Escape to the NIGHT PARTY

■後書


 唐突ですが、幼少期にラブロマンスの情緒の大部分を洋画に育てられた筆者です。なのであらゆるジャンルにおいて「着飾ってパーティに参加する」というミッションをさせずにはいられず、今回も「それぞれお呼ばれしているパーティから抜け出して二人きりで楽しみ直す、みたいな話が書きたい」という漠然とした願望からスタートしました。

 タイトルについて、「Escape to~…だと、夜会から抜け出すのではなくて夜会へ抜け出すという意味にならんか?」と思われるかもしれませんが、「夜会へ」という意味で合っています。「こんなつまらないパーティはさっさと抜け出して、二人きりの特別なナイトパーティへと繰り出そう!」くらいの意味を持たせたかったのですが、私は英語が壊滅的にできないので雰囲気だけ受け取っていただけたらと思います。とにもかくにも、パーティにまつわる話を弟サイドと姉サイドでそれぞれ出したかったのです。
 内容としては、弟サイドは既刊でさんざんやってきた二人の『遠慮』の部分への最終決着、姉サイドは「わいきゃめってこういうCPだよね~」という入門編のつもりです。

 お呼ばれ会場から抜け出すのならそれなりの理由をつけねばなるまいと考え、ベタではありますがそれぞれパーティ会場で厄介そうなナンパに遭うことにしました。とはいえ、それで弟サイドがあんなド修羅場になってしまうとは思わず、プロット段階では泣かせるつもりがなかったリーンを泣かせてしまい、あそこはきゃめくんもそうですが書いていて私もしんどかったです。なので、今回抱き合わせで出したもう一冊の新刊がひたすら二人でイチャイチャしてるみたいな内容になったのですが……


 弟サイド、わざと二人のその場の胸中をはっきりとは描写せず進んでみたのですが、いかがだったでしょうか?パーティに向けて順調に準備が進んで、リーンはわくわくしてくれていて、きゃめくんもほっと胸を撫で下ろしたはずだったのに。実は二人共いろいろと抱え続けていた想いが爆発寸前で、それがあのお手本のように無粋なモブのナンパをきっかけに決壊したという感じです。
 二人にとっての健全な交際とは何か。今の二人にできる範囲で互いの愛情を伝え合い、受け止め合うためにはどうすればいいか。そんなやりとりをずっと続けてきたきゃめりんちゃんが「今度こそ遠慮はしない」と誓い合って吹っ切れるきっかけになった一夜のお話でした。私も今回で懲りたので、もう吹っ切れ前のラインを探り合っているようなお話は書かないと思います。たぶん。

 そして姉サイドの方は、先述したようにわいきゃめ入門編みたいな軽さになりました。何か複雑な気持ちのすれ違いやクソデカ感情の殴り合いがあるわけではなく、ただただ、二人の恋人関係ってどういう感じなの?という部分だけ書ければいいかなと思いまして。
 あと、どうしても二人の交際について書くとすると実家の兄達を出さざるを得ないので今回も兄上とカメリアおじさんがだいぶお邪魔しました。本当はもう一人執事がいるんですが、そこまで出すとさすがに……となったので今回はお留守番です。あとハンコックもどうしてもおまけでついてきてしまう。ハンコックは今後もわいきゃめ一番のサポーター役として、きゃめりんちゃんにとってのガイアのようなポジションでたくさん首を突っ込んでもらうことになると思います。


 ところで弊ヒカセン時空、いろいろな名前を洋画やスターから拝借しています。
お察しの方もいるかと思いますが、ガルシア錬金商の名はアンディ・ガルシア氏、そして今回ワイモンドが変装した秘書のベラージオは実在するカジノ――かつ映画『オーシャンズ11』の中でガルシア氏が演じたカジノ王がオーナーとして経営しているカジノの名前です。パーティ会場へ赴く前の「生まれたつきオーケー」という台詞も同映画シリーズ内の台詞をオマージュさせていただきました。オーシャンズシリーズ大好きなんですよね、特に8の最後の着飾って階段を降りるシーンは全女性ヒカセンで見たいです。

 長くなりましたが、今回はボリュームのある本書をお手に取っていただき、こんな場所まで読んでいただきありがとうございました。もしもきゃめりんちゃん、わいきゃめのどちらか片方だけが目当てでもう片方は読んでないよ!という方がいましたら、この両者はいろいろと世界線を共有する機会が多いので、何か暇つぶしが必要になったときにでも読んでいただけると嬉しいです。




カナ
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