9. ジョージの災難
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フォーラ自身、ジョージのことを嫌ってなどはいなかった。寧ろまたいつものように話したいとすら思っていた。しかし彼女は彼を見る度にどうしても羞恥心が先に立ち、反射的に彼から逃げてしまっていたのだ。
(だから!あれは薬のせいでジョージのせいじゃないわ。彼は体の自由が効かなかったのよ。私、彼と面と向かって話をしないといけないのに)
何度同じことを考えたか分からなかった。頭では理解している筈なのに、どうしても体がいうことを聞かないのだ。フォーラがそのように思案しつつ一人で放課後の廊下を歩いている時だった。
「フォーラ」
「えっ?」彼女は突然の呼びかけとともに、真正面からやってきた誰かに自身の両腕をさっと掴まれたのだ。
「!?」フォーラは驚きのあまりその場に立ち止まり、顔を上げて前を見た。すると彼女の視線の先にいたのは何とジョージだった。彼は大層自信のない表情をしていて、何とか声を絞り出していた。
「や、やあ。いきなり驚かせてごめん。だけどそのまま進んだら、君が柱にぶつかるとこだったから」
「えっ、あ……」確かにジョージの後ろには大きめの柱があった。「あの、ありがとう……。」
フォーラは何とかそのようにお礼の言葉を伝えつつも焦った様子で目を泳がせ、両腕を掴まれて逃げ場がないことを理解すると、とうとう降参したように俯いてしまった。
ジョージはフォーラがあれだけ自分のことを避けていたのに、今はこうして大人しくしていることに少々驚いていた。彼はその手を離すことなくため息を漏らした。
「やっと、捕まえた」
その言葉にフォーラが再び顔を上げると、目の前のジョージは何処かあの時に似た―――彼が薬でおかしくなった際に見せた、切ない表情を少しばかり連想させるような顔をしていた。
「俺、あれからずっとフォーラに謝りたかったんだ。だけど中々タイミングがなくて、それで」
ジョージは続きの言葉を発するか迷い、少しの間無言になった。そして彼は自分が傷つく可能性を何とか受け入れ、勇気を出して再び口を開いた。
「フォーラは、俺のことを嫌いになったよな?」
「そ、そんなわけないわ……!」フォーラが咄嗟に発した言葉はジョージが予想していた返答と真逆だった。そのため彼は思わず驚いて少々目を見開いた。
「私……。は、恥ずかしかっただけなの。私のせいでジョージが、その……あ、あんなことになってしまって、本当に申し訳ないと思っていたわ。貴方と話をしないといけないことは分かっていたの。でも、どうしてもそれができる自信がなくて。私が避けていたせいで、貴方を嫌っていると勘違いさせてしまって本当にごめんなさい。」
『あんなこと』と言った時のフォーラが随分恥ずかしそうにしている姿に、ジョージは心臓の辺りをギュッと握られたような感じがした。怖がらせてしまったであろうことへの申し訳なさと、自分を意識してくれていることへの緊張が相まったせいだろう。
「フォーラは悪くない。俺がもっとしっかりしてればよかったんだ。怖い思いをさせてごめんな……」
「違うの。怖かったとかそういうことではないの!私今まで、そのっ……誰かに、あんな風に見つめられたりした経験がなくて……な、なんて言ったらいいのか。ええと、凄く恥ずかしかった、本当にそれだけなの。だって、貴方がああいったことを無理矢理する人じゃないと知っているつもりだし、それに……。私たち、友達だもの。何より私、ジョージのこと大好きよ。だから嫌いになったりなんかしないわ。」
フォーラは最後の言葉を訴えかけるように発した。そして思いもよらない彼女の発言にジョージの心臓は本当にうるさくなった。彼女の『好き』の意味が自分の欲しいものと違っていても、それは最早何の問題でもなかった。フォーラに嫌われたと思っていた彼にとって、この状況は飛び上がるほど嬉しいものだったのだ。
ジョージの心は自然と安堵や喜びで一杯になっており、彼は眉を八の字に下げると満面の笑みをフォーラに向けていた。
「てっきり俺、君に嫌われたと思ってた。だから今、嬉しくて嬉しくて……」
ジョージの様子はフォーラからすれば大袈裟すぎるように見えたかもしれない。しかしこの数日間、ジョージがどれ程までに不安を抱えていたかを思えば、彼の反応は当然のものだった。
(ホントは俺のしたことが嫌だったかもしれないのに、こんなにも気を遣ってくれて。いや、今はフォーラが言ってた『恥ずかしかっただけ』という言葉を信じよう。それにしても俺、一体中庭でどんな風に彼女のことを見つめてたんだ?そんなに恥ずかしくなるような視線を向けてたのか)
「えっと、ジョージ?」
するとフォーラが不意に視線を泳がせて戸惑いを見せたので、ジョージは首を傾げた。
「その、えっと……よ、喜んでもらえて、よかったわ。だけどその、こんなに近くなる必要は」
その言葉にジョージが改めてフォーラの方を見やると、彼は先程から喜びのあまり無意識に彼女の体を自分の方へ引き寄せていたのだった。それに彼の手はまだ彼女の両腕を掴んだままだ。
「えっ!あ、悪かった!気が付かなくて……はは」
ジョージは内心非常に焦っていたが、無理矢理平静を保って彼女からそっと離れた。
「ううん、いいの。それにしてもジョージに負担をかけるなんて。お父様に薬のことをきちんと言っておかなくちゃ。具体的に何があったかは話せないにしても……風邪薬だなんて言っていたけれど、そんな代物とは程遠いもの。」
「正直あの薬はもう二度とごめんだぜ……。どういう理屈で作用してたのかさっぱりだ」
ジョージは薬の原理を理解していない風を装ったが、効果を直に感じた身としては、明らかに意中の相手への想いを増強させる代物としか思えなかった。風邪で弱っている身体を高ぶる気持ちで元気にさせるような、そんな感じだ。ジョージはフォーラがこの薬のメカニズムを知ることがないよう願うばかりだった。薬に侵されている間も、効果が切れたあとも、あの魔法薬に対しては心臓が幾つあっても足りやしない。ジョージはそのように思って苦笑いしたのだった。
そしてこの日の夜、フォーラが父親に宛てた手紙で薬の文句を綴ったのは言うまでもない。勿論、ジョージにキスされそうになった件は隠して。
(だから!あれは薬のせいでジョージのせいじゃないわ。彼は体の自由が効かなかったのよ。私、彼と面と向かって話をしないといけないのに)
何度同じことを考えたか分からなかった。頭では理解している筈なのに、どうしても体がいうことを聞かないのだ。フォーラがそのように思案しつつ一人で放課後の廊下を歩いている時だった。
「フォーラ」
「えっ?」彼女は突然の呼びかけとともに、真正面からやってきた誰かに自身の両腕をさっと掴まれたのだ。
「!?」フォーラは驚きのあまりその場に立ち止まり、顔を上げて前を見た。すると彼女の視線の先にいたのは何とジョージだった。彼は大層自信のない表情をしていて、何とか声を絞り出していた。
「や、やあ。いきなり驚かせてごめん。だけどそのまま進んだら、君が柱にぶつかるとこだったから」
「えっ、あ……」確かにジョージの後ろには大きめの柱があった。「あの、ありがとう……。」
フォーラは何とかそのようにお礼の言葉を伝えつつも焦った様子で目を泳がせ、両腕を掴まれて逃げ場がないことを理解すると、とうとう降参したように俯いてしまった。
ジョージはフォーラがあれだけ自分のことを避けていたのに、今はこうして大人しくしていることに少々驚いていた。彼はその手を離すことなくため息を漏らした。
「やっと、捕まえた」
その言葉にフォーラが再び顔を上げると、目の前のジョージは何処かあの時に似た―――彼が薬でおかしくなった際に見せた、切ない表情を少しばかり連想させるような顔をしていた。
「俺、あれからずっとフォーラに謝りたかったんだ。だけど中々タイミングがなくて、それで」
ジョージは続きの言葉を発するか迷い、少しの間無言になった。そして彼は自分が傷つく可能性を何とか受け入れ、勇気を出して再び口を開いた。
「フォーラは、俺のことを嫌いになったよな?」
「そ、そんなわけないわ……!」フォーラが咄嗟に発した言葉はジョージが予想していた返答と真逆だった。そのため彼は思わず驚いて少々目を見開いた。
「私……。は、恥ずかしかっただけなの。私のせいでジョージが、その……あ、あんなことになってしまって、本当に申し訳ないと思っていたわ。貴方と話をしないといけないことは分かっていたの。でも、どうしてもそれができる自信がなくて。私が避けていたせいで、貴方を嫌っていると勘違いさせてしまって本当にごめんなさい。」
『あんなこと』と言った時のフォーラが随分恥ずかしそうにしている姿に、ジョージは心臓の辺りをギュッと握られたような感じがした。怖がらせてしまったであろうことへの申し訳なさと、自分を意識してくれていることへの緊張が相まったせいだろう。
「フォーラは悪くない。俺がもっとしっかりしてればよかったんだ。怖い思いをさせてごめんな……」
「違うの。怖かったとかそういうことではないの!私今まで、そのっ……誰かに、あんな風に見つめられたりした経験がなくて……な、なんて言ったらいいのか。ええと、凄く恥ずかしかった、本当にそれだけなの。だって、貴方がああいったことを無理矢理する人じゃないと知っているつもりだし、それに……。私たち、友達だもの。何より私、ジョージのこと大好きよ。だから嫌いになったりなんかしないわ。」
フォーラは最後の言葉を訴えかけるように発した。そして思いもよらない彼女の発言にジョージの心臓は本当にうるさくなった。彼女の『好き』の意味が自分の欲しいものと違っていても、それは最早何の問題でもなかった。フォーラに嫌われたと思っていた彼にとって、この状況は飛び上がるほど嬉しいものだったのだ。
ジョージの心は自然と安堵や喜びで一杯になっており、彼は眉を八の字に下げると満面の笑みをフォーラに向けていた。
「てっきり俺、君に嫌われたと思ってた。だから今、嬉しくて嬉しくて……」
ジョージの様子はフォーラからすれば大袈裟すぎるように見えたかもしれない。しかしこの数日間、ジョージがどれ程までに不安を抱えていたかを思えば、彼の反応は当然のものだった。
(ホントは俺のしたことが嫌だったかもしれないのに、こんなにも気を遣ってくれて。いや、今はフォーラが言ってた『恥ずかしかっただけ』という言葉を信じよう。それにしても俺、一体中庭でどんな風に彼女のことを見つめてたんだ?そんなに恥ずかしくなるような視線を向けてたのか)
「えっと、ジョージ?」
するとフォーラが不意に視線を泳がせて戸惑いを見せたので、ジョージは首を傾げた。
「その、えっと……よ、喜んでもらえて、よかったわ。だけどその、こんなに近くなる必要は」
その言葉にジョージが改めてフォーラの方を見やると、彼は先程から喜びのあまり無意識に彼女の体を自分の方へ引き寄せていたのだった。それに彼の手はまだ彼女の両腕を掴んだままだ。
「えっ!あ、悪かった!気が付かなくて……はは」
ジョージは内心非常に焦っていたが、無理矢理平静を保って彼女からそっと離れた。
「ううん、いいの。それにしてもジョージに負担をかけるなんて。お父様に薬のことをきちんと言っておかなくちゃ。具体的に何があったかは話せないにしても……風邪薬だなんて言っていたけれど、そんな代物とは程遠いもの。」
「正直あの薬はもう二度とごめんだぜ……。どういう理屈で作用してたのかさっぱりだ」
ジョージは薬の原理を理解していない風を装ったが、効果を直に感じた身としては、明らかに意中の相手への想いを増強させる代物としか思えなかった。風邪で弱っている身体を高ぶる気持ちで元気にさせるような、そんな感じだ。ジョージはフォーラがこの薬のメカニズムを知ることがないよう願うばかりだった。薬に侵されている間も、効果が切れたあとも、あの魔法薬に対しては心臓が幾つあっても足りやしない。ジョージはそのように思って苦笑いしたのだった。
そしてこの日の夜、フォーラが父親に宛てた手紙で薬の文句を綴ったのは言うまでもない。勿論、ジョージにキスされそうになった件は隠して。