悪魔は天使に二度恋をする。 *清香様からの頂き物
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-藍 side-
指定された時間に羽田空港へおじ様や藤守さんらと到着すると、見た事もない飛行機が滑走路へと滑りこんでくるのが見えた。
「あぁ、またや…。」
飛行機はそれほど詳しくない私でも、一目で何かがおかしいのが分かる。だって普通の旅客機はミサイルや機銃砲なんて積んでいないもの。
「もう諦めたほうが良いのかしらね…。」
ため息の絶えないおじ様達にニーナ女王とはどんな人なのか不安になっていると、空港のドアが開いて出てきたのは驚くほど快活な背の高い女性だった。
「お、ルイルイ。ルイルイじゃないか。久しぶりだな。ケンジも元気そうでよかったよかった。」
「女王、ご無沙汰しております。お待ちしておりました。」
おじ様にはハグを、藤守さんには握手をして再会の喜びを表すニーナ女王は、女王というより王子様といったほうがいいくらい魅力的な人で、碧い目に見つめられると思わずドキッとする。
「あなたが小野瀬藍?翼の娘?」
「…は、はい。」
「かわいい!翼によく似ててかわいい!私の名前はニーナ・トルキア。はじめまして、藍。」
勢いに押されて思わず返事をしてしまうと、いきなり抱きしめられてしまった。肩口に顔が埋まるくらいギュッと抱かれ驚いてしまうが、国賓を邪険に扱うわけにもいかず、されるがままとなっていると。
「ほら、ここじゃあ目立ちすぎる。裏に車を回してあるので、そちらへどうぞ。」
私を強引に引きはがしておじ様がそう言うと、ニーナ女王もしぶしぶと歩き始めてくれた。外で待っていた明智さんと如月さんにも握手をして用意された豪華なリムジンへと乗り込むと、運転席に藤守さん、助手席におじ様、後部座席に何故だか私と女王が並んで座る形となる。
「本当に久しぶりだ。女王になってからは自由なんてきかないから今回の来日は嬉しくて仕方が無い。それにしても、…藍、翼は、母親は息災か?」
ふいに顔を覗きこまれてその近さに驚くも、『SPと警護対象者とは密着しない。』『任務中は私語厳禁。』と耳にタコができるくらいおじ様に言われた事を思い出し、ゆっくりと身体を離した。
「すみません、プライベートな事はお教えできません。」
「んぅ、…ルイルイは相変わらず部下へのマネジメントが厳しいな。」
苦笑いをするものの、女王はめげることなくバックミラー越しにこちらへ視線を投げかけているおじ様へと交渉を始めた。
「なぁ、ルイルイ。今回の警備はケンジ達がメインじゃないって本当か?」
「はい。懇親会では警護をさせていただきますが、基本的には警視庁のSP達が就くことになります。何か問題でも?」
「それじゃあつまらない。せめて懇親会で藍に隣にいてもらいたい。トイレや着替えには男性SPは付き添えないだろう?」
「前にそれで痛い目にあってますからね、却下です。ところでミスターJは今回連れてきていないんですね。」
「そこを何とか。今回は侍女も連れてきていないし、ジョージも今回は情報を集めてくれただけだ。頼む、ルイルイ。ダメなら上に言ってやるが?」
「………。」
苦虫を噛み潰したようなおじ様とミラー越しに目が合ってしまった。前にどんな事があったのかは分からないけれど、ここは引き受けなくちゃいけないような気がして、目もとだけで微笑むとおじ様は盛大にため息を吐いた。
「……分かりました。その代わり!勝手な行動は慎んでくださいね!」
「分かった、分かった。懇親会まではまだ2日ある。藍、それまでホテルに遊びに来てくれ。ドレスも用意したいし、昔話もしてやろう。」
昔話を聞けるのは魅力的なお誘いだが、あくまでも任務が前提なわけで、どう断わろうかと思案しているとギュッと膝に置いていた手を握られてしまった。国賓の手を振りほどくわけにもいかず、されるがままでいるとニーナ女王が寂しげに呟いた。
「…私には子供がいない。大好きな翼の娘がまるで自分の子のように思えて仕方ないんだ。なぁ、ルイルイ、少しだけでいいから、頼む。もう日本に来られることなんてないだろうから…。」
さっきまでの楽しそうな表情とは打って変わって真剣な眼差しに断ることなんてできず、結局私は『2時間だけ』という制約を設けられたものの、ニーナ女王の公務の合間にホテルへとお邪魔をする事になったのだった。
「藍!よく来てくれたな、さぁ、入ってくれ!何か飲む?お腹は空いていない?」
待ちくたびれたかのように歓待してくれるニーナ女王に思わず笑みが漏れてしまうのは、滞在しているホテルの部屋に二人きりだからだろうか。まるでホームパーティーにでも招待されたかのようなもてなし振りに、当初抱いていた警戒心が少しずつ薄まってしまう。
懇親会の為に何着も用意されていたドレスも私にはもったいないくらい華やかな物ばかりで、まるで着せ替え人形のようにいくつも試着をさせられたが、あくまでも侍女として隣に立つんだと何度も言いながら結局シンプルな目立たないドレスにしてもらった。
気さくに話しかけてくれ、素直で屈託のない笑顔を見せてくれる女王に少しずつ魅かれていく自分がいて、不思議な気持ちになってしまう。
「そういえば、藍は交際している男性はいないのか?その情報だけが掴めなかったのだが。」
「えぇっ、いないですよ!」
どこの国でもどんな立場でも、恋バナは気になるのかしらなんて思っていると、ニーナ女王が予想もしない事を言い始めた。
「まぁ、私はそういう微妙な恋心にはどうも疎くてな。実際、翼もルイルイと交際しているのかと思っていたくらいだ。帰国後しばらくして小野瀬御大と結婚をしたと聞いて、それはそれは驚いたものだった。」
「えっ……?」
「今に始まった事ではないが、当時も暗殺者に命を狙われていて翼がたまたま犯人に出くわしてしまったんだ。その時に助けたルイルイが涙を流している姿を見て、もしやとは思ったのだがあれは娘として身を案じていたからだったんだろうな。」
「…そ、んな事が……。」
「あ、あぁ、そんなに心配する事は無い。今回の懇親会は企業誘致や情報交換の為のものだ。我が国内も当時に比べれば落ち着いているし、何かあれば私が藍を守る。なんたって陸軍の特殊部隊で訓練も受けたし、ボディーガードの訓練もしてある。安心してくれ、な?」
顔色の変わった私に気がついたのか、慌てて不安を取り除くように手を握りながらニーナ女王は話をしてくれていたけれど、内容なんて半分も理解することができずにいた。
色々と楽しげな話をしてくれるものの、次の公務の時間となってしまい出かけていく女王を見送って警視庁に戻る私の足取りは、ホテルに向かった時とは格段に重くなっていた。
おじ様が今まで誰とも結婚しなかったのは。
私では無く、私の中の何かを見つめるような瞳をしていたのは。
3年前に想いを受け入れて貰えなかったのは。
おじ様の心の中に未だにいるのは。
思い出すのは、
『同じ所に立ち止まってちゃいけないぞ。』
『俺みたいになるなよ。』
と言われた言葉だった。
言われた当時は理解しきれなかった言葉も、今やっと分かった気がする。
それでも抑えきれない想いが涙になって溢れていく。
必死に押しとどめていた感情が止まらなくなってしまう。
おじ様
ねぇ、おじ様
私、やっぱりあなたが好きなんです。
好きで、好きで、仕方がないんです。
私じゃ、ダメですか?
.
指定された時間に羽田空港へおじ様や藤守さんらと到着すると、見た事もない飛行機が滑走路へと滑りこんでくるのが見えた。
「あぁ、またや…。」
飛行機はそれほど詳しくない私でも、一目で何かがおかしいのが分かる。だって普通の旅客機はミサイルや機銃砲なんて積んでいないもの。
「もう諦めたほうが良いのかしらね…。」
ため息の絶えないおじ様達にニーナ女王とはどんな人なのか不安になっていると、空港のドアが開いて出てきたのは驚くほど快活な背の高い女性だった。
「お、ルイルイ。ルイルイじゃないか。久しぶりだな。ケンジも元気そうでよかったよかった。」
「女王、ご無沙汰しております。お待ちしておりました。」
おじ様にはハグを、藤守さんには握手をして再会の喜びを表すニーナ女王は、女王というより王子様といったほうがいいくらい魅力的な人で、碧い目に見つめられると思わずドキッとする。
「あなたが小野瀬藍?翼の娘?」
「…は、はい。」
「かわいい!翼によく似ててかわいい!私の名前はニーナ・トルキア。はじめまして、藍。」
勢いに押されて思わず返事をしてしまうと、いきなり抱きしめられてしまった。肩口に顔が埋まるくらいギュッと抱かれ驚いてしまうが、国賓を邪険に扱うわけにもいかず、されるがままとなっていると。
「ほら、ここじゃあ目立ちすぎる。裏に車を回してあるので、そちらへどうぞ。」
私を強引に引きはがしておじ様がそう言うと、ニーナ女王もしぶしぶと歩き始めてくれた。外で待っていた明智さんと如月さんにも握手をして用意された豪華なリムジンへと乗り込むと、運転席に藤守さん、助手席におじ様、後部座席に何故だか私と女王が並んで座る形となる。
「本当に久しぶりだ。女王になってからは自由なんてきかないから今回の来日は嬉しくて仕方が無い。それにしても、…藍、翼は、母親は息災か?」
ふいに顔を覗きこまれてその近さに驚くも、『SPと警護対象者とは密着しない。』『任務中は私語厳禁。』と耳にタコができるくらいおじ様に言われた事を思い出し、ゆっくりと身体を離した。
「すみません、プライベートな事はお教えできません。」
「んぅ、…ルイルイは相変わらず部下へのマネジメントが厳しいな。」
苦笑いをするものの、女王はめげることなくバックミラー越しにこちらへ視線を投げかけているおじ様へと交渉を始めた。
「なぁ、ルイルイ。今回の警備はケンジ達がメインじゃないって本当か?」
「はい。懇親会では警護をさせていただきますが、基本的には警視庁のSP達が就くことになります。何か問題でも?」
「それじゃあつまらない。せめて懇親会で藍に隣にいてもらいたい。トイレや着替えには男性SPは付き添えないだろう?」
「前にそれで痛い目にあってますからね、却下です。ところでミスターJは今回連れてきていないんですね。」
「そこを何とか。今回は侍女も連れてきていないし、ジョージも今回は情報を集めてくれただけだ。頼む、ルイルイ。ダメなら上に言ってやるが?」
「………。」
苦虫を噛み潰したようなおじ様とミラー越しに目が合ってしまった。前にどんな事があったのかは分からないけれど、ここは引き受けなくちゃいけないような気がして、目もとだけで微笑むとおじ様は盛大にため息を吐いた。
「……分かりました。その代わり!勝手な行動は慎んでくださいね!」
「分かった、分かった。懇親会まではまだ2日ある。藍、それまでホテルに遊びに来てくれ。ドレスも用意したいし、昔話もしてやろう。」
昔話を聞けるのは魅力的なお誘いだが、あくまでも任務が前提なわけで、どう断わろうかと思案しているとギュッと膝に置いていた手を握られてしまった。国賓の手を振りほどくわけにもいかず、されるがままでいるとニーナ女王が寂しげに呟いた。
「…私には子供がいない。大好きな翼の娘がまるで自分の子のように思えて仕方ないんだ。なぁ、ルイルイ、少しだけでいいから、頼む。もう日本に来られることなんてないだろうから…。」
さっきまでの楽しそうな表情とは打って変わって真剣な眼差しに断ることなんてできず、結局私は『2時間だけ』という制約を設けられたものの、ニーナ女王の公務の合間にホテルへとお邪魔をする事になったのだった。
「藍!よく来てくれたな、さぁ、入ってくれ!何か飲む?お腹は空いていない?」
待ちくたびれたかのように歓待してくれるニーナ女王に思わず笑みが漏れてしまうのは、滞在しているホテルの部屋に二人きりだからだろうか。まるでホームパーティーにでも招待されたかのようなもてなし振りに、当初抱いていた警戒心が少しずつ薄まってしまう。
懇親会の為に何着も用意されていたドレスも私にはもったいないくらい華やかな物ばかりで、まるで着せ替え人形のようにいくつも試着をさせられたが、あくまでも侍女として隣に立つんだと何度も言いながら結局シンプルな目立たないドレスにしてもらった。
気さくに話しかけてくれ、素直で屈託のない笑顔を見せてくれる女王に少しずつ魅かれていく自分がいて、不思議な気持ちになってしまう。
「そういえば、藍は交際している男性はいないのか?その情報だけが掴めなかったのだが。」
「えぇっ、いないですよ!」
どこの国でもどんな立場でも、恋バナは気になるのかしらなんて思っていると、ニーナ女王が予想もしない事を言い始めた。
「まぁ、私はそういう微妙な恋心にはどうも疎くてな。実際、翼もルイルイと交際しているのかと思っていたくらいだ。帰国後しばらくして小野瀬御大と結婚をしたと聞いて、それはそれは驚いたものだった。」
「えっ……?」
「今に始まった事ではないが、当時も暗殺者に命を狙われていて翼がたまたま犯人に出くわしてしまったんだ。その時に助けたルイルイが涙を流している姿を見て、もしやとは思ったのだがあれは娘として身を案じていたからだったんだろうな。」
「…そ、んな事が……。」
「あ、あぁ、そんなに心配する事は無い。今回の懇親会は企業誘致や情報交換の為のものだ。我が国内も当時に比べれば落ち着いているし、何かあれば私が藍を守る。なんたって陸軍の特殊部隊で訓練も受けたし、ボディーガードの訓練もしてある。安心してくれ、な?」
顔色の変わった私に気がついたのか、慌てて不安を取り除くように手を握りながらニーナ女王は話をしてくれていたけれど、内容なんて半分も理解することができずにいた。
色々と楽しげな話をしてくれるものの、次の公務の時間となってしまい出かけていく女王を見送って警視庁に戻る私の足取りは、ホテルに向かった時とは格段に重くなっていた。
おじ様が今まで誰とも結婚しなかったのは。
私では無く、私の中の何かを見つめるような瞳をしていたのは。
3年前に想いを受け入れて貰えなかったのは。
おじ様の心の中に未だにいるのは。
思い出すのは、
『同じ所に立ち止まってちゃいけないぞ。』
『俺みたいになるなよ。』
と言われた言葉だった。
言われた当時は理解しきれなかった言葉も、今やっと分かった気がする。
それでも抑えきれない想いが涙になって溢れていく。
必死に押しとどめていた感情が止まらなくなってしまう。
おじ様
ねぇ、おじ様
私、やっぱりあなたが好きなんです。
好きで、好きで、仕方がないんです。
私じゃ、ダメですか?
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