16. 竜座を見上げて
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次にジョージがフォーラを見かけたのは翌日の夕方で、彼がクィディッチ練習を終えて談話室に戻る途中のことだった。
「フォーラ!」ジョージは階段の踊り場からひとつ上の階を歩いている彼女に呼びかけた。彼女はどこから自分の名前が呼ばれたのかと軽く辺りを見渡した。そうしてジョージが階段を駆け上ると、彼女もようやく彼に気付いたのだった。
「ジョージ、久しぶりね。」
「ああ、ホントに。君を遠目に見かけはするんだけどな。最近はどうしてたんだ?」
「ええと、特筆することはないのだけど……少なくとも、あまり良い出来事はなかったと思うわ。普通よ。ジョージはどう?」
「俺もいつもどおりさ。ところでフォーラ。昨日ロンたちから君が疲れてそうだって話を聞いたんだ。それは君の言う『良い出来事はなかった』ってのと関係あるのか?それこそ、前にアニメーガスの姿でやりたいことがあるって言ってたけど、そのこととも?」
フォーラはその質問に思わずドキリと心臓が跳ねた。
「えっと、それはその。」フォーラはしどろもどろになってしまった自分を恥じた。これでは肯定しているようなものではないか。
「俺でよければ話くらい聞くけどさ。どうかな」
ジョージの提案にフォーラは少しばかり固まってしまったが、無理に笑ってみせた。
「ありがとう。でもね、本当にたいしたことじゃないのよ。だから大丈夫。心配してくれてとっても嬉しいわ。」
ジョージはそんなフォーラの笑顔を見て何だか胸の辺りがズキリとした。一方のフォーラは、自身が疲れている一番の原因を誰かに口外するつもりはなかった。もし話してしまえば、自分がルーピンに隠し事をしていることや、彼を騙していたことがばれてしまう。フォーラにとってジョージは自身が黒猫のアニメーガスであることを唯一知る人物ではあるが、だからといってそれらの穢れた秘密を打ち明けたくはなかった。
「俺には、君が大丈夫なようにはあんまり見えないけどな」ジョージが少々不機嫌そうに言うと、フォーラは幾らか狼狽えて目を泳がせた。しかしそれでも彼女は大丈夫だと返答した。彼の方はそんな筈はないと思っていたが、きっとそれ程聞かれたくない事情があるのだろうと感じて結局は目を瞑ることにした。
「そっか、俺の気のせいならいいんだ。もし俺にできることがあったら、その時は何でも言ってくれ」
ジョージはフォーラに笑顔でそのように伝えることにした。本当は彼女の様子を見ていれば内心笑顔ではいられなかったのだが、真相を答えてもらえない以上、今のところはそうするしかないだろうと判断したのだった。
さて、フォーラの様子がおかしいことに気付いたのはグリフィンドール生の彼らだけではなく、勿論ドラコも同じくだった。イースター休暇に入る一週間前の日曜日、フォーラは図書室に返す本を抱えて談話室を出ようとしていた。ドラコはそんな彼女を見て声を掛けた。
「フォーラ、図書室か?」
「ええ、すぐ帰ってくるわ。」
「ああ、そうじゃないんだ、僕も返さなきゃいけない本があって」
「だったら私、一緒に返してきましょうか……?」
「いや、僕も一緒に行く」
今はドラコにとって運良くパンジーとルニーがチェスに夢中だ。それにクラッブとゴイルもおやつを楽しんでいる最中で忙しい。最近はめっきりフォーラと二人で話す機会が減っていたし、元気のない彼女のことも心配だったしで、丁度良いタイミングだった。
それから二人は図書室へ続く廊下を進んだ。その道中、ドラコは雑談を切り出した。
「もうすぐイースター休暇だな。どうせ先生方のことだ。三年生ともなれば課題を山ほど出すんだろう」
「そうみたいね。先輩曰く、休暇なんて名ばかりで、実際はお休みする時間が全然なかったって。せめて休暇の最後の日までには課題を終わらせてしまいたいわ。一日くらい遊びたいもの。」
「ああ。もし本当に課題が終わった後に時間があったら、久しぶりに箒に乗る練習でもしないか?」
「うーん、どうしようかしら……。飛行訓練の授業のおかげで、私の下手具合も随分ましになったの。ドラコも知っているでしょう?」
「そんなこと言って、まだ随分フラフラしているじゃないか。それに君は未だに高いところが苦手だろう?」
「もう、それは言わないで。やっぱり箒はやめましょう?私、学校探索がしたいわ。駄目?」
フォーラの提案を聞いてドラコは思案した。確かにこの城は七年生でも知らない通路や部屋が沢山あると聞く。改めて校内を見て回るのはそれはそれで面白いかもしれない。それに彼女の苦手なことをするよりも、要望に付き合うことで少しでも元気な姿が見られるのなら。
「そうだな。それじゃあパーキンソンたちにも、少しは余裕を持って課題を終わらせるように言っておかないとな」
「ええ、そうね!今からとっても楽しみだわ。」
ようやく笑顔になったフォーラを見てドラコは安心した笑みを零した。彼女が最近ずっと思い詰めた様子だったからだ。すると彼女はドラコの方を向いて改めて微笑んだ。
「ふふ、ドラコに校内探索がお気に召してもらえてよかったわ。」
「えっ?」
「だって、ドラコも私と同じでとっても楽しみにしているように見えたから。」
「ああ」その時ドラコは、自分が笑顔を零した理由をフォーラが勘違いしたのだと理解した。「それもそうなんだが……どちらかというと最近の君が浮かない様子だったから、ようやく笑顔を見られて少し安心したんだと思う」
それを聞いたフォーラは少々驚いた後で、ドラコに心配されていたことを申し訳なく思う気持ちと、有難いと思う気持ちが混ざったような顔になった。
「ありがとう、ドラコ……。」
「あ、ああ、いいんだ。それにしても最近すっかり落ち込んで何かあったのか?……もしかして、図書室で僕が怒った時のことを気にしていたんじゃ」
「え!あの……。確かに、ドラコに黙って図書室で調べ物をしていたのは、まだ悪いと思っているわ。でも、それだけじゃなくて私……最近気分の落ち込む事ばかりで、」そこまで言いかけてフォーラはふと話すのをやめた。
(私……どうして?ジョージには何も話さなかったのに。ドラコに悪いと思っているから謝るのは分かるわ。でも今、どうしてルーピン先生を騙していたことも話そうとしたの?)
「フォーラ?」
その呼びかけに彼女はハッとしてドラコを見た。彼は続きを話さない彼女の様子を伺っていた。
「あ……いいえ、その、ドラコにはいつも心配をかけてばかりでごめんなさい。」
「そんなこと、謝らなくたっていい。僕が勝手に心配しているだけなんだから。それに図書室での事だって気にしなくていい……。あの時は僕も、随分きつく言いすぎたと思っていたから」
「フォーラ!」ジョージは階段の踊り場からひとつ上の階を歩いている彼女に呼びかけた。彼女はどこから自分の名前が呼ばれたのかと軽く辺りを見渡した。そうしてジョージが階段を駆け上ると、彼女もようやく彼に気付いたのだった。
「ジョージ、久しぶりね。」
「ああ、ホントに。君を遠目に見かけはするんだけどな。最近はどうしてたんだ?」
「ええと、特筆することはないのだけど……少なくとも、あまり良い出来事はなかったと思うわ。普通よ。ジョージはどう?」
「俺もいつもどおりさ。ところでフォーラ。昨日ロンたちから君が疲れてそうだって話を聞いたんだ。それは君の言う『良い出来事はなかった』ってのと関係あるのか?それこそ、前にアニメーガスの姿でやりたいことがあるって言ってたけど、そのこととも?」
フォーラはその質問に思わずドキリと心臓が跳ねた。
「えっと、それはその。」フォーラはしどろもどろになってしまった自分を恥じた。これでは肯定しているようなものではないか。
「俺でよければ話くらい聞くけどさ。どうかな」
ジョージの提案にフォーラは少しばかり固まってしまったが、無理に笑ってみせた。
「ありがとう。でもね、本当にたいしたことじゃないのよ。だから大丈夫。心配してくれてとっても嬉しいわ。」
ジョージはそんなフォーラの笑顔を見て何だか胸の辺りがズキリとした。一方のフォーラは、自身が疲れている一番の原因を誰かに口外するつもりはなかった。もし話してしまえば、自分がルーピンに隠し事をしていることや、彼を騙していたことがばれてしまう。フォーラにとってジョージは自身が黒猫のアニメーガスであることを唯一知る人物ではあるが、だからといってそれらの穢れた秘密を打ち明けたくはなかった。
「俺には、君が大丈夫なようにはあんまり見えないけどな」ジョージが少々不機嫌そうに言うと、フォーラは幾らか狼狽えて目を泳がせた。しかしそれでも彼女は大丈夫だと返答した。彼の方はそんな筈はないと思っていたが、きっとそれ程聞かれたくない事情があるのだろうと感じて結局は目を瞑ることにした。
「そっか、俺の気のせいならいいんだ。もし俺にできることがあったら、その時は何でも言ってくれ」
ジョージはフォーラに笑顔でそのように伝えることにした。本当は彼女の様子を見ていれば内心笑顔ではいられなかったのだが、真相を答えてもらえない以上、今のところはそうするしかないだろうと判断したのだった。
さて、フォーラの様子がおかしいことに気付いたのはグリフィンドール生の彼らだけではなく、勿論ドラコも同じくだった。イースター休暇に入る一週間前の日曜日、フォーラは図書室に返す本を抱えて談話室を出ようとしていた。ドラコはそんな彼女を見て声を掛けた。
「フォーラ、図書室か?」
「ええ、すぐ帰ってくるわ。」
「ああ、そうじゃないんだ、僕も返さなきゃいけない本があって」
「だったら私、一緒に返してきましょうか……?」
「いや、僕も一緒に行く」
今はドラコにとって運良くパンジーとルニーがチェスに夢中だ。それにクラッブとゴイルもおやつを楽しんでいる最中で忙しい。最近はめっきりフォーラと二人で話す機会が減っていたし、元気のない彼女のことも心配だったしで、丁度良いタイミングだった。
それから二人は図書室へ続く廊下を進んだ。その道中、ドラコは雑談を切り出した。
「もうすぐイースター休暇だな。どうせ先生方のことだ。三年生ともなれば課題を山ほど出すんだろう」
「そうみたいね。先輩曰く、休暇なんて名ばかりで、実際はお休みする時間が全然なかったって。せめて休暇の最後の日までには課題を終わらせてしまいたいわ。一日くらい遊びたいもの。」
「ああ。もし本当に課題が終わった後に時間があったら、久しぶりに箒に乗る練習でもしないか?」
「うーん、どうしようかしら……。飛行訓練の授業のおかげで、私の下手具合も随分ましになったの。ドラコも知っているでしょう?」
「そんなこと言って、まだ随分フラフラしているじゃないか。それに君は未だに高いところが苦手だろう?」
「もう、それは言わないで。やっぱり箒はやめましょう?私、学校探索がしたいわ。駄目?」
フォーラの提案を聞いてドラコは思案した。確かにこの城は七年生でも知らない通路や部屋が沢山あると聞く。改めて校内を見て回るのはそれはそれで面白いかもしれない。それに彼女の苦手なことをするよりも、要望に付き合うことで少しでも元気な姿が見られるのなら。
「そうだな。それじゃあパーキンソンたちにも、少しは余裕を持って課題を終わらせるように言っておかないとな」
「ええ、そうね!今からとっても楽しみだわ。」
ようやく笑顔になったフォーラを見てドラコは安心した笑みを零した。彼女が最近ずっと思い詰めた様子だったからだ。すると彼女はドラコの方を向いて改めて微笑んだ。
「ふふ、ドラコに校内探索がお気に召してもらえてよかったわ。」
「えっ?」
「だって、ドラコも私と同じでとっても楽しみにしているように見えたから。」
「ああ」その時ドラコは、自分が笑顔を零した理由をフォーラが勘違いしたのだと理解した。「それもそうなんだが……どちらかというと最近の君が浮かない様子だったから、ようやく笑顔を見られて少し安心したんだと思う」
それを聞いたフォーラは少々驚いた後で、ドラコに心配されていたことを申し訳なく思う気持ちと、有難いと思う気持ちが混ざったような顔になった。
「ありがとう、ドラコ……。」
「あ、ああ、いいんだ。それにしても最近すっかり落ち込んで何かあったのか?……もしかして、図書室で僕が怒った時のことを気にしていたんじゃ」
「え!あの……。確かに、ドラコに黙って図書室で調べ物をしていたのは、まだ悪いと思っているわ。でも、それだけじゃなくて私……最近気分の落ち込む事ばかりで、」そこまで言いかけてフォーラはふと話すのをやめた。
(私……どうして?ジョージには何も話さなかったのに。ドラコに悪いと思っているから謝るのは分かるわ。でも今、どうしてルーピン先生を騙していたことも話そうとしたの?)
「フォーラ?」
その呼びかけに彼女はハッとしてドラコを見た。彼は続きを話さない彼女の様子を伺っていた。
「あ……いいえ、その、ドラコにはいつも心配をかけてばかりでごめんなさい。」
「そんなこと、謝らなくたっていい。僕が勝手に心配しているだけなんだから。それに図書室での事だって気にしなくていい……。あの時は僕も、随分きつく言いすぎたと思っていたから」