15. 猫と狼と犬
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授業が始まるとフォーラは最初こそ耐えていたものの、ルーピンが教壇で話す内容が確実に頭に入ってこなくなっていた。
(駄目よ、ちゃんと話を聞かなくちゃ……)
「それじゃあ今日は前回伝えたとおり課外授業だ。みんな、校庭の湖の方まで向かってくれ」
ルーピンはそのように促して生徒たちが続々と教室から出ていくのを待った。すると数名の生徒が机の一角に集まって騒めいているのが目に入った。ルーピンが近付いてみると、パンジーやルニー、ドラコやその他の生徒が誰かを囲んで心配そうな声を掛けていた。その生徒たちの隙間から見えたのは、フォーラが机に突っ伏している姿だった。
「君たち、どうしたんだい」ルーピンが直ぐそばまで歩み寄って声を掛けた。
「フォーラが、立てないみたいで!」パンジーが言った。
ルーピンはフォーラの様子に少々目を見張ったが、落ち着いて彼女の傍らに屈むと優しい声色で話し掛けた。
「フォーラ、大丈夫かい」
しかし彼女からはハッキリした返答がなく、かろうじて小さなうめき声と苦しそうな息遣いが聞こえただけだった。ルーピンは立ち上がると周りの生徒の方を見た。
「君たちは先に校庭へ向かっていてくれないかな。私は少しだけ遅れるけど、彼女を介抱したら直ぐ向かうからね」
ルーピンはフォーラの方に向き直ると「少し辛抱していてくれるかな」と声を掛けた。そして彼女の上体を起こして何とか全身を両腕で抱きかかえると、教室の外へと消えていったのだった。
ドラコはルーピンが出ていった扉を見つめながら、フォーラへの心配と、ルーピンに対する嫉妬心、そして何もできない自分への不甲斐なさが入り混じった気持ちを抱えた。
(どうしてフォーラはあんなになってまで授業に出たんだ?彼女のことだから、熱があるのにも気付かずに走ってきたんだろうが……。つまりそうしてしまう程、彼女があの教師を好きだということの表れなのかもしれない)
ドラコはその場に留まっていた同級生たちと共に教室を出た。
(結果的にその片想いの相手に介抱されることになったんだ。あの教師が一生徒のことを何とも思っていなくても、フォーラにとっては願ったり叶ったりだろう。僕に看病されるよりもずっと。どちらにせよ今回は僕の出る幕なんてなかった。そもそも僕が彼女にしてやれることなんて、大丈夫かと声を掛けるぐらいの無力なものだったんだから)
今日はマダム・ポンフリーが外出していて、彼女が明日までホグワーツに帰らないことをルーピンは知っていた。そのためフォーラを抱えて医務室に行くよりも、教室から直ぐ近くにある自分の部屋の寝室に一刻も早く彼女を寝かせた方がいいと判断した。そうしてルーピンがフォーラをベッドに横たわらせた時、彼女から弱々しい声が聞こえた。
「せ、せんせ……ごめんなさ……」フォーラの息は乱れていたし、涙目だった。
「大丈夫、かまわないよ。それよりも熱以外に何処か身体で具合の悪いところはあるかな」
「……っひ、左腕……が」フォーラが息絶え絶えに言ったものだから、ルーピンはどうしたのかと思いながらも彼女の左腕のシャツの袖を捲った。
「!」包帯の巻かれたその腕は幾らか腫れ上がっていた。恐る恐る包帯を解いていくと、フォーラは少しばかりうめき声を上げた。
「これは……。フォーラ、これは何処でついた傷かな」
ルーピンにあまりにも真剣に尋ねられ、フォーラは昨日の夜中の出来事を話さざるを得ない状況に後悔が襲った。きっと怒られるに決まっているからと、誰にも隠すつもりでいたのだが。
「……ふ……っひっく……ご、ごめ、んなさい……」
フォーラは怪我を負っていない右手で何度も涙を拭った。ルーピンはまさか彼女が泣いてしまうとは思わず狼狽えたが、直ぐに冷静さを取り戻すと彼女の頭を撫でた。そして救急箱を『呼び寄せ』して戸棚から手元に浮遊させると、テキパキと手当を始めた。
「謝らなくていいよ。兎に角ここから雑菌が入っている可能性が高い。熱の原因はきっとこれだ。私がこういう手当に強くてよかった。昔は自分でも頻繁に傷を作っていたから」
フォーラの涙は終始止まらなかった。ルーピンが手当を終えると、彼は戸棚の奥から薬の入った瓶と空のグラスを一つずつ呼び寄せしてサイドテーブルの上に着地させた。グラスの中は水で並々と満たされた。
「気分が落ち着いたらこの痛み止めを飲んでおくんだ。授業が終わったら直ぐに戻ってくるから、ぐっすり眠っておきなさい。いいね?」
「は……はい。」フォーラは何とか返答した。
「いい子だ」
ルーピンはフォーラの声を聞くとにっこり笑い、その後直ぐに寝室を出ていった。そして彼は一度閉じた寝室の扉を振り返ったのだが、軽く頭を横に振って足早にその場を後にした。
(どうしてフォーラはあんな傷を。まるで動物が噛み付いた跡にそっくりだ。深い傷だったし……。今朝の大広間での連絡では、昨日の夜はシリウスがグリフィンドール寮に侵入して寝ている生徒を傷つけようとしていたらしいじゃないか。まさかホグワーツに、しかもハリーがいる部屋に侵入するなんて。指名手配の写真が出回っているのに『人の姿』を晒していたということは、生徒に顔を見られるよりもハリーを殺して逃げる方を選んだということになる。殺害は失敗したようで安心したが……。―――もし、フォーラのあの傷が『犬の姿』をしたシリウスの歯型だったら?いや、もしそうだとしたら彼女は真夜中に傷つけられたことになる。彼女は寮でとっくに寝ていた筈だ。そう信じたい)
(駄目よ、ちゃんと話を聞かなくちゃ……)
「それじゃあ今日は前回伝えたとおり課外授業だ。みんな、校庭の湖の方まで向かってくれ」
ルーピンはそのように促して生徒たちが続々と教室から出ていくのを待った。すると数名の生徒が机の一角に集まって騒めいているのが目に入った。ルーピンが近付いてみると、パンジーやルニー、ドラコやその他の生徒が誰かを囲んで心配そうな声を掛けていた。その生徒たちの隙間から見えたのは、フォーラが机に突っ伏している姿だった。
「君たち、どうしたんだい」ルーピンが直ぐそばまで歩み寄って声を掛けた。
「フォーラが、立てないみたいで!」パンジーが言った。
ルーピンはフォーラの様子に少々目を見張ったが、落ち着いて彼女の傍らに屈むと優しい声色で話し掛けた。
「フォーラ、大丈夫かい」
しかし彼女からはハッキリした返答がなく、かろうじて小さなうめき声と苦しそうな息遣いが聞こえただけだった。ルーピンは立ち上がると周りの生徒の方を見た。
「君たちは先に校庭へ向かっていてくれないかな。私は少しだけ遅れるけど、彼女を介抱したら直ぐ向かうからね」
ルーピンはフォーラの方に向き直ると「少し辛抱していてくれるかな」と声を掛けた。そして彼女の上体を起こして何とか全身を両腕で抱きかかえると、教室の外へと消えていったのだった。
ドラコはルーピンが出ていった扉を見つめながら、フォーラへの心配と、ルーピンに対する嫉妬心、そして何もできない自分への不甲斐なさが入り混じった気持ちを抱えた。
(どうしてフォーラはあんなになってまで授業に出たんだ?彼女のことだから、熱があるのにも気付かずに走ってきたんだろうが……。つまりそうしてしまう程、彼女があの教師を好きだということの表れなのかもしれない)
ドラコはその場に留まっていた同級生たちと共に教室を出た。
(結果的にその片想いの相手に介抱されることになったんだ。あの教師が一生徒のことを何とも思っていなくても、フォーラにとっては願ったり叶ったりだろう。僕に看病されるよりもずっと。どちらにせよ今回は僕の出る幕なんてなかった。そもそも僕が彼女にしてやれることなんて、大丈夫かと声を掛けるぐらいの無力なものだったんだから)
今日はマダム・ポンフリーが外出していて、彼女が明日までホグワーツに帰らないことをルーピンは知っていた。そのためフォーラを抱えて医務室に行くよりも、教室から直ぐ近くにある自分の部屋の寝室に一刻も早く彼女を寝かせた方がいいと判断した。そうしてルーピンがフォーラをベッドに横たわらせた時、彼女から弱々しい声が聞こえた。
「せ、せんせ……ごめんなさ……」フォーラの息は乱れていたし、涙目だった。
「大丈夫、かまわないよ。それよりも熱以外に何処か身体で具合の悪いところはあるかな」
「……っひ、左腕……が」フォーラが息絶え絶えに言ったものだから、ルーピンはどうしたのかと思いながらも彼女の左腕のシャツの袖を捲った。
「!」包帯の巻かれたその腕は幾らか腫れ上がっていた。恐る恐る包帯を解いていくと、フォーラは少しばかりうめき声を上げた。
「これは……。フォーラ、これは何処でついた傷かな」
ルーピンにあまりにも真剣に尋ねられ、フォーラは昨日の夜中の出来事を話さざるを得ない状況に後悔が襲った。きっと怒られるに決まっているからと、誰にも隠すつもりでいたのだが。
「……ふ……っひっく……ご、ごめ、んなさい……」
フォーラは怪我を負っていない右手で何度も涙を拭った。ルーピンはまさか彼女が泣いてしまうとは思わず狼狽えたが、直ぐに冷静さを取り戻すと彼女の頭を撫でた。そして救急箱を『呼び寄せ』して戸棚から手元に浮遊させると、テキパキと手当を始めた。
「謝らなくていいよ。兎に角ここから雑菌が入っている可能性が高い。熱の原因はきっとこれだ。私がこういう手当に強くてよかった。昔は自分でも頻繁に傷を作っていたから」
フォーラの涙は終始止まらなかった。ルーピンが手当を終えると、彼は戸棚の奥から薬の入った瓶と空のグラスを一つずつ呼び寄せしてサイドテーブルの上に着地させた。グラスの中は水で並々と満たされた。
「気分が落ち着いたらこの痛み止めを飲んでおくんだ。授業が終わったら直ぐに戻ってくるから、ぐっすり眠っておきなさい。いいね?」
「は……はい。」フォーラは何とか返答した。
「いい子だ」
ルーピンはフォーラの声を聞くとにっこり笑い、その後直ぐに寝室を出ていった。そして彼は一度閉じた寝室の扉を振り返ったのだが、軽く頭を横に振って足早にその場を後にした。
(どうしてフォーラはあんな傷を。まるで動物が噛み付いた跡にそっくりだ。深い傷だったし……。今朝の大広間での連絡では、昨日の夜はシリウスがグリフィンドール寮に侵入して寝ている生徒を傷つけようとしていたらしいじゃないか。まさかホグワーツに、しかもハリーがいる部屋に侵入するなんて。指名手配の写真が出回っているのに『人の姿』を晒していたということは、生徒に顔を見られるよりもハリーを殺して逃げる方を選んだということになる。殺害は失敗したようで安心したが……。―――もし、フォーラのあの傷が『犬の姿』をしたシリウスの歯型だったら?いや、もしそうだとしたら彼女は真夜中に傷つけられたことになる。彼女は寮でとっくに寝ていた筈だ。そう信じたい)