両手に花 *せつな様のリクエスト
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それから一時間ほど、二人に優しくスキーを教えてもらった私は、たちまち人並みに滑れるようになった。
さっきまで退屈だったのが嘘のよう。
一緒に滑って、転んだら笑って助け起こしてくれる人がいるだけで、何て楽しいんだろう。
穂積
「じゃあ、午後6時にホテルのロビーでな」
コーヒーショップのサンドイッチで腹ごしらえをした後、そう言い残して、室長と小野瀬さんは会議に出発して行った。
6時まではひとり。
でも、もう寂しくない。
私はレンタルのウェアやスキーをショップに返して、ホテルにチェックインした。
ツインの部屋に入って、着替える為にシャワーを浴びる。
熱いお湯を浴び、さっきまでの楽しい時間を振り返っていた私は、ふと、ある事を思い出した。
小野瀬
『シングルひとつしか取れなかった』
小野瀬さんは確かにそう言った。
あの二人、今夜、シングルベッドで寝るつもりなのかしら。
狭いベッドに潜り込み、押し合いへし合いする室長と小野瀬さんを想像して、私はくすくす笑った。
そんなわけないか。
きっとジャンケンか何かで勝負して、一人はソファーになったりするのね。
笑いながらそこまで考えて、私は気付いた。
翼
「あ、なあんだ」
思わず声が出た。
私の部屋は二人部屋。
室長と小野瀬さんをこちらに呼んで、私がシングルに泊まればいい。
予約した部屋を、交換すればいいだけの事だ。
でも、向こうからは言い出しにくいだろうな。後で、私から提案してみよう。
私はそう心に決めて、下着と服を身に付けた。
それからは、エステでマッサージしてもらったり、ゲームコーナーでクレーンを動かしたりして、リラックスした時間を過ごす事が出来た。
食事の約束があるだけで、あれもこれもみんな楽しい。やっぱり、旅行で連れがいるのって、いいな。
そして、午後6時。
約束通りの時間にロビーに降りていくと、何やら女の子たちが人だかりを作っている。
翼
「……」
私は、はあ、と溜め息をついた。
これがあったわ。
あの二人と一緒だと、このパターンはもはや鉄板。私はこそこそ近付かなければならない。
果たして、ロビーには紺色のスリーピースを着た室長と、アイボリーのジャケットを羽織った小野瀬さんが、普段通り談笑していた。
私を待つ二人に送られている、周りからの熱い視線。
二人には悪いけど、私、こんな高いハードル跳べません。
自然にこちらを向くのを待って、私は人垣の後ろから、室長に小さく手を振った。
室長はすぐに気付いてくれて、小野瀬さんを誘って立ち上がる。
ゲレンデじゃないのに、コートを羽織る仕草まで男前三割増しな気がするのは、今がプライベートだからかしら。
二人がロビーから外に出てしまうと、彼らにうっとりと見惚れていた女性たちも三々五々、諦めて散って行った。
それを見計らって、私は、二人を追って外に出てゆく。
室長と小野瀬さんは駐車場の端にいて、私が行くとくすくす笑った。
穂積
「変わらないな、お前も」
小野瀬
「遠慮する事なんてないのに」
私はぷうと膨れた。
人の気も知らないで!
注目される事に慣れてるあなた方には、私のようなフツーの女の子の気持ちなんて分からないんです!
穂積
「フグみてえ」
室長が、私の頬を指でつついた。
むう!
穂積
「ほら」
半身になった室長が、私に腕を差し出した。
翼
「?」
拗ねてねじれていた気持ちが、たちまちほどけてまた狼狽える。
これは、まさか。
穂積
「行くぞ。早く、組めよ」
躊躇していたら、室長の反対の手が伸びて来て、私の腕を捕らえてぐいと組んだ。
ひゃあ!
小野瀬
「じゃ、こっちは俺ね」
反対の腕は微笑む小野瀬さんに引き寄せられて、優しく絡め取られた。
両腕をそれぞれ室長と小野瀬さんの腕と組む形になってから、二人は、歩調を私に合わせて、のんびりと歩き出した。
いくら旅先とは言え、この二人を侍らせて歩くなんて。
……いいのかしら。
穂積
「何、食いたい?」
な、何と言われましても。
穂積
「俺はお前を食いたいけど」
ままま、真顔で何て事を。
小野瀬
「さっきホテルで聞いてきたんだよ。近くに、美味しいワインを出してくれるレストランがあるんだって」
今度は、反対側から小野瀬さん。
小野瀬
「今日は……ずっと一緒にいたいって思ってるんだけど」
ど、ど、ど、二人ともどうしちゃったの?!
真っ赤になって何も言えない私を見つめ、ぷ、と噴き出したかと思うと、二人は笑い出した。
小野瀬
「本当に可愛いなあ。どうしよう、穂積?」
穂積
「どうしようもないガキだな」
……か、からかわれたんだ。
二人して、また子供扱いして!
小野瀬
「ねえ、櫻井さん」
翼
「何ですかっ?」
穂積
「あーあ、拗ねちゃった」
小野瀬
「今夜、俺たち、きみの部屋に泊めて欲しいんだけど」
翼
「……はい?!」
二人の提案は、私の予想を超えていた。
穂積
「せっかくだから三人で寝ようぜ」
室長は楽しそう。
翼
「『せっかく』って何ですか?!」
小野瀬
「まあまあ、櫻井さん」
小野瀬さんはにっこり笑い、私の前に手を出して、Vサインのように二本の指を立てた。
小野瀬
「では、ここで二者択一です♪」
(分岐後は1st告白後設定になります)
穂積とシングルベッド……P3へ
小野瀬とシングルベッド…P5へ
ひとりで寝ますから!……P7へ
穂積
「三択?!」