両手に花 *せつな様のリクエスト
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~一人で寝ますから!~
~翼vision~
今夜は穂積と?小野瀬と?
二者択一を迫る指を立てて微笑む小野瀬さんを見上げて、私はじっと考えた。
自然に足が止まった私を、背の高い二人が見下ろしている。
……きっと、また、私をからかってるんだ。
私はムッとした反面、胸の中に、ちょっとした悪戯心も芽生えた。
何度も子供扱いして笑おうとしたって、そうはいかないんだから。
翼
「じ、じゃあ、お二人とも、今夜は、私のツインに泊めてあげてもいいですよ?」
つんと澄まして言ってみた。
翼
「小野瀬さんは、私とずっと一緒にいたいんですよね?」
小野瀬
「え」
翼
「室長は、私をた、食べたいんですもんね?」
穂積
「え」
どうだ!
案の定、室長と小野瀬さんはきょとんとして、顔を見合わせた。
よし!
ここで私が『なんてね。冗談です』と言って、この話は笑っておしまい。
そのはずだった。
……そのはずだったのに。
小野瀬
「驚いたな。櫻井さんて、意外と大胆なんだね」
私の狙いに反し、小野瀬さんは顔を赤くして、眉をひそめた。
小野瀬
「……でも、一緒にいられるのは嬉しいかな」
翼
「え?」
穂積
「さすがの俺も、三人での経験は無いぞ」
室長は真顔で考え込む。
穂積
「……だが、腹は減ってる」
翼
「え?」
二人は左右から、じっと私を見つめた。
小野瀬
「櫻井さんがどうしてもと言うなら、ねえ」
じりっ、と一歩近付いた小野瀬さんの長い指が、私の顎を持ち上げる。
穂積
「まあ、何事も経験だからな」
室長が私に顔を近付けて、耳元で囁く。
穂積
「……試してみるか……?」
ふ、と吐息を吹き込まれた。
翼
「ええっ?!」
私は激しく狼狽えた。
やだっ。
どうしよう?!
翼
「あっ、あの……うそ、嘘です!私、一人で寝ますから!」
すると。
穂積
「……くくっ」
小野瀬
「あっはっはっはっ!」
突然、二人が笑い出した。
穂積
「バーカ」
あっ!
室長に頭をくしゃくしゃと撫でられて、私はやっと、自分が悪戯を仕掛けたつもりが、逆に二人に反撃されたのだと気付く。
気付いた途端、力が抜けて、膝をつきそうになってしまった。
翼
「……うう……」
小野瀬
「驚かせちゃったかな?ごめんね?」
小野瀬さんが、心配そうに覗きこんでくれた。
屈託の無い室長の笑顔を見ていたら、じわりと涙が湧いてきた。
穂積
「俺たちをからかうなんて、十年早えんだよ」
室長が、もう一度、頭を撫でてくれる。
乱暴な手つきだけど、私を安堵させ、反省させるには充分だった。
翼
「ううう、すみません」
穂積
「ほら、行くぞ」
小野瀬
「お手をどうぞ、お姫様」
翼
「はい!」
悔しいけれど、私はホッとしながら、改めて差し出された二人の手を取った。
すると。
その手が引かれ、ちゅ、と音を立てて、左右から、同時に頬にキスされた。
翼
「!」
見上げた先で、室長と小野瀬さんがハイタッチした後、ニヤニヤ笑っている。
翼
「……もう!」
真っ赤になった私が拳を振り上げると、二人はわあっと叫んで逃げ出した。
翼
「二人ともっ!」
二人は数歩先で振り向いて、私を待っている。
声を立てて笑いながら。
その笑顔につられて、私もだんだん笑顔になる。
私は二人を追い掛けて走り出しながら、大声で叫んだ。
翼
「二人とも、大嫌い!」
~両手に花・END~