第2回 読むラジオ【読み聞かせ編】

  • ウテナ

    サイクリング楽しかったねー

  • アンシー

    はい、
    お天気も良くて。

  • ウテナ

    ほんとにね。

  • ウテナ

    また遊びに行きたいね

  • アンシー

    はい。

  • ウテナ

    じゃあ、
    今日もはじめようか

  • アンシー

    そうしましょう

  • ON AIR
  • アンシー

    ウテナとアンシーの

  • アンシー

    読むラジオ♡

  • ウテナ

    始まったばかりで
    悪いんだけどさー

  • ウテナ

    ボク、
    明日サッカーの試合があるから
    早起きしなくちゃいけないんだ

  • アンシー

    あら

  • ウテナ

    でも、

  • ウテナ

    早起きしなくちゃいけない日に
    限って

  • ウテナ

    夜遅くになっても

  • ウテナ

    なかなか寝付けない事って
    あるよね

  • アンシー

    遠足の前の日

  • アンシー

    みたいなことですか?

  • ウテナ

    そうそう

  • ウテナ

    楽しみな事があると

  • ウテナ

    わくわくして

  • ウテナ

    ぜんぜん寝れないんだ

  • アンシー

    分かります

  • ウテナ

    だろ?

  • アンシー

    はい

  • ウテナ

    今、それ。

  • アンシー

    まあ大変

  • ウテナ

    どうしよ

  • ウテナ

    朝4時に起きれるかな?

  • アンシー

    それでしたら
    ウテナ様

  • アンシー

    もうお休みになられたほうが

  • アンシー

    よろしいかと

  • ウテナ

    だよね

  • ウテナ

    ラジオなんか
    やってる場合じゃ

  • ウテナ

    ないよ

  • アンシー

    そうですよ
    ウテナ様

  • アンシー

    早急に
    手を打たなければ

  • ウテナ

    わかった

  • ウテナ

    じゃ

  • ウテナ

    寝よっかな

  • アンシー

    お休みさないませ

  • ウテナ

    スヤァ…

  • アンシー

    ……

  • ウテナ

    ……

  • アンシー

    ……

  • ウテナ

    だめだ…

  • ウテナ

    ぜんぜん
    眠くならないよ

  • アンシー

    羊さんを
    数えてみたら

  • アンシー

    いかがでしょう?

  • ウテナ

    数えるのに
    集中しちゃって

  • ウテナ

    眠くなった
    ためしがないよ

  • アンシー

    わかりました
    ウテナ様

  • アンシー

    私が子守唄を
    歌って差し上げます

  • ウテナ

    えっ…

  • ウテナ

    うた…?

  • ウテナ

    姫宮の…?

  • ウテナ

    それはちょっと

  • アンシー

    お気に
    召しませんか?

  • ウテナ

    うーん、
    歌はまた

  • ウテナ

    あとにして
    もらえるかな

  • ウテナ

    そうだ、

  • ウテナ

    何か
    お話してよ

  • ウテナ

    姫宮

  • アンシー

    まあウテナ様ったら

  • アンシー

    小さい子どもみたい

  • ウテナ

    いいだろ

  • ウテナ

    読み聞かせとか

  • ウテナ

    あんまり

  • ウテナ

    してもらったこと
    ないんだから…

  • アンシー

    わかりました

  • アンシー

    ウテナ様のために

  • アンシー

    とっておきの
    絵本を

  • アンシー

    用意して
    差し上げます

  • アンシー

    少々お待ちください。

  • アンシー

    (ゴソゴソ)

  • ウテナ

    (わくわく)

  • アンシー

    お待たせいたしました

  • アンシー

    お待たせし過ぎたかも
    しれません

  • ウテナ

    そんなに
    待ってないよ

  • アンシー

    今日は

  • アンシー

    『七ずきんちゃん』を

  • アンシー

    読んで差し上げますね

  • ウテナ

    七ずきんちゃん…?

  • ウテナ

    赤ずきんちゃんじゃ
    なくて??

  • アンシー

    古典も最新版に
    アップデートされてるんですよ

  • ウテナ

    ん?

  • ウテナ

    あ、そう

  • アンシー

    ではウテナ様、

    ちゃんとお布団に横になって。

  • ウテナ

    うん

  • アンシー

    目を閉じて
    リラックスした状態で
    聞いてくださいね

  • ウテナ

    むにゃむにゃ…


    なんだか

  • ウテナ

    もう
    眠くなってきたぞ…

  • 令和版
  • ネオお伽噺
  • 『七ずきんちゃん』
  • アンシー

    むかしむかし

    ある学園に

  • アンシー

    七ずきんちゃんという

    とても可愛らしくて

  • アンシー

    とても意地の悪い

    女の子がいました。

  • アンシー

    七ずきんちゃんには

  • アンシー

    高等部に在籍する

    お兄さまがおりました。

  • アンシー

    七ずきんちゃんは

    お兄さまのことが

    大好き。

  • アンシー

    しかしお兄さまは

  • アンシー

    妹である

    七ずきんちゃんよりも

  • アンシー

    七ずきんちゃんの

    大嫌いな友だちばかりを

    可愛がっているのです。

  • アンシー

    それが気に喰わない

    七ずきんちゃん。

  • アンシー

    今日こそは

    一緒にランチをと思い、

  • アンシー

    パンと葡萄酒と

  • アンシー

    世界の果てからの手紙を持って

  • アンシー

    お兄さまのいる

    高等部の校舎へ

  • アンシー

    突撃することにしました。

  • アンシー

    七ずきんちゃんは

    鳳学園中等部校舎の廊下を

  • アンシー

    てくてくと

    歩きはじめます

  • アンシー

    一番はじめの

    曲がり角で

  • アンシー

    生徒指導の先生と

    鉢合わせました。

  • アンシー

    『まあ桐生さん!』

    『なぜ学校にワインを持ち込んでいるの!?』

  • アンシー

    『没収です!』

  • アンシー

    葡萄酒を取り上げられて

    しまいました。

  • アンシー

    それでも七ずきんちゃんは

    廊下を進み続けます。

  • アンシー

    次の曲がり角で

  • アンシー

    大嫌いな友だちと

    鉢合わせました。

  • アンシー

    『あんたのせいよ!』

    『あんたがお兄さまをたぶらかしたから!』

  • アンシー

    『お兄さまはわたくしに冷たくなったのよ!』

  • アンシー

    『絶対に許さないんだから!』

  • アンシー

    七ずきんちゃんは

  • アンシー

    いろいろな鬱憤を

    その嫌いな友だちにぶつけたことで

  • アンシー

    少し気分が良くなりました。

  • アンシー

    もう少しで

    高等部の校舎です。

  • アンシー

    七ずきんちゃんも

    早く
    お兄さまに会いたいという思いで

  • アンシー

    少し駆け足になりました。

  • アンシー

    すると背後から

  • アンシー

    なにか大きな音が

    聞こえてきました。

  • アンシー

    『暴れ馬だー!』

  • アンシー

    『暴れ馬が出たぞー!』

  • アンシー

    いつものことです。

  • アンシー

    七ずきんちゃんは

    さっと身をかわして

  • アンシー

    暴れ馬をやり過ごしました。

  • アンシー

    『暴れカンガルーだー!』

    『暴れカンガルーが出たぞー!』

  • アンシー

    いつものことです。

  • アンシー

    『つわぶき!』

  • アンシー

    七ずきんちゃんは

    しもべを呼びました。

  • アンシー

    しもべはどこからともなく

    やってきて、

  • アンシー

    暴れカンガルーを

    ノックアウトしました。

  • アンシー

    『よくやったわ、つわぶき』

    『あとでご褒美をあげるわね

  • アンシー

    『はい!七実さん!』

  • アンシー

    よく訓練されたしもべのおかげで

  • アンシー

    七ずきんちゃんは

    ようやく

  • アンシー

    お兄さまのいる

    高等部校舎へと

    たどり着きました。

  • アンシー

    『冬芽なら』

    『中庭の薔薇園にいるはずだが』

  • アンシー

    生徒会の女が

    そう教えてくれました。

  • アンシー

    せっかく高等部校舎まで来たのに…。

  • アンシー

    七ずきんちゃんは

    モーモー言いながら

  • アンシー

    中庭へと戻りました。

  • アンシー

    中庭の薔薇園には

    庭番の侍女がいます。

  • アンシー

    お兄さまは

    その侍女のことも

    気に入っているので

  • アンシー

    七ずきんちゃんは

    侍女のことが

    大嫌いでした。

  • アンシー

    『幹!』

  • アンシー

    七ずきんちゃんは

  • アンシー

    物陰から

    庭番侍女のことを

    盗み見ていた

  • アンシー

    男友達を

    呼び寄せました。

  • アンシー

    『あの女を連れて』

    『少しのあいだ、どこかに消えて頂戴』

  • アンシー

    『今日だけはお兄さまを独占したいのよ』

  • アンシー

    庭番侍女は

    『薔薇に水を 薔薇に水を』と

    嘆いていましたが

  • アンシー

    おとなしく

    七ずきんちゃんの

    友だちに

  • アンシー

    連れていかれました。

  • アンシー

    『ああ、』

    『やっとお兄さまと』

  • アンシー

    『お話しできるわ』

  • アンシー

    七ずきんちゃんは

    居ても立っても居られなくて

  • アンシー

    薔薇園のなかに

    飛び込みました。

  • アンシー

    そこにはお兄さまと、

  • アンシー

    名前も知らない女がいました。

  • アンシー

    『お兄さま、誰?その人』

  • アンシー

    『七実には関係ない』

  • アンシー

    『こんなところで、ナニをしていたの?』

  • アンシー

    『七実には言っても分からないコトだ』

  • アンシー

    『どうして胸元をはだけているの?』

  • アンシー

    『オトナだからだよ』

  • アンシー

    『どうして見つめ合っているの?』

  • アンシー

    『オトナ同士だからだよ』

  • アンシー

    『どうしてわたくしの方を見てくれないの?』

  • アンシー

    『もう妹と遊ぶような歳じゃないからさ』

  • アンシー

    七ずきんちゃんは

    悲しくなりました。

  • アンシー

    それでも、

    黙って帰ることは

  • アンシー

    七ずきんちゃんのプライドが

    許しませんでした。

  • アンシー

    『これを、お兄さまに』

  • アンシー

    七ずきんちゃんは

    持参したパンと、

  • アンシー

    世界の果てからの手紙を

  • アンシー

    お兄さまの背中に

    投げつけました。

  • アンシー

    『さようなら』

  • アンシー

    『大好きなお兄さま』

  • アンシー

    七ずきんちゃんは

    そのまま振り返りもせず、

  • アンシー

    中庭をあとにしました。

  • アンシー

    めでたし

    めでたし。

  • アンシー

    いかがでしたか?

    ウテナ様

  • ウテナ

    むにゃむにゃ…パン…

  • アンシー

    なんて健やかな寝言…

    ウテナ様は可愛いですね

  • アンシー

    それでは、
    本日のラジオはこのへんで

  • アンシー

    ばっははーい

  • THE END

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