合コンvol.1
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~穂積vision~
「こんにちは。穂積、いますか?」
軽やかな足音が聞こえたと思ったら、見覚えのある白衣姿の男が扉を開いた。
「おう小野瀬」
「穂積、彼氏が来たぞー」
先輩たちは、明らかに面白がっている。
魔女の一件以来、小野瀬は積極的に俺に会いに来るようになった。
弱味を握られている身としては、あまり会いたくないのに。
というか色々と思い出すので、出来れば顔も見たくないのに。
「ほーづーみ♪」
頭を低くして資料の陰に隠れていた俺の前にひょこっと顔を出して、小野瀬はにっこり笑った。
それは、警視庁の女たちを片っ端から夢中にさせている笑顔だ。
その辺で振り撒くんじゃない。
「……よう」
「今夜、合コン行かない?」
「お前、そればっかりだな」
「何だ合コンか?」
隣の席の先輩が、にこにこしながら声を掛けてくる。
「はい、実は、鑑識の先輩たちに、前から穂積を誘うよう頼まれているんです」
小野瀬はしおらしい声を出した。
「でも、穂積、なかなか承知してくれなくて。先輩たちからは急かされるし、俺、困ってるんです」
悲しそうな顔をする小野瀬に、警備部の先輩たちは誰からともなく目配りし、一斉に俺を見た。
「穂積、行ってやれよ」
「今日は早く帰れるだろう?」
「板挟みになって、小野瀬が気の毒じゃないか」
「鑑識とは仲良くする方がいいぞ」
小野瀬のフェロモン恐るべし。
小野瀬は警視庁の抱かれたい男No.1だが、その投票のうち、女性票を除く部分を占めるのは、何と中年男性の票だ。
意味が分からない。
性別を問わない小野瀬フェロモンにやられた先輩たちからの「行ってやれよ」目線に、俺はどんどん追い詰められていく。
「あっ、そうか。穂積は、今日、車?」
「え?ああ」
いや、車の問題じゃないけど。
「んー。じゃあ、お前の車で直接、店へ行こうか?」
小野瀬はニコニコ顔に戻っている。
「いや、いいよ。ここにそのまま置いて、帰りは店からタクシーで帰る」
「大丈夫。帰りは俺が運転して、お前の家まで送るよ」
俺は一瞬それもいいなと思ったが、いや待て。駄目だろ。
「それじゃ飲酒運転だろ。それに、お前は、俺の家からどうやって帰るんだ。もしかして近いのか」
「平気平気」
小野瀬は、何の問題も無いよ、と笑った。
「俺、下戸で酒呑まないから。で、そのままお前の家に泊めてもらうから。それならお前も車を持って帰れる。ほら完璧」
「……」
下戸?
呑まずに合コン?
……俺の家に泊まる?
「いいよね?じゃあ、そういうことで」
小野瀬は腕時計を見て、俺に背中を向けそうになった。
「待て!色々ツッコませろ!」
白衣の裾を掴んだ俺の手を、小野瀬はやんわりとほどいた。
「はいはい。後で、お前の車の中でね」
「おい、こら!小野瀬!」
「じゃあねー」
早くも通路を曲がってしまった小野瀬に、俺は頭の中が混乱したままだった。
しかも不覚にも、主導権を握られてしまった。
小野瀬のあの憎たらしい笑顔を思い出しながら、俺は、膝をつきそうな敗北感に襲われていた。