13. 彼女の一番じゃない
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さて、フォーラが次の来賓を出迎えにいく途中、マリアが彼女に囁いた。
「お嬢様、お顔が赤いですよ。ドラコ様がお見えになった途端に」
「えっ」フォーラが思わず自身の両頬を両手で抑えると、じんわりと熱い温度が手のひらに伝わってきた。どうやら本当に赤いらしい。マリアが随分意味ありげでにこやかな視線を向けてくるものだから、フォーラは何か取り繕う言葉を探そうとした。
(だって、そんなこと言われても。ドラコには駅で『何を着ても似合う』なんて言われたし、この間の手紙では『楽しみにしてる』って……。そんなことを伝えられて、彼が絶対私のドレス姿を確認するのは目に見えていたんだもの。身構えるのも、気恥ずかしくなるのも当然でしょう?……それなのに、ドラコったら私を見ても何も言ってこないから……その、似合ってないんじゃないかと思うと、この姿でいるのが妙にソワソワしてしまって。あと、あとそれから……)
しかし、たった今玄関先に誰かが『付き添い姿現し』したことで、フォーラはそれ以上何も言えなくなってしまった。彼女が目の前の来賓に「メリークリスマス」と挨拶すると、二人の男性の内の一人が彼女の目に留まった。その人物の父親と思しき男性がファミリーネームを名乗ると、マリアがにこやかにお礼を言って来賓リストにチェックを書き入れた。
(彼、学校で見た覚えがあるわ)
フォーラの両親の仕事関係者の中に、ホグワーツに通う子供を持つ親がいても特段おかしくはないだろう。しかしフォーラは残念ながら目の前にいる彼と言葉を交わしたことがなかった。すると彼も同じようなことを思っていたようで、広間への道中、彼の方が先にフォーラに質問を投げかけた。
「ファントムさん。君は確かスリザリン生だったよね。僕の記憶が正しければ、歳は僕の二つ下。名前はフォーラだね?」
「ええ、スリザリン生です。名前も当たり。私、学校で特に目立たないのに顔と名前を覚えていただけているなんて。ありがとうございます。」フォーラがそのように言うと彼は微笑んだ。
「いいや、そんなたいしたことじゃないよ。そうだな、それじゃあ僕のことはどこまで知ってる?」
「ええと、確か……ハッフルパフのシーカーだわ。あとそれから、貴方は女子生徒からとても人気があると友人から聞いたことがあります。」
「え!?そんな話があるのかい。いやあ、まいったな……。ハハ……」
ハッフルパフのシーカーであるセドリック・ディゴリーという五年生を、フォーラはクィディッチの試合で見たことがあった。ハンサムで爽やかな人気者、彼についてはそんなイメージで間違いないだろう。
どうやらセドリックの父親は息子のことを溺愛しているようで、先程フォーラが話していた『セドリックが女性人気を獲得している件』を小耳に挟むと、広間に着くまでに息子に関する様々な自慢話をした。フォーラは楽しげに話を聞いていたのだが、その間セドリックは恥ずかしそうにして父を何とか黙らせようとしていた。
広間にディゴリー親子を促すと、そこには先程よりも多くの来賓の姿があった。パーティーのために特別に開放した広間の暖炉に、フルーパウダーを使って直接やってくる客をフォーラの両親は出迎えているところだった。そんな来賓たちに関してフォーラがセドリックと二、三の会話を交わした時、次の来賓の到来を知らせるベルが鳴った。
「次のお客様を迎えにいかなくちゃ。それじゃあディゴリー様、ごゆっくり。」
フォーラの挨拶にセドリックが礼を言い、彼女がマリアとその場を立ち去ろうとした。するとその時、彼は別れ際に言葉を投げかけた。
「君はドレスが凄く似合うね」
「え!?どうもありがとう……。それじゃあまた。」
セドリックはたった今フォーラがお礼を言った際に見せた照れを含んだ表情に、少しばかり心動かされていた。
(あんなに照れると可愛い人がいたなんて気が付かなかったな。彼女は多分控え目な様子だから、彼女のことを知らない生徒も多いだろう)
自分だって今日まで彼女を殆ど知らなかった。苗字こそ聞いたことがあったものの、彼女の顔などホグワーツではあまり認識していなかったし、ファーストネームは今日のために事前に父親から教えてもらったくらいだ。パーティー主催者のお宅にお嬢様がいるから覚えておくよう言われた、それだけだった。
(みんなが彼女のことを知ったら、きっと彼女は多くの人から愛されるだろうな)
さて、ほんの少しだけ時間を遡り、ドラコは広間にやってきたディゴリー家、もといセドリックとフォーラが楽しそうに話している姿を目に留めていた。
(セドリック・ディゴリーじゃないか。何故あいつが)
ドラコはセドリックとクィディッチで何度かシーカー対決をしたことがあった。そんなセドリックはこれまでフォーラと接点が皆無だっただけに、ドラコからすれば今日彼がこの場に来るとは予想外だった。それにもう一つ驚いたこととして、ドラコがここを訪れた時のフォーラは幾らか表情が硬かったのだが、ついさっき彼女がセドリックに見せた顔は打って変わって幾らか楽しそうに見えた。ドラコは遠目でそのように認識した。
(僕には何も話し掛けてこなかったくせに)
ドラコはそこまで考えて、そもそも自分が照れてフォーラに話題を振らなかったのだと考えを改めた。ああもう、自分が嫌だ。ドラコはそんな気分になった後で、今日彼女に時間ができたタイミングで、改めてきちんと挨拶をしにいこうと思い直した。
(ちゃんと、似合ってるって言ってやらなきゃな……)
その後、フォーラが来賓の出迎えの仕事を終えたのはパーティーが始まる直前だった。彼女はようやく最後の客を案内し終えると、父親の挨拶の間、広間の隅に置かれた椅子で小休止した。フォーラが目立たない位置から父親の挨拶を眺め、そして周囲の来賓たちをぐるっと見渡せば、両親と関わりのある見知った顔がちらほら見受けられた。
「お嬢様、お顔が赤いですよ。ドラコ様がお見えになった途端に」
「えっ」フォーラが思わず自身の両頬を両手で抑えると、じんわりと熱い温度が手のひらに伝わってきた。どうやら本当に赤いらしい。マリアが随分意味ありげでにこやかな視線を向けてくるものだから、フォーラは何か取り繕う言葉を探そうとした。
(だって、そんなこと言われても。ドラコには駅で『何を着ても似合う』なんて言われたし、この間の手紙では『楽しみにしてる』って……。そんなことを伝えられて、彼が絶対私のドレス姿を確認するのは目に見えていたんだもの。身構えるのも、気恥ずかしくなるのも当然でしょう?……それなのに、ドラコったら私を見ても何も言ってこないから……その、似合ってないんじゃないかと思うと、この姿でいるのが妙にソワソワしてしまって。あと、あとそれから……)
しかし、たった今玄関先に誰かが『付き添い姿現し』したことで、フォーラはそれ以上何も言えなくなってしまった。彼女が目の前の来賓に「メリークリスマス」と挨拶すると、二人の男性の内の一人が彼女の目に留まった。その人物の父親と思しき男性がファミリーネームを名乗ると、マリアがにこやかにお礼を言って来賓リストにチェックを書き入れた。
(彼、学校で見た覚えがあるわ)
フォーラの両親の仕事関係者の中に、ホグワーツに通う子供を持つ親がいても特段おかしくはないだろう。しかしフォーラは残念ながら目の前にいる彼と言葉を交わしたことがなかった。すると彼も同じようなことを思っていたようで、広間への道中、彼の方が先にフォーラに質問を投げかけた。
「ファントムさん。君は確かスリザリン生だったよね。僕の記憶が正しければ、歳は僕の二つ下。名前はフォーラだね?」
「ええ、スリザリン生です。名前も当たり。私、学校で特に目立たないのに顔と名前を覚えていただけているなんて。ありがとうございます。」フォーラがそのように言うと彼は微笑んだ。
「いいや、そんなたいしたことじゃないよ。そうだな、それじゃあ僕のことはどこまで知ってる?」
「ええと、確か……ハッフルパフのシーカーだわ。あとそれから、貴方は女子生徒からとても人気があると友人から聞いたことがあります。」
「え!?そんな話があるのかい。いやあ、まいったな……。ハハ……」
ハッフルパフのシーカーであるセドリック・ディゴリーという五年生を、フォーラはクィディッチの試合で見たことがあった。ハンサムで爽やかな人気者、彼についてはそんなイメージで間違いないだろう。
どうやらセドリックの父親は息子のことを溺愛しているようで、先程フォーラが話していた『セドリックが女性人気を獲得している件』を小耳に挟むと、広間に着くまでに息子に関する様々な自慢話をした。フォーラは楽しげに話を聞いていたのだが、その間セドリックは恥ずかしそうにして父を何とか黙らせようとしていた。
広間にディゴリー親子を促すと、そこには先程よりも多くの来賓の姿があった。パーティーのために特別に開放した広間の暖炉に、フルーパウダーを使って直接やってくる客をフォーラの両親は出迎えているところだった。そんな来賓たちに関してフォーラがセドリックと二、三の会話を交わした時、次の来賓の到来を知らせるベルが鳴った。
「次のお客様を迎えにいかなくちゃ。それじゃあディゴリー様、ごゆっくり。」
フォーラの挨拶にセドリックが礼を言い、彼女がマリアとその場を立ち去ろうとした。するとその時、彼は別れ際に言葉を投げかけた。
「君はドレスが凄く似合うね」
「え!?どうもありがとう……。それじゃあまた。」
セドリックはたった今フォーラがお礼を言った際に見せた照れを含んだ表情に、少しばかり心動かされていた。
(あんなに照れると可愛い人がいたなんて気が付かなかったな。彼女は多分控え目な様子だから、彼女のことを知らない生徒も多いだろう)
自分だって今日まで彼女を殆ど知らなかった。苗字こそ聞いたことがあったものの、彼女の顔などホグワーツではあまり認識していなかったし、ファーストネームは今日のために事前に父親から教えてもらったくらいだ。パーティー主催者のお宅にお嬢様がいるから覚えておくよう言われた、それだけだった。
(みんなが彼女のことを知ったら、きっと彼女は多くの人から愛されるだろうな)
さて、ほんの少しだけ時間を遡り、ドラコは広間にやってきたディゴリー家、もといセドリックとフォーラが楽しそうに話している姿を目に留めていた。
(セドリック・ディゴリーじゃないか。何故あいつが)
ドラコはセドリックとクィディッチで何度かシーカー対決をしたことがあった。そんなセドリックはこれまでフォーラと接点が皆無だっただけに、ドラコからすれば今日彼がこの場に来るとは予想外だった。それにもう一つ驚いたこととして、ドラコがここを訪れた時のフォーラは幾らか表情が硬かったのだが、ついさっき彼女がセドリックに見せた顔は打って変わって幾らか楽しそうに見えた。ドラコは遠目でそのように認識した。
(僕には何も話し掛けてこなかったくせに)
ドラコはそこまで考えて、そもそも自分が照れてフォーラに話題を振らなかったのだと考えを改めた。ああもう、自分が嫌だ。ドラコはそんな気分になった後で、今日彼女に時間ができたタイミングで、改めてきちんと挨拶をしにいこうと思い直した。
(ちゃんと、似合ってるって言ってやらなきゃな……)
その後、フォーラが来賓の出迎えの仕事を終えたのはパーティーが始まる直前だった。彼女はようやく最後の客を案内し終えると、父親の挨拶の間、広間の隅に置かれた椅子で小休止した。フォーラが目立たない位置から父親の挨拶を眺め、そして周囲の来賓たちをぐるっと見渡せば、両親と関わりのある見知った顔がちらほら見受けられた。