたいな暴君になれって?」
分かってるくせに、と言いたげな視線をよこして、小笠原は再びPCのキーを打ち始めた。
小笠原は変わった。
相変わらずのマイペースっぷりだが、捜査室に入る前────もう少し厳密にいえば、櫻井さんが捜査室に加わる以前────と比較すると、周りを見る目が人間臭くなった。
堅物で、自らに枷をつけ周囲と一線を引いてた明智君でさえ、いつの間にか櫻井さんをチームの一員として認めながら、穂積の良き片腕になりつつある。
藤守くんと、如月君は・・・、
まぁいいか。
俺だけがいつまでもその場に蹲って・・・無いものねだりしている子供のようだ。
小野瀬 「全く・・・何やってるんだろうな」
.
夜空に浮かぶ、『月』が欲しかった。
決して手に入れることはできないことくらい、最初から分かっていたけれど、
自分でも制御できない衝動に突き動かされた俺は、
君をこの腕に抱きしめたくて、手を伸ばさずにはいられなかった。
太陽のようなあいつの隣で、いつも淡い月光のように微笑んでいる
・・・そんな君が、欲しかった。
小笠原 「・・・これ、できた」
小野瀬 「ん?あ、あぁ、ありがとう。さすが仕事が早いな」
小笠原は相変わらずのポーカーフェイスで、淡々と仕事をこなしている。
ラボが超多忙なのは今に始まったことじゃない。
特に今日は、小笠原にヘルプに来てもらわなければならないほど仕事が山積みのはずだが、
今の俺の頭の中にはデータも依頼内容も入ってこなくて。
小笠原からプリントアウトされた用紙を受け取って、俺は形ばかりそれに目を通した。
視界に入る窓から見える空はどんよりと重く、朝から雨が降っている。
6月にしてはめずらしく肌寒いくらいに気温が下がっているが、ラボの中は通年同じ室温にコントロールされていて、外の悪天候の影響は皆無だ。
なのに、なぜか足元から凍り付くような冷感に襲われる。
理由は簡単だ。
さっき、櫻井さんが穂積と出かけた。
目的は、被疑者の勤め先への調査。
ただそれだけのことが、どうして俺をこんなに苛立たせるのか。
穂積は冷たい雨から守るように、傘を差し掛けながら彼女の肩を抱いて歩いているのだろう。
櫻井さんは少しはにかんだ笑顔であいつに寄り添っているはずだ。
見えないはずの二人の姿が簡単に想像できて、俺は窓ガラスに拳を押し付けた。
ラボの中が、まるで外界から遮断された檻のように感じる。
今すぐにでも追いかけて引き止めたいのに、枷が足に絡み付いてて動けないような錯覚。
実際は、俺も彼女も穂積も、己の職務をこなしているに過ぎない。
なのに、この状況を受け入れられない自分がいた。
小笠原 「窓ガラスに当たっても怪我するだけじゃない?」
小野瀬 「え?」
小笠原が見ているのは相変わらずPC───ナナコの画面だ。
にもかかわらず、俺の心情を的確に突いてくるとは。
大人げなくイラついていたことを見抜かれて、居心地の悪さをごまかすようにおどけてみせる。
小野瀬 「いつの間にそんな生意気な口を利くようになっちゃったんだろうねぇ?俺の可愛い諒くんは」
そう言って、小笠原を椅子ごと背中から抱きしめてやると。
小笠原 「なっ!?やめてよね!気持ち悪い」
小野瀬 「あはは。俺をからかうなんて10年早いよ」
ふざける俺の腕を思いっきり嫌そうに振りほどきながら、小笠原はそれでもきっちり止めを刺してきた。
小笠原 「・・・室長、本気だよ。たぶん」
俺はひとつため息をつく。
分かってるさ。あいつの櫻井さんに対する表情を見てれば、ね。
勘のいい小笠原なら気付いてもおかしくはない。
それくらい、穂積の櫻井さんを見守る眼差しは愛情に溢れている。
おそらく捜査室の面々も薄々感づいてはいるが、恐ろしくて口に出せない状況なんだろう。
それに、俺は知っている。
穂積が幼いころから大切に育ててきた紅葉の向こうにいる、『誰か』の存在を。
そして、その相手が・・・彼女、『櫻井翼』であることも。
小野瀬 「いくら俺でも、あいつと張り合う勇気はないな」
自嘲気味に作り笑顔で諸手を上げてみせる俺。
小笠原 「小野瀬さんは・・・もう少し室長を見習ったほうがいいかも」
小野瀬 「なんだよ?俺に穂積みたいな暴君になれって?」
分かってるくせに、と言いたげな視線をよこして、小笠原は再びPCのキーを打ち始めた。
小笠原は変わった。
相変わらずのマイペースっぷりだが、捜査室に入る前────もう少し厳密にいえば、櫻井さんが捜査室に加わる以前────と比較すると、周りを見る目が人間臭くなった。
堅物で、自らに枷をつけ周囲と一線を引いてた明智君でさえ、いつの間にか櫻井さんをチームの一員として認めながら、穂積の良き片腕になりつつある。
藤守くんと、如月君は・・・、
まぁいいか。
俺だけがいつまでもその場に蹲って・・・無いものねだりしている子供のようだ。
小野瀬 「全く・・・何やってるんだろうな」
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