video killed the policemen *ヒミコ様からの頂き物
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同封された手紙の文面からして、片手間で編集された映像だろうと誰しもが予想していたのだが・・・。
再生すると熱いバイオリンのBGMが流れ、タイトルが表示された。
「『密着大陸』やてぇ?」
「元の番組って他局ですよね?」
「いいのか?テレビ局がこんなパロディ作ってて」
「あの人たち、ヒマなの?」
穂積の所の次男・藤守を皮切りに、四男・如月、長男・明智、三男・小笠原とバトンした。
そう、このオープニングは、あの今をきらめく時の人に密着する大人気ドキュメンタリー番組『熱意大陸』の完全なるパロディだった。
最後のキメの自筆サインの箇所は、穂積が書類承認欄にいつも押している印で代用されている。
微に入り細に入り、手間暇かけられた映像だ。
「結構凝ったVTRだね」
「遊び過ぎだろ・・・。あのプロデューサーめ」
「でも何かカッコイイオープニングでしたね」
翼の言葉に穂積が「オレが映ってんだから、カッコイイに決まってんだろ」とふんぞり返ったので、映像に感心していた小野瀬が白けた声で「ハイハイ」と合いの手を入れた。
「お前いちいちカンジの悪いこと挟んで来るんじゃねぇ」と振り返った穂積は、すぐさま「あ、始まりましたよ、室長!」と翼に袖を引かれ、テレビに戻された。
『警視庁の金髪の男の朝は、スポーツ新聞の風俗記事を読むことから始まる』
ご丁寧に本家に真似た語り口調のナレーションまでもが入り、その第一声でモニタ前の全員が吹くこととなった。
「ぶーーーっ!!!」
「わはははは!いーぞ!穂積の下品さが的確に映し出されている」
「うっさいわねっ、アニっ!!誰が風俗記事から朝を始めてるってのよっ!!」
「けど、スポーツ紙の風俗記事開いてんのはホンマですやん」
「そーそー。室長、毎朝ニヤニヤしながら楽しそーに読んでますよねぇ」
「ニヤニヤなんかしてない!楽しそうになんかしてない!オレはだな、ただすもうの結果を」
「櫻井がお茶を置く時に、不自然に目をそらしていることがあるの、ご存知ですか?」
「はァ?」
「あんな記事目の前で読まれたら、女性なら目をそらしたくもなるでしょう」
うるさいご近所さん・藤守慶史のバカにしきった笑いから始まり、所々穂積の反撃を挟みつつも、次男・藤守、四男・如月と来て、長男・明智までもが会話に加わった。
「お前、それは立派なセクハラだろう。櫻井さん。今からでも遅くない。オレに乗り換えちゃいなよ」
「黙れ小野瀬っ!誰がお前なんかに乗り換えるかってんだ!!」
と、翼を抱き寄せてみせる間にも、VTRは進む。
『穂積の出身は鹿児島。大学進学と共に上京した。学生の頃の話を訊いてみると・・・』
「穂積さんって、どんな学生だったんですか?」
「学生時代?んー・・・、御多分に漏れず、遊びまくってたなァ。何せ田舎育ちだから、余計にハシャいじゃって。初めて渋谷のスクランブル交差点見た時なんて、『今日は祭りがあるのか』って素で思ったくらいだし」
「あ、人の多さに」
「あまりの多さに。『オレも祭り参加できんのかな?』みたいな」
「ぶっははは!田舎者ならではのエピソードだな、穂積」
「そう言う兄貴かて、『新宿の朝のラッシュが怖い』言うておかんによー電話して来とったやないかい。しかも上京して何年かは山手線のこと環状線言い続けとったし」
「輪になって走っとんじゃ。環状であることに間違いないんじゃボケ」
「や、山手線も環状線も固有名詞やから」
電車絡みの話題のせいか、次男・藤守がうるさいご近所・藤守に若干熱く返した。
その横で三男・小笠原が「わからなくもないけどね」、四男・如月が「オレもオレも!東京の人の多さってマジで度胆抜かれますよね」と賛同した。
一方、都内育ちの長男・明智は「確かに多いとは思うが・・・。オレなんかは最初からそう言うものだと思って育ってるからな・・・」、お隣神奈川出身の小野瀬も「オレもはじめは驚いたけど、穂積たち程の衝撃はなかったな」と言った。
その後、VTRは穂積の昼食の様子や、休憩スペースなどでの映像を挟んだ後、ナレーションがこう繋いだ。
『ところで部下たちは彼のことをどう思っているのだろう。フと気になったので、ひとりずつ順に訊いてみることにした』
すると穂積をのぞく全員が「まさか・・・。あのインタビューが流れるのかっ!?」とギクリ、体を強張らせた。
「大丈夫、大丈夫。今カメラ回ってないから。ここだけのぶっちゃけトークしちゃってよ。たまには言いたいでしょ?本音をさァ」とプロデューサーの笑顔が思い出される。
まさか・・・ね。
『カメラ回ってない』って言ってたし・・・ね。
さぁて、どうなのか。
トップバッターで映し出されたのは如月だった。
道場でひと汗流しサッパリした後なのか、ややテンション高目な様子でスポーツドリンクを飲んでいる。
「如月さんから見て、穂積さんってどんな人ですか?」
「え?室長?んー・・・。神様みたいな人ですよ」
モニタ前が「おぉ」と感嘆した。
・・・のもつかの間。
ここで編集を入れて切ってくれれば良かったのに。
続きを見た穂積の眉は、不機嫌の方向に上がった。
「何でもできるくせに、自分じゃぜーったい動かないとことか。あと、タダじゃお願い聞いてくんないとことか、もぉぉぉぉ、そっくりですね!!」
・・・・・。
如月は今、無邪気な笑顔でカメラ目線を決めた過去の自分が憎い。
怖いもの見たさで穂積の方を向くと・・・。
「如月ィ。お前、どーやらオレにシャンプーして欲しくてたまんねぇみたいだなァ」
笑顔で言われた。
怖いっ!!
しかし、危機を察知した時には既に遅し。
程なくして捜査室に如月の断末魔がとどろいた。
「如月・・・。ご愁傷様」
「って言うか、『如月の毛根、ご愁傷様』ですね、明智さん」
救済は我が身の危険と熟知する長男・明智と次男・藤守が、しめやかに黙とうをささげた。