オレの後輩!
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~如月vision~
もうじき、捜査室に新しい捜査員がやって来る。
警察、しかも先輩ばかりの縦社会の中で、最下位だった俺に待望の仲間。
しかも、年下の女の子!
神様は、毎日職場で虐げられている、いたいけな俺の姿をちゃんと見てくれていたんだね。
神様ありがとう!
俺は断じて、後輩いじめなんかしませんよ。
色んな事を教えてあげてー、何でも相談に乗ってあげてー、困った時には助けてあげる。
時には厳しくする事も忘れないよ。
そしたら、「如月さんってステキ」「大好き」「結婚して」なんて言われちゃったりして。
でも、どんなに嬉しくっても、俺はクールに構えてるのさ。
「分からない事があったら何でも聞きなよ」なんて言ってね。
楽しみだなー。
そしてその日はやって来た。
翼
「初めまして、如月さん。櫻井翼です。これから、よろしくお願いします」
如月
「翼ちゃんだね、よろしく!」
かっわいーい。
大丈夫だよ、俺がついてる。
君に寂しい思いなんかさせないからね。
それから、はや数ヵ月。
石原事件も真相解明に近付いた頃には、彼女は持ち前の頑張りで、捜査室の中に溶け込んできていた。
如月
「翼ちゃん、おっはよー」
翼
「あっ、如月さん、おはようございます」
彼女は朝のミーティングに備えて、コーヒーを淹れていた。
如月
「いい香り」
明智
「櫻井、サブレを焼いてきた。良かったらお茶うけに使ってくれ」
翼
「わあ、美味しそうですね!ねっ如月さん」
如月
「そうだね。さすが明智さんだなあ」
……彼女に話し掛けようと思ったけど、タイミング逃しちゃったなあ。
明智さんは甘い物が好きだから、彼女と共通の話題があっていいな。
小笠原
「櫻井さん、指名手配の更新出来た」
翼
「ありがとうございます」
小笠原さん、自分から彼女に話し掛けるようになったね。
翼ちゃんも嬉しそう。最初、一番苦手にしてたみたいだもんな。良かったね。
藤守
「櫻井ー。あれ?おらんの?」
翼
「こっちですよ、藤守さん」
小笠原さんの横に立って、彼女が手を挙げた。
藤守さんがだらしなく愛好を崩す。
藤守
「小笠原と仕事中か?」
翼
「資料でしたら、藤守さんの机の上に揃えてありますよ」
藤守
「ホンマや。ありがとう!」
藤守さんも明智さんも、「女の子を刑事にするなんて」反対だったのに。
今では、もう彼女を仲間と認めているんじゃないかな。
藤守さんなんて、すっかり、苦手なものは彼女に頼むようになっちゃってる。笑っちゃうよね。
穂積
「おはよう、いい香りね」
室長は自分がスカウトしたんだから当然だけど、最初から彼女を可愛がってた。
今は職場のお父さんを公言しているし、彼女も、室長の傍にいる時が一番、安心した顔をしている。
俺なら、あんなお父さんお断りだけど。
小野瀬
「やっぱり櫻井さんのコーヒーは最高だね」
出たよ。
なんで毎日来るかなあ。
彼女にとって、室長はお父さんだから対象外だろうけど、小野瀬さんは、じゅうぶん恋愛対象だと思うんだよね。
小野瀬さんの場合、他にいくらでも好きになってくれる相手がいるんだからさ。
翼ちゃんに近付かないでもらいたいんだよね。
穂積
「ミーティング始めるわよ」
……こうして見渡してみると、この捜査室って、ホント全員がイケメン。
明智さんは男らしいし、藤守さんは話しやすいし、小笠原さんは品がいいし。
室長と小野瀬さんに至っては全部反則だし。
はあぁ、神様はやっぱり不公平なのかなあ。
二人で組んだ聞き込みの帰り道。
俺たちはお土産に買った鯛焼きとたこ焼きを手に、夕焼けの雑踏を歩いていた。
如月
「たーいーやーき」
翼
「きーつーつーき」
如月
「きーのーぼーり」
翼
「リースーザール」
ただのしりとりでも、彼女となら楽しい。
彼女がいつも笑顔なのが、嬉しい。
如月
「今日思ったんだけどさ、翼ちゃん、だいぶ捜査室に慣れたみたいだね」
彼女が微笑む。
翼
「はい。お陰さまで」
如月
「良かったよ。翼ちゃんは頑張ったもん。だから、皆に認めてもらえたんだよ」
俺が言うと、彼女は歩く速度を少し緩めた。
翼
「如月さんのお陰です」
如月
「俺?何もしてないよ」
翼ちゃんが、いいえ、と首を振った。
翼
「如月さんは、最初にお会いした時から、私の味方でいてくれました」
如月
「それは、そうだよ。だって、俺の唯一の後輩だもん」
彼女はゆっくりと足を止めた。
翼
「如月さんがいなければ、私はきっと、捜査室を辞めていました」
如月
「えっ?!……いや、そりゃ、みんな最初は冷たかったけど。室長は翼ちゃんの味方だったでしょ」
翼
「はい。でも室長は立場上、中立でなくてはいけなかったし、私も、甘えてばかりはいられませんでした」
如月
「……」
翼
「如月さんはどんな時でも、一番近くで私を励ましてくれました」
彼女が笑うと、風に髪がそよいだ。
艶々した綺麗な髪。
俺はいつも、それに触れたかった。
如月
「翼ちゃん」
俺は手を伸ばして、彼女の髪を一房、捕まえた。彼女は嫌がらない。
如月
「それは、俺が『いい先輩』だからじゃ、ないんだ」
翼
「……?」
彼女がきょとんとして首を傾げる姿が、一瞬だけ見えた。
如月
「俺が、きみを、好きだから」
言った時にはもう、抱き締めていた。
如月
「最初に会った時から、翼ちゃんが好きだったからだよ」
彼女は俺の腕の中で、固まったまま身動ぎもしない。
駐車場に、他に人気はないけど……ヤバい。
誰が見ていてもおかしくない、こんな場所で抱き締めちゃったよ。
どうしよう。そう思った時、俺の背中に、そろりとした感覚があった。
翼
「如月さん……」
翼ちゃんの手が、俺の背中にまわされていた。
翼
「私も、如月さんが大好きです」
神様!
俺は夢中で、翼ちゃんの細い身体を抱き締めていた。
もう、何も怖くない。
だって彼女が出来たんだよ!
可愛くて優しくて、頭が良くて頑張り屋。
今だって、ほら。
みんなが、鯛焼きとたこ焼きを配る彼女を目で追っている。
まあまあ、見るぐらいは許してあげるよ。
でも、その子は俺の彼女なんだからね!
ああ、今、この場で、大きな声で交際を宣言したい!
明智さんも藤守さんも小笠原さんも、彼女に冷たくした事を後悔すればいい。
小野瀬さんには、金輪際彼女に触らせない。
室長にだって。
穂積
「如月」
彼女を取り巻く視線に悪態をついていた俺の耳に突然、思い浮かべていた本人の声がした。
椅子に座る俺の背後に音も無く立ち、長身を屈めて耳元で囁いたのは、どう考えても悪魔だが、それは室長。
穂積
「櫻井を泣かせたら、ただじゃおかねえぞ」
全部お見通し!
しかもオカマ口調じゃない!凄みのある声に、怖くて顔が見られない。
如月
「……は……ハイ……!」
震える声で返事を絞り出すと、「忘れるなよ」と捨て台詞を残して、自分の席に戻って行った。
うわー怖えー!
ガタガタ震えていたら、翼ちゃんが、俺の席まで、お茶と鯛焼きを持って来てくれた。
翼
「どうぞ、如月さん。……何だか、顔色が悪いような気がしますけど」
如月
「大丈夫大丈夫!」
俺は鯛焼きを頬張った。
如月
「うん、美味しいね!」
明らかに挙動不審な俺を心配そうに見ながらも、彼女は微笑む。
そう。
その顔が好きなんだ。
きみを泣かせるような事は、絶対にしない。
室長もきっと、俺を信じて託してくれたんだと思う。
世界で一番、幸せな女の子にするよ。
きみは俺を、世界で一番幸せな男にしてくれたんだから。
~END~