夏のイベント大作戦
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藤守さんと渋谷署
翼
「藤守さんの二輪車講習が気になります」
藤守
「よっしゃ!」
藤守さんは高々とガッツポーズをした。
如月
「いいなー、翼ちゃんとデートなんて」
藤守
「あ、アホか!一緒にイベント行くだけやろが!」
如月さんの呟きに、藤守さんは真っ赤になって反論した。
如月
「だって、白バイでしょ。藤守さんポイント上がっちゃうなあ」
藤守
「お前行けや、そんなら」
穂積
「はいはい、馬鹿丸出しな会話はやめて」
室長が、パン、と手を叩いた。
穂積
「櫻井、藤守と渋谷署の手伝いでいいわね」
翼
「はい」
私は元気よく返事をした。
日曜日。快晴。
私は藤守さんに言われた通り、朝八時に、警視庁交通安全教育センターにやって来た。
コースの方に行ってみると、集まり始めた受講者の姿に混じって、数人の白バイ警官が談笑している。
すると、その中の一人が、私に向かって手を振った。
藤守
「櫻井ー!」
翼
「……藤守さん?」
いつものスーツ姿とは違う藤守さんに、私の胸はときめいた。
長身に、交通機動隊の空色の制服。スタイルの良い藤守さんにはよく似合って、とても格好よかった。
藤守
「迎えに行ってやらんで、ごめんな」
私はぶんぶんと首を振った。
教習を指導する藤守さんは、バイクの準備やコース点検のため、私より二時間も前に来ていたのだ。
翼
「藤守さん、凄く素敵です」
藤守
「え、ホンマか。いやー、早起きした甲斐があったってもんやな」
藤守さんのおどけた言い方に、私はくすくす笑った。
翼
「今日は何をするんですか?」
藤守
「まずは点検の要領を教えて、それから乗車。基本姿勢から制動、スラロームなんか教える予定や」
翼
「藤守さんがバイクに乗る姿、楽しみです」
藤守さんはニコニコ笑っている。
藤守
「櫻井が見てると思たら、なんや緊張するかも」
藤守さんはそう言って、表情を引き締めた。
藤守
「櫻井は記念品の準備や、ゲストの接待なんか頼むで。今日、誰かお笑い芸人が来るらしいねん」
さっき引き締めたばかりの顔を緩めて、藤守さんが私に囁いた。
藤守
「出来たら、サインもろといてな」
翼
「はい」
ゲストというのは、イベントを盛り上げるために、受講者として、実技を体験してくれる人の事だ。
私は藤守さんと別れると、他の署員と協力して全ての準備を終え、空いた時間を使って、近くのコンビニで色紙とサインペンを買ってきた。
辺りがざわめいたと思ったら、門の方から、マイクやカメラを持った一団が近付いて来た。
やがて、その中から若い人が二人抜け出て来て、待機している私たちの方に挨拶に来た。
芸人A
「うわー、皆さんホンマに警察の方?めっちゃキレイやーん」
芸人B
「この子なんか、超カワイイで!あっ、色紙持ったはる。サインしたろか?」
私は、年配の署員の方に、いいですか?と目で尋ねた。
準備しながらの雑談で、芸人さんに気分よく仕事をしてもらいたい、と言っていた人だ。
その人がうんうんと頷いたので、私は色紙とサインペンを差し出した。
翼
「よろしくお願いします」
芸人A・B
「ええよ、ええよ」
二人は順番に色紙を手にして、すらすらとサインを書いてくれた。
芸人A
「はーい。そしたら、チューと交換でーす」
翼
「ええっ?!」
芸人A
「あははー、うそうそ!冗談半分やでー」
芸人B
「半分かい!」
芸人A・B
「どーもありがとーごさいましたー」
ちょっとビックリしたけど、周りがどっと笑ったので、私も笑った。
チューではなく握手でサイン色紙を受け取り、バッグにしまった。
今度は、いよいよバイク講習だ。
大きなバイクを軽々と操ってS字やスラロームをこなす藤守さんは、本当に格好良かった。
如月さんが、白バイに乗ったらポイント上がる、と言った意味がよく分かる。
私だけではなく、周りの女性署員や、受講者の男性たちからも溜め息が漏れていた。
あの人上手いなあ、なんていう声が聴こえると、何だか私まで嬉しい。
一方、他の受講者さんたちに混じって、さっきの芸人さんたちも頑張っていた。
運転技術は決して高くないけど、真面目にやっているのが伝わってきた。
芸人さんが加わっても、いわゆるヤラセでわざと失敗したり、大声で騒ぐ事も無く、講習が無事に終了したので、私は安堵した。
藤守
「櫻井、お疲れー」
一般の受講者が帰り、記念品やテントを片付けていた私の所に、私服に着替えた藤守さんが戻って来た。
翼
「藤守さんこそ、お疲れ様でした。格好良かったです!」
藤守
「櫻井にええトコ見せられたかな」
私はバッグから、さっきの色紙を取り出した。
翼
「藤守さん、はいこれ!」
藤守
「おっ、『ライチ』やったんか!おおきに!」
喜ぶ藤守さんに、私の隣から、女性署員が声を掛けた。
女性署員
「藤守さん、彼女、それ、『ライチ』にチューして手に入れたんですから。大切にしてあげて下さいよ!」
藤守
「えっ?!」
藤守さんの顔色が変わった。
翼
「ち、違いますよ!確かに、してくれとは言われましたけど……」
その時、タイミング悪く、『ライチ』の二人が、着替えを終えて建物から出てきた。
藤守
「くぉら!おどれら!」
歩み寄った藤守さんの剣幕に一瞬ひるんだ二人だったが、さすがというかプロというか、あっという間に笑顔になった。
芸人A
「おーっと、さっきの白バイのお兄さんやないですか!」
芸人B
「やっぱ男前やで!」
藤守
「じゃかァし!騙されへんで!お前ら、この子に何してくれてんねん!」
二人は私と藤守さんを交互に見、藤守さんの手の色紙を見て、状況を理解したらしい。
芸人A
「兄さーん、俺らフラれてんねんで!」
芸人B
「せやで。その子、チューしてくれへんねん!」
芸人A
「兄さんの彼女やったんかー、そら、浮気なんかするわけないわ!」
藤守さんの顔が、赤くなった。
藤守
「か、彼女とか、そんなんやないけど……」
藤守さんの剣幕が落ち着いたとみたのか、『ライチ』の二人は畳み掛けてきた。
芸人A
「またまたー。超お似合いですやん」
芸人B
「ホンマや羨ましぃなー。兄さん、今日はお疲れ様でした!」
芸人A
「兄さん、お先です!」
藤守
「お、おう。お前らも頑張れよ」
芸人A・B
「ありがとうございまーす!」
『ライチ』の二人は揃って頭を下げると、逃げるように去って行った。
振り向けば、さっき藤守さんをけしかけた女性署員の姿も消えている。
私はホッとして、藤守さんを見上げた。
藤守
「な、何か、ごめんな」
真っ赤になって謝る藤守さんに、私は背伸びして、囁いた。
翼
「藤守さん、私、『彼女』でも良かったのに」
藤守
「え?!」
驚く藤守さんを置いて歩き出し、私は振り返る。
翼
「冗談半分やでー!」
藤守
「半分かい!」
律儀にツッコんでから、笑顔で藤守さんが追い掛けて来る。
すぐに捕まるのは分かってるけど、赤い頬を見られるのが恥ずかしくて、私は走り出した。
~藤守編 END~
翼
「藤守さんの二輪車講習が気になります」
藤守
「よっしゃ!」
藤守さんは高々とガッツポーズをした。
如月
「いいなー、翼ちゃんとデートなんて」
藤守
「あ、アホか!一緒にイベント行くだけやろが!」
如月さんの呟きに、藤守さんは真っ赤になって反論した。
如月
「だって、白バイでしょ。藤守さんポイント上がっちゃうなあ」
藤守
「お前行けや、そんなら」
穂積
「はいはい、馬鹿丸出しな会話はやめて」
室長が、パン、と手を叩いた。
穂積
「櫻井、藤守と渋谷署の手伝いでいいわね」
翼
「はい」
私は元気よく返事をした。
日曜日。快晴。
私は藤守さんに言われた通り、朝八時に、警視庁交通安全教育センターにやって来た。
コースの方に行ってみると、集まり始めた受講者の姿に混じって、数人の白バイ警官が談笑している。
すると、その中の一人が、私に向かって手を振った。
藤守
「櫻井ー!」
翼
「……藤守さん?」
いつものスーツ姿とは違う藤守さんに、私の胸はときめいた。
長身に、交通機動隊の空色の制服。スタイルの良い藤守さんにはよく似合って、とても格好よかった。
藤守
「迎えに行ってやらんで、ごめんな」
私はぶんぶんと首を振った。
教習を指導する藤守さんは、バイクの準備やコース点検のため、私より二時間も前に来ていたのだ。
翼
「藤守さん、凄く素敵です」
藤守
「え、ホンマか。いやー、早起きした甲斐があったってもんやな」
藤守さんのおどけた言い方に、私はくすくす笑った。
翼
「今日は何をするんですか?」
藤守
「まずは点検の要領を教えて、それから乗車。基本姿勢から制動、スラロームなんか教える予定や」
翼
「藤守さんがバイクに乗る姿、楽しみです」
藤守さんはニコニコ笑っている。
藤守
「櫻井が見てると思たら、なんや緊張するかも」
藤守さんはそう言って、表情を引き締めた。
藤守
「櫻井は記念品の準備や、ゲストの接待なんか頼むで。今日、誰かお笑い芸人が来るらしいねん」
さっき引き締めたばかりの顔を緩めて、藤守さんが私に囁いた。
藤守
「出来たら、サインもろといてな」
翼
「はい」
ゲストというのは、イベントを盛り上げるために、受講者として、実技を体験してくれる人の事だ。
私は藤守さんと別れると、他の署員と協力して全ての準備を終え、空いた時間を使って、近くのコンビニで色紙とサインペンを買ってきた。
辺りがざわめいたと思ったら、門の方から、マイクやカメラを持った一団が近付いて来た。
やがて、その中から若い人が二人抜け出て来て、待機している私たちの方に挨拶に来た。
芸人A
「うわー、皆さんホンマに警察の方?めっちゃキレイやーん」
芸人B
「この子なんか、超カワイイで!あっ、色紙持ったはる。サインしたろか?」
私は、年配の署員の方に、いいですか?と目で尋ねた。
準備しながらの雑談で、芸人さんに気分よく仕事をしてもらいたい、と言っていた人だ。
その人がうんうんと頷いたので、私は色紙とサインペンを差し出した。
翼
「よろしくお願いします」
芸人A・B
「ええよ、ええよ」
二人は順番に色紙を手にして、すらすらとサインを書いてくれた。
芸人A
「はーい。そしたら、チューと交換でーす」
翼
「ええっ?!」
芸人A
「あははー、うそうそ!冗談半分やでー」
芸人B
「半分かい!」
芸人A・B
「どーもありがとーごさいましたー」
ちょっとビックリしたけど、周りがどっと笑ったので、私も笑った。
チューではなく握手でサイン色紙を受け取り、バッグにしまった。
今度は、いよいよバイク講習だ。
大きなバイクを軽々と操ってS字やスラロームをこなす藤守さんは、本当に格好良かった。
如月さんが、白バイに乗ったらポイント上がる、と言った意味がよく分かる。
私だけではなく、周りの女性署員や、受講者の男性たちからも溜め息が漏れていた。
あの人上手いなあ、なんていう声が聴こえると、何だか私まで嬉しい。
一方、他の受講者さんたちに混じって、さっきの芸人さんたちも頑張っていた。
運転技術は決して高くないけど、真面目にやっているのが伝わってきた。
芸人さんが加わっても、いわゆるヤラセでわざと失敗したり、大声で騒ぐ事も無く、講習が無事に終了したので、私は安堵した。
藤守
「櫻井、お疲れー」
一般の受講者が帰り、記念品やテントを片付けていた私の所に、私服に着替えた藤守さんが戻って来た。
翼
「藤守さんこそ、お疲れ様でした。格好良かったです!」
藤守
「櫻井にええトコ見せられたかな」
私はバッグから、さっきの色紙を取り出した。
翼
「藤守さん、はいこれ!」
藤守
「おっ、『ライチ』やったんか!おおきに!」
喜ぶ藤守さんに、私の隣から、女性署員が声を掛けた。
女性署員
「藤守さん、彼女、それ、『ライチ』にチューして手に入れたんですから。大切にしてあげて下さいよ!」
藤守
「えっ?!」
藤守さんの顔色が変わった。
翼
「ち、違いますよ!確かに、してくれとは言われましたけど……」
その時、タイミング悪く、『ライチ』の二人が、着替えを終えて建物から出てきた。
藤守
「くぉら!おどれら!」
歩み寄った藤守さんの剣幕に一瞬ひるんだ二人だったが、さすがというかプロというか、あっという間に笑顔になった。
芸人A
「おーっと、さっきの白バイのお兄さんやないですか!」
芸人B
「やっぱ男前やで!」
藤守
「じゃかァし!騙されへんで!お前ら、この子に何してくれてんねん!」
二人は私と藤守さんを交互に見、藤守さんの手の色紙を見て、状況を理解したらしい。
芸人A
「兄さーん、俺らフラれてんねんで!」
芸人B
「せやで。その子、チューしてくれへんねん!」
芸人A
「兄さんの彼女やったんかー、そら、浮気なんかするわけないわ!」
藤守さんの顔が、赤くなった。
藤守
「か、彼女とか、そんなんやないけど……」
藤守さんの剣幕が落ち着いたとみたのか、『ライチ』の二人は畳み掛けてきた。
芸人A
「またまたー。超お似合いですやん」
芸人B
「ホンマや羨ましぃなー。兄さん、今日はお疲れ様でした!」
芸人A
「兄さん、お先です!」
藤守
「お、おう。お前らも頑張れよ」
芸人A・B
「ありがとうございまーす!」
『ライチ』の二人は揃って頭を下げると、逃げるように去って行った。
振り向けば、さっき藤守さんをけしかけた女性署員の姿も消えている。
私はホッとして、藤守さんを見上げた。
藤守
「な、何か、ごめんな」
真っ赤になって謝る藤守さんに、私は背伸びして、囁いた。
翼
「藤守さん、私、『彼女』でも良かったのに」
藤守
「え?!」
驚く藤守さんを置いて歩き出し、私は振り返る。
翼
「冗談半分やでー!」
藤守
「半分かい!」
律儀にツッコんでから、笑顔で藤守さんが追い掛けて来る。
すぐに捕まるのは分かってるけど、赤い頬を見られるのが恥ずかしくて、私は走り出した。
~藤守編 END~