5. 初恋
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さて、それから更に数日後、マグルの女性がホグワーツからそう遠くない場所でシリウス・ブラックを目撃した、というニュースが日刊預言者新聞によって報じられた日。ついに三年生向けの『闇の魔術に対する防衛術』の授業が始まった。
ルーピンの受け持つ授業だと思うとドラコは思わず気が立った。何せドラコはここ数日、フォーラとルーピンが医務室前で一緒に話していた時の事を、ふとした瞬間に思い出してはモヤモヤと考えを巡らせるのを繰り返していた。
そんなドラコについて、フォーラは最近自分に対する彼の態度が幾らか冷たいような気がしていたし、医務室を去った時の出来事がきっかけだったかもしれないと不安に思った。そのためフォーラはあの時ドラコに上の空の対応をしてしまったことを改めて謝罪したのだが、彼には「本当にそんな事は気にしてないし、別件で疲れているから冷たく見えるだけだ」とあしらわれてしまった。
その後フォーラがパンジーやルニーに相談してみると、二人は何となくドラコとフォーラの話す機会が減っている気はしたものの、きっとそれは一時的なもので、結局ドラコの言ったとおり彼が疲れているだけだと結論付けたのだった。
さて、その日の闇の魔術に対する防衛術では、フォーラを含むスリザリンの生徒が教科書や羽ペンを机の上に準備していたが、ルーピンは教室に入ってくるなり曖昧に微笑んでこう言った。
「やあ、みんな。教科書はカバンに戻してもらおうかな。他のクラスでもやったんだが、今日は実地練習をすることにしよう。杖だけあればいいよ」
教科書を仕舞いながら殆どのスリザリン生は怪訝そうにルーピンを見た。生徒らはルーピンのみすぼらしさを鼻にかけていたし、今までのこの授業の先生から実地練習など受けたことがなかったのも理由の一つだった。
そんな中、フォーラはルーピンのことを他の生徒とは違った眼差しで見つめていた。するとルーピンは彼女の存在に気付いて笑みを向けてきたではないか。これにはフォーラの頬が勝手に薄赤く染まった。そして彼女は少し緊張していたものの、ぎこちないなりに出来うる限りの笑顔を返した。
ドラコはそんな二人のやり取りを偶然にも目にした。彼はルーピンの授業だというだけで先程からイライラしていたのだが、フォーラとルーピンの些細なやり取りによって、更に苛立ちを顕著にしていた。パンジーが心配してドラコに話し掛けたが、彼は首を横に振るだけだった。
「何でもない」
「でも、ドラコったら何だかつらそうなんだもの」
「そんなことはない!気のせいだ」ドラコはそう言い放つと、ルーピンと教室を出ていく生徒たちに続き、足早にその場を離れたのだった。
生徒たちは唐突な教室外での授業に次第に興味が湧いてきたようで、少々期待に胸を膨らませながらルーピンに続いて廊下を進んだ。途中、ポルターガイストのピープズがルーピンの邪魔をしてきたのだが、ルーピンは瞬く間にピープズを魔法で追い払ってしまった。そのため彼を見る生徒たちの目は瞬く間に尊敬の眼差しへと変わっていった。但し、勿論ドラコを除いてなのは言うまでもない。
ルーピンはみんなを引き連れて二つ目の廊下を渡り、職員室のドアの真ん前で立ち止まった。職員室は板壁がはられた奥の深い部屋で、ちぐはぐな古い椅子が沢山置いてあった。先生は誰もいない。
ルーピンは生徒らに部屋の奥に来るよう合図した。そして全員が中に揃うと、ルーピンは彼の席と思しき机の下から戸棚を引っ張り出し、みんなの目の前の床に置いた。戸棚はワナワナと震えていた。
「心配しなくていい」
ルーピンはそう言ったが、殆どの生徒は『これは心配するべきことではないか』と思った。ルーピンが続けた。
「まね妖怪のボガートは暗くて狭いところを好む。洋箪笥やベッドの隙間―――。私は一度、大きな柱時計の中に引っかかっているやつに出会ったことがある。ここにいるのは一昨日の午後にそこの洋箪笥に入り込んだもので、授業用にとっておいたんだ」
加えて、ルーピンはボガートに関するその他の特徴についても説明した。ボガートは目の前の人間の一番怖いものに変身すること、大勢の人がいると混乱してしまうこと。そして退治方法は次のとおりだ。
「ボガートを退散させる呪文は簡単だ。しかし精神力が必要だ。こいつを本当にやっつけるのは笑いなんだ。君たちはこいつに、君たちが滑稽だと思える姿をとらせる必要がある。初めは杖なしで練習しよう。私に続いて言ってごらん。リディクラス!ばかばかしい!」
「リディクラス!ばかばかしい!」全員が一斉に唱えた。
「そう、とっても上手だ。でもここまでは簡単なんだけどね。それじゃあ……そうだな、フォーラ。前においで」
急に名前を呼ばれてフォーラはどきりとした。彼女は恥ずかしそうにルーピンの方へ向かい、小さな戸棚の目の前に立った。
「よーし、フォーラ。一つずついこう。君が世界一怖いものは何だい?」
フォーラは考えてみた―――妖怪?お化け?それとも吸血鬼?そのどれも確かに怖い。しかしルーピンの質問をよくよく考えてみると、今の彼女には本当に怖いものが一つだけあることに気が付いた。こんな質問を投げかけられなければ、そのようなことなど考える機会すらなかったに違いない。
「車……」
「ん?すまない、よく聞こえなかった。もう一度いいかい?」
「車です。マグルが移動する時や、物を運ぶのに使うあれです」
フォーラは何故車が怖いのかと思ったが、何となく自分の中に足りなかった何かが少しずつ思い出されている気がした。そう、確か車にはぼんやりと嫌な記憶がある。
「そうか、車が怖いとは珍しいな。ああいや構わないんだよ。それじゃあ君がその車を滑稽だと思うものに変身させるんだ。何か思いつくかな?」
「は、はい。」
「よしよし。フォーラが首尾よくやっつけたらその後、ボガートは次々に君たちに襲いかかってくるから、自分は何が一番怖くて、そしてそれをどうやって可笑しな姿に変えるかを想像してごらん」
ルーピンの受け持つ授業だと思うとドラコは思わず気が立った。何せドラコはここ数日、フォーラとルーピンが医務室前で一緒に話していた時の事を、ふとした瞬間に思い出してはモヤモヤと考えを巡らせるのを繰り返していた。
そんなドラコについて、フォーラは最近自分に対する彼の態度が幾らか冷たいような気がしていたし、医務室を去った時の出来事がきっかけだったかもしれないと不安に思った。そのためフォーラはあの時ドラコに上の空の対応をしてしまったことを改めて謝罪したのだが、彼には「本当にそんな事は気にしてないし、別件で疲れているから冷たく見えるだけだ」とあしらわれてしまった。
その後フォーラがパンジーやルニーに相談してみると、二人は何となくドラコとフォーラの話す機会が減っている気はしたものの、きっとそれは一時的なもので、結局ドラコの言ったとおり彼が疲れているだけだと結論付けたのだった。
さて、その日の闇の魔術に対する防衛術では、フォーラを含むスリザリンの生徒が教科書や羽ペンを机の上に準備していたが、ルーピンは教室に入ってくるなり曖昧に微笑んでこう言った。
「やあ、みんな。教科書はカバンに戻してもらおうかな。他のクラスでもやったんだが、今日は実地練習をすることにしよう。杖だけあればいいよ」
教科書を仕舞いながら殆どのスリザリン生は怪訝そうにルーピンを見た。生徒らはルーピンのみすぼらしさを鼻にかけていたし、今までのこの授業の先生から実地練習など受けたことがなかったのも理由の一つだった。
そんな中、フォーラはルーピンのことを他の生徒とは違った眼差しで見つめていた。するとルーピンは彼女の存在に気付いて笑みを向けてきたではないか。これにはフォーラの頬が勝手に薄赤く染まった。そして彼女は少し緊張していたものの、ぎこちないなりに出来うる限りの笑顔を返した。
ドラコはそんな二人のやり取りを偶然にも目にした。彼はルーピンの授業だというだけで先程からイライラしていたのだが、フォーラとルーピンの些細なやり取りによって、更に苛立ちを顕著にしていた。パンジーが心配してドラコに話し掛けたが、彼は首を横に振るだけだった。
「何でもない」
「でも、ドラコったら何だかつらそうなんだもの」
「そんなことはない!気のせいだ」ドラコはそう言い放つと、ルーピンと教室を出ていく生徒たちに続き、足早にその場を離れたのだった。
生徒たちは唐突な教室外での授業に次第に興味が湧いてきたようで、少々期待に胸を膨らませながらルーピンに続いて廊下を進んだ。途中、ポルターガイストのピープズがルーピンの邪魔をしてきたのだが、ルーピンは瞬く間にピープズを魔法で追い払ってしまった。そのため彼を見る生徒たちの目は瞬く間に尊敬の眼差しへと変わっていった。但し、勿論ドラコを除いてなのは言うまでもない。
ルーピンはみんなを引き連れて二つ目の廊下を渡り、職員室のドアの真ん前で立ち止まった。職員室は板壁がはられた奥の深い部屋で、ちぐはぐな古い椅子が沢山置いてあった。先生は誰もいない。
ルーピンは生徒らに部屋の奥に来るよう合図した。そして全員が中に揃うと、ルーピンは彼の席と思しき机の下から戸棚を引っ張り出し、みんなの目の前の床に置いた。戸棚はワナワナと震えていた。
「心配しなくていい」
ルーピンはそう言ったが、殆どの生徒は『これは心配するべきことではないか』と思った。ルーピンが続けた。
「まね妖怪のボガートは暗くて狭いところを好む。洋箪笥やベッドの隙間―――。私は一度、大きな柱時計の中に引っかかっているやつに出会ったことがある。ここにいるのは一昨日の午後にそこの洋箪笥に入り込んだもので、授業用にとっておいたんだ」
加えて、ルーピンはボガートに関するその他の特徴についても説明した。ボガートは目の前の人間の一番怖いものに変身すること、大勢の人がいると混乱してしまうこと。そして退治方法は次のとおりだ。
「ボガートを退散させる呪文は簡単だ。しかし精神力が必要だ。こいつを本当にやっつけるのは笑いなんだ。君たちはこいつに、君たちが滑稽だと思える姿をとらせる必要がある。初めは杖なしで練習しよう。私に続いて言ってごらん。リディクラス!ばかばかしい!」
「リディクラス!ばかばかしい!」全員が一斉に唱えた。
「そう、とっても上手だ。でもここまでは簡単なんだけどね。それじゃあ……そうだな、フォーラ。前においで」
急に名前を呼ばれてフォーラはどきりとした。彼女は恥ずかしそうにルーピンの方へ向かい、小さな戸棚の目の前に立った。
「よーし、フォーラ。一つずついこう。君が世界一怖いものは何だい?」
フォーラは考えてみた―――妖怪?お化け?それとも吸血鬼?そのどれも確かに怖い。しかしルーピンの質問をよくよく考えてみると、今の彼女には本当に怖いものが一つだけあることに気が付いた。こんな質問を投げかけられなければ、そのようなことなど考える機会すらなかったに違いない。
「車……」
「ん?すまない、よく聞こえなかった。もう一度いいかい?」
「車です。マグルが移動する時や、物を運ぶのに使うあれです」
フォーラは何故車が怖いのかと思ったが、何となく自分の中に足りなかった何かが少しずつ思い出されている気がした。そう、確か車にはぼんやりと嫌な記憶がある。
「そうか、車が怖いとは珍しいな。ああいや構わないんだよ。それじゃあ君がその車を滑稽だと思うものに変身させるんだ。何か思いつくかな?」
「は、はい。」
「よしよし。フォーラが首尾よくやっつけたらその後、ボガートは次々に君たちに襲いかかってくるから、自分は何が一番怖くて、そしてそれをどうやって可笑しな姿に変えるかを想像してごらん」