ROSE
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「今回は災難だったねえ穂積」
俺の車を運転しながら、その災難を持ち掛けた本人が笑っている。
「俺にナンパは向いてない。お前は凄いよ。天才だ」
「ふふ」
小野瀬が笑った。
「でも、あのパンツスーツの子、本当は、穂積が良かったって言ってたよ」
「はあ?!」
……何だとー?!
「あ、もちろん、する前だけどね」
俺は脱力した。
「そう言われたのなら、何故、俺と交代しない?」
「えー、それは無理でしょ」
小野瀬がくすくす笑った。
「した後は、俺で良かった、って言ってくれたしね」
「……俺のだったはずの女と同じシャンプー使って、酔っ払いのお子ちゃまを俺に押し付けやがって……」
「あー、それね。やっぱり、穂積にカナリアちゃんを任せて良かったよ。逆だったら、今頃、俺はお前に逮捕されてる」
「……十五歳だぞ。見境なしか」
「念のため言っておくけど、パンツスーツは二十二歳だったからね」
車が俺の家に到着し、俺たち二人は車を降りた。
「とりあえず、今日は穂積のおかげで楽しかったよ。ありがと。話のネタも増えたしね」
「俺はお前の本性を見たかもしれない」
揃ってエレベーターに乗り、部屋に向かう。
「まあまあ。また行こうよ。ローズちゃんとも仲良くなったろ?」
「ローズを思い出させるな!」
「穂積は男にも女にもモテるねえ」
エレベーターが目的の階に着いて、俺は部屋の鍵を開けた。
「あ、そうだ小野瀬」
「ん?」
終始ご機嫌な小野瀬に、俺はさっき思いついた事を言った。
「お前、後で一発ぶん殴らせろよ」
「えー?」
小野瀬は嫌そうな顔をしたが、すぐに笑顔に戻った。
「いいよ?」
ほら、と顔を俺に差し出す。
「そのかわり、一発でチャラだからね。それで、また二人でナンパに行こうね」
扉を開きながら、俺は溜め息をついた。
こいつ、もしかして俺の疫病神じゃないのかな。
「どしたの穂積。ほら、ほら殴って」
小野瀬はほらほら言いながら、俺の後をついてくる。
そのきれいな顔を本気でぶん殴ってやろうと思ったが、小野瀬の満面の笑顔を見たら、やる気が失せた。
「もういい。俺の負けだ」
俺はソファーに寝転がった。
ニコニコ笑いながら、小野瀬は俺の足下のシャツを拾い上げる。
「掃除してあげるよ、穂積。それでチャラだね」
「勝手にしろ!」
「やったー」
小野瀬の声が遠ざかっていく。
今日は疲れた。もうだめだ。
瞼の裏に、カナリアの顔が浮かんだ。
穂積さんすきー。
可愛かったな。俺はくすくす笑う。
カナリアも、小野瀬も、パンツスーツもローズも、みんな面白かった。
「小野瀬……、今日はありがとうな……」
「どういたしまして」
すぐ近くで、小野瀬がふふ、と笑う声が聴こえた気がした。
頭の中がふわふわして、良い気持ちだ。
今日は何もかももういいや。
「……お休み、穂積」
小野瀬の声か。
ローズの声か。
「……お休み……」
一晩寝て起きたら。
俺はまた、懲りずに小野瀬とナンパしに行くんだろうな。
~END~