秋の警視庁大運動会
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運動会の当日がやって来た。
私の心とは裏腹に、11月の空は快晴。
会場である総合競技場は、周辺道路から大賑わいだった。
トラックを見下ろす観客席はその大半が参加者の席だけど、自由席には市民の方々や職員たちの家族が陣取って、立錐の余地も無いほど。
模擬店も出てるし、本当にもうお祭り騒ぎだ。
そんな中、私の耳に、観客席から、聞き流せない言葉が聴こえた。
女の子
「マジマジ~超!神!2人とも、ありえないレベルなんだって!」
……?!
女の子
「席取っとくからさ、ソッコー来なよ!Twitterやブログに画像upするってコもいたからさ、早く来ないと見れないよ!」
……何だろう、ものすっごく嫌な予感。
如月
「あー!翼ちゃーん、こっちこっちー!」
明るい声がした方を見ると、爽やかなレモンイエローのスポーツウェアを着た如月さんが、笑顔で手を振ってくれていた。
右も左も警察官という人混みを縫って、私は如月さんに駆け寄った。
翼
「如月さん、おはようございます!」
如月
「おっはよー!」
互いの声が、叫ばないと聞こえない。
手の届く距離まで来て、ようやく、普段の会話のボリュームになった。
翼
「朝から盛り上がってますね。……交通課の時は、私、新米だったからずっと用具係で。表舞台は、こんな大騒ぎなんですね」
私が言うと、如月さんは苦笑いした。
如月
「今年は、ツートップだからね」
翼
「?」
如月
「ははっ、行けば分かるよ。みんなもう来てるから、行こ!」
翼
「……?」
如月さんに手を引かれて小走りで行くと、バックスタンド側の観客席の一角に、鑑識と捜査室のメンバーが集まっていた。
いつものスーツと違って、スポーツウェア姿はとても新鮮。
みんな、格好いいし!
藤守
「よー、櫻井。サボらず来たな、偉いで。よしよし」
藤守さんに頭を撫でてもらえて、ちょっと嬉しい。
明智
「ウェアも可愛いな。似合う」
明智さんは相変わらずストレートに褒めてくれる。
翼
「ありがとうございます」
私は照れながら、2人にお礼を言った。
小笠原
「……」
小笠原さんはもう顔色が悪い。
明智
「小笠原も偉いぞ」
明智さんが、小笠原さんを撫で撫で。
小笠原
「……帰りたい」
藤守
「出番まで、休んでてもええで」
小笠原
「……そうする」
小笠原さんは、隅っこで、丸くなった。
……小笠原さんの出番って、いつだろう。
翼
「あれ?」
ふと、私は辺りを見回した。
翼
「室長はどこですか?私、まだ、挨拶してないんですけど」
そう言えば、鑑識チームの中に、小野瀬さんの姿も無い。
私と目が合った細野さんと太田さんが、2人揃って、眼下の競技場を指差した。
大勢の準備係が行き来している陸上競技のトラック、その直線コースの真ん中辺りに、2人が立っていた。
室長は黒、小野瀬さんはワインレッドのウェアを着ている。
周りには人垣が出来ており、2人を見下ろせる観客席では、ひっきりなしにカメラのフラッシュが焚かれていた。
観客席には選手席と一般席があるけれど、双方は、通路の段階で厳密に分けられ、互いに立ち入りが規制されている。
ただし、どうやら、今、あの場所だけは、その規制が解除されているらしい。
観客席の最前列にまで、女の子たちで溢れている。
キャーキャーと派手な歓声も聴こえてきた。その原因は、主に、小野瀬さんが手を振っているせいだけど。
翼
「……何事ですか?」
藤守
「広報用の取材やて」
さっきの女の子や、如月さんが言ってたのは、この事か。
……それにしても凄い人気。
その時、チャイムが鳴って、マイクを通した男性の声が、参加者に向かって、開会式の準備に入るよう告げた。
それを受けて、トラックでは整列が始まる。……のに、行かなくていいのかな。
穂積
「おはよう、櫻井」
小野瀬
「おはよう!」
室長と小野瀬さんが、観客席に戻って来た。
2人とも、いつものスーツや白衣の時より、ずっと若く見える。
小野瀬
「うん、そういう服装も素敵だな。櫻井さんは、本当に、何を着ても可愛いね」
小野瀬さんが、ニコニコしながら、私に対して両手を広げた。
穂積
「何よ、この手は」
室長が、私に向かって伸ばされた小野瀬さんの腕を、ぱちんと払った。
それから、猫の子を掴むように私の襟首を掴んで、軽く引っ張る。
穂積
「アンタの席はここ」
と、据え付けの椅子に座らせた。
小野瀬
「あ、穂積ズルい。じゃあ、俺は反対側の、彼女の隣」
穂積
「普通に考えたら、そこは明智でしょ!」
アンタはフトシとガリガリ君の間にでも座んなさいよ、と言って、室長が小野瀬さんを追い払う。
小野瀬
「じゃあ、櫻井さん、こっち来て、俺の膝においでよ」
明智
「いや、小野瀬さん。でしたら、自分が彼女を膝に乗せます」
穂積
「小野瀬!明智にアンタのバカが移ったじゃないの!」
翼
「あの、室長」
私はおずおずと手を挙げた。
穂積
「ハイ、櫻井くん」
翼
「私たち、グラウンドに並ばなくていいんですか?」
室長は、ちらりと眼下を眺めてから、にっこり笑った。
穂積
「あれは警備部と刑事部、あと公安部ね。規律正しいから、代表して並ばせるのよ」
なるほど。
翼
「本当に、あっという間にキレイに並びましたねえ。あんなに大人数なのに」
私の隣で、明智さんも微笑んだ。
明智
「特に警備は、普段から隊列の訓練をしているからな。室長も俺も、昔はあっちに居た」
そう言えば、2人とも警備部にいたと聞いた事がある。
小野瀬
「本当なら今日も、あっちに居たはずなんだけどねえ?」
鑑識の席から、小野瀬さんが茶々を入れてきた。
穂積
「来年は『刑事部に入って下さい』と頭を下げさせてやるわよ」
室長の笑顔が輝きを増す。
この人、こんなに綺麗な笑顔なのに、どうしてこんなに怖いんだろう。
如月
「では室長!如月、行って来ますっ!」
如月さんが自分の席で立ち上がり、室長に向かって敬礼した。
室長が敬礼を返す。
穂積
「頼むわよ、如月」
如月
「イエッサー!」
如月さんは最初の種目、100m走の選手だ。
開会式終了後、すぐに競技が始められるよう、今から準備する事になっている。
明智
「頑張れよ」
藤守
「世界新記録出したれ!」
小笠原
「……」
小笠原さんが日陰から手を振った。
翼
「如月さん、お願いします!」
私は、両方の拳をきゅっと握った。
如月
「オッケー!翼ちゃんからのキスの為に、俺、頑張るよ!」
如月さんが、私と同じポーズを返した。
え?!
翼
「き、きききキスって、如月さん?!」
如月
「約束だよーぉー」
如月さんは、笑いながら走って行ってしまった。
藤守
「櫻井!きききキスって何やねん!」
藤守さんが、真っ赤になって叫んだ。
明智
「いつの間にそんな約束を」
小笠原
「……」
小野瀬
「何なに?活躍すると、櫻井さんにキスしてもらえるの?」
いやいやいや!
翼
「そんな約束してません!如月さんが、たった今、思い付いたルールですよ!」
穂積
「ふーん……」
隣の席の室長の声にぎくりとしてそちらを向くと、目が合った室長が、にやりと笑った。
穂積
「採用」
ええぇーっ!
藤守
「ぃよっしゃあっ!」
開会式では、警視総監並びに来賓挨拶の後、各方面からの祝電なども紹介され、優勝旗返還では刑事部が昨年の優勝旗を返し、代わりにレプリカを受け取った。
室長がその旗を苦々しく見つめていたのは言うまでもない。
その後、競技上の注意、準備体操などが行われ、開会式は20分ほどで終わった。
いよいよ、競技開始だ。
《分岐すると、それぞれの恋人設定になります》
如月さんと100m走………3ページ
小笠原さんと騎馬戦…………4ページ
藤守さんと障害物競走………5ページ
明智さんとお弁当……………6ページ
小野瀬さんと借り物競走……7ページ
穂積室長と部署対抗リレー…8ページ