9. ジョージの災難
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フォーラの心からの謝罪に、ジョージはこんなにも押しつけがましいことを彼女に言ってしまって大変申し訳ない気持ちになった。しかし今の彼はそんな綺麗事を言っていられる状況ではなかった。自分の衝動を抑える最善策は、回らない頭で考えうる限り、少しでも長く彼女を抱擁し続けることだったからだ。
「フォーラは謝らなくていい。寧ろ俺の方こそごめん。だけどこうしていられたら随分楽なんだ」
ジョージの発言はフォーラにとって非常に不利で、彼女が自分の腕の中から逃れられない状況を作ることになった。しかしジョージは次第にそれでよかったと思う気持ちが勝っていくのを感じた。
(そうすれば、今だけはフォーラが大人しく俺の腕の中にいてくれる)
ジョージがフォーラをぎゅっと抱きしめ直すと、確かに彼は先程よりも幾らか落ち着きを取り戻していた。その一方でフォーラは困惑せずにはいられなかった。
(まさか父様のせいでこんなことになるなんて。私、こんな風に男の子に、その、ぎゅっとされたことがないから、すっごく恥ずかしいわ。だけど!ジョージは普段こんなことをする人じゃないから、きっと本当に薬のせいで気がおかしくなっているんだわ。だから今は私が助けてあげないと)
フォーラはそのように意を決すると、ジョージを宥めようと彼の背中に手を回して優しくさすった。これで少しでも彼の気分が楽になればと思ったのだ。
「!」ジョージはフォーラのそのような行動に大変驚いた。まさか彼女自ら背中に手を回してくるとは思わなかったからだ。そして互いに抱擁し合う姿となったことを皮切りに、どうやらジョージの落ち着きかけていた衝動に火が点いてしまったようだった。
「きゃっ!」フォーラが短い悲鳴をあげた。そして次に瞬きした時には、彼女の背中はドサリと音を立てて芝生についていた。というのも、なんとジョージがいきなりフォーラをその場に押し倒していたのだ。
「……じ、ジョージ……?」
名前を呼ばれた彼の左手はフォーラの肩を、そして右手は彼女の手首の辺りを抑えていた。フォーラは彼の両手が微かに震えていることに気が付いた。
「ど、どうしたの……」困惑した様子のフォーラの言葉に、ジョージは切ない表情と焦りを帯びた声色で答えた。
「俺……ホントに色々不味いんだ。こんなことしたくないのに、体が勝手に……っあ、頭も、くらくらするし」
真上からフォーラを見るジョージの瞳はとても熱っぽくて、フォーラはこんな表情をした彼を見たことがないと本気で思った。彼の息遣いは苦しそうで荒かった。
「俺、今……すごく、最低だ……」そう言うと彼は虚ろな瞳を薄めて、少しずつ顔をフォーラに近付けた―――。
「ジョージ!?え、あ、……だ、駄目……っ」
フォーラを抑えるジョージの手に力が入った。フォーラは身動きが取れず、緊張のあまり何とかか細い声を出すしかできなかった。このままでは、もう後ほんの少しでジョージと自分の唇が重なってしまう。フォーラはどうしようもなくて、顔を真っ赤にしてぎゅっと目を瞑った。
(ドラコ……!私、どうすればいいの……!?)
フォーラがそのように心の中で叫んだ、その時だった。
「おーい、ジョージ、どこだ?」
「!」二人の唇が触れる直前、ジョージはその声にハッとして顔を上げると辺りを見回した。それと同時に彼の手の力が緩んだものだから、フォーラはその隙を見て咄嗟に猫に変身した。そして一度も振り返らず、一目散にその場を走り去っていってしまったのだった。
「あ、フォーラ!待っ……!」
ジョージは走り去っていく黒猫を追いかけるため立ち上がろうとしたが、脚がふらついて上手く起き上がれなかった。彼はその場に倒れ込んだ衝撃をきっかけに、ようやく意識が平常に戻っていくのを感じた。それによって、彼には自分の行いに対する罪悪感が先程よりも一層強く押し寄せていた。
「俺、そんなつもりじゃ―――」
もう既にいなくなってしまった彼女にそう言ったところで遅いことは分かっていた。その直ぐ後で、後ろから駆けつけてきたフレッドがジョージを見つけると、彼は随分息を切らしてジョージの目の前で立ち止まった。
「はあ、はあ。お、おいジョージ。お前、フォーラに会ったり、なんかしたり、してないだろうな?」
フレッドが喘ぎ喘ぎ尋ねた。しかしジョージが返事をせずに青ざめた表情で黙ったままなものだから、フレッドは苦笑いをした。
「おい。まさか、その何かをしちまったのか?」
一方その頃、フォーラはすっかり猫の姿から人間に戻っていたものの、先程の衝撃的な出来事のせいで足を止めることはできず、談話室に向かって廊下をひた走っていた。彼女の顔は真っ赤だった。
「はあ、はあ、はあ」
(お、思わず逃げてしまったわ……!だって、ジョージがあんなこと……!でも、彼は熱と薬のせいで―――分かっているわ。分かっているけど今走るのをやめてしまったら、今以上にさっきのことを思い出してしまいそうだし、恥ずかしくて死んでしまう!)
それから程なくしてフォーラは雑念の消えぬまま談話室の前に到着し、何とか先程のことを少しでも頭から取り去ろうと幾らか首を横に振った。そして彼女は少々俯いた状態で談話室への出入り口を通ろうとしたのだが、偶然向かい側からやってきた人にぶつかりかけた。
「あっごめんなさい!」
フォーラの目の前にいたのはドラコだった。彼はフォーラに気を付けるよう注意するつもりだった。しかし彼女の顔を見た途端、そのような言葉は何処かへ霧散していて、代わりに質問が口を突いて出た。
「フォーラ、どうしてそんなに真っ赤なんだ?」
彼女はドラコのそのような発言に随分驚いている様子だった。
「えっ、えっ、わ、私の顔、赤い!?」
フォーラが狼狽えながら自身の両頬に手を当てて熱さを確認する姿を見て、ドラコは彼女が自身の顔色に無自覚だったことを心配した。
「大丈夫か?熱でもあるんじゃないのか?」
「え、熱なんて……ううん、分からない……。」
段々と俯きながら声が小さくなっていくフォーラを見て、ドラコは本当に大丈夫なのかと再度声を掛けた。しかし彼女から返ってきたのは、明らかに無理に強がっているような声だった。
「何でもないわ、本当よ……。私、少しだけ部屋に戻っているわ。ごめんなさい……。」
フォーラはそれだけ言い残すと女子寮の方へ去ってしまった。ドラコは彼女の後ろ姿が見えなくなるまでその場に立ち止まっていた。
(あんなになって、本当に熱がないといいんだが)
「フォーラは謝らなくていい。寧ろ俺の方こそごめん。だけどこうしていられたら随分楽なんだ」
ジョージの発言はフォーラにとって非常に不利で、彼女が自分の腕の中から逃れられない状況を作ることになった。しかしジョージは次第にそれでよかったと思う気持ちが勝っていくのを感じた。
(そうすれば、今だけはフォーラが大人しく俺の腕の中にいてくれる)
ジョージがフォーラをぎゅっと抱きしめ直すと、確かに彼は先程よりも幾らか落ち着きを取り戻していた。その一方でフォーラは困惑せずにはいられなかった。
(まさか父様のせいでこんなことになるなんて。私、こんな風に男の子に、その、ぎゅっとされたことがないから、すっごく恥ずかしいわ。だけど!ジョージは普段こんなことをする人じゃないから、きっと本当に薬のせいで気がおかしくなっているんだわ。だから今は私が助けてあげないと)
フォーラはそのように意を決すると、ジョージを宥めようと彼の背中に手を回して優しくさすった。これで少しでも彼の気分が楽になればと思ったのだ。
「!」ジョージはフォーラのそのような行動に大変驚いた。まさか彼女自ら背中に手を回してくるとは思わなかったからだ。そして互いに抱擁し合う姿となったことを皮切りに、どうやらジョージの落ち着きかけていた衝動に火が点いてしまったようだった。
「きゃっ!」フォーラが短い悲鳴をあげた。そして次に瞬きした時には、彼女の背中はドサリと音を立てて芝生についていた。というのも、なんとジョージがいきなりフォーラをその場に押し倒していたのだ。
「……じ、ジョージ……?」
名前を呼ばれた彼の左手はフォーラの肩を、そして右手は彼女の手首の辺りを抑えていた。フォーラは彼の両手が微かに震えていることに気が付いた。
「ど、どうしたの……」困惑した様子のフォーラの言葉に、ジョージは切ない表情と焦りを帯びた声色で答えた。
「俺……ホントに色々不味いんだ。こんなことしたくないのに、体が勝手に……っあ、頭も、くらくらするし」
真上からフォーラを見るジョージの瞳はとても熱っぽくて、フォーラはこんな表情をした彼を見たことがないと本気で思った。彼の息遣いは苦しそうで荒かった。
「俺、今……すごく、最低だ……」そう言うと彼は虚ろな瞳を薄めて、少しずつ顔をフォーラに近付けた―――。
「ジョージ!?え、あ、……だ、駄目……っ」
フォーラを抑えるジョージの手に力が入った。フォーラは身動きが取れず、緊張のあまり何とかか細い声を出すしかできなかった。このままでは、もう後ほんの少しでジョージと自分の唇が重なってしまう。フォーラはどうしようもなくて、顔を真っ赤にしてぎゅっと目を瞑った。
(ドラコ……!私、どうすればいいの……!?)
フォーラがそのように心の中で叫んだ、その時だった。
「おーい、ジョージ、どこだ?」
「!」二人の唇が触れる直前、ジョージはその声にハッとして顔を上げると辺りを見回した。それと同時に彼の手の力が緩んだものだから、フォーラはその隙を見て咄嗟に猫に変身した。そして一度も振り返らず、一目散にその場を走り去っていってしまったのだった。
「あ、フォーラ!待っ……!」
ジョージは走り去っていく黒猫を追いかけるため立ち上がろうとしたが、脚がふらついて上手く起き上がれなかった。彼はその場に倒れ込んだ衝撃をきっかけに、ようやく意識が平常に戻っていくのを感じた。それによって、彼には自分の行いに対する罪悪感が先程よりも一層強く押し寄せていた。
「俺、そんなつもりじゃ―――」
もう既にいなくなってしまった彼女にそう言ったところで遅いことは分かっていた。その直ぐ後で、後ろから駆けつけてきたフレッドがジョージを見つけると、彼は随分息を切らしてジョージの目の前で立ち止まった。
「はあ、はあ。お、おいジョージ。お前、フォーラに会ったり、なんかしたり、してないだろうな?」
フレッドが喘ぎ喘ぎ尋ねた。しかしジョージが返事をせずに青ざめた表情で黙ったままなものだから、フレッドは苦笑いをした。
「おい。まさか、その何かをしちまったのか?」
一方その頃、フォーラはすっかり猫の姿から人間に戻っていたものの、先程の衝撃的な出来事のせいで足を止めることはできず、談話室に向かって廊下をひた走っていた。彼女の顔は真っ赤だった。
「はあ、はあ、はあ」
(お、思わず逃げてしまったわ……!だって、ジョージがあんなこと……!でも、彼は熱と薬のせいで―――分かっているわ。分かっているけど今走るのをやめてしまったら、今以上にさっきのことを思い出してしまいそうだし、恥ずかしくて死んでしまう!)
それから程なくしてフォーラは雑念の消えぬまま談話室の前に到着し、何とか先程のことを少しでも頭から取り去ろうと幾らか首を横に振った。そして彼女は少々俯いた状態で談話室への出入り口を通ろうとしたのだが、偶然向かい側からやってきた人にぶつかりかけた。
「あっごめんなさい!」
フォーラの目の前にいたのはドラコだった。彼はフォーラに気を付けるよう注意するつもりだった。しかし彼女の顔を見た途端、そのような言葉は何処かへ霧散していて、代わりに質問が口を突いて出た。
「フォーラ、どうしてそんなに真っ赤なんだ?」
彼女はドラコのそのような発言に随分驚いている様子だった。
「えっ、えっ、わ、私の顔、赤い!?」
フォーラが狼狽えながら自身の両頬に手を当てて熱さを確認する姿を見て、ドラコは彼女が自身の顔色に無自覚だったことを心配した。
「大丈夫か?熱でもあるんじゃないのか?」
「え、熱なんて……ううん、分からない……。」
段々と俯きながら声が小さくなっていくフォーラを見て、ドラコは本当に大丈夫なのかと再度声を掛けた。しかし彼女から返ってきたのは、明らかに無理に強がっているような声だった。
「何でもないわ、本当よ……。私、少しだけ部屋に戻っているわ。ごめんなさい……。」
フォーラはそれだけ言い残すと女子寮の方へ去ってしまった。ドラコは彼女の後ろ姿が見えなくなるまでその場に立ち止まっていた。
(あんなになって、本当に熱がないといいんだが)