17. スニッチと君の声
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フォーラが次にドラコと話せたのは、談話室で行われた優勝お祝いパーティーの時だった。それまでドラコの周りは人だらけで近付くことすらできなかったのだ。キャプテンからの一言があった後で談話室は盛大なお祝いムードとなった。何処から集めてきたのか食べ物が幾つかのテーブルに並べられていたし、クラッカーも所々で鳴っていた。
ようやくドラコがフォーラのそばまで来た時、彼女は改めて彼にお祝いの言葉を伝えた。
「ドラコ、本当におめでとう。物凄く格好良かったわ。」
ドラコはフォーラを見た途端、スニッチを掴んだ後にあまりの嬉しさから彼女を抱き締めてしまった時の記憶が自然と頭をよぎった。彼にはまだ彼女の身体の感触が残っているような気がしていたし、加えて『物凄く格好良かった』だなんて好きな子に言われて照れないわけがなかった。
「ありがとう、そんな風に言われると気恥ずかしいな。でも僕が勝てたのはフォーラのおかげだ。試合中に君の声が聞こえて、振り向いたらそっちに偶然スニッチがいたんだから」
「私の声、聞こえたの……?あんなに会場は騒ついていたのに。」
「ああ、何故だろうな。僕にも分からない」
そこへ同じ学年の男子生徒がドラコの後ろからやって来て、いたずらっぽくドラコとフォーラに話し掛けた。
「ドラコ、君は今日の立役者だな、おめでとう!ところで君ってば、よくもまああんなに大勢の前でフォーラに抱きつけたもんだ!みんな君たち二人がただの幼馴染じゃないかもしれないって噂してる」
「ただの幼馴染じゃないって、どういうこと?」フォーラがそのように質問すると、その直後に別の同級生の女子生徒が便乗して会話の輪に加わった。
「もう、言わなくても分かるでしょ?私としては前から二人はお似合いだと思ってたんだけどなあ」
「「えっ」」フォーラとドラコは口を揃えて素っ頓狂な声をあげた。
(私とドラコが、お似合い?それに噂って……。ええと、つまりそれって)
フォーラは自身の頬がじんわり熱くなるのを感じた後で、無意識にドラコの方を見やった。すると彼も顔を幾らかピンク色に染めてこちらを見ていたものだから、二人は互いに目が合うと直ぐに逸らした。そのためフォーラがドラコの表情を捉えたのは一瞬だったのだが、その残像から察するに、どうやら彼も彼女と同じことを考えているようだった。
「ぼっ……僕たちはそんな噂になるような関係じゃない。なあフォーラ」
「ええ、そっそうね。」
「本当に?実は付き合ってるんじゃないの?それに二人とも顔が赤いんだもの。疑いたくもなるわ」
その言葉にフォーラは慌てて言葉を返した。
「これはっ……その、急にそんなことを言われたからで!」
フォーラ自身、自分がどうしてこんなに動揺しているのか分からなかった。するとドラコも彼女と同じく弁解した。
「僕だってそうさ。それに、フォーラに好きな奴がいるって知っているのに、僕が彼女を好きになるなんて……そんな馬鹿な」
ドラコは自分で言っていて何だか虚しくなってしまった。本心としては、周りに囃し立てられて気恥ずかしいながらも嬉しくないわけがなかったし、幾らか顔を赤くするフォーラを見て心が踊った。しかし彼女が本当に好きなのは自分ではなく別の人なのだ。
「えっ、フォーラ、好きな人がいるの!?誰?私も知ってる人?」
「えっと、その……」フォーラが狼狽えていると、男子生徒が自身の後ろ頭をかいた。
「フォーラとドラコのことはまだ冗談だったからさておいて。俺の知り合いに何人か君のことを好いてる奴がいてさ。となるとそいつらには諦めるよう言った方がいいかもしれないな」その言葉にドラコが反応した。
「知り合い?誰だ?」
「ああ、一人はハッフルパフの奴だ。フォーラ、俺の情報によると君って結構モテるぜ。さて、ドラコは嫉妬しているようだし、この話はそろそろお仕舞いだな。行こう」同級生の彼はニヤリと笑い、隣の女子生徒に声を掛けるとその場を離れていった。そんな彼にドラコは再び顔を赤くして反論した。
「嫉妬なんかしてない!まったく君は―――」
ドラコが二人を追いかけてその場を去ってしまった後で、フォーラは先程のドラコの台詞を思い返した。
『フォーラに好きな奴がいる』
最近のフォーラはなるべくルーピンのことを思い浮かべないようにしてきた。授業でもできるだけ目を合わせないようにしていたし、深く話すことも避けてきた。やはりその理由は、猫になって彼の秘密を覗いていた自分が彼に近付くのはおこがましいと思ったこと。親しくなろうとするにつれて罪悪感が押し寄せてきてしまったこと。そして、彼がフォーラを黒猫だと知らなくても、人狼であることを隠している彼からすれば、フォーラの行動はとても不快で嫌悪感のあることに違いないと感じたことが挙げられた。
本当はフォーラだってルーピンとこれまでどおり普通に話したり接したりしたかった。しかしこれまでの事を思えば、彼とそのように交流する権利は自分にはないのだと思わずにはいられなかった。
するとそこへパンジーとルニーがお菓子の包みを幾つか持ってフォーラのそばまでやって来た。二人はフォーラの様子が少々おかしいことに気付いたようだった。
「フォーラ、大丈夫?落ち込んでいたみたいだけど」
「ううん、なんでもないの。それ美味しそうね。一つ欲しいわ。」
「ええ、あげる」ルニーがお菓子を差し出しながら続けた。「それより本当に無理してない?そういえば最近『あの人』と話してるところを見ないけど、もしかしてそれが原因?」
ルニーが言う『あの人』とは、勿論ルーピンのことだった。
「わ、分かるの?」フォーラの問いにルニーが曖昧に笑った。
「うーん、そうね。実を言うと、さっきドラコたちと話してるのがちょっと聞こえちゃった。そのあとは目に見えてフォーラの元気がなくなってたんだもの。それに、前まではあの人のことをよく話していたのに、どうして?最近のフォーラはあの人を避けてるみたい」
「……私、確かに避けていると思う。」
「何かされたの?」パンジーが尋ねた。
「違うの、先生は何もしていないわ。悪いのは私で、……そもそも先生を好きになるなんてこと自体が、間違っていると思って……」
フォーラは咄嗟に本心をそのように別の理由で隠してしまった。彼女はパンジーとルニーの心配そうな表情を見て、このお祝いの場で二人にこんな顔をさせるのは随分似つかわしくないと感じた。
「ううん、やっぱり今のは聞かなかったことにして。せっかく気を遣ってくれたのにごめんなさい。」
「いいのよ。フォーラの悩みは理解できるから」パンジーが言った。「年齢の壁はどうしても避けられないもの。でも、もっと弱音を吐きたくなったらいつでも言って。兎に角、今はお祝いを楽しみましょ!ね!」
パンジーとルニーの笑みによってフォーラも自然と表情を和らげた。しかしその笑顔の裏には、友人たちへの申し訳なさが隠れていたのだった。
ようやくドラコがフォーラのそばまで来た時、彼女は改めて彼にお祝いの言葉を伝えた。
「ドラコ、本当におめでとう。物凄く格好良かったわ。」
ドラコはフォーラを見た途端、スニッチを掴んだ後にあまりの嬉しさから彼女を抱き締めてしまった時の記憶が自然と頭をよぎった。彼にはまだ彼女の身体の感触が残っているような気がしていたし、加えて『物凄く格好良かった』だなんて好きな子に言われて照れないわけがなかった。
「ありがとう、そんな風に言われると気恥ずかしいな。でも僕が勝てたのはフォーラのおかげだ。試合中に君の声が聞こえて、振り向いたらそっちに偶然スニッチがいたんだから」
「私の声、聞こえたの……?あんなに会場は騒ついていたのに。」
「ああ、何故だろうな。僕にも分からない」
そこへ同じ学年の男子生徒がドラコの後ろからやって来て、いたずらっぽくドラコとフォーラに話し掛けた。
「ドラコ、君は今日の立役者だな、おめでとう!ところで君ってば、よくもまああんなに大勢の前でフォーラに抱きつけたもんだ!みんな君たち二人がただの幼馴染じゃないかもしれないって噂してる」
「ただの幼馴染じゃないって、どういうこと?」フォーラがそのように質問すると、その直後に別の同級生の女子生徒が便乗して会話の輪に加わった。
「もう、言わなくても分かるでしょ?私としては前から二人はお似合いだと思ってたんだけどなあ」
「「えっ」」フォーラとドラコは口を揃えて素っ頓狂な声をあげた。
(私とドラコが、お似合い?それに噂って……。ええと、つまりそれって)
フォーラは自身の頬がじんわり熱くなるのを感じた後で、無意識にドラコの方を見やった。すると彼も顔を幾らかピンク色に染めてこちらを見ていたものだから、二人は互いに目が合うと直ぐに逸らした。そのためフォーラがドラコの表情を捉えたのは一瞬だったのだが、その残像から察するに、どうやら彼も彼女と同じことを考えているようだった。
「ぼっ……僕たちはそんな噂になるような関係じゃない。なあフォーラ」
「ええ、そっそうね。」
「本当に?実は付き合ってるんじゃないの?それに二人とも顔が赤いんだもの。疑いたくもなるわ」
その言葉にフォーラは慌てて言葉を返した。
「これはっ……その、急にそんなことを言われたからで!」
フォーラ自身、自分がどうしてこんなに動揺しているのか分からなかった。するとドラコも彼女と同じく弁解した。
「僕だってそうさ。それに、フォーラに好きな奴がいるって知っているのに、僕が彼女を好きになるなんて……そんな馬鹿な」
ドラコは自分で言っていて何だか虚しくなってしまった。本心としては、周りに囃し立てられて気恥ずかしいながらも嬉しくないわけがなかったし、幾らか顔を赤くするフォーラを見て心が踊った。しかし彼女が本当に好きなのは自分ではなく別の人なのだ。
「えっ、フォーラ、好きな人がいるの!?誰?私も知ってる人?」
「えっと、その……」フォーラが狼狽えていると、男子生徒が自身の後ろ頭をかいた。
「フォーラとドラコのことはまだ冗談だったからさておいて。俺の知り合いに何人か君のことを好いてる奴がいてさ。となるとそいつらには諦めるよう言った方がいいかもしれないな」その言葉にドラコが反応した。
「知り合い?誰だ?」
「ああ、一人はハッフルパフの奴だ。フォーラ、俺の情報によると君って結構モテるぜ。さて、ドラコは嫉妬しているようだし、この話はそろそろお仕舞いだな。行こう」同級生の彼はニヤリと笑い、隣の女子生徒に声を掛けるとその場を離れていった。そんな彼にドラコは再び顔を赤くして反論した。
「嫉妬なんかしてない!まったく君は―――」
ドラコが二人を追いかけてその場を去ってしまった後で、フォーラは先程のドラコの台詞を思い返した。
『フォーラに好きな奴がいる』
最近のフォーラはなるべくルーピンのことを思い浮かべないようにしてきた。授業でもできるだけ目を合わせないようにしていたし、深く話すことも避けてきた。やはりその理由は、猫になって彼の秘密を覗いていた自分が彼に近付くのはおこがましいと思ったこと。親しくなろうとするにつれて罪悪感が押し寄せてきてしまったこと。そして、彼がフォーラを黒猫だと知らなくても、人狼であることを隠している彼からすれば、フォーラの行動はとても不快で嫌悪感のあることに違いないと感じたことが挙げられた。
本当はフォーラだってルーピンとこれまでどおり普通に話したり接したりしたかった。しかしこれまでの事を思えば、彼とそのように交流する権利は自分にはないのだと思わずにはいられなかった。
するとそこへパンジーとルニーがお菓子の包みを幾つか持ってフォーラのそばまでやって来た。二人はフォーラの様子が少々おかしいことに気付いたようだった。
「フォーラ、大丈夫?落ち込んでいたみたいだけど」
「ううん、なんでもないの。それ美味しそうね。一つ欲しいわ。」
「ええ、あげる」ルニーがお菓子を差し出しながら続けた。「それより本当に無理してない?そういえば最近『あの人』と話してるところを見ないけど、もしかしてそれが原因?」
ルニーが言う『あの人』とは、勿論ルーピンのことだった。
「わ、分かるの?」フォーラの問いにルニーが曖昧に笑った。
「うーん、そうね。実を言うと、さっきドラコたちと話してるのがちょっと聞こえちゃった。そのあとは目に見えてフォーラの元気がなくなってたんだもの。それに、前まではあの人のことをよく話していたのに、どうして?最近のフォーラはあの人を避けてるみたい」
「……私、確かに避けていると思う。」
「何かされたの?」パンジーが尋ねた。
「違うの、先生は何もしていないわ。悪いのは私で、……そもそも先生を好きになるなんてこと自体が、間違っていると思って……」
フォーラは咄嗟に本心をそのように別の理由で隠してしまった。彼女はパンジーとルニーの心配そうな表情を見て、このお祝いの場で二人にこんな顔をさせるのは随分似つかわしくないと感じた。
「ううん、やっぱり今のは聞かなかったことにして。せっかく気を遣ってくれたのにごめんなさい。」
「いいのよ。フォーラの悩みは理解できるから」パンジーが言った。「年齢の壁はどうしても避けられないもの。でも、もっと弱音を吐きたくなったらいつでも言って。兎に角、今はお祝いを楽しみましょ!ね!」
パンジーとルニーの笑みによってフォーラも自然と表情を和らげた。しかしその笑顔の裏には、友人たちへの申し訳なさが隠れていたのだった。