9. ジョージの災難
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「っクシュ!」
「おいジョージ、大丈夫か?」
「多分、熱でもありそうだな……ハックシュン!」
ハリーがクィディッチの試合中に箒から落下してから二、三日が過ぎたある日のこと。フレッドが朝目覚めると、ジョージが盛大にくしゃみをしていた。ここ最近は雨が降る中をずぶ濡れになりながら毎日のようにクィディッチの練習をしていたからだろう。フレッドの隣のベッドに座るジョージの顔は火照っていて、いつになく目は虚ろでとろんとしていた。
「俺、マダム・ポンフリーのとこに行ってくる」
「朝飯は?食えるなら軽く食っといた方がいいんじゃないか?」
「うーん」鼻水をすすり上げながらジョージが唸った。
フレッドはジョージのそんな様子を少々心配そうに見たが、それも束の間、彼は直ぐに何かを思い出したように「あっ!」と声を上げた。
「なんだよ、頭に響くじゃないか」
ジョージがぼやくのを尻目に、フレッドは急いで自分のベッドのサイドボードの引き出しを開け、中を引っ掻き回してようやく何かを取り出した。そして今度はそれをジョージの目の前に突き出した。
「ジョージ、これだぜこれ!」
フレッドが手に持っていたのは、ジョージにも見覚えのある紙袋だった。
「おい、これってまさか」その問いにフレッドはニンマリとした笑みを見せ、紙袋の中身を取り出すと自分の手のひらにそれを載せた。
「おいおい、どっちかが風邪を引いたら試そうって言ってたのを忘れたのか?」
フレッドの持つ小瓶は、この間の夏休みにフォーラを助けたお礼にと、彼女の父がアーサー・ウィーズリーに手渡した新作の風邪薬だった。
「『私が新しく作った薬が入っています。熱、風邪、嘔吐その他全般に効きます。従来の物より効きが早くて、副作用は多少人が恋しくなるだけ』」フレッドは、当時シェード・ファントムが発した言葉をそっくりそのまま思い出しながら言った。彼はニヤッと笑って続けた。
「正直、その『人が恋しくなる』って部分に一番興味があるけど。それがどんなものかはさておき、フォーラも父親の薬は大丈夫だって言ってたし。つまりこれを飲んどけば、わざわざ離れた医務室に行ってマダムの面倒なお小言を聞かずに済むってことさ」
「ああ、そうだったな。まあとりあえず、物は試しだ」
ジョージは少々気だるげに頷いて薬を受け取った。そして水差しの水をコップに入れると、薬と一緒に飲み込んだ。
「どうだ?」フレッドがジョージをまじまじと見て尋ねた。しかしジョージは首を横に振った。
「まだ飲んだばっかりだぜ?」
しかし二人が朝食を摂りに大広間へ下りていく頃には、ジョージのうつろな意識は次第にはっきりし始めていた。
「何だか身体が楽になってきた感があるな」
「で?俺のことでも恋しくなったか?」真面目ぶってそう聞いてきたフレッドに、ジョージは呆れ顔で笑い返した。
「いいや。もしそうなら今頃こんなに平然としてないだろうよ」
暫くして二人が大広間に着くと、ジョージの赤みを帯びた頬は随分といつもの顔色に戻っていた。それにすっかり気分もよくなっていた。
「この薬、本当に言われたとおり効きが早いな。『元気爆発薬』みたいに耳から煙も出ないし。もう体調も随分マシになっ―――クシュン!……あっ」
ジョージはくしゃみをし終えた拍子に視線の先の何かに気付き、その方向から暫く視線を逸らさなかった。フレッドが疑問に思って相方の視線を辿ると、そこにはスリザリンの席に座って朝食を摂るフォーラの姿があった。
「?ああ、フォーラがいるな」フレッドは彼女を視認した後、ジョージの方に顔を向けた。
「!?」その時フレッドが見たのは、先程の落ち着いたジョージとは全く異なる人物だった。ジョージの目は今朝男子寮にいた時のような虚ろさに戻っていて、頬は赤くなって、さらには切なそうな様子が追加されていたのだ。
「お、おい……ジョージ?」フレッドが恐る恐る尋ねると、ジョージの口からはまるで恋する人が吐くような、苦しいため息が出ただけだった。フレッドはジョージがフォーラに想いを寄せていることを勿論知っていた。とはいえ普段のジョージは彼女に対し、あからさまにこんな風になってしまう奴だっただろうか?
「大丈夫か?」フレッドが尋ねた。
「え?ああ、何だか身体が熱いな。治ってきたと思ってたんだけど。フォーラを見たらまた元に戻ったような……。いや、さっきとは違う身体の熱さだ。血が体中を駆け巡るのが分かるような、そんな感じがする。今直ぐ彼女に気持ちを伝えたくなるような……。それになんていうか、胸のあたりがすごく苦しい」
(こ、これは……。フォーラの親父さんは、一体何を作っちまったんだ?)
フレッドは例の薬の効果が風邪薬というよりは寧ろ、惚れ薬のようだと思ったが―――いや、ジョージがここに来るまでに行き交った人たちに見向きもしなかったことを考えると、その線は薄いだろう。どちらかといえば、惚れた相手に想いを打ち明ける勇気のない人にとっては、この薬は背中を押してもらうのに抜群の効果を発揮する代物だとフレッドは思った。正に目の前のジョージは今にもフォーラのところへ向かいたくて仕方がない様子だったからだ。
フレッドはこのままジョージを放っておくのはよくないと直感的に感じ、彼の肩をしっかり掴むとグリフィンドールの寮テーブルの方にぐいと向かせた。
「と、とりあえず朝食だ。な!」
「ああ」ジョージは自分の胸元をぎゅっと抑えながら頷くと、渋々フレッドに従ったのだった。
それから暫くジョージはため息交じりに朝食を摂っていた。その姿は周囲の人たちから頻繁に心配の声を掛けられる程にいつもと違っていた。フレッドの目の前に座っていたロンが怪しいものを見る目でジョージを見た後、フレッドに目配せしながら尋ねた。
「どうしちゃったの?」
「ちょっと壊れただけさ」フレッドはそう言って呆れた顔で笑ったのだった。
「おいジョージ、大丈夫か?」
「多分、熱でもありそうだな……ハックシュン!」
ハリーがクィディッチの試合中に箒から落下してから二、三日が過ぎたある日のこと。フレッドが朝目覚めると、ジョージが盛大にくしゃみをしていた。ここ最近は雨が降る中をずぶ濡れになりながら毎日のようにクィディッチの練習をしていたからだろう。フレッドの隣のベッドに座るジョージの顔は火照っていて、いつになく目は虚ろでとろんとしていた。
「俺、マダム・ポンフリーのとこに行ってくる」
「朝飯は?食えるなら軽く食っといた方がいいんじゃないか?」
「うーん」鼻水をすすり上げながらジョージが唸った。
フレッドはジョージのそんな様子を少々心配そうに見たが、それも束の間、彼は直ぐに何かを思い出したように「あっ!」と声を上げた。
「なんだよ、頭に響くじゃないか」
ジョージがぼやくのを尻目に、フレッドは急いで自分のベッドのサイドボードの引き出しを開け、中を引っ掻き回してようやく何かを取り出した。そして今度はそれをジョージの目の前に突き出した。
「ジョージ、これだぜこれ!」
フレッドが手に持っていたのは、ジョージにも見覚えのある紙袋だった。
「おい、これってまさか」その問いにフレッドはニンマリとした笑みを見せ、紙袋の中身を取り出すと自分の手のひらにそれを載せた。
「おいおい、どっちかが風邪を引いたら試そうって言ってたのを忘れたのか?」
フレッドの持つ小瓶は、この間の夏休みにフォーラを助けたお礼にと、彼女の父がアーサー・ウィーズリーに手渡した新作の風邪薬だった。
「『私が新しく作った薬が入っています。熱、風邪、嘔吐その他全般に効きます。従来の物より効きが早くて、副作用は多少人が恋しくなるだけ』」フレッドは、当時シェード・ファントムが発した言葉をそっくりそのまま思い出しながら言った。彼はニヤッと笑って続けた。
「正直、その『人が恋しくなる』って部分に一番興味があるけど。それがどんなものかはさておき、フォーラも父親の薬は大丈夫だって言ってたし。つまりこれを飲んどけば、わざわざ離れた医務室に行ってマダムの面倒なお小言を聞かずに済むってことさ」
「ああ、そうだったな。まあとりあえず、物は試しだ」
ジョージは少々気だるげに頷いて薬を受け取った。そして水差しの水をコップに入れると、薬と一緒に飲み込んだ。
「どうだ?」フレッドがジョージをまじまじと見て尋ねた。しかしジョージは首を横に振った。
「まだ飲んだばっかりだぜ?」
しかし二人が朝食を摂りに大広間へ下りていく頃には、ジョージのうつろな意識は次第にはっきりし始めていた。
「何だか身体が楽になってきた感があるな」
「で?俺のことでも恋しくなったか?」真面目ぶってそう聞いてきたフレッドに、ジョージは呆れ顔で笑い返した。
「いいや。もしそうなら今頃こんなに平然としてないだろうよ」
暫くして二人が大広間に着くと、ジョージの赤みを帯びた頬は随分といつもの顔色に戻っていた。それにすっかり気分もよくなっていた。
「この薬、本当に言われたとおり効きが早いな。『元気爆発薬』みたいに耳から煙も出ないし。もう体調も随分マシになっ―――クシュン!……あっ」
ジョージはくしゃみをし終えた拍子に視線の先の何かに気付き、その方向から暫く視線を逸らさなかった。フレッドが疑問に思って相方の視線を辿ると、そこにはスリザリンの席に座って朝食を摂るフォーラの姿があった。
「?ああ、フォーラがいるな」フレッドは彼女を視認した後、ジョージの方に顔を向けた。
「!?」その時フレッドが見たのは、先程の落ち着いたジョージとは全く異なる人物だった。ジョージの目は今朝男子寮にいた時のような虚ろさに戻っていて、頬は赤くなって、さらには切なそうな様子が追加されていたのだ。
「お、おい……ジョージ?」フレッドが恐る恐る尋ねると、ジョージの口からはまるで恋する人が吐くような、苦しいため息が出ただけだった。フレッドはジョージがフォーラに想いを寄せていることを勿論知っていた。とはいえ普段のジョージは彼女に対し、あからさまにこんな風になってしまう奴だっただろうか?
「大丈夫か?」フレッドが尋ねた。
「え?ああ、何だか身体が熱いな。治ってきたと思ってたんだけど。フォーラを見たらまた元に戻ったような……。いや、さっきとは違う身体の熱さだ。血が体中を駆け巡るのが分かるような、そんな感じがする。今直ぐ彼女に気持ちを伝えたくなるような……。それになんていうか、胸のあたりがすごく苦しい」
(こ、これは……。フォーラの親父さんは、一体何を作っちまったんだ?)
フレッドは例の薬の効果が風邪薬というよりは寧ろ、惚れ薬のようだと思ったが―――いや、ジョージがここに来るまでに行き交った人たちに見向きもしなかったことを考えると、その線は薄いだろう。どちらかといえば、惚れた相手に想いを打ち明ける勇気のない人にとっては、この薬は背中を押してもらうのに抜群の効果を発揮する代物だとフレッドは思った。正に目の前のジョージは今にもフォーラのところへ向かいたくて仕方がない様子だったからだ。
フレッドはこのままジョージを放っておくのはよくないと直感的に感じ、彼の肩をしっかり掴むとグリフィンドールの寮テーブルの方にぐいと向かせた。
「と、とりあえず朝食だ。な!」
「ああ」ジョージは自分の胸元をぎゅっと抑えながら頷くと、渋々フレッドに従ったのだった。
それから暫くジョージはため息交じりに朝食を摂っていた。その姿は周囲の人たちから頻繁に心配の声を掛けられる程にいつもと違っていた。フレッドの目の前に座っていたロンが怪しいものを見る目でジョージを見た後、フレッドに目配せしながら尋ねた。
「どうしちゃったの?」
「ちょっと壊れただけさ」フレッドはそう言って呆れた顔で笑ったのだった。