video killed the policemen *ヒミコ様からの頂き物
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20時近くを回ろうとする頃。
マグカップを持った小野瀬が「特別捜査室さん、郵便でーす」と言って入って来た。
「・・・アレ?みんな揃ってテレビ?」
ちょっとフザけてみたのに、面々はテレビにかかりっきりで反応が薄い。
先に捜査室に総出で現場に向かった事件の資料映像でも見るのだろうか?
気になって小野瀬もモニタを見やると・・・。
「あ。これ、以前穂積が取材されてた・・・」
「『密着24』ですよ。今日、放送日だからみんなで見ようって」
「なるほどね」
如月は言い終わるとさっさと視線をモニタに戻した。
何だ、事件じゃないのか。
と言うか、さっきの事件はいいのか?
などと思いながらも、小野瀬もこの放送には興味がある。
CM中なのを良いことに、サッとコーヒーを注ぐと、最も座高の低い翼の背後に立って鑑賞に参加した。
「えっ?もう終わり?長いこと取材に来とった割りに、映るんはホンマにちょっとやねんなァ」
「そうだな。1ヶ月くらい張り付かれてたのにな」
藤守と明智がモニタを見たまま言った。
番組は穂積のVTRを終え、今は大阪ミナミの派出所の映像を放送している。
「もう少し室長の、見たかったな・・・」と翼がつぶやくと、その隣で腕組みをしている穂積が「あんなもんだろ」と言って立ち上がった。
「さっ。お前ら。とっとと仕事片付けて、とっとと帰れよ」
それを合図に全員が寄せていたイスを自席に戻し始めた。
「あ?居たのか、小野瀬」
「お前な。オレが入って来たとき、こっち見ただろ」
「そーだっけか?そんな昔のことなんて忘れちまったァ」
すっとぼけた声が室内に通る。
「出た。室長のイジメっ子モード」「小学生みたいやな」と如月、藤守が笑い合った。
そこに小笠原が加わる。
「ホント。さっきのVTRと大違いだよね」
「そうですよね。アレ、ほとんどサギですよ!」
「あ、お前もそう思った?オレもやァ。室長めっちゃえぇ人っぽく映っとったやん?」
「でも実際はあんなだよ」
小笠原が指さした先には、穂積が書類片手に翼の頬をつねり上げている。
「アンタ、何回言えばわかんのよっ!誤字が多過ぎでしょ!」
「ううー。ふぉふぇんふぁふぁふぃー」
「許さない!アタシ、そ~~~簡単には許さないから!」
「いふぁふぃふぇふぅぅー!!」
「テレビって偶像を作り上げてナンボの世界ってホントなんだね」と遠巻きに見守る小笠原がボソッとした。
「あーぁ。翼ちゃん涙目だよ」
「普通婚約者にあんなことするか?如月、お前助けたれや」
「えぇっ!ムリですよー!オレ、この間ジャイアントチョップ喰らって毛根攻撃されたばかりで、トラウマから抜けれてないんですから!藤守さん行って来てくださいよ」
「ア、アホッ!オレかて室長の関節技に泣いてんで!あんなん、もーされたないわっ!!あ、明智さんお願いしますよ」
「えっ?あ・・・、あぁ・・・、そう、だな・・・」
「アレ?明智さん。いつもはあの子に過保護過ぎるくらいなのに。今日は助けないの?」
「そうは言うが、小笠原っ。お前も室長の地獄突きのヤバさを知ってるだろ?この前は本当にあのまま昇天するかと思った・・・」
「・・・あのさ。ここ、格闘技部屋じゃないよね?」
青い顔になった3人を哀れに思い、小野瀬は「お前たちよくアイツについていってるな」と付け足した。
すっかり沈んでしまった雰囲気の中、その“犯人”とも言える人物の声が飛び込んで来た。
「小野瀬っ!アンタいつまでここに居るつもり?さっさと帰れ。うちの娘が小野瀬菌に空気感染して穢れる!」
「人を病原菌みたいに言うな」
「うるせー。お前なんか誰彼構わず妊娠させまくってる妊娠させ病の病原菌じゃねぇか」
「あのさ。オレ、未だ誰の父親でもないから。そう言う誤解を招くこと言うの、やめてくれる?」
「フンッ!お前が知らんだけで世の中にはお前の子が、お前に捨てられた母親と一緒に泣いてるんだろうな」
今日のカウンター攻撃は小野瀬が喰らう番なのか。
あんまりな言われ様に、今度は明智たちが小野瀬に同情した。
「室長、荒れてるな」
「あの人、時々説教しながら自分で勝手に不機嫌レベル上げよるからな」
「しかもベクトルおかしな方向に向かうしね」
「理不尽極まりないからな」
「明智さん、言うね。でもホント、こっちはいい迷惑だよね」
小笠原の発言に明智と藤守が「うんうん」とうなずく中、如月が「アレ?」と言った。
「でも小野瀬さん、入って来たとき何か言ってませんでしたっけ?『郵便』がどうとか・・・」
「あぁ!忘れてた!」
やっぱり入って来た時のあのボケは聞いてなかったんだな、と心内がっかりしながら、小野瀬はテレビを見るときに置いた小包を手に取った。
「ハイ、これ。今日捜査室に届いた郵便物。代わりに受け取って置いたよ」
「何でお前がうちに来たのを受け取ってんだよ」
「しょうがないだろ?お前たちが全員現場に出払ってて、受け取れるヤツいなかったんだから」
「だからってお前が受け取らなくてもいいだろう」
「届けに来てくれた時に、たまたま居合わせただけだよ」
「『居合わせた』って・・・。さてはお前、またオレらの留守中に勝手に入りやがったな?」
「このコーヒー泥棒めっ!」と悪態をつきながら、穂積は小野瀬から小包を受け取った。
差出人には、先程見ていた番組名が。
B5に近いサイズで、中には緩衝剤が入っていそうなふくらみと柔らかさを感じる。
不審な点がないか、一通り確認を。
最後に耳を近付け問題なしと判断すると、「開けて」と如月に渡した。
如月がハサミで封を切る。
すると中には1枚のCDと、文書が・・・。
「何や、手紙も入っとんのか?どれ、賢史くんが読んだろ」と言って、藤守が読み上げた。
「えーっと・・・。『特別捜査室のみな様。先日は取材にご協力いただき、ありがとうございました』」
『特別捜査室のみな様。
先日は取材にご協力いただき、ありがとうございました。
特に期間中密着させていただきました穂積室長には、大変感謝いたしております。
本日はそのお礼に、特別VTRのデータをお贈りさせていただきます。
都合により放送には使用されなかった映像を編集したものです。
きっとお楽しみいただけると思います。
みな様でご覧ください。
松田』
「松田って・・・。あの女プロデューサーか!?」
「そうですよ、明智さんっ!あの強烈プロデューサー!」
「あぁ、あの穂積の女版みたいな人か」
「小野瀬さんっ、その表現めっちゃわかるわっ!」
どうやらそれは言いえて妙だったらしい。
明智、如月、小野瀬、藤守は手紙の差出人名と穂積を改めて見て、揃ってうなずいた。
「お前らな・・・」と穂積が反論ののろしを挙げようとした時、ガラガラとキャスターを転がす音が2ヶ所で。
「小笠原さんに、翼ちゃん・・・。何してんの?」
「見ないの?これ」
「見ないんですか?」
いつの間にかCDケースを手にした小笠原が、先程まで陣取っていたテレビモニタの前にイスを戻し腰かけている。
翼も同じく、やはり先の位置まで自席のイスのキャスターを押して来た。
「・・・見るっ。見たい!めっちゃ見たい!!」
「オレも見た~い!」
「あっ!コラ、如月っ!櫻井の左隣りはオレの場所だぞ!」
「明智さーん。そんなのノールール、ノールール」
キャスターを転がし、三つ巴の陣取りゲームを勃発させた3人。
小野瀬は藤守にひかれそうになり、とっさに白衣を翻してよけた。
「オラ、どけ!うちの嫁に近寄んなっ!」と穂積が腰かける前に、翼をイスごと引き寄せる。
「まだ嫁じゃないですよね、室長」「そうや、そうや!残り短い独身生活、自由にさせてやって下さいよ」と如月、藤守が並んで騒ぐ。
「オ、オイッ!如月っ!櫻井に近付きたいからって、オレのヒザの上に座ろうとするなっ!ベッキーは禁止だっ!」と明智も騒動に参加。
「るせー!静かにしやがれっ!バカトリオ!!」
「はぁい・・・」
烏合の衆と化し始めた場が穂積の一喝で静まり、3人はしゅんとおとなしくなった。
小野瀬はその様子を見ていて、まるでテレビを前にした一家団欒かと見紛い、少し吹き出しそうになった。
と、その時・・・。
バァァンッ!!!
「オイ穂積っ!オレのインタビューがカットされてたゾ!どう言うことだっ!!」
「ハァ?何なの、アンタ!」
「兄貴っ!いきなり入ってくるなり、何の話や?」
「ん?居たのか愚弟」
「だから、本人の前で『愚弟』とか言いなや」
「フン!『密着24』にオレのインタビューが映ってなかった」
「知らないわよっ!んなこと!って言うか、アンタが何でインタビューなんか受けてんのよっ!」
穂積たちが一家なら、乱入して来たこの藤守慶史はさしずめ、にぎやか過ぎる隣人と言ったところか。
夏の野球中継が放送時間の関係で途中で終わり、毎回「最後まで見せんかい、ボケーー!!」と叫んで、両隣3軒に迷惑をかける手合いだ。
小野瀬がそんなくだらないことを考えていると、「うるさいな、もう・・・。再生するよ?」と、穂積の所の三男がリモコンを操作した。