悪魔は天使に二度恋をする。 *清香様からの頂き物
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自動販売機で買ったコーヒーを手に、言われた会議室へ入るとそこにはまだおじ様しかいなかった。
「あれ、顔合わせって…。」
「あぁ、みんな地方から来るから遅れてるんだろう。もう少し待つか。」
手渡したコーヒーを開けながら椅子を引き寄せると、おじ様が心配そうに顔を覗き込む。
「…どうだ、慣れたか?」
「はい。みなさん良くして下さいますし。…まぁ、また異動なんですけどね。」
気を使わせないようにあえて明るく言ってみると、おじ様も苦笑いした。
「そうだな、仕方の無いことだが。しかし良い上司だったようだな、あの男。」
「小泉課長ですか?いつも気に掛けてくださって、優しい方です。」
「…そうか。正直お前から文句を言われる覚悟はあったが、まさか他から言われるとは。…俺達に言うなんてよっぽどお前を手放したくないんだろうな。」
何かを考えるように話すおじ様の横顔と、その言葉の真意を測りかねているとドタドタと廊下を走る音が聞こえてきた。
勢いよく開かれたドアから入ってきた男性に向かって、おじ様はいきなり持っていた手元のファイルを投げ付ける。
「遅くなりま…っ、ぶっ!!」
「遅ぇぞ!藤守!次遅れたら天井から吊るすからな!」
「そんな、久しぶりの再会やないですかー。」
「甘いっ!」
顔面でファイルを受け止めた藤守と呼んだ男性を足蹴にするおじ様から少し離れると、今度はメガネをかけた男性が入ってきた。
「久しぶり。相変わらずだね。」
「お前もな。け・い・ご・を・つ・か・え!」
「久方ぶりにお会いしましたが、昔と変わらずお元気そうで何よりです。」
「…言葉の端々に棘を感じるんですがねぇ、小笠原さん。」
パソコンが入っているのであろうカバンをテーブルに置くと、小笠原さんと呼ばれた男性はそそくさと奥のソファーに座ってしまう。
次に入ってきたのは書類の束を持ってきた背の高い男性だった。
「局長、24年前の警護計画書をお持ちしました。」
「おぉ、ありがとう。さすが明智だな、抜かりがない。」
「恐れ入ります。あのジャジャ馬姫が大人しくなっていてくれればいいんですが。」
「まぁな。また誰か拉致されたらかなわん。」
パラパラと書類をめくるおじ様を見ていると、明智と呼ばれた男性がこちらを見ているのに気がついた。目があったので会釈をするとなぜだか目を逸らされてしまう。
「局長、彼女が?」
「あぁ、そうだ。如月が来たら紹介する。」
「そう言えばまだ来ていないんですね。」
「アイツには集合時間を10分遅らせて伝えてあるからな。」
「何故そんな事を?」
「まぁ、来たら分かるさ。もう少し待ってろ。」
楽しそうに肩を揺らすおじ様をため息をつきながら見る小笠原さんと、首をかしげる明智さんと藤守さん。
これから来る如月さんは何者なんだろうと思っていると。
「お久しぶりでーす。」
ドアが開いて入室してきたのはニコニコと笑顔を浮かべた男性だった。
人懐っこい笑顔と、明るい声に思わずこちらも笑顔になるものの。
「ブッ…!!!!」
「あっ、--!!」
「これは…!」
「…まぁ、如月が最後に来るって時点でこうなる確率100%だったんだけどね。」
大きな身体を丸めて震えるおじ様と藤守さんに、絶句する明智さん。小笠原さんだけは冷静だった。
「も、もう!そんなに笑うことないじゃないっすか!!」
真っ赤な顔で憤慨する如月さんに、おじ様は涙目で近づくと大きな手でいつも私にするように如月さんの頭を撫でた。
「いや、悪かった。お詫びと言ってはなんだが、久しぶりにシャンプーしてやろうか?って、あっ、……。」
「洗う毛が無いって言いたいんでしょう!わざとらしいですよ!!」
「いやー、すっごいなぁ、如月。ビックリするくらいの出オチやな。」
「…恐ろしいくらい見事なものだな。」
「DNAは嘘をつかないからね。鑑定しなくても親子関係が証明できてよかったんじゃないの?」
どうやら如月さんという人は今は見る影もないくらいツルピカだけれど、その昔はフサフサの髪を持っていたのかな…。
輪になって楽しそうに話す5人の距離感の無さが羨ましくなるくらいで
少し離れたところから見ていると、話を逸らしたい如月さんが声を上げた。
「そ、そう言えば翼ちゃんは来ないんですか?昔の捜査室のメンバーに警備の依頼が来たんですよね?」
ふいに呼ばれたお母さんの名前に驚いていると、おじ様の視線がこちらに向いた。私を見てくれてはいるけれど、一瞬どこか遠くを見る目に一抹の不安を覚える。
望まれていたのは捜査室にいた櫻井 翼であって、私じゃないのでは。
…私はこの人たちに受け入れてもらえるのだろうか。
「翼じゃなくて、コイツにご指名が来たんだよ。」
輪から外れて私の隣に立ったおじ様に背中を押され、促され、慌てて敬礼をする。
「警視庁公安部外事第三課の小野瀬 藍です。よろしくお願いします!」
一斉に集まる視線に思わず息が止まる。
驚きに満ちた視線の一つ一つに少しだけ居心地の悪さを感じるものの。
「小野瀬……藍!?」
「ってもしかして、小野瀬さんと櫻井の……」
「そう、娘よ。今年警察庁に入庁した新人だけど、警部補。いつかあんた達より偉くなるかもね?」
驚く藤守さんと如月さんに説明をするおじ様の顔は何だかすごく楽しそうで。
「そうかぁ、もうこんなに大きくなったんやなぁ。がんばってて偉いなぁ!」
「小さい頃は小野瀬さんに似てるって思ったけれど、今は翼ちゃんに似ているね!うわー、なんか嬉しいなぁ!」
まるで久しぶりに会う親せきの子供の成長を褒めるように目を細める藤守さんと、手を握ってぶんぶん振りながら笑ってくれる如月さん。
「警視庁警備部警備二課の明智だ。話は穂積局長から聞いてるぞ、剣道で随分優秀な成績を収めたそうじゃないか。これからは警備部でよろしくな。」
柔らかい低音で話しかけてきてくれたのは明智さん。
「科警研で小野瀬さんが嘆いてたよ、悪い虫がつかないか心配だって。自分の事を棚に上げてよく言うよね。」
呆れながらもお父さんの様子を教えてくれたのは小笠原さんで。
「この4人とワタシで始まったのが『緊急特命捜査室』なの。で、櫻井が入って、鑑識から小野瀬が、アンタの父親がやって来てはコーヒーを飲んでったりしてね、毎日大騒ぎだったわ。」
微笑みながら話すおじ様も、聞いている藤守さん達も昔を思い出しているんだろう。
話に聞いていて憧れていた伝説の『緊急特命捜査室』。おじ様の異動とともに警察庁刑事局へ吸収され形を変えてしまったことに寂しさを感じていたのだが、それは私だけの事じゃなくて。
「またこのメンバーでできるんですね!」
「それがあのペッタンコ姫の警護じゃなかったらもっと喜べるんやけどなー。」
「まあな。でも、あの王女のおかげでまた局長の下で仕事ができるんだ。それには感謝しているぞ。」
「次の警視総監候補の警察庁警備局長を現場に駆り出すなんて普通できないからね。」
自然に皆の視線がおじ様へと集まっていくと一人一人の顔を見ながら、おじ様はニヤリと笑って見せる。
「久しぶりに『捜査室』やってやろうじゃねぇか。なぁ?」
『わぁっ!』っと喜ぶ藤守さん達を横目に、おじ様がポンっと背中を叩いてきた。
「これから忙しくなるぞ。仕事での甘えは許さないから覚悟しておけよ?」
「はいっ!」
「良い返事だ。頑張れよ。」
それからというもの、実際に警視庁警備部との警備計画の作成や訓練が始まると、もう忙しいどころの話では無く、外事での仕事の合間を縫っては逮捕術や射撃の訓練を行ったり、想定される女王の移動ルートや滞在地の確認をしたりと頭がパンクしそうなくらい考えたり覚えたりする事の山だった。
それでも射撃を教えてくれる明智さんや、励ましてくれる藤守さんや如月さん、過去の警備計画を分かりやすく一覧にしてくれた小笠原さん、何より見守ってくれているおじ様の為に、できる事を精いっぱいやろうとぎゅっと拳を握り締め、己に喝を入れる。
期間限定ではあるけれど『捜査室』のメンバーになれたことで、やっと自分の居場所ができたような気分で
3年前におじ様が言っていた「人との出会いは必ず自分の糧になる」の意味がやっと分かった。
この人たちとなら、どんなことでも乗り越えられる、そんな気がしていた。
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「あれ、顔合わせって…。」
「あぁ、みんな地方から来るから遅れてるんだろう。もう少し待つか。」
手渡したコーヒーを開けながら椅子を引き寄せると、おじ様が心配そうに顔を覗き込む。
「…どうだ、慣れたか?」
「はい。みなさん良くして下さいますし。…まぁ、また異動なんですけどね。」
気を使わせないようにあえて明るく言ってみると、おじ様も苦笑いした。
「そうだな、仕方の無いことだが。しかし良い上司だったようだな、あの男。」
「小泉課長ですか?いつも気に掛けてくださって、優しい方です。」
「…そうか。正直お前から文句を言われる覚悟はあったが、まさか他から言われるとは。…俺達に言うなんてよっぽどお前を手放したくないんだろうな。」
何かを考えるように話すおじ様の横顔と、その言葉の真意を測りかねているとドタドタと廊下を走る音が聞こえてきた。
勢いよく開かれたドアから入ってきた男性に向かって、おじ様はいきなり持っていた手元のファイルを投げ付ける。
「遅くなりま…っ、ぶっ!!」
「遅ぇぞ!藤守!次遅れたら天井から吊るすからな!」
「そんな、久しぶりの再会やないですかー。」
「甘いっ!」
顔面でファイルを受け止めた藤守と呼んだ男性を足蹴にするおじ様から少し離れると、今度はメガネをかけた男性が入ってきた。
「久しぶり。相変わらずだね。」
「お前もな。け・い・ご・を・つ・か・え!」
「久方ぶりにお会いしましたが、昔と変わらずお元気そうで何よりです。」
「…言葉の端々に棘を感じるんですがねぇ、小笠原さん。」
パソコンが入っているのであろうカバンをテーブルに置くと、小笠原さんと呼ばれた男性はそそくさと奥のソファーに座ってしまう。
次に入ってきたのは書類の束を持ってきた背の高い男性だった。
「局長、24年前の警護計画書をお持ちしました。」
「おぉ、ありがとう。さすが明智だな、抜かりがない。」
「恐れ入ります。あのジャジャ馬姫が大人しくなっていてくれればいいんですが。」
「まぁな。また誰か拉致されたらかなわん。」
パラパラと書類をめくるおじ様を見ていると、明智と呼ばれた男性がこちらを見ているのに気がついた。目があったので会釈をするとなぜだか目を逸らされてしまう。
「局長、彼女が?」
「あぁ、そうだ。如月が来たら紹介する。」
「そう言えばまだ来ていないんですね。」
「アイツには集合時間を10分遅らせて伝えてあるからな。」
「何故そんな事を?」
「まぁ、来たら分かるさ。もう少し待ってろ。」
楽しそうに肩を揺らすおじ様をため息をつきながら見る小笠原さんと、首をかしげる明智さんと藤守さん。
これから来る如月さんは何者なんだろうと思っていると。
「お久しぶりでーす。」
ドアが開いて入室してきたのはニコニコと笑顔を浮かべた男性だった。
人懐っこい笑顔と、明るい声に思わずこちらも笑顔になるものの。
「ブッ…!!!!」
「あっ、--!!」
「これは…!」
「…まぁ、如月が最後に来るって時点でこうなる確率100%だったんだけどね。」
大きな身体を丸めて震えるおじ様と藤守さんに、絶句する明智さん。小笠原さんだけは冷静だった。
「も、もう!そんなに笑うことないじゃないっすか!!」
真っ赤な顔で憤慨する如月さんに、おじ様は涙目で近づくと大きな手でいつも私にするように如月さんの頭を撫でた。
「いや、悪かった。お詫びと言ってはなんだが、久しぶりにシャンプーしてやろうか?って、あっ、……。」
「洗う毛が無いって言いたいんでしょう!わざとらしいですよ!!」
「いやー、すっごいなぁ、如月。ビックリするくらいの出オチやな。」
「…恐ろしいくらい見事なものだな。」
「DNAは嘘をつかないからね。鑑定しなくても親子関係が証明できてよかったんじゃないの?」
どうやら如月さんという人は今は見る影もないくらいツルピカだけれど、その昔はフサフサの髪を持っていたのかな…。
輪になって楽しそうに話す5人の距離感の無さが羨ましくなるくらいで
少し離れたところから見ていると、話を逸らしたい如月さんが声を上げた。
「そ、そう言えば翼ちゃんは来ないんですか?昔の捜査室のメンバーに警備の依頼が来たんですよね?」
ふいに呼ばれたお母さんの名前に驚いていると、おじ様の視線がこちらに向いた。私を見てくれてはいるけれど、一瞬どこか遠くを見る目に一抹の不安を覚える。
望まれていたのは捜査室にいた櫻井 翼であって、私じゃないのでは。
…私はこの人たちに受け入れてもらえるのだろうか。
「翼じゃなくて、コイツにご指名が来たんだよ。」
輪から外れて私の隣に立ったおじ様に背中を押され、促され、慌てて敬礼をする。
「警視庁公安部外事第三課の小野瀬 藍です。よろしくお願いします!」
一斉に集まる視線に思わず息が止まる。
驚きに満ちた視線の一つ一つに少しだけ居心地の悪さを感じるものの。
「小野瀬……藍!?」
「ってもしかして、小野瀬さんと櫻井の……」
「そう、娘よ。今年警察庁に入庁した新人だけど、警部補。いつかあんた達より偉くなるかもね?」
驚く藤守さんと如月さんに説明をするおじ様の顔は何だかすごく楽しそうで。
「そうかぁ、もうこんなに大きくなったんやなぁ。がんばってて偉いなぁ!」
「小さい頃は小野瀬さんに似てるって思ったけれど、今は翼ちゃんに似ているね!うわー、なんか嬉しいなぁ!」
まるで久しぶりに会う親せきの子供の成長を褒めるように目を細める藤守さんと、手を握ってぶんぶん振りながら笑ってくれる如月さん。
「警視庁警備部警備二課の明智だ。話は穂積局長から聞いてるぞ、剣道で随分優秀な成績を収めたそうじゃないか。これからは警備部でよろしくな。」
柔らかい低音で話しかけてきてくれたのは明智さん。
「科警研で小野瀬さんが嘆いてたよ、悪い虫がつかないか心配だって。自分の事を棚に上げてよく言うよね。」
呆れながらもお父さんの様子を教えてくれたのは小笠原さんで。
「この4人とワタシで始まったのが『緊急特命捜査室』なの。で、櫻井が入って、鑑識から小野瀬が、アンタの父親がやって来てはコーヒーを飲んでったりしてね、毎日大騒ぎだったわ。」
微笑みながら話すおじ様も、聞いている藤守さん達も昔を思い出しているんだろう。
話に聞いていて憧れていた伝説の『緊急特命捜査室』。おじ様の異動とともに警察庁刑事局へ吸収され形を変えてしまったことに寂しさを感じていたのだが、それは私だけの事じゃなくて。
「またこのメンバーでできるんですね!」
「それがあのペッタンコ姫の警護じゃなかったらもっと喜べるんやけどなー。」
「まあな。でも、あの王女のおかげでまた局長の下で仕事ができるんだ。それには感謝しているぞ。」
「次の警視総監候補の警察庁警備局長を現場に駆り出すなんて普通できないからね。」
自然に皆の視線がおじ様へと集まっていくと一人一人の顔を見ながら、おじ様はニヤリと笑って見せる。
「久しぶりに『捜査室』やってやろうじゃねぇか。なぁ?」
『わぁっ!』っと喜ぶ藤守さん達を横目に、おじ様がポンっと背中を叩いてきた。
「これから忙しくなるぞ。仕事での甘えは許さないから覚悟しておけよ?」
「はいっ!」
「良い返事だ。頑張れよ。」
それからというもの、実際に警視庁警備部との警備計画の作成や訓練が始まると、もう忙しいどころの話では無く、外事での仕事の合間を縫っては逮捕術や射撃の訓練を行ったり、想定される女王の移動ルートや滞在地の確認をしたりと頭がパンクしそうなくらい考えたり覚えたりする事の山だった。
それでも射撃を教えてくれる明智さんや、励ましてくれる藤守さんや如月さん、過去の警備計画を分かりやすく一覧にしてくれた小笠原さん、何より見守ってくれているおじ様の為に、できる事を精いっぱいやろうとぎゅっと拳を握り締め、己に喝を入れる。
期間限定ではあるけれど『捜査室』のメンバーになれたことで、やっと自分の居場所ができたような気分で
3年前におじ様が言っていた「人との出会いは必ず自分の糧になる」の意味がやっと分かった。
この人たちとなら、どんなことでも乗り越えられる、そんな気がしていた。
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