21. 憧れのあなた②
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そうしてフォーラが大急ぎで玄関ホールに続く下り階段の直前まで辿り着いた時、彼女は先程からずっと捜し続けていた人物の背中を、たった一人、階下に広がるホールの中ほどにようやく見つけた。
「せ、先生っ!」呼吸の乱れたままフォーラは叫んだ。大きなトランクを片手に持ったルーピンは、自分を呼ぶその声に振り返った。
「……!フォーラ」
彼女が階段を駆け下りると、ルーピンはそちらの方へ彼女を迎えるように急いで戻ってきた。
「フォーラ、大丈夫かい。私を追いかけてきてくれたのか」二人が互いを目の前にして向き合い、ルーピンがトランクを足元に置きながら言った。フォーラは乱れた呼吸のまま頷くと、そのまま勢いに任せて、今まで自分が思っていたことを彼に伝えた。
「……っ……私、先生に謝らなくちゃいけない事が、沢山あるんです……!!私、先生に黙って本物の黒猫のフリをして……!」
ルーピンは驚くでもなく怒るでもない、真剣な表情でフォーラの話に頷いた。
「ああ、分かっているよ」
「本当は、先生の寂しさを紛らわせられたらって、それだけだったのに……私、先生の本当の気持ちなんて考えていなかった……!」
「黒猫が私を元気付けようとしてくれたのは伝わってきたし、おかげで狼姿の間は十分に気が紛れたとも」
「それに私、先生のプライバシーを侵害しました……こんな酷いこと、どうして最初から気付かなかったのか―――」
「ああ、それも知ってる」
「だから私、先生と話す権利なんてないって、先生のことを避けて」
「大丈夫、落ち着いて。昨日の大広間で君があの黒猫だったと理解した時、最近君に避けられていた理由も想像がついたよ」
フォーラは今にも泣き出しそうだった。どうしてこの人はこんな惨めな自分を真っ直ぐ見てくれるのだろうか?
「ど、どうして先生は……私のことを責めないのですか……」フォーラは徐々に俯きながら尋ねた。愛想が尽きて怒る気力もなくなったのだとしたら、自分はもう何と謝ればいいのだろう?そう思うと彼の目を見るのがどんどんつらくなった。
「私は君を責めたりしないよ」ルーピンは落ち着いた声色で言った。
「どうして……?私、こんなに酷いことを先生にしてしまったのに。」
今やフォーラは目元に涙を一杯溜めていて、それは今にも零れ落ちそうだった。
「フォーラ、顔を上げて。私の話を聞いてくれ」
フォーラはゆっくりと顔を上げると再びルーピンの目を見た。彼もフォーラをじっと見つめていた。そして彼は彼女の涙を親指でそっと拭うと、話し始めた。
「私は初めてあの猫が部屋を訪れてくれた時、本当に嬉しかった。ホグワーツに来る前は、狼でない時もずっと寂しい想いで過ごしてきたから。だから君が―――いや、あの猫が来るようになって、私は狼の時に話し相手がいてくれるということに喜びを感じていた」
「だけど、私は先生に黙って……」
ルーピンは眉を下げて笑った。
「そうだね。昨日、大広間で君が黒猫だと知った時、正直とても驚いたし戸惑った。ずっと君に私が人狼だと知られていたのか、ってね。君は私が定期的に脱狼薬を飲んでいたことも知っていたんだろう」ルーピンの言葉に自然とフォーラは申し訳ない表情になった。そんな彼女をまだじっと見たままルーピンは続けた。
「途中で君が満月の日に部屋へ来なくなったのも、人間の時の君が私を避け始めた理由も、昨日ようやく理解したよ。フォーラはずっと罪悪感を抱えていたんだね」
フォーラが小さく頷くとルーピンは優しく笑い、彼女の頭を一度だけ撫でた。
「それに、もう一つ分かったことがある」
「なん、ですか?」
ルーピンは彼女の頭から手を離すと、先程の表情とはまた違う、哀しみを帯びた笑みを見せた。
「私が人狼だと知っても、フォーラ、君は私に歩み寄ってくれた。こんな人狼の私に」
フォーラは何も言葉を返すことができなかった。ルーピンはそんな彼女を少しの間見つめた後、再び口を開いた。
「それから、本当に謝らなければならないのは私の方だ」ルーピンはその表情に暗い影を落とした。
「信じてもらえないかもしれないが……私は一昨日の夜のことを、本当に朧気 にしか覚えていなかった。それだけあの時の私は気が立っていて正気でなかったんだろう。その中で、恐らく私が君や他の生徒を噛もうとしてしまったことは僅かに覚えがあった。だがそれは幻覚だと思った―――いや、そう思い込もうとしたと言った方が正しいかもしれない」
ルーピンは自身の複雑な心境を落ち着かせるように一度深く目を閉じると、ゆっくり瞼を上げた。
「私が気を失って目を覚ました後でダンブルドアから教えられたのは、私と君が隣り合って倒れていたということだった。それを聞いた時……私は本当に君のことを噛もうとしていたんだと理解した。それなのに、私は君に謝罪の一つもせず、この城から立ち去ろうとしてしまった」
フォーラは普段冷静なルーピンが取り乱しているのを感じた。彼は自身の胸に片手を当て、しっかりとフォーラに目を合わせ直した。
「本当にすまなかった。謝っても謝り切れない。僕の方こそ失望されても仕方のないことをした。君を危険に晒して怖い思いをさせた。それに、人の姿であっても君に会ってしまえば、きっと君を怯えさせてしまうだろうと……。大切な生徒の君にどんな失望の顔を向けられるかと思うと怖くて、その結果ここから逃げ出そうとしたなんて。君はこうして勇気を出して僕に会いにきてくれたというのに。本当に情けない……」ルーピンの声色は次第に震えた。
そしてルーピンが耐え切れずに瞳を伏せて手を下した時、おもむろに彼は自身の両手をそっと包まれる感覚がして目を開いた。彼の目の前には、一生懸命こちらを見て言葉を伝えようとするフォーラの姿があった。
「いいんです。私、気にしていません。本当ですよ。だって一昨日の夜はそもそも私が狼姿の先生を鎮めようと近付かなければ、貴方が私を噛もうとすることもなかったんですから……。寧ろ、その件も悪いのは私の方だと思います。」
「せ、先生っ!」呼吸の乱れたままフォーラは叫んだ。大きなトランクを片手に持ったルーピンは、自分を呼ぶその声に振り返った。
「……!フォーラ」
彼女が階段を駆け下りると、ルーピンはそちらの方へ彼女を迎えるように急いで戻ってきた。
「フォーラ、大丈夫かい。私を追いかけてきてくれたのか」二人が互いを目の前にして向き合い、ルーピンがトランクを足元に置きながら言った。フォーラは乱れた呼吸のまま頷くと、そのまま勢いに任せて、今まで自分が思っていたことを彼に伝えた。
「……っ……私、先生に謝らなくちゃいけない事が、沢山あるんです……!!私、先生に黙って本物の黒猫のフリをして……!」
ルーピンは驚くでもなく怒るでもない、真剣な表情でフォーラの話に頷いた。
「ああ、分かっているよ」
「本当は、先生の寂しさを紛らわせられたらって、それだけだったのに……私、先生の本当の気持ちなんて考えていなかった……!」
「黒猫が私を元気付けようとしてくれたのは伝わってきたし、おかげで狼姿の間は十分に気が紛れたとも」
「それに私、先生のプライバシーを侵害しました……こんな酷いこと、どうして最初から気付かなかったのか―――」
「ああ、それも知ってる」
「だから私、先生と話す権利なんてないって、先生のことを避けて」
「大丈夫、落ち着いて。昨日の大広間で君があの黒猫だったと理解した時、最近君に避けられていた理由も想像がついたよ」
フォーラは今にも泣き出しそうだった。どうしてこの人はこんな惨めな自分を真っ直ぐ見てくれるのだろうか?
「ど、どうして先生は……私のことを責めないのですか……」フォーラは徐々に俯きながら尋ねた。愛想が尽きて怒る気力もなくなったのだとしたら、自分はもう何と謝ればいいのだろう?そう思うと彼の目を見るのがどんどんつらくなった。
「私は君を責めたりしないよ」ルーピンは落ち着いた声色で言った。
「どうして……?私、こんなに酷いことを先生にしてしまったのに。」
今やフォーラは目元に涙を一杯溜めていて、それは今にも零れ落ちそうだった。
「フォーラ、顔を上げて。私の話を聞いてくれ」
フォーラはゆっくりと顔を上げると再びルーピンの目を見た。彼もフォーラをじっと見つめていた。そして彼は彼女の涙を親指でそっと拭うと、話し始めた。
「私は初めてあの猫が部屋を訪れてくれた時、本当に嬉しかった。ホグワーツに来る前は、狼でない時もずっと寂しい想いで過ごしてきたから。だから君が―――いや、あの猫が来るようになって、私は狼の時に話し相手がいてくれるということに喜びを感じていた」
「だけど、私は先生に黙って……」
ルーピンは眉を下げて笑った。
「そうだね。昨日、大広間で君が黒猫だと知った時、正直とても驚いたし戸惑った。ずっと君に私が人狼だと知られていたのか、ってね。君は私が定期的に脱狼薬を飲んでいたことも知っていたんだろう」ルーピンの言葉に自然とフォーラは申し訳ない表情になった。そんな彼女をまだじっと見たままルーピンは続けた。
「途中で君が満月の日に部屋へ来なくなったのも、人間の時の君が私を避け始めた理由も、昨日ようやく理解したよ。フォーラはずっと罪悪感を抱えていたんだね」
フォーラが小さく頷くとルーピンは優しく笑い、彼女の頭を一度だけ撫でた。
「それに、もう一つ分かったことがある」
「なん、ですか?」
ルーピンは彼女の頭から手を離すと、先程の表情とはまた違う、哀しみを帯びた笑みを見せた。
「私が人狼だと知っても、フォーラ、君は私に歩み寄ってくれた。こんな人狼の私に」
フォーラは何も言葉を返すことができなかった。ルーピンはそんな彼女を少しの間見つめた後、再び口を開いた。
「それから、本当に謝らなければならないのは私の方だ」ルーピンはその表情に暗い影を落とした。
「信じてもらえないかもしれないが……私は一昨日の夜のことを、本当に
ルーピンは自身の複雑な心境を落ち着かせるように一度深く目を閉じると、ゆっくり瞼を上げた。
「私が気を失って目を覚ました後でダンブルドアから教えられたのは、私と君が隣り合って倒れていたということだった。それを聞いた時……私は本当に君のことを噛もうとしていたんだと理解した。それなのに、私は君に謝罪の一つもせず、この城から立ち去ろうとしてしまった」
フォーラは普段冷静なルーピンが取り乱しているのを感じた。彼は自身の胸に片手を当て、しっかりとフォーラに目を合わせ直した。
「本当にすまなかった。謝っても謝り切れない。僕の方こそ失望されても仕方のないことをした。君を危険に晒して怖い思いをさせた。それに、人の姿であっても君に会ってしまえば、きっと君を怯えさせてしまうだろうと……。大切な生徒の君にどんな失望の顔を向けられるかと思うと怖くて、その結果ここから逃げ出そうとしたなんて。君はこうして勇気を出して僕に会いにきてくれたというのに。本当に情けない……」ルーピンの声色は次第に震えた。
そしてルーピンが耐え切れずに瞳を伏せて手を下した時、おもむろに彼は自身の両手をそっと包まれる感覚がして目を開いた。彼の目の前には、一生懸命こちらを見て言葉を伝えようとするフォーラの姿があった。
「いいんです。私、気にしていません。本当ですよ。だって一昨日の夜はそもそも私が狼姿の先生を鎮めようと近付かなければ、貴方が私を噛もうとすることもなかったんですから……。寧ろ、その件も悪いのは私の方だと思います。」