悪魔は天使に二度恋をする。 *清香様からの頂き物
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-Hozumi side-
厄介な相手である事は間違いなかった。
自爆も厭わない狂信的な奴等ほど面倒くさい相手はいないから。
女王は避難させられたし、とりあえずは藍を守りつつ、明智や藤守から連絡が行ったであろう警備部の連中が来るまでどうにか耐え凌げればいいかと思っていたんだが。
「If I become a hostage, he will be release...isn't
it?(私が人質になれば、彼を解放してくれる…そうよね?)」
思わず自分の耳を疑ってしまった。
なんでお前が人質になって、俺が解放されなくちゃいけないんだ。
それなのに。
とっさに掴んだ腕をすり抜けて、頬に感じるのは柔らかな藍のくちびるで
「おじ様、大好き。」
そう言って微笑んだ顔は、俺が一番好きな藍の表情だった。
天使のような笑顔に一瞬見惚れていると、腰に下げていた特殊警棒が抜かれる感触があった。
本来なら持つ事の出来ない装備品も、無理を言ってまで持ちたかったのは大事な人を『守るため』であって、『守られるため』じゃないのに。
「藍!!」
下段の構えから伸びた警棒の先が男の手元を捕らえ、拳銃と警棒に挟まれた手の骨が砕ける音がする。
それと同時に男の手から離れた拳銃が藍を掠めるように火を放っているのが見えて、俺は駆けだしていた。
『藍。』
『俺の、藍。』
倒れそうになる藍の身体を抱きとめ、手の痛みに悶絶している男の腹に蹴りを入れると、男は人形のように崩れ落ちた。気を失ったんだろう。
藍を抱きあげ、今一度クソ男を踏みつけると警備部の連中がやってきた。
「コイツが首謀者だ。色々歌ってもらうから、丁重に案内しろよ。俺の一番大事なものに手ェ出しやがったからな、絶対にぶっ潰してやる。」
笑う俺に固まる警備部の連中を横目に、俺は藍を病院へと運んで行ったのだった。
…………………………………………
カーテンの隙間から差し込む月の光は、真っ白なベッドに横たわる藍をまるで美しい人形のように見せていた。
サラサラの髪も、白い肌も、桜色のくちびるも動きを止めていて、本当にこのまま人形になってしまうんじゃないかと恐れさえ覚える。
それでも確かめたくて。
縋るように伸ばした藍の手は温かく、細い手首からトクトクと命の鼓動を感じる事が出来た。
「藍。」
生まれた時から見つめ続けていた少女が、知らない間に大人になっていた。
…いや、知らなかったわけじゃない。ただ、目を背けていただけだった。
少しずつ綺麗になっていく姿に、自分の心の揺れを感じていた。
好意を寄せてくれているのも、大人への憧れだけだと自らに言い聞かせて、『初恋なんて実るもんじゃない』と突っぱねたのは3年前。
泣かせた事に痛んだ心も大人の仮面の下に隠していたが、結局はそれもただの痩せ我慢で。
今日の藍の笑顔が俺の仮面を打ち砕いた。
「…藍。」
薬指にキスを送ると、ピクリと指先が震える。
「藍!!!」
慌てて顔を覗き込むと、ゆるゆると目が開かれていった。
まだ状況を把握しきれていないものの、目が合うと幼子のように笑って
「…おじ様が、無事で良かったです。」
とかすれた声で、自分の事よりも俺のことなんて心配してやがる。
「藍、このアホがっ!」
横たわる藍を抱きしめるように手を伸ばすと、そっと髪が撫でられた。
どこまでも優しい手も、首筋から香る甘い花の匂いも、ガチガチに痩せ我慢で固められた俺の心を解してくれているようで。
「すみません。」
と言うくちびるを塞ぐように、俺は藍にキスをした。
かすかに身じろぐ藍の身体を押さえつけるように覆いかぶさると、苦しいのか少し押し戻される。
離れていくくちびるを名残惜しげに見つめていると、藍が真っ赤な顔で呟いた。
「あの、今のキスは……?」
「キスしたいと思ったから、キスしたけど?」
少し赤くなったくちびるに指で触れると、まるで熱を持ったかのように熱くなっていて。
「どうしてキスしたのか……知りたいか?」
小さく頷く藍の頬に手を添えて、想いを伝えるように囁く。
「……好きだよ……藍…」
「おじ様…。」
「好きだ…。」
ぽろぽろと流れる涙を掬いとるように目尻にキスをすると、頬に添えた手に小さな手が重なった。
「おじ様、私、おじ様の事、好きでいていいんですか?」
「藍は俺の事、好きか?」
「私は……愛してます。ずっと、ずっと、おじ様だけを見てきました。でも…。」
「でも?」
「おじ様は私の母が、櫻井 翼が好きだったんじゃないですか?似ている私だから…好きになってくれたんですか?」
親子だからか、感性の強さが似てしまったんだろうか。それでもこうやって真っ直ぐぶつかってくるのが彼女の強さなんだろうか。
ずっと抱えていた自分の弱さを見せつけられるような真っ直ぐな視線に、俺も視線を逸らさずに答えた。
「藍、俺は藍が好きだ。他の誰でも無い小野瀬 藍が好きなんだ。」
「櫻井は、翼は俺の娘だった。大事な娘で、幸せにすると言った小野瀬に託した。だから藍も同じだと、俺の娘だと思っていたんだ。」
涙の止まらない藍の頬にもう一度キスをした。
「それでも、お前はいつも一生懸命で素直で……いつの間にか……好きになってた。」
「…おじ様。」
額に、鼻先に、くちびるにキスの雨を降らせると藍がくすぐったそうに身を捩る。
「可愛いな、藍。」
「お、おじ様…、くすぐったいです…。」
「藍、お前は一生俺のもんだから。絶対逃がさないからな、覚悟しろよ?」
改めて視線を絡めて言うと、嬉しそうに藍が笑ってくれる。
その顔は幸せに満ちているようで。
「藍、愛してる。」
俺の一番好きな笑顔にやっと、手が届いたんだ。
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厄介な相手である事は間違いなかった。
自爆も厭わない狂信的な奴等ほど面倒くさい相手はいないから。
女王は避難させられたし、とりあえずは藍を守りつつ、明智や藤守から連絡が行ったであろう警備部の連中が来るまでどうにか耐え凌げればいいかと思っていたんだが。
「If I become a hostage, he will be release...isn't
it?(私が人質になれば、彼を解放してくれる…そうよね?)」
思わず自分の耳を疑ってしまった。
なんでお前が人質になって、俺が解放されなくちゃいけないんだ。
それなのに。
とっさに掴んだ腕をすり抜けて、頬に感じるのは柔らかな藍のくちびるで
「おじ様、大好き。」
そう言って微笑んだ顔は、俺が一番好きな藍の表情だった。
天使のような笑顔に一瞬見惚れていると、腰に下げていた特殊警棒が抜かれる感触があった。
本来なら持つ事の出来ない装備品も、無理を言ってまで持ちたかったのは大事な人を『守るため』であって、『守られるため』じゃないのに。
「藍!!」
下段の構えから伸びた警棒の先が男の手元を捕らえ、拳銃と警棒に挟まれた手の骨が砕ける音がする。
それと同時に男の手から離れた拳銃が藍を掠めるように火を放っているのが見えて、俺は駆けだしていた。
『藍。』
『俺の、藍。』
倒れそうになる藍の身体を抱きとめ、手の痛みに悶絶している男の腹に蹴りを入れると、男は人形のように崩れ落ちた。気を失ったんだろう。
藍を抱きあげ、今一度クソ男を踏みつけると警備部の連中がやってきた。
「コイツが首謀者だ。色々歌ってもらうから、丁重に案内しろよ。俺の一番大事なものに手ェ出しやがったからな、絶対にぶっ潰してやる。」
笑う俺に固まる警備部の連中を横目に、俺は藍を病院へと運んで行ったのだった。
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カーテンの隙間から差し込む月の光は、真っ白なベッドに横たわる藍をまるで美しい人形のように見せていた。
サラサラの髪も、白い肌も、桜色のくちびるも動きを止めていて、本当にこのまま人形になってしまうんじゃないかと恐れさえ覚える。
それでも確かめたくて。
縋るように伸ばした藍の手は温かく、細い手首からトクトクと命の鼓動を感じる事が出来た。
「藍。」
生まれた時から見つめ続けていた少女が、知らない間に大人になっていた。
…いや、知らなかったわけじゃない。ただ、目を背けていただけだった。
少しずつ綺麗になっていく姿に、自分の心の揺れを感じていた。
好意を寄せてくれているのも、大人への憧れだけだと自らに言い聞かせて、『初恋なんて実るもんじゃない』と突っぱねたのは3年前。
泣かせた事に痛んだ心も大人の仮面の下に隠していたが、結局はそれもただの痩せ我慢で。
今日の藍の笑顔が俺の仮面を打ち砕いた。
「…藍。」
薬指にキスを送ると、ピクリと指先が震える。
「藍!!!」
慌てて顔を覗き込むと、ゆるゆると目が開かれていった。
まだ状況を把握しきれていないものの、目が合うと幼子のように笑って
「…おじ様が、無事で良かったです。」
とかすれた声で、自分の事よりも俺のことなんて心配してやがる。
「藍、このアホがっ!」
横たわる藍を抱きしめるように手を伸ばすと、そっと髪が撫でられた。
どこまでも優しい手も、首筋から香る甘い花の匂いも、ガチガチに痩せ我慢で固められた俺の心を解してくれているようで。
「すみません。」
と言うくちびるを塞ぐように、俺は藍にキスをした。
かすかに身じろぐ藍の身体を押さえつけるように覆いかぶさると、苦しいのか少し押し戻される。
離れていくくちびるを名残惜しげに見つめていると、藍が真っ赤な顔で呟いた。
「あの、今のキスは……?」
「キスしたいと思ったから、キスしたけど?」
少し赤くなったくちびるに指で触れると、まるで熱を持ったかのように熱くなっていて。
「どうしてキスしたのか……知りたいか?」
小さく頷く藍の頬に手を添えて、想いを伝えるように囁く。
「……好きだよ……藍…」
「おじ様…。」
「好きだ…。」
ぽろぽろと流れる涙を掬いとるように目尻にキスをすると、頬に添えた手に小さな手が重なった。
「おじ様、私、おじ様の事、好きでいていいんですか?」
「藍は俺の事、好きか?」
「私は……愛してます。ずっと、ずっと、おじ様だけを見てきました。でも…。」
「でも?」
「おじ様は私の母が、櫻井 翼が好きだったんじゃないですか?似ている私だから…好きになってくれたんですか?」
親子だからか、感性の強さが似てしまったんだろうか。それでもこうやって真っ直ぐぶつかってくるのが彼女の強さなんだろうか。
ずっと抱えていた自分の弱さを見せつけられるような真っ直ぐな視線に、俺も視線を逸らさずに答えた。
「藍、俺は藍が好きだ。他の誰でも無い小野瀬 藍が好きなんだ。」
「櫻井は、翼は俺の娘だった。大事な娘で、幸せにすると言った小野瀬に託した。だから藍も同じだと、俺の娘だと思っていたんだ。」
涙の止まらない藍の頬にもう一度キスをした。
「それでも、お前はいつも一生懸命で素直で……いつの間にか……好きになってた。」
「…おじ様。」
額に、鼻先に、くちびるにキスの雨を降らせると藍がくすぐったそうに身を捩る。
「可愛いな、藍。」
「お、おじ様…、くすぐったいです…。」
「藍、お前は一生俺のもんだから。絶対逃がさないからな、覚悟しろよ?」
改めて視線を絡めて言うと、嬉しそうに藍が笑ってくれる。
その顔は幸せに満ちているようで。
「藍、愛してる。」
俺の一番好きな笑顔にやっと、手が届いたんだ。
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