9. ジョージの災難
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そうして窓に映る自分をしげしげと眺めていると、今度は彼女の瞳に窓の外の景色が自然と入ってきた。窓の向こうはひと気のない中庭だった。そこには当然ながらいつもどおりの木が茂っていたのだが、今のフォーラは身体能力抜群で更には気分も高まっており、木登りをしたことのない彼女からすれば、その木々が何と魅力的に映ったことか言い表すのは難 くないだろう。
フォーラは木登りへの好奇心に抗えず、自分で思っていたよりも随分速く階段を駆け下り、中庭に続く廊下をサーッと走り抜けた。
(こんなに速く走れるなんて、すっごく素敵!)
反対側からやって来ていたスネイプがこちらを目で追ったが、そんな事は物凄い速さで走っている自分には一瞬の事のように感じられた。そうしてフォーラが目的地に辿り着く頃には、彼女はすっかり猫の身体を自分の思いどおりに操れるようになっていた。
(この身体なら、初めての木登りだってきっと簡単だわ!)
フォーラはそのように意気込むと、木の皮に爪をたててスルスルと上に向かって登ったのだった。
その頃、ジョージは中庭に足を踏み入れたところだった。
(―――確かこの辺だった筈だ)
ジョージは幾重にも折りたたまれた羊皮紙を手にしており、そこにはホグワーツ城内の見取り図が描かれていた。そしてその地図の上には幾人もの生徒や教師の名前が表示されており、校内の何処に誰がいるかを示すようにしてそれぞれが動いていた。
ジョージは入学して直ぐの頃、ホグワーツ管理人のフィルチの部屋でフレッドと罰則を受けた際、生徒からの押収物が仕舞ってある棚にその羊皮紙を見つけた。しかもこれが、誰かに地図を見られたくない時には、ただの無地の羊皮紙にできるのだから驚きだった。こっそり拝借して以来、ジョージはフレッドと悪戯のためにこの地図を頻繁に使ったものだが、まさか自分の好きな子を追いかけるために使う日が来るなんて、彼は自分の行動に些 かショックを受けていた。彼は普段ならフォーラに対して絶対にしないようなプライバシーを侵害する行為をしてしまう程、今の自分がおかしいのだと自覚せざるを得なかった。
そういうわけで、現在のジョージは手元の地図に浮かぶフォーラの名前を頼りに、迷うことなくこの場所にやって来ていた。しかし残念ながら辺りを見回しても中庭には誰もいなかった。
(おかしいな。ああ、早くフォーラに会わないと、もっと気が変になりそうだ)
ジョージは先程から本当に切なそうな様子だった。胸を抑え、もしフォーラが目の前にいようものなら―――。
「ニャー」その時何処からか猫の鳴く声がした。ジョージは直ぐには声の主を見つけることができなかった。それもその筈で、まさかその声の主が木の上にいることなど予想だにしなかったのだ。ジョージは鳴き声を聞いて何度目かの時にようやく木の枝の方に顔を上げ、そこに一匹の猫を見つけた。
「ニャー」相変わらずか細い声で鳴いた黒猫は木の枝にしがみつき、じっとこちらを見下ろしていた。
「そんなところにいたのか。まさか降りられないんじゃないか?」
ここからではどうにも猫に手が届きそうにない。ジョージは杖を取り出すと呪文を唱えて猫を宙に浮かせた。そして自分の元までゆっくり飛ばすと、そっと腕の中で抱きかかえた。すると黒猫はこちらを大きな瞳で見て、今度は先程よりも大きな声で一声鳴いた。まるで『ありがとう』とでも言っているようだ。
「よしよし、よかったな……」ジョージはにこりと笑って猫の頭を優しく撫でた。「お前、ドジだなあ。可愛いやつ」
(それにしてもこの猫、瞳の色がまるでフォーラみたいだ。そういえば彼女、結局いなかったな)
ジョージが猫の鼻の上をすりすりと撫でてやると、猫はむず痒そうにイヤイヤと首を横に振った―――その時だった。
「ぷしっ」黒猫が耐えきれずくしゃみをした瞬間、ジョージはいきなりのしかかってきた重さに耐えかねて、それの下敷きになる形で芝生の上に背中から倒れこんだ。あまりにも突然の出来事にジョージは何が何だかわけが分からなかった。
「ってて……な、なんだ!?」
ジョージが痛みに顔をしかめながら目の前を見やると、何と自分の体の上で、そして自分の腕の中にフォーラが納まっているではないか。彼女の表情は大層申し訳なさそうで、酷く彼を心配していた。
「えっ」ジョージは本当に驚いて目を見開いた。「何、フォーラ?……え、な、どうして!?」
さっきまで猫を抱えていた筈なのに、何故倒れた自分の上にフォーラがいて、そして何故自分が彼女を抱きしめているのだろうか?ジョージの顔はみるみるうちに本当に真っ赤になっていた。薬のせいもあったかもしれないが、そうでなくともこのような状況になれば彼はきっと同じような反応を示していたに違いない。
「ジョージ、ごめんなさい……!大丈夫!?怪我は!?」フォーラがこちらの様子を伺うように眉をハの字にし、瞳を覗き込んで尋ねた。
ジョージは薬によって、つい先程までフォーラを捜し求め、もし出会えれば抱き締めて告白したい一心だった。しかしあまりにも突然とはいえ実際に彼女と対峙してみると、彼は羞恥心と自制心によって、自分の欲を押さえつけなければならないという感覚に襲われた。ジョージは欲望のまま彼女に想いをぶつけることを拒否したい気持ちと、薬のせいで自分の欲を優先したい衝動のどちらもと闘わなければならなくなってしまった。そのためジョージは思わずフォーラから顔を逸らし、恐らく情けない表情をしている自分の顔を片手で隠した。
「だっ、大丈夫だから、そこを退いてくれないか!?」
「えっ、あ、ごめんなさい!」
フォーラは木登りへの好奇心に抗えず、自分で思っていたよりも随分速く階段を駆け下り、中庭に続く廊下をサーッと走り抜けた。
(こんなに速く走れるなんて、すっごく素敵!)
反対側からやって来ていたスネイプがこちらを目で追ったが、そんな事は物凄い速さで走っている自分には一瞬の事のように感じられた。そうしてフォーラが目的地に辿り着く頃には、彼女はすっかり猫の身体を自分の思いどおりに操れるようになっていた。
(この身体なら、初めての木登りだってきっと簡単だわ!)
フォーラはそのように意気込むと、木の皮に爪をたててスルスルと上に向かって登ったのだった。
その頃、ジョージは中庭に足を踏み入れたところだった。
(―――確かこの辺だった筈だ)
ジョージは幾重にも折りたたまれた羊皮紙を手にしており、そこにはホグワーツ城内の見取り図が描かれていた。そしてその地図の上には幾人もの生徒や教師の名前が表示されており、校内の何処に誰がいるかを示すようにしてそれぞれが動いていた。
ジョージは入学して直ぐの頃、ホグワーツ管理人のフィルチの部屋でフレッドと罰則を受けた際、生徒からの押収物が仕舞ってある棚にその羊皮紙を見つけた。しかもこれが、誰かに地図を見られたくない時には、ただの無地の羊皮紙にできるのだから驚きだった。こっそり拝借して以来、ジョージはフレッドと悪戯のためにこの地図を頻繁に使ったものだが、まさか自分の好きな子を追いかけるために使う日が来るなんて、彼は自分の行動に
そういうわけで、現在のジョージは手元の地図に浮かぶフォーラの名前を頼りに、迷うことなくこの場所にやって来ていた。しかし残念ながら辺りを見回しても中庭には誰もいなかった。
(おかしいな。ああ、早くフォーラに会わないと、もっと気が変になりそうだ)
ジョージは先程から本当に切なそうな様子だった。胸を抑え、もしフォーラが目の前にいようものなら―――。
「ニャー」その時何処からか猫の鳴く声がした。ジョージは直ぐには声の主を見つけることができなかった。それもその筈で、まさかその声の主が木の上にいることなど予想だにしなかったのだ。ジョージは鳴き声を聞いて何度目かの時にようやく木の枝の方に顔を上げ、そこに一匹の猫を見つけた。
「ニャー」相変わらずか細い声で鳴いた黒猫は木の枝にしがみつき、じっとこちらを見下ろしていた。
「そんなところにいたのか。まさか降りられないんじゃないか?」
ここからではどうにも猫に手が届きそうにない。ジョージは杖を取り出すと呪文を唱えて猫を宙に浮かせた。そして自分の元までゆっくり飛ばすと、そっと腕の中で抱きかかえた。すると黒猫はこちらを大きな瞳で見て、今度は先程よりも大きな声で一声鳴いた。まるで『ありがとう』とでも言っているようだ。
「よしよし、よかったな……」ジョージはにこりと笑って猫の頭を優しく撫でた。「お前、ドジだなあ。可愛いやつ」
(それにしてもこの猫、瞳の色がまるでフォーラみたいだ。そういえば彼女、結局いなかったな)
ジョージが猫の鼻の上をすりすりと撫でてやると、猫はむず痒そうにイヤイヤと首を横に振った―――その時だった。
「ぷしっ」黒猫が耐えきれずくしゃみをした瞬間、ジョージはいきなりのしかかってきた重さに耐えかねて、それの下敷きになる形で芝生の上に背中から倒れこんだ。あまりにも突然の出来事にジョージは何が何だかわけが分からなかった。
「ってて……な、なんだ!?」
ジョージが痛みに顔をしかめながら目の前を見やると、何と自分の体の上で、そして自分の腕の中にフォーラが納まっているではないか。彼女の表情は大層申し訳なさそうで、酷く彼を心配していた。
「えっ」ジョージは本当に驚いて目を見開いた。「何、フォーラ?……え、な、どうして!?」
さっきまで猫を抱えていた筈なのに、何故倒れた自分の上にフォーラがいて、そして何故自分が彼女を抱きしめているのだろうか?ジョージの顔はみるみるうちに本当に真っ赤になっていた。薬のせいもあったかもしれないが、そうでなくともこのような状況になれば彼はきっと同じような反応を示していたに違いない。
「ジョージ、ごめんなさい……!大丈夫!?怪我は!?」フォーラがこちらの様子を伺うように眉をハの字にし、瞳を覗き込んで尋ねた。
ジョージは薬によって、つい先程までフォーラを捜し求め、もし出会えれば抱き締めて告白したい一心だった。しかしあまりにも突然とはいえ実際に彼女と対峙してみると、彼は羞恥心と自制心によって、自分の欲を押さえつけなければならないという感覚に襲われた。ジョージは欲望のまま彼女に想いをぶつけることを拒否したい気持ちと、薬のせいで自分の欲を優先したい衝動のどちらもと闘わなければならなくなってしまった。そのためジョージは思わずフォーラから顔を逸らし、恐らく情けない表情をしている自分の顔を片手で隠した。
「だっ、大丈夫だから、そこを退いてくれないか!?」
「えっ、あ、ごめんなさい!」