14. 憧れのあなた①
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「フォーラ」
「何かしら?」
ドラコはチームメイトに急かされて、言葉を発するか躊躇う時間も殆どなかった。そのため勢いで言ってしまった。
「僕のことを見ていてくれ」
「?……ええ、分かったわ。」
そうしてドラコは急いでその場を立ち去った。彼は競技場へ向かう道中、つい先程のフォーラの顔を思い出しながら『やっぱりな』という気持ちになった。
(あんなことを言っても、やっぱりフォーラはその意味を何も分かってない。それは、僕が気持ちを伝えてすらいないから当然ではあるんだが……)
試合中、その悔しさが『ばね』になったのかは分からないが、ドラコは見事な身のこなしでスニッチを掴むことができた。彼はスニッチを探す間、時たま襲ってくるブラッジャーもヒラリとよけていたし、チームメンバーが狙われた時には声を掛けてフォローも行っていた。この度の彼のプレーは誰が見ても素晴らしいものだったと言えるだろう。
試合後、ドラコを含む選手陣がそのまま昼食の為に大広間へ戻ると、スリザリン生は彼らを熱烈に歓迎した。ドラコはパンジーを含む取り巻きに近くで食べてくれと誘われ、長テーブルの一角に引っ張られていった。その際、彼はチラリとフォーラのいるであろう辺りに視線を向けた。すると彼女は何とこちらを見て微笑んでいたのだった。
「!」
「ドラコ、どうしたんだ?」周りにいた生徒の一人が尋ねたが、ドラコは首を横に振った。
「いや、何でもない」
その後ドラコは周囲の生徒と試合の勝利を祝って元気に笑い合っていたのだが、正直胸の内は気が気でなかった。先程のフォーラの笑顔が頭から離れないのだ。
(さっきは本当に驚いた……。フォーラには不意打ちされてばかりだ。後で声を掛けにいこうか?もしかしたら、今回のプレーで少しは僕のことを格好いいと思ってもらえたかもしれないし)
一方のフォーラはルニーと共にいて、スリザリンの騒がしい席の辺りを時折眺めながら昼食を摂っていた。
「パンジー、飛んでいっちゃった。ドラコのことが本当に好きなのね。」フォーラがそう言って微笑んだものだから、ルニーは事の次第を教えるべきかどうか迷った。
「うーん、そうね……。でもパンジーは、ドラコのことについてはもう殆ど諦めムードよ」
「えっ、ど、どうして?」これにはフォーラも驚いてしまった。
「それは……」
ルニーは『ドラコに好きな人がいると知ったからかも』と言いかけたのだが、やめた。ルニーからすれば、パンジーがドラコを諦めるに至った理由がそれとは限らなかったからだ。もしかしてドラコに冷めてしまった可能性だってある。しかし仮に『ドラコに好きな人がいる』ことが理由だったとしても、それをフォーラに知らせるのはドラコの役目であって、自分がすべきことではないとルニーは思った。
「その辺りの詳細は私もよく分からないのよね。いつかパンジーが自分から話してくれるかも」
「ええ、そうね……。そういえばパンジーは、今学年に入ってからドラコを褒めることが少なくなった気がするわ。何か彼女の中で心境の変化があったのかしら。……だけど兎に角、今の二人は元気にいつもどおりお喋りしている様子だし、喧嘩をしたとかそういう理由ではなさそうね。」
ルニーはフォーラがそのように安堵しつつも少々混乱しているのを見兼ねて、話題を変えた。
「そういえばフォーラ、今朝ドラコに言われてたことだけど―――」
フォーラはきっと、ドラコが発した『僕のことを見ていてくれ』という言葉の真意を理解していないだろう……。ルニーはそのように思っていたため、できることなら今日のドラコの好プレーについてこの場で共有し、フォーラの頭の中に少しでも彼の雄姿を留められたらと考えた。するとフォーラがルニーの言葉を引き継いだ。
「ドラコに『見ていてほしい』と言われたから、私、試合中は殆どずっとドラコのことを見ていたの」
「えっ、ずっと?」今度はルニーが驚く番だった。
「ええ。彼は試合中に色んなことをサポートしていたわ。私、いつもの試合はボール運びとか色んな場面に目移りするのだけど、今回はドラコのそんな細かな行動も分かってしまうくらい、本当にずっと見てしまっていたの。気付いたら意識しなくても彼を目で追っていたわ。私、箒に乗るのが上手くないから、きっとドラコに憧れているんだわ。」
そこまで話したところで、フォーラは図書室へ行く用事を思い出し、ルニーにその旨を伝えてその場から立ち去った。フォーラに別れを告げたルニーは、ため息混じりにドラコを見やって軽く口角を上げた。
(ドラコがスニッチを捕まえるまでは、他の選手の方がよっぽど見せ場のあるプレーをしてたのにね。彼が今のフォーラの話を聞いたら一体どんな反応をしちゃうのかしら?)
すると、丁度ルニーの視線と向こうの席にいるドラコの視線がバッチリ合った。お互い幾らか距離がある筈なのにこんなにもしっかり目が合ったのは、きっとドラコがフォーラのことを捜していたからに違いない。ルニーはそのように感じるとともに、彼の素直で分かりやすい部分に思わずフフッと笑みを零した。一方のドラコはルニーのそばにフォーラがいないと気付くと、席を立って彼女の元にやってきた。
「マッケンジー、フォーラはどこだ?」
「あら、本日のヒーローさんじゃない。今日は本当におめでとう。フォーラなら図書室に行ったわ。どうかしたの?」ルニーはドラコの少々落ち着かない様子に、クスクス笑いをしそうになるのを堪えて尋ねた。
するとドラコは少し黙った後で「何でもない」と回答してその場を取り繕った。彼はルニーの予想どおり、今日の試合についてフォーラの感想を聞きたい気持ちでそわそわしていた。しかし目当ての本人がいないのであれば仕方がない。彼は少々肩を落としたが、フォーラに会えたらいつでもその話題を振ればいいと気を取り直した。その矢先、不意にルニーが切り出した。
「ところでドラコ、ついさっきフォーラが言ってたわよ」
「何をだ?」
「試合中、ドラコのことをずっと見てたんですって。無意識に貴方を目で追ってしまうほど良いプレーだったって。良かったわね」ルニーがニコッと笑った。
「……えっ?」
(フォーラが、試合中の僕をずっと見ていた?確かに僕は今朝彼女に『僕を見ていてほしい』と伝えたが……。それはあくまで僕のことを意識してほしいという意味であって、本当にずっと見てほしかったわけじゃ―――。やっぱりフォーラは僕が言ったことの意味を分かってなかったんだろうけど、それでも、まさか試合中にフォーラの視線が殆ど僕に向けられていたなんて。そんなの、喜ばないわけがない)
ドラコは自分が内心取り乱しているのをルニーが微笑みながら眺めていると気付いて咳払いした。
「そうか、まあ、僕のプレーが素晴らしかったのは認めるさ」
「そうね、あなたに憧れているとも言ってたのよ」
「!?」ドラコは驚いてとうとう頬が勝手に熱くなるのを感じた。今度のルニーは先程よりもニヤニヤ笑いが強まっているように見えた。ドラコは目の前の同級生が自分をからかっているのではないかと思い、彼女を幾らか睨んだ。
「あら、喜ばしいことに嘘なんかじゃないのよ。何ならフォーラに直接聞いてみたらどう?」
ドラコは何度か口を開いては閉じを繰り返し、目の前でニコニコと機嫌の良さそうなルニーに何か言い返そうとした。しかしドラコはこれ以上彼女に何か言ってもきっと墓穴を掘るだけだと思い、反論するのを諦めたのだった。
「何かしら?」
ドラコはチームメイトに急かされて、言葉を発するか躊躇う時間も殆どなかった。そのため勢いで言ってしまった。
「僕のことを見ていてくれ」
「?……ええ、分かったわ。」
そうしてドラコは急いでその場を立ち去った。彼は競技場へ向かう道中、つい先程のフォーラの顔を思い出しながら『やっぱりな』という気持ちになった。
(あんなことを言っても、やっぱりフォーラはその意味を何も分かってない。それは、僕が気持ちを伝えてすらいないから当然ではあるんだが……)
試合中、その悔しさが『ばね』になったのかは分からないが、ドラコは見事な身のこなしでスニッチを掴むことができた。彼はスニッチを探す間、時たま襲ってくるブラッジャーもヒラリとよけていたし、チームメンバーが狙われた時には声を掛けてフォローも行っていた。この度の彼のプレーは誰が見ても素晴らしいものだったと言えるだろう。
試合後、ドラコを含む選手陣がそのまま昼食の為に大広間へ戻ると、スリザリン生は彼らを熱烈に歓迎した。ドラコはパンジーを含む取り巻きに近くで食べてくれと誘われ、長テーブルの一角に引っ張られていった。その際、彼はチラリとフォーラのいるであろう辺りに視線を向けた。すると彼女は何とこちらを見て微笑んでいたのだった。
「!」
「ドラコ、どうしたんだ?」周りにいた生徒の一人が尋ねたが、ドラコは首を横に振った。
「いや、何でもない」
その後ドラコは周囲の生徒と試合の勝利を祝って元気に笑い合っていたのだが、正直胸の内は気が気でなかった。先程のフォーラの笑顔が頭から離れないのだ。
(さっきは本当に驚いた……。フォーラには不意打ちされてばかりだ。後で声を掛けにいこうか?もしかしたら、今回のプレーで少しは僕のことを格好いいと思ってもらえたかもしれないし)
一方のフォーラはルニーと共にいて、スリザリンの騒がしい席の辺りを時折眺めながら昼食を摂っていた。
「パンジー、飛んでいっちゃった。ドラコのことが本当に好きなのね。」フォーラがそう言って微笑んだものだから、ルニーは事の次第を教えるべきかどうか迷った。
「うーん、そうね……。でもパンジーは、ドラコのことについてはもう殆ど諦めムードよ」
「えっ、ど、どうして?」これにはフォーラも驚いてしまった。
「それは……」
ルニーは『ドラコに好きな人がいると知ったからかも』と言いかけたのだが、やめた。ルニーからすれば、パンジーがドラコを諦めるに至った理由がそれとは限らなかったからだ。もしかしてドラコに冷めてしまった可能性だってある。しかし仮に『ドラコに好きな人がいる』ことが理由だったとしても、それをフォーラに知らせるのはドラコの役目であって、自分がすべきことではないとルニーは思った。
「その辺りの詳細は私もよく分からないのよね。いつかパンジーが自分から話してくれるかも」
「ええ、そうね……。そういえばパンジーは、今学年に入ってからドラコを褒めることが少なくなった気がするわ。何か彼女の中で心境の変化があったのかしら。……だけど兎に角、今の二人は元気にいつもどおりお喋りしている様子だし、喧嘩をしたとかそういう理由ではなさそうね。」
ルニーはフォーラがそのように安堵しつつも少々混乱しているのを見兼ねて、話題を変えた。
「そういえばフォーラ、今朝ドラコに言われてたことだけど―――」
フォーラはきっと、ドラコが発した『僕のことを見ていてくれ』という言葉の真意を理解していないだろう……。ルニーはそのように思っていたため、できることなら今日のドラコの好プレーについてこの場で共有し、フォーラの頭の中に少しでも彼の雄姿を留められたらと考えた。するとフォーラがルニーの言葉を引き継いだ。
「ドラコに『見ていてほしい』と言われたから、私、試合中は殆どずっとドラコのことを見ていたの」
「えっ、ずっと?」今度はルニーが驚く番だった。
「ええ。彼は試合中に色んなことをサポートしていたわ。私、いつもの試合はボール運びとか色んな場面に目移りするのだけど、今回はドラコのそんな細かな行動も分かってしまうくらい、本当にずっと見てしまっていたの。気付いたら意識しなくても彼を目で追っていたわ。私、箒に乗るのが上手くないから、きっとドラコに憧れているんだわ。」
そこまで話したところで、フォーラは図書室へ行く用事を思い出し、ルニーにその旨を伝えてその場から立ち去った。フォーラに別れを告げたルニーは、ため息混じりにドラコを見やって軽く口角を上げた。
(ドラコがスニッチを捕まえるまでは、他の選手の方がよっぽど見せ場のあるプレーをしてたのにね。彼が今のフォーラの話を聞いたら一体どんな反応をしちゃうのかしら?)
すると、丁度ルニーの視線と向こうの席にいるドラコの視線がバッチリ合った。お互い幾らか距離がある筈なのにこんなにもしっかり目が合ったのは、きっとドラコがフォーラのことを捜していたからに違いない。ルニーはそのように感じるとともに、彼の素直で分かりやすい部分に思わずフフッと笑みを零した。一方のドラコはルニーのそばにフォーラがいないと気付くと、席を立って彼女の元にやってきた。
「マッケンジー、フォーラはどこだ?」
「あら、本日のヒーローさんじゃない。今日は本当におめでとう。フォーラなら図書室に行ったわ。どうかしたの?」ルニーはドラコの少々落ち着かない様子に、クスクス笑いをしそうになるのを堪えて尋ねた。
するとドラコは少し黙った後で「何でもない」と回答してその場を取り繕った。彼はルニーの予想どおり、今日の試合についてフォーラの感想を聞きたい気持ちでそわそわしていた。しかし目当ての本人がいないのであれば仕方がない。彼は少々肩を落としたが、フォーラに会えたらいつでもその話題を振ればいいと気を取り直した。その矢先、不意にルニーが切り出した。
「ところでドラコ、ついさっきフォーラが言ってたわよ」
「何をだ?」
「試合中、ドラコのことをずっと見てたんですって。無意識に貴方を目で追ってしまうほど良いプレーだったって。良かったわね」ルニーがニコッと笑った。
「……えっ?」
(フォーラが、試合中の僕をずっと見ていた?確かに僕は今朝彼女に『僕を見ていてほしい』と伝えたが……。それはあくまで僕のことを意識してほしいという意味であって、本当にずっと見てほしかったわけじゃ―――。やっぱりフォーラは僕が言ったことの意味を分かってなかったんだろうけど、それでも、まさか試合中にフォーラの視線が殆ど僕に向けられていたなんて。そんなの、喜ばないわけがない)
ドラコは自分が内心取り乱しているのをルニーが微笑みながら眺めていると気付いて咳払いした。
「そうか、まあ、僕のプレーが素晴らしかったのは認めるさ」
「そうね、あなたに憧れているとも言ってたのよ」
「!?」ドラコは驚いてとうとう頬が勝手に熱くなるのを感じた。今度のルニーは先程よりもニヤニヤ笑いが強まっているように見えた。ドラコは目の前の同級生が自分をからかっているのではないかと思い、彼女を幾らか睨んだ。
「あら、喜ばしいことに嘘なんかじゃないのよ。何ならフォーラに直接聞いてみたらどう?」
ドラコは何度か口を開いては閉じを繰り返し、目の前でニコニコと機嫌の良さそうなルニーに何か言い返そうとした。しかしドラコはこれ以上彼女に何か言ってもきっと墓穴を掘るだけだと思い、反論するのを諦めたのだった。