悪魔は天使に二度恋をする。 *清香様からの頂き物
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-Hozumi side-
藍が退院して2日後、俺達は再び羽田空港へと集まっていた。
今日はニーナ女王が帰国する日。
懇親会での襲撃もあってろくに日本観光を楽しめなかった女王が最後に望んだのは藍との再会だった。
「藍!!怪我の具合はどうだ?まだ痛むか?」
「ご心配をおかけしました。もう大丈夫ですよ?」
ニッコリ笑う藍に、ニーナ女王はいつものように抱きつくも、俺は藍の首根っこを掴んで引きはがした。
「SPと警護対象者は密着しません。」
と、言うか、藍は俺のものだ。誰であろうとくっついてんじゃねぇよ。
「藍と会うのも、これが最後かもしれないのだ。少しくらいいいだろう?本国にいると色々プレッシャーがあ
ってな。こうやって楽しいとか嬉しいとか思えたのは前回の来日以来だ。」
どんな立場にいようと、大人なんてやせ我慢ばかりなんだろうな。
それでも、やるべき事をやって、生きていく。
狭くて窮屈な中でも、自分の道を見つけられたのなら、そいつは幸せなのかもしれない。
飛んで行く軍用機を見送っていると、隣に立つ藤守と如月が大きく伸びをした。
「いやー、大変だったなぁ。…でも局長と仕事ができて、ホンマに良かったっす。」
「ホント、久しぶりに昔に戻った気がしますね。」
「そうだな。久し振りついでに飲んでから帰るか?最強の男決定戦でもやるか。」
そう言うと、藤守も如月も慌てて手を振っていた。
「いやいや、向こうでの仕事も溜まってますからね。早よ、帰らんと。」
「そうですよ、襲撃事件で戻るのが2日も遅れちゃいましたからね。」
みんな自分の道を見つけて、歩いているんだ。
「俺も科警研に戻ります。小野瀬さんがそろそろ過労で倒れそうだって連絡があったんで。」
「俺は警視庁に戻って、報告書を出してきます。小野瀬は明日まで休みなんだろう?明後日からまたよろしくな。」
時間は嫌でも過ぎていく。
無常にも思えるけれど、誰もが同じ条件で生きている。
立ち止まるのは終わりなのかもしれない。
「じゃあ、飯でも食って帰るか。」
夕焼けの空の下、散り散りに別れた仲間の背中を見送ると、最後まで隣にいてくれた藍に声をかけた。
笑顔で頷く藍を連れて向かったのは、3年前に一緒に行った警視庁近くのホテルのフレンチレストランで。
前回を思い出したのか、少し不安げな表情を浮かべる藍の背中を押して席につくと、あの時と同じように好みを聞きながらも注文をしていく。
やり直すのなら、ここからだから。
デザートともに運ばれてきた大きな紙袋をウェイターから受けとると、藍の大きな目がより一層大きくなった
。
あの時渡した花束は『新しい道を歩んで貰いたい』と言う願いを込めて作ってもらった物だが、今日は。
「藍、…受け取ってもらえるか?」
「おじ様…、これって…。」
「俺が幸せにしてやる。どんな時でも傍にいて、藍を守る。寂しい思いもさせない。だから、…結婚しよう。」
渡したのは真っ赤なバラの花束。『愛する人に想いを伝えたい』と作って貰ったものだ。
花束を胸に抱きながら、何度も頷く藍の目に溢れる涙は、あの時とは違う幸せの涙なんだろう。
何度も泣かせたけれど、これからは傍で涙を拭ってやる。
俺が抱きしめてやる。
だから、もっと素直になれ。俺も、なるから。
家まで送ろうとエレベーターに乗り込もうとすると、袖を引っ張られて乗り損ねてしまった。
振り返ると真っ赤な顔で俺の背中に張り付いている藍が小さく呟く。
「…帰りたくないです。………もっと、一緒にいてもらえませんか?」
ここから。
この夜から。
ひどく遠まわりをしていた俺達の道が重なる。
…………………………………………………
翌朝。
手を伸ばせば吸いつくような柔らかな肌がある…と思っていた。
意に反して空を切る己の手のひらに、まどろんでいた意識が一気に覚醒した。
「藍!?」
「は、はい!どうしましたか?」
飛び起きた俺に、窓際で小さく丸まりながら外を見ていた藍が慌てて立ち上がった。
大きな窓から入りこむ朝日が藍を照らしていて、まるで輝いているよう。
つややかな髪には天使の輪が、素肌に纏った白いガウンには天使の羽が見えるようで。
俺は夕べ天使を抱いたんじゃないか。
そんな気さえ起きてくる。
大人になった藍。
天使のように愛らしかった少女が、美しく育った。
生まれた時も、愛した時も
新しい表情を見るたびに
心が苦しくなるくらい締めつけられて
これが『恋』なんだと思う。
『悪魔』と呼ばれた俺が『天使』に恋をした。
一人だと思っていた『悪魔』に美しい『天使』が手を差し伸べた。
そんな事があってもいいじゃないか。
「藍。」
「んっ?なんですか、泪さん?」
柔らかな髪から甘い香りが漂う。
「…愛してる。」
神に誓う前に、お前に誓おう。
この命が尽きるまで愛し続けることを…。
FIN
藍が退院して2日後、俺達は再び羽田空港へと集まっていた。
今日はニーナ女王が帰国する日。
懇親会での襲撃もあってろくに日本観光を楽しめなかった女王が最後に望んだのは藍との再会だった。
「藍!!怪我の具合はどうだ?まだ痛むか?」
「ご心配をおかけしました。もう大丈夫ですよ?」
ニッコリ笑う藍に、ニーナ女王はいつものように抱きつくも、俺は藍の首根っこを掴んで引きはがした。
「SPと警護対象者は密着しません。」
と、言うか、藍は俺のものだ。誰であろうとくっついてんじゃねぇよ。
「藍と会うのも、これが最後かもしれないのだ。少しくらいいいだろう?本国にいると色々プレッシャーがあ
ってな。こうやって楽しいとか嬉しいとか思えたのは前回の来日以来だ。」
どんな立場にいようと、大人なんてやせ我慢ばかりなんだろうな。
それでも、やるべき事をやって、生きていく。
狭くて窮屈な中でも、自分の道を見つけられたのなら、そいつは幸せなのかもしれない。
飛んで行く軍用機を見送っていると、隣に立つ藤守と如月が大きく伸びをした。
「いやー、大変だったなぁ。…でも局長と仕事ができて、ホンマに良かったっす。」
「ホント、久しぶりに昔に戻った気がしますね。」
「そうだな。久し振りついでに飲んでから帰るか?最強の男決定戦でもやるか。」
そう言うと、藤守も如月も慌てて手を振っていた。
「いやいや、向こうでの仕事も溜まってますからね。早よ、帰らんと。」
「そうですよ、襲撃事件で戻るのが2日も遅れちゃいましたからね。」
みんな自分の道を見つけて、歩いているんだ。
「俺も科警研に戻ります。小野瀬さんがそろそろ過労で倒れそうだって連絡があったんで。」
「俺は警視庁に戻って、報告書を出してきます。小野瀬は明日まで休みなんだろう?明後日からまたよろしくな。」
時間は嫌でも過ぎていく。
無常にも思えるけれど、誰もが同じ条件で生きている。
立ち止まるのは終わりなのかもしれない。
「じゃあ、飯でも食って帰るか。」
夕焼けの空の下、散り散りに別れた仲間の背中を見送ると、最後まで隣にいてくれた藍に声をかけた。
笑顔で頷く藍を連れて向かったのは、3年前に一緒に行った警視庁近くのホテルのフレンチレストランで。
前回を思い出したのか、少し不安げな表情を浮かべる藍の背中を押して席につくと、あの時と同じように好みを聞きながらも注文をしていく。
やり直すのなら、ここからだから。
デザートともに運ばれてきた大きな紙袋をウェイターから受けとると、藍の大きな目がより一層大きくなった
。
あの時渡した花束は『新しい道を歩んで貰いたい』と言う願いを込めて作ってもらった物だが、今日は。
「藍、…受け取ってもらえるか?」
「おじ様…、これって…。」
「俺が幸せにしてやる。どんな時でも傍にいて、藍を守る。寂しい思いもさせない。だから、…結婚しよう。」
渡したのは真っ赤なバラの花束。『愛する人に想いを伝えたい』と作って貰ったものだ。
花束を胸に抱きながら、何度も頷く藍の目に溢れる涙は、あの時とは違う幸せの涙なんだろう。
何度も泣かせたけれど、これからは傍で涙を拭ってやる。
俺が抱きしめてやる。
だから、もっと素直になれ。俺も、なるから。
家まで送ろうとエレベーターに乗り込もうとすると、袖を引っ張られて乗り損ねてしまった。
振り返ると真っ赤な顔で俺の背中に張り付いている藍が小さく呟く。
「…帰りたくないです。………もっと、一緒にいてもらえませんか?」
ここから。
この夜から。
ひどく遠まわりをしていた俺達の道が重なる。
…………………………………………………
翌朝。
手を伸ばせば吸いつくような柔らかな肌がある…と思っていた。
意に反して空を切る己の手のひらに、まどろんでいた意識が一気に覚醒した。
「藍!?」
「は、はい!どうしましたか?」
飛び起きた俺に、窓際で小さく丸まりながら外を見ていた藍が慌てて立ち上がった。
大きな窓から入りこむ朝日が藍を照らしていて、まるで輝いているよう。
つややかな髪には天使の輪が、素肌に纏った白いガウンには天使の羽が見えるようで。
俺は夕べ天使を抱いたんじゃないか。
そんな気さえ起きてくる。
大人になった藍。
天使のように愛らしかった少女が、美しく育った。
生まれた時も、愛した時も
新しい表情を見るたびに
心が苦しくなるくらい締めつけられて
これが『恋』なんだと思う。
『悪魔』と呼ばれた俺が『天使』に恋をした。
一人だと思っていた『悪魔』に美しい『天使』が手を差し伸べた。
そんな事があってもいいじゃないか。
「藍。」
「んっ?なんですか、泪さん?」
柔らかな髪から甘い香りが漂う。
「…愛してる。」
神に誓う前に、お前に誓おう。
この命が尽きるまで愛し続けることを…。
FIN