前途多難
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~翼vision~
穂積
「はーい、櫻井。お疲れ!」
キャバクラドレスからいつものスーツに戻り、『バニラ』の従業員通用口から出た私を、先に外の路地で待っていた室長と、小野瀬さんとが迎えてくれた。
小野瀬
「あれ、櫻井さん、ドレス着替えちゃったんだ?」
小野瀬さんが、メイクも戻した私の顔を覗き込んで笑う。
翼
「はい。もう、私のキャバクラ潜入は終わりですから」
冷たく言い放つと、小野瀬さんは室長と顔を見合わせた。
小野瀬
「怒ってるよ」
穂積
「怒ってるな」
ひそひそと囁きあう二人。
ええ怒ってますとも!
突然、殺人事件のあったキャバクラへの潜入捜査を命じられて。
捜査室で何枚もキャバクラドレスを試着させられて。
それなのに、実際は裏方で、ドレスの試着には意味が無くて。
おまけに私は女装のこーちゃんを『バニラ』で働かせる為のダミーで。
かと思いきや、今夜は、派手な登場で来店した小野瀬さんと室長に、突然、キャバ嬢として指名されて。
本職のキャバ嬢さんたちや、恋人であるこーちゃんからの視線にさらされながら、延々、室長にお酌して。
肩を抱かれて、手を握られて、ピーナッツの皮を剥かされて。
……捜査の一環なのは理解しているし、室長の強引さはいつもの事だけど。今回は、小野瀬さんまで一緒になって、悪乗りし過ぎなんじゃないのかしら。
翼
「……」
不機嫌な顔のまま私が睨むと、二人はちょっと神妙な顔付きになった。
穂積
「……やり過ぎたか?」
小野瀬
「せっかく可愛いんだから、櫻井さんには、いつも笑っていて欲しいなあ」
翼
「その手には乗りません」
私は唇を尖らせた。
穂積
「悪かった」
小野瀬
「ごめんね」
翼
「知りません」
私はつんと横を向く。
穂積
「お前、プチ・フール・セックっての、好きだよな。今度、世田谷で買ってきてやるから、なっ」
小野瀬
「ピエール・◎コリーニのチョコも好きだよね。俺からも、ぜひプレゼントさせて」
ちらりと見ると、さっきまで王様みたいだった二人が、私のご機嫌をとろうと、困った顔で擦り寄って来るのが可笑しい。
翼
「室長も小野瀬さんも、嫌いです」
がーーん!!
翼
「?」
……何か音がしたような。
振り返ると、室長が地面に崩れ落ちていた。
びっくりしたけど、小野瀬さんが苦笑いしていたので、私もかろうじて動揺を隠した。
穂積
「嫌い……嫌い……嫌い……」
小野瀬
「あーあ。お父さん、落ち込んじゃった」
穂積
「これが、『もうお父さんとは一緒にお風呂に入らない』って言われた時の気持ちってヤツか……?<fontsize="3">」
違うと思いますけど。
それでも、私に叱られ、頭を抱えて落ち込む室長の姿には、ちょっぴり胸が痛む。
翼
「もう!……分かりました。二人にお願いがあります。それを叶えてくれたら、全部許します」
小野瀬
「え、ホント?」
穂積
「何だ?何でも叶えてやるぞ」
室長が立ち直った。
室長と小野瀬さんに両側から手を握られて、私は赤面しそうになった。
見慣れてきたとはいえ、二人とも超美形なのは変わらない。
翼
「じつは私、一度、ゲイバーに行ってみたいんです」
穂積
「……」
小野瀬
「…………」
穂積
「………………はあ?!」