5. 初恋
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その日の夕方、フォーラはマダムの治療のお陰でようやく包帯を取ってもらうことができた。腕の傷は何処にも見当たらないほど綺麗さっぱりになっていた。
「怪我には気をつけるのですよ」
マダムの言葉の後にフォーラはお礼を言って医務室を出た。すると偶然にも目の前には、昨日も顔を合わせた人物が丁度目の前を通りがかったところだった。
「やあ、フォーラじゃないか。怪我は治ったみたいだね。よかった!」
その人を見た瞬間、フォーラの頬がうっすらと赤く染まった。
「ルーピン先生、こんばんは。マダムに綺麗に治していただきました。先生は何処へ行くのですか?」
「私かい?今日は予定していた授業が全て終わったんでね。今から用事を済ませて、夕食まで部屋に篭ろうかと思っていたところだよ」にっこり微笑みながらそう答えたルーピンが眩しくて、フォーラは何だかそれ以上彼を見ることができなかった。彼女は自分の目が泳いでいる自覚があった。
「フォーラ、顔色が少し良くない。熱のありそうな顔をしているよ」
ルーピンは「失礼」と一言発すると同時に、フォーラの額 に自身の手の平をあてがった。フォーラが途端に驚いて反射的にルーピンを見上げると、心配した様子の彼とばっちり目が合った。すると彼女は先程よりも随分真っ赤になって何も言えなくなってしまった。
「熱はないみたいだけど、もし体調が良くないならもう一度医務室へ行くかい?」不安げに言ったルーピンに、フォーラは首をぶんぶんと横に振ってその提案を拒否した。彼女は上擦った声を出した。
「わ、私、本当に大丈夫です。」
「そうかい?それならいいんだが。心配だから寮まで送ろうか?」
ルーピンがそのように提案した時、彼の後ろから誰かが走ってくると、その人はルーピンとフォーラの間にさっと割って入った。フォーラは少々驚きながらその人物の名前を呼んだ。
「ド、ドラコ?」
ドラコはルーピンに睨みを利かせながら、フォーラをルーピンの視界から遮るようにした。
「寮まで送っていただく必要はありませんよ先生。僕が彼女を連れていきますから」
「ああ、驚いた。君は……彼女と同じ寮のようだね。それじゃあお願いするよ。ありがとう」ルーピンはドラコにそのように伝えた後、フォーラに話し掛けた。
「それじゃあフォーラ、くれぐれも無理をしてはいけないよ。まだ病み上がりなのだからね」
フォーラはそんなルーピンを見て、無意識に少々寂しげな顔を向けた後で言葉を発した。
「は、はい。ご心配をおかけしました。それからありがとうございました。」
「フォーラ、行こう」
彼女はドラコの声をきっかけにルーピンに軽くお辞儀をすると、ドラコと共にその場を去った。その際、ルーピンはドラコが自分の方を振り返ったことに気付いたのだが、自分に向けられたドラコの表情が随分敵意に満ちたものだったので、少々驚いてしまった。
(おやおや。これはこれは)
そしてルーピンは自然とドラコの考えていることが手に取るように分かって、思わず微笑ましい気持ちになったのだった。
さて、ルーピンと別れて直ぐ、ドラコはフォーラの退院を喜ぶ声を掛けた。
「心配になって来てみたけど、元気に退院できたみたいでよかったよ」
ところがフォーラからは曖昧な短い返事のようなものしか聞こえなかった。そのためドラコが不満げな様子でズイと彼女の顔を覗き込むと、彼女はビクリと反応してようやく我に返ったのだった。
「えっと……どうしたの?」
「……なんでもない」ドラコはフォーラに何だか腹が立ってそのように一言発すると、彼女より足早にスタスタと先を進んでいってしまった。
フォーラはドラコの話に上の空だったのは随分悪いことをしたと思い、前を行く彼を走って追いかけた。彼女がきちんと彼の話に耳を傾けられなかったのは、彼女の頭の中に先程のルーピンの姿が思い出されていたからだった。
(フォーラのやつ、僕の話を聞きもしないなんて。それにさっきのルーピンとの別れ際の表情は何だ?いつもと様子が違うじゃないか。……ああもう、僕はどうしたんだ?もの凄く胸がムカムカする。それにフォーラだけじゃなくて、僕の方まで何だかいつもと違うのはどういうわけなんだ?)
ドラコは胸の辺りがぎゅっと締め付けられるような気分に耐えられなかった。それにより、彼は自分の意志とは反対に、寮に着くまで一度もフォーラの顔を見ることができなかったのだった。
さて、それから数日が経った。フォーラの怪我が治って以来ドラコの機嫌は斜め下向きだった。ドラコからすればその原因はフォーラにあるように思ったが、彼は自分の考えが一体何処を向いているのか分からなくなっていた。というのも近頃妙にフォーラが頭の片隅に浮かぶのだ。笑った顔、怒った顔、困った顔……それでも特に最近一番よく思い出されたのは、この間のルーピンとの別れ際に彼女が見せた寂しそうな表情だった。
(どうしてあの時のフォーラばかり浮かぶんだ?僕は別に思い出したくないっていうのに。フォーラがあいつと話している時にあんな表情になるなんて思いもしなかったし、その後の彼女は僕の話なんて聞いてすらいなかったじゃないか。……だけどきっとそれは、本当に予想の域を出ないが……フォーラはルーピンのことを?)
そのように考えてみると、ドラコはどういうわけかものすごく虚しい気持ちになった。
(フォーラは何だってあんなボロボロの服を着た奴のことが気になるんだ?いや、まだ彼女が奴を好きだと決まったわけでもないが……。そもそも、どうして僕がこんなにフォーラのことでイライラしているのかすら疑問だ。彼女と僕はただの幼馴染じゃないか。だから彼女が何をどう感じようと別に放っておいてやればいいだけの話だ)
「そう、そうだ。僕には何も関係ないことなんだから」
「怪我には気をつけるのですよ」
マダムの言葉の後にフォーラはお礼を言って医務室を出た。すると偶然にも目の前には、昨日も顔を合わせた人物が丁度目の前を通りがかったところだった。
「やあ、フォーラじゃないか。怪我は治ったみたいだね。よかった!」
その人を見た瞬間、フォーラの頬がうっすらと赤く染まった。
「ルーピン先生、こんばんは。マダムに綺麗に治していただきました。先生は何処へ行くのですか?」
「私かい?今日は予定していた授業が全て終わったんでね。今から用事を済ませて、夕食まで部屋に篭ろうかと思っていたところだよ」にっこり微笑みながらそう答えたルーピンが眩しくて、フォーラは何だかそれ以上彼を見ることができなかった。彼女は自分の目が泳いでいる自覚があった。
「フォーラ、顔色が少し良くない。熱のありそうな顔をしているよ」
ルーピンは「失礼」と一言発すると同時に、フォーラの
「熱はないみたいだけど、もし体調が良くないならもう一度医務室へ行くかい?」不安げに言ったルーピンに、フォーラは首をぶんぶんと横に振ってその提案を拒否した。彼女は上擦った声を出した。
「わ、私、本当に大丈夫です。」
「そうかい?それならいいんだが。心配だから寮まで送ろうか?」
ルーピンがそのように提案した時、彼の後ろから誰かが走ってくると、その人はルーピンとフォーラの間にさっと割って入った。フォーラは少々驚きながらその人物の名前を呼んだ。
「ド、ドラコ?」
ドラコはルーピンに睨みを利かせながら、フォーラをルーピンの視界から遮るようにした。
「寮まで送っていただく必要はありませんよ先生。僕が彼女を連れていきますから」
「ああ、驚いた。君は……彼女と同じ寮のようだね。それじゃあお願いするよ。ありがとう」ルーピンはドラコにそのように伝えた後、フォーラに話し掛けた。
「それじゃあフォーラ、くれぐれも無理をしてはいけないよ。まだ病み上がりなのだからね」
フォーラはそんなルーピンを見て、無意識に少々寂しげな顔を向けた後で言葉を発した。
「は、はい。ご心配をおかけしました。それからありがとうございました。」
「フォーラ、行こう」
彼女はドラコの声をきっかけにルーピンに軽くお辞儀をすると、ドラコと共にその場を去った。その際、ルーピンはドラコが自分の方を振り返ったことに気付いたのだが、自分に向けられたドラコの表情が随分敵意に満ちたものだったので、少々驚いてしまった。
(おやおや。これはこれは)
そしてルーピンは自然とドラコの考えていることが手に取るように分かって、思わず微笑ましい気持ちになったのだった。
さて、ルーピンと別れて直ぐ、ドラコはフォーラの退院を喜ぶ声を掛けた。
「心配になって来てみたけど、元気に退院できたみたいでよかったよ」
ところがフォーラからは曖昧な短い返事のようなものしか聞こえなかった。そのためドラコが不満げな様子でズイと彼女の顔を覗き込むと、彼女はビクリと反応してようやく我に返ったのだった。
「えっと……どうしたの?」
「……なんでもない」ドラコはフォーラに何だか腹が立ってそのように一言発すると、彼女より足早にスタスタと先を進んでいってしまった。
フォーラはドラコの話に上の空だったのは随分悪いことをしたと思い、前を行く彼を走って追いかけた。彼女がきちんと彼の話に耳を傾けられなかったのは、彼女の頭の中に先程のルーピンの姿が思い出されていたからだった。
(フォーラのやつ、僕の話を聞きもしないなんて。それにさっきのルーピンとの別れ際の表情は何だ?いつもと様子が違うじゃないか。……ああもう、僕はどうしたんだ?もの凄く胸がムカムカする。それにフォーラだけじゃなくて、僕の方まで何だかいつもと違うのはどういうわけなんだ?)
ドラコは胸の辺りがぎゅっと締め付けられるような気分に耐えられなかった。それにより、彼は自分の意志とは反対に、寮に着くまで一度もフォーラの顔を見ることができなかったのだった。
さて、それから数日が経った。フォーラの怪我が治って以来ドラコの機嫌は斜め下向きだった。ドラコからすればその原因はフォーラにあるように思ったが、彼は自分の考えが一体何処を向いているのか分からなくなっていた。というのも近頃妙にフォーラが頭の片隅に浮かぶのだ。笑った顔、怒った顔、困った顔……それでも特に最近一番よく思い出されたのは、この間のルーピンとの別れ際に彼女が見せた寂しそうな表情だった。
(どうしてあの時のフォーラばかり浮かぶんだ?僕は別に思い出したくないっていうのに。フォーラがあいつと話している時にあんな表情になるなんて思いもしなかったし、その後の彼女は僕の話なんて聞いてすらいなかったじゃないか。……だけどきっとそれは、本当に予想の域を出ないが……フォーラはルーピンのことを?)
そのように考えてみると、ドラコはどういうわけかものすごく虚しい気持ちになった。
(フォーラは何だってあんなボロボロの服を着た奴のことが気になるんだ?いや、まだ彼女が奴を好きだと決まったわけでもないが……。そもそも、どうして僕がこんなにフォーラのことでイライラしているのかすら疑問だ。彼女と僕はただの幼馴染じゃないか。だから彼女が何をどう感じようと別に放っておいてやればいいだけの話だ)
「そう、そうだ。僕には何も関係ないことなんだから」