秋の警視庁大運動会
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~翼vision~
翼
「……はあ」
手にした11月の広報を眺めながら、私は何回目かの溜め息をついた。
今月、勤労感謝の日に、年に一度の警視庁運動会が開催される。
もちろん昨年も開催されたのだけど、緊急特命捜査室は部署新設で多忙を極めたため、室長が参加を拒否したらしい。
穂積
「今年は必ず全員参加するように、って念を押されたわ」
今朝のミーティングで、室長が面倒臭そうに言っていた。
穂積
「何で、勤労感謝の日に運動会なのよ、ねえ」
私は運動会が苦手。
筋力も無いし、足も速くない。
運動するのは嫌いではないけれど、断じて、運動会で活躍出来るタイプではない。
翼
「……はあ」
まさか警察に入ってまで、運動会があるなんて。
小笠原
「7回目」
小笠原さんの声が聞こえて、私はハッとした。
小笠原
「7回目だよ、溜め息。そんなに運動会が嫌?」
翼
「そ、そんなに溜め息をついてましたか、私……」
藤守
「何や櫻井、お前、運動会苦手か?」
私と小笠原さんの会話が聞こえたらしく、藤守さんが心配そうに訊いてきた。
藤守
「そう言うたらお前、ミーティングから元気無かったな」
翼
「……藤守さんは、得意そうですね……」
藤守さんは苦笑した。
藤守
「陸上部やったしな。勉強と比べたら、むしろ得意やで」
明智
「警視庁の運動会は一般開放されるし、訓練も兼ねているから、苦手な人間には辛いかもな」
明智さんも私に同情的だ。
如月
「部署対抗だし、どっちかと言うとオリンピックみたいですかね」
私は、羨望の眼差しで如月さんを見た。
翼
「……如月さんはいいですね。足が速いから」
如月
「まーね。短距離なら自信あるよ!」
小野瀬
「俺はきみと二人三脚がいいな」
翼
「きゃあ!」
いきなり背後から抱きつかれて、私は悲鳴をあげた。
同時に大きい音がして、小野瀬さんの頭が真上からファイルで叩かれる。
穂積
「アンタは鑑識でしょうが!」
室長は私の座る椅子ごと小野瀬さんから引き剥がして、自分の方に引っ張った。
音の割には痛くなかったのか、小野瀬さんは髪を直しながら、室長に向かってニコニコ笑っている。
小野瀬
「あれっ、知らないの?特命捜査室は、鑑識と同じチームだよ」
穂積
「……まあ、同じ刑事部ではあるわね」
小野瀬
「いや、今年は俺たち、生活安全部だよ」
穂積
「はあ?!」
そんな馬鹿な、と言いながら、室長はすぐに資料を調べた。
穂積
「………………本当だ」
オカマキャラ忘れてる。
小野瀬
「ね?」
ええっ、と全員がざわめく。
穂積
「生活安全部ってどういう事?」
室長が驚くのももっともだ。
緊急特命捜査室は、殺人から変態まで引き受けるから「すぐやる課」「雑用室」なんて呼ばれ、確かに生活安全部の仕事は多いけど、間違いなく、所属は刑事部。
小野瀬さんは、資料を広げたまま立ち尽くす室長を眺めながら、そっと私の椅子を引き戻した。
小野瀬
「自分で言うのも何だけど、鑑識は運動会では役立たずだからね。優勝を狙う刑事部としては、外したいんじゃないかな」
そう言って、私の肩を揉んでくれる。
小野瀬
「特捜も、少人数だからね。去年参加してないし、人数合わせで、両方、生活安全部に入れられたんじゃない?」
明智
「そんな理不尽な」
穂積
「普段、捜査ではこき使ってくれてるくせに……」
室長はワナワナ震えていた。
穂積
「刑事部がそのつもりなら、受けて立とうじゃないの!」
燃え上がった室長の怒りに引き摺られるように、全員が、おう!と応えた。
……今年の運動会は、始まる前から波乱の予感。