First Love *清香様からの頂き物
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いつか大人になる日まで。
-小野瀬 藍の恋-
物心ついた時にはあなたは私のそばにいて、いつも抱きあげては膝に乗せてくれていた。
金色の髪と綺麗な碧色の瞳がまるで絵本の世界から出てきた王子様のようで、あなたの隣でお姫様になりたくて、幼いころに交わした「おおきくなったらけっこんしようね!」という約束。
「大きくなったらな。」と指きりをしながら笑うあなたの笑顔が大好きで、大きくなりたくて、ご飯も好き嫌いせずたくさん食べて、たくさん眠った。
いつしかお母さんより背も高くなり、隣を歩く背の高いあなたを見上げるのも不自然ではないくらいに、大きくなれた。
ずっと見ていた大好きな背中にもっと近づきたくて、見ていた景色が見たくて、必死に勉強をしてあなたが通っていた大学に合格した時に、まるで自分のことのように喜んでくれている顔を見て、改めて感じる…『本当の気持ち』。
「……おじ様。」
First Love
さわやかな秋の風を感じながら通いなれた大学の正門をくぐると、友人のさやかが声をかけてきた。入学当初人見知りしていた私に声をかけてきてくれた彼女は、まるで心が読めるのかというくらい勘の鋭い子で、気がつけばすべてをさらけ出すくらい何でも話してしまう間柄となっていた。
法曹界を目指す彼女と警察官を目指す私。少し違いはあるけれど、お互いにいつかは霞が関で会えるといいね!と言いながら共に講義に向かうのももう2年目となる。
「藍、おっはよー。今日もすごい荷物だね。」
「おはよう。今日も練習があるからねー。」
「試合ってもうすぐだっけ?」
「そうなんだ。今回は勝つよ~!」
大学に入ってからも続けているのは、子供のころから警察官になりたいって思っていた私に「必ず役に立つから。」と激務の合間を縫ってお父さんが教えてくれた剣道。
一緒に道場へ通ったこともあったけれど、大きな事件が起きれば徹夜や泊まり込みなんて当たり前で、いつしか私だけが道場へと通うようになっていた。
「あれ、でもその日って藍の20歳の誕生日じゃなかったっけ?」
「そう。今年は見事に被っちゃった。でもこの大会だけはどうしても出たいんだ。」
お父さんが神奈川県大会で準優勝したなら、私はもっと上を目指そうと全日本女子学生剣道選手権で優勝することを目標に練習をしてきた。来年には本格的に警察官になるための勉強に取り組まなくてはいけないから、今年が最後のチャンスだったのだ。
「藍のお父さんも応援に来るんだよね?私も応援に行くね!」
「って、私の応援よりお父さん目当てなんじゃないの?」
「あはは、バレたか!だって藍のお父さんかっこいいんだもん!」
「もうっ!お父さんはあげないよっ!」
「出たっ!筋金入りのファザコン娘!」
「ファザコンでいいですよー、だ。」
「だから彼氏ができないんだよ、藍は。まぁ、あんなにかっこよくて優しいお父さんがいたら同年代の男の子なんて幼稚くさくて仕方ないんだろうけどさ。せっかく美人で背も高くてモテるのに、もったいないなぁ。今度の学祭でミスキャンパスにエントリーしないかってミスターキャンパス候補の男子からお誘いも来たんでしょ?」
「…うーん、でもそういうの苦手だからね。断わったよ。」
今もかっこいいけれど、その昔『桜田門の光源氏』と言われていたお父さんに似ているらしいこの顔立ちのせいか、男の子たちから声をかけられることは正直少なくはなかった。
年頃だし、そろそろ誰かとお付き合いしたほうがいいのかな?って思うこともあるけれど、心の片隅でいつも『あの人』と比べてしまう自分がいて、そんな失礼な気持ちを抱えたままお付き合いをするなんて出来なくって。
「でもさ、藍って本当に浮いた噂が無いけど、誰か好きな人でもいるの?」
「え~っ、好きな人ねぇ…。」
不意を突かれた質問に思わず『あの人』の姿を、笑顔を思い浮かべてしまい、頬が緩む。
そんなちょっとした反応すら見逃してくれない目ざとい友人が『ズイッ』っと顔を寄せてきた。
「んぅ?その反応は怪しいなぁ…。この私に隠し事をするつもりかい、藍ちゃん?」
「あっ、怪しくなんてないよ。ホラ、講義が始まっちゃうから行こうよ!あの教授、遅刻するとうるさいじゃん。」
「何よー、誤魔化されないんだからね!後で取り調べてやる!カツ丼奢ってあげるから吐け!」
「今時カツ丼なんか出しませんよーだ!しかもあれって刑事さんの自腹なんだよ?」
「えぇっ、マジで!」
「あははっ、テレビ見すぎー。」
どうにか誤魔化しながら足早に教室へ入り、いつものように一番前の席に座って教科書を出すものの、脳裏に一瞬でも浮かんでしまったら容易に消すことができない『あの人』の姿と…想い。
会いたくて。
近づきたくて。
傍にいたくて。
必死で背中を追いかけるけれど、どんどん距離は離れてしまいそうで。
心の痛みが誤魔化しきれなくなってきた。
ねぇ、おじ様。
あの時の指きり、まだ覚えていますか?
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