ニューヨーク珍道中 *清香様からの頂き物
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『しー、静かに。』
『本当に恋人なの?友達じゃなくて?』
『私のルイが!!!』
『ほら、静かに。ねっ?間違いないでしょ?』
『あの赤い髪の子?』
『…あっ、でもあの子もカワイイかも。』
何やら遠くで話し声が聞こえる。
これは夢なのか、はたまた現実なのか。
眩しい朝日に強制的に起され、重い瞼を少しだけ開けると見慣れない景色が飛び込んできた。
あれ、どこだっけ…?
女の子の家だったっけ?と昨日の記憶を辿ろうとして、やっと思い出す。
ニューヨークの穂積の家に泊まったんだ。
とりあえずシャワーを浴びるために、いつものように乗せられた穂積の足と腕をどかそうと顔だけ起すと、薄く開いたドアの隙間から3人の人々が鈴なりになっているのが見える。
小野瀬「…えっと……、とりあえず、おはよう。」
眼が合ってしまった3人にマヌケな挨拶をしながらも、隣で眠る穂積を揺すって起こすと、穂積が跳ね起きた。
穂積「ジョー!」
ジョー「ごめん!ルイ!どうしてもロバートやポールが信じてくれなくて…。」
穂積「だからって勝手に部屋に入れるな!!」
ジョー「一応洋服を着てるかどうかは確認してからにしたわよ?裸だったらロバート達には刺激が強すぎるから…。」
穂積「注意すべき点が違う!!」
ベッドから下りて怒る穂積の背中越しに見えたロバートとポールは、クマのように大きな身体には似つかわしくない可愛らしい仕草で、ほんのり頬を赤らめながらも穂積を注視していた。
よっぽど穂積のことを気にいっちゃったのかな…とベッドの上で呆れていると、眼があった二人にウインクされる。
あ、あぁ…、俺はもうちょっと綺麗な子のほうがいいかな…?
ぞわりと背中を駆け抜けていく悪寒に身を震わせながら、俺はそっと自身の身体を抱きしめたのだった。
結局二日目は覗きのお詫びと、昨日『日本の鑑識官だ』と紹介されたこともあり、ジョーさんが交渉してくれたおかげでニューヨーク市警のCSI(科学捜査班)を少しだけ見学することが出来た。
最新の科学を駆使して現場証拠から犯人および犯行過程を解明していくという流れは、どこの国でも基本的に変わらないが、設備の充実さと完全にシフト勤務になっているのは少しだけ羨ましくも感じたりする。
小野瀬「ありがとう。勉強になったよ。」
ロバート「うふん、いつでもニューヨークに来てね?アオイなら大歓迎よ?」
ポール「そうよ、待ってるわ!」
小野瀬「あは、はは、本当にありがとう。じゃあ、元気で。」
微妙に仲良くなったロバートとポールに別れを告げ、ニューヨークの街をブラブラと当てもなく歩いていると穂積が足を止めた。
穂積「……そろそろ空港に向かわないとダメだな。送っていく。」
小野瀬「うん。頼むよ。」
なんとなく口数の少なくなった穂積とアパートへ小さなカバンを取りに行き、向かったのはジョン・F・ケネディ空港。
ここから羽田まで14時間のフライトだ。
搭乗手続きを済ませてラウンジでコーヒーを飲んでいると、穂積がぽつりと話す。
穂積「…来てくれて、ありがとうな。すげぇ楽しかった。」
小野瀬「あぁ。俺も楽しかったよ。二日間ありがとう。」
穂積「…次はロスか。」
小野瀬「住むところが決まったら連絡しろよ?来れたらまた遊びに来るから。」
穂積「そんなに休めるわけねぇだろうが。…半年なんてあっという間だ。」
小野瀬「…そうだな。あっという間だよな。でも、ロスも行ったことないから、行けたら案内しろよ?
」
穂積「分かってるって。任せとけ。」
やっと見れた穂積の笑顔に、安堵する。
それと同時に、空港内のアナウンスが羽田行きのアメリカン航空135便の搭乗案内を告げた。
二人同時に席を立ち、ゲートへと向かう。
小野瀬「さぁ、行ってくるか。」
穂積「おう。」
小野瀬「森伊蔵、頑張って持って来たんだから呑めよ?」
穂積「あぁ、帰ったら早速呑むよ。」
小野瀬「それから…早く帰って来いよ。」
穂積「もちろんだ。」
最後に肩を小突くと、同じように小突き返された。
顔を見合わせて笑えれば、それでいい。
小野瀬「……じゃあ、な。」
穂積「あぁ、じゃあな。」
一度だけ小さく手を振り、俺は搭乗ゲートをくぐった。
背中に視線を感じるが、決して振り返ってはいけない。
絶対にまた東京で会えるんだから。
半年後にはまた警視庁で会うんだから。
今は互いに成長する時だと自分に言い聞かせ、俺は大海原を飛び越えたのだった。
~END~