言わぬが花。
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~翼vision~
事の発端は、家宅捜索で押収した、卑猥な雑誌や成人向けコミックなどの内容確認作業。
普段、男性陣は、女性の私に気を遣って、この作業からは外してくれる。
けれど、室長が会議で戦力が足りない上に、あまりに大漁……大量な数の『捜査資料』を前にして、私は、藤守さんに拝み倒されてしまった。
本来、やるべき仕事だし、鑑識の小野瀬さんまで駆り出されて来ている中、私だけ帰れるはずもない。
私はなるべく大人しめな、写真集なんかを選んで、チェックをする事にした。
水着の女性や、単なる裸の写真なら、私でも大丈夫。
合間にコーヒーを淹れたり、みんなの肩を揉んでまわったり、逆に揉んでもらったりしながら、それなりに和気あいあいと作業を続けているうちに、室長が戻ってきた。
室長は、私がまだ残っていた事に驚いたようだったけど。
穂積
「まぁ、本人がやる気出してるならいいや。あんまり無理しちゃダメよ。体調管理も仕事のうち」
心配しながらも、残業を許可してくれた。
ところが。
数分と経たないうちに、どういうわけか、私が白いレースの水着を欲しがって、室長がそれを買ってくれる(!)事になってしまった。
どうしてー?!
いつ、どこで会話を間違えたんだろう。
たしか、セミヌード写真集の女性が白いレースの水着を着ていて、ああそうだ、私が、その水着が可愛いって言ったんだ。
でも、そこからどうして私がそれを着る羽目に。
しかも室長に買ってもらう羽目に……
混乱する頭で、手だけはページを捲る。が、さっきまでとは違って、私の指の動きは重く緩慢だ。
だって、確認が終わっちゃったら、本当に水着を買いに行く羽目になってしまいそうな気がする。……やる。室長なら必ず実行する。
『歩く有言実行』だもんね……などと考えていると、
明智
「終わりました」
藤守
「俺も終わりましたー」
如月
「俺も!」
小笠原
「……終わった」
小野瀬
「当然、俺も」
次々と声が上がった。
翼
「ええっ?!」
あんなに大量のエロ本が!
朝までかかる!なんて言ってたはずの、段ボール二十箱が!
開いた口が塞がらない。
そして、室長が、手にしていた最後のエロ本を、ぱらりと閉じた。
穂積
「全員、お疲れ。はい解散」
キャー!
……そんなこんなで、現在に至る。
場所は、二十四時間営業の某デパート。
……その、女性用水着売り場。
私の後ろには、室長。そして、小野瀬さん。
小野瀬
「やっぱり、女性の水着は華やかだね」
穂積
「すげえ種類」
二人は、フロアのかなりのスペースを占める水着売り場に圧倒されている様子。
深夜なので人気は少ないけど、周りを歩く買い物客が、二人の美青年に熱い視線を送って行くのがよくわかる。
小野瀬
「櫻井さん、これどう?」
楽しそうな声に振り向くと、小野瀬さんの手には、申し訳程度の量の布で作られている、黒の超マイクロビキニ。
翼
「いえいえいえ!無理ですから!」
小野瀬
「えー?じゃあこれはどう?」
翼
「紐ビキニは嫌です!小野瀬さん、絶対にほどこうとするでしょ!」
小野瀬さんは不思議そうに首を傾げた。
小野瀬
「当たり前じゃない。こういうの着てたら、ほどくのが男の務めでしょ?」
翼
「……違いますから!」
私が真っ赤になるのを、小野瀬さんは絶対に面白がっている。
穂積
「櫻井ー、腹巻き売ってる」
翼
「セパレートです!」
確かに、そのデザインは腹巻きみたいだけど。
穂積
「普通の服も混ざってるぞ」
翼
「タンキニです!」
確かに、タンクトップとショートパンツだから普通の服みたいだけど。
……室長と小野瀬さんの、タイプの違うボケに振り回される事、さらに数分。
穂積
「あった。これでいいか?」
室長が持って来た水着は、ようやく、お目当ての、白いレースのワンピース。
翼
「これです!」
いつの間にか、自分でもこの水着を探し求めていたのは、もう帰りたいから。
翼
「ありがとうございます。あれ?小野瀬さんは?」
穂積
「ん?さっきは、マネキン撫でてたけど」
室長は、辺りを見回した。
穂積
「……あっちで、違う女の子たちの水着選んでやってるみたい」
本当だ。
翼
「小野瀬さーん、帰りますよ!」
小野瀬
「はーい」
小野瀬さんは笑顔で振り返り、女の子たちにも笑顔で別れを告げている。
ふと、室長が長身を屈めて、私の視線まで顔を下げた。
穂積
「もう夏も終わりだからな。最後に一緒に海に行かないか?プールでもいい。それを着たお前が見たい」
きれいな笑顔を向けられて、胸が高鳴る。
穂積
「小野瀬には内緒だぞ」
小野瀬さんが戻って来たので、私は頷くタイミングを逃してしまった。
室長がレジに向かうと、小野瀬さんが、私の後ろ手に、小さな紙包みを手渡してきた。
小野瀬
「買っちゃった、さっきの、紐ビキニ。夏の終わりに、二人で、夜の海に行こう?」
耳元で囁かれて、私はどきりとした。
小野瀬
「俺に、それをほどく権利をちょうだい。……穂積には、内緒でね」
顔を見なくても、艶めいた笑顔を浮かべているのが分かる。
ね?と返事を求められたが、室長が戻って来てしまった。
小野瀬
「穂積は買ったの?欲しがってた、ブーメランパンツ」
穂積
「いいのが無かったなあ。お前こそ手に入ったのか?ヒョウ柄のTバック」
室長と小野瀬さん。タイプの違う二人の誘惑に、私は振り回されている。
三人で泳ぎに行きたいです、って言ったら、二人はどんな顔をするかな。
~END~