video killed the policemen *ヒミコ様からの頂き物
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しかし、如月を救済しようがしよまいが、自身に絶体絶命の大ピンチが訪れるのは、時間の問題と言うやつで・・・。
次にVTRに映し出されたのは藤守だった。
「藤守さんから見た穂積さんって、どう言う人ですか?」
「せやなァ・・・。色んな意味で怖いモンなしの人やなァ。大体あの人、悪巧みしてる時がいっちばん楽しそうな人やから」
「わ、『悪巧み』ですか?」
「そらもー、えげつない企み笑いやで?」
続いて、小笠原。
「穂積さんってどんな方ですか?小笠原さん」
「ある意味、未知の生物」
「え・・・?」
「科学的見地では予測・解明不可能な言動が多すぎるから」
そして、明智。
彼だけはなぜか例の居酒屋でのやり取りが採用されている。
「明智さん、明智さん。・・・酔ってますか?」
「あ?酔ってまへんよー、うぅー」
「・・・・・。あの、穂積さんってひと言で言うと、どんな方でしょう?」
「んー・・・。鬼畜根性まみれ」
「・・・・・」
「アンタ、ちょっと聞いてくれよ。あの人はな、櫻井に ピーーーーーー」
「・・・ハァ」
「で、オレが櫻井と話してると、ピーーーーーーーーー」
「・・・ハァ」
「しかもピーーーーして、ピーーーー、ピーーーーーー、ピーーーーーーーーッッ!!!な?あり得ない鬼畜ぶりだろぅ?」
「・・・・・」
テロップで、『私的VTRとは言え、いち放送人として自主規制をかけさせていただきました』と入った。
青ざめている明智にしたら、ならこの映像は使うなよ、と訴えたいところだろうが、今はそんな余裕すらない。
この極限の大大大窮地をいかに脱出するか。
頭にあるのは、ただそれだけだ。
「藤守、小笠原、明智ぃ~・・・」
「ひっ・・・!室長・・・、スンません。ホンマ、スンませ・・・!!」
3人の悲痛な金切り声が耳をつんざく。
後に残ったのは、生気を全く感じることのできない警察官3名の姿。
彼らを見た小野瀬が小さく「ここってやっぱり格闘技部屋だったんだね」と憐れんだ。
その小野瀬がアップで映し出されたのは、酩酊刑事のピー音まみれの次だった。
薬品を試験管内で合わせ、中身をスポイトで取り、測定器にかける。
一連の動作が何のナレーションもなく、ただ流されていた。
「何で小野瀬だけこんなのが映ってるんだ?」と言ったのは藤守慶史。
それには穂積も同感で、「無駄なシャク使いやがって」と吐いて捨てた。
「小野瀬さんにとって、穂積さんとは一体どんな人でしょう?」
「アイツは・・・、そうだな。悪の巣窟みたいなヤツかな」
「『悪の巣窟』・・・ですか?」
「そう。だから君もうかつに近付かない方がいいよ。君、かわいいから」
小野瀬の白衣がADと思われる女の子に伸び、フレームアウトしたところで切れた。
「結局ナンパかよっ!」
「この破廉恥ヤローめ!」
穂積と藤守慶史は揃って「ケッ」と言ったが、ゾンビ状態の部下たちは全員心の中で「悪の巣窟・・・、その通りだ」と激しく同意した。
しかし口にすればまたも空恐ろしい制裁のムチが飛んでくるし、それ以前に、もはや声にする気力すら残っていない。
4人はただ目配せをすることで自らの賛同を伝え合い、そして強く生き延びようと互いを励まし合った。
「この順番だと、次はオレか?ここまで引っ張られるのは何とも不本意だが・・・。まァ、トリも悪くなかろう」と腕を組み直したのは警視庁に長居する検事。
金髪の男も、白衣の男も、そして4体のゾンビたちも。
誰もが藤守慶史の番だと思っていた。
・・・が。
「櫻井さんって穂積さんと婚約中なんですよね」
「ハイ」
登場したのは翼だった。
休憩室で腰かけ、TVでも流れたインタビューの続きをと思われるくだりの先が映っている。
「プライベートな穂積さんってどんな人?」
「えっ!?プライベート、ですか・・・」
「あ、大丈夫よ。ここはTVでは絶対流さないから」
「ハァ・・・。プライベート・・・」
言いよどむ表情は、何かエピソードはないかと記憶を探っている最中のものだ。
しかし突然の質問に上手く余談を見つけられない様子で。
プロデューサーと思われる姿を映さぬ女性の声が「じゃあ」と助け船を出した。
「最近、彼のことをカッコイイなと思った出来事は?」
「『カッコイイ』・・・。うーん・・・・。あっ!」
何かが彼女の中でヒットしたみたいだ。
「この前ふたりで結婚式の衣装選びに行ったんですけど。もう泪さんがカッコ良すぎて・・・!ナイショなんですけど、すっごくメロメロ~ってなっちゃったんです。あと、これもナイショなんですけど、その時撮った写真を、こっそり携帯の呼び出し画像に登録しちゃってるんです」
嬉々として一気にまくし上げた翼は、「ホラ」と携帯電話をカメラに見せた。
それは、メモリ機能の穂積の情報画面で、「イメージ」項目に袴姿の画像が。
「電話とかメールが来るたびに嬉しくなっちゃうんです」と屈託のない翼の笑顔がアップになる。
そしてこの一話でスイッチが入ってしまったのか、翼のトークはまだ続いた。
「で、この衣装選びの日、私がすごく疲れてしまったので、晩ごはんに泪さんがオムライスを作ってくれたんですけど」
「へぇ。やさしいですね」
「ハイ。でも、卵の焼き具合が上手くいかないって言って、何度も作り直してくれて。結局私の分を作るのに1パック全部使っちゃったんですよ?でも味はすっごくおいしくって・・・。あっ、あとっ!」
彼女にしては珍しいおのろけトークが炸裂した。
話を振ったプロデューサーも、最初はおいしいコメントが撮れたとほくそ笑んでいたであろうが、これが存外長く続くものだから・・・。
しまいには聞いているのも恥ずかしくなったのか、映像がフェイドアウトで消え、強引気味にエンディングテーマが流れ始めた。
「・・・オイ、何だ今の」
「ななな・・・、何でしょーねーーぇ」
「オレの方が恥ずかしくなってくるわっ!」
「うっ・・・」
日頃聞くことのない翼の自分への想い。
穂積はすっかり照れ切っていた。
わざとらしく怒った表情を作り、腕を組む。
が、どこか口元が緩みがちになる。
VTRではゆるやかな曲をバックに、穂積の締めの言葉っぽいインタビューで収束へと向けられている。
それを耳に、辺りに転がっていたゾンビたちも起き上がり、何だかんだでおもしろい映像だったな、なんて思っていると・・・。
最後、曲が流れ切ったところで、先の翼の続きが映し出された。
「おーい。お前、取材終わったのか?」
「あ、室長!ハイ。ちょうど今終わったところです」
「んじゃ、帰るぞー。失礼しますね」
「失礼します」
「しっかし、腹減ったなァ」
「今日はハンバーグです」
「おっ、いーじゃねーか。でもその前に・・・」
「んっ・・・!!」
「今日もお疲れ様」
「ちょっ、ここまだ警視庁っ・・・!」
「いーんだよ。オレ、公私混同は堂々派だから」
「何ですか、それっ・・・!」
「ん?おかわりが欲しいのか?翼」
「いりませんっ!」
「今更何赤くなってんだよ・・・。カワイーやつだな」
「もう泪さんなんか知りませんっ!!」
今度こそVTRは終わった。
全員が悲喜こもごも。
それぞれの理由で脱力に倒れる中、ひとり藤守慶史の声が響く。
「オレのインタビューはどうなったんだーーーー!!」
~END~