3. 二人きりのコンパートメント
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しかし実のところ、ドラコはパンジーやルニーが自分たちから少し離れた廊下をうろついていたのをコンパートメントの中から発見していた。彼女たちの動作からして自分たちを捜しているのは明らかだった。
そしてドラコは、気付けば咄嗟に廊下側の窓のブラインドを下ろし、パンジーたちに自分たちの姿が見つからないようにしてしまっていた。彼はその事をフォーラに黙っておこうと思った。
(あれは腕が勝手に。それにパーキンソンたちに見つかったら、寝ているフォーラを起こしてしまうことになったし―――)
「あら……なんだか汽車が」
フォーラはふと汽車が速度を落とし始めていることに気が付いた。時間的にはまだホグワーツに着くまで余裕がある筈だ。そのためドラコは何が起こったか確認しようと、廊下からの視界を遮っていたブラインドを上げた。
「ドラコ!やっと見つけたわ!」
すると、丁度扉の直ぐ向こう側の廊下を歩いていたパンジーがドラコに気付き、こちらに手を振った。ドラコは少々驚きながらも引き戸を開けると彼女に尋ねた。
「パーキンソン、久しぶりだ。まだ汽車の着く時間じゃないよな」
「ええ、多分まだかかるわよ。でも列車の速度が随分落ちて―――ああ、フォーラ!久しぶりね!二人共一緒にいてくれてよかったわ。一番前の車両のコンパートメントにルニーたちもいるのよ。こっちの方が広いし、みんなを呼んでくるわね!」
そう言ってパンジーは足速に廊下を進んでその場から見えなくなった。ドラコは彼女が嵐のように去っていったものだから、何だか脱力した様子で引き戸を閉めた。
するとそれと同時に、今や列車はガクンという音を起てて完全に止まってしまった。
「ねえドラコ。止まってしまったけど、大丈夫かしら―――」フォーラがドラコ同様に椅子から立ち上がった。「あら?明かりが……きゃっ!」
突如、何の前触れもなく列車中の明かりが一斉に消え、辺りが真っ暗闇になった。フォーラはその闇に対してはまだ冷静だったが、その直ぐ後で途端に何かがこちらにしがみついて来たものだから、短い悲鳴を上げた。
(……あれ、この香り)
「ドラコ?」フォーラは彼の柔らかい香りを感じ取って、自分に触れているのが彼本人か念のため確認した。少しの間フォーラにしがみついていたドラコは、彼女の問いかけにハッとして顔を上げた。暗闇のせいで互いの顔はなんとなくしか認識できなかったが、ドラコは自分とフォーラの顔が目の前の近すぎる位置にあることを察した。
(ち、近い!)
ドラコは反射的にフォーラからパッと離れた。彼は幼馴染の前で突然の暗闇に驚いてしまったことへの羞恥と、つい先程までのフォーラとの距離のせいで心臓がうるさかった。
「ドラコ、大丈夫?」
暗闇で視界が悪く、フォーラはドラコがいる場所を少々手探りで確認しなければならなかった。
「だ、大丈夫だ。ただ少し驚いただけだ!フォーラの方こそ大丈夫か?」さっきの失態をごまかそうと、ドラコの語尾が少々強まった。
「ええ、私は大丈夫よ。―――……ねえドラコ、なんだか廊下の向こうが騒がしい気がするわ……列車の入口の方向かしら。」
二人はその場に立ったまま廊下側の窓の方を見つめた。するとその騒がしさはこちらにどんどん広がってきている気がした。そしてその騒ぎ声がピークに達しようとした時、途端にその騒めきが妙な静けさに変わったではないか。この時フォーラはようやく暗闇に目が慣れてきていたのだが、突如目の前に現れた光景については、絶対見えないままの方がよかったと心の底から思った。
廊下には、マントを纏い天井までも届きそうな背格好をした黒い影が現れた。どうやら先程までの騒がしさは、この影が列車の入口からここまで進んできたせいだったのだろう。フォーラとドラコはその影を見た瞬間、どちらからでもなく直ぐさま互いに身を寄せて縮こまった。そして同時に、周囲の喧騒が急に静まり返った真の理由も理解した。
頭巾で覆われた得体の知れないその何者かが、ゆっくり廊下を進みながらガラガラと音を立てて深く長く息を吸い込んだ。それはまるで、周囲から空気以外の何かを吸収しようとしているようだった。途端にぞーっとするような冷気がドアの隙間から入り込み、二人を襲った。寒気が皮膚の下深く潜り込み、更に胸へと入ってくるような感じだ……。
その影は奇妙な呼吸をしながら更に奥の車両へと進んでいった。それが見えなくなると途端にフォーラとドラコは身体の力が抜け、互いに抱き合ったままへにゃりとその場に力無く座り込んだ。辺りはまだ真っ暗闇だった。
「……ど、ドラコ……」
後から恐ろしさが来たようで、フォーラの身体は小さく震えていた。ドラコはそれを落ちつかせるかのように、自身の力の入らない腕に無理矢理力を込めると、彼女をきつく抱き寄せて背中を擦った。
「も、もう大丈夫……。大丈夫だ。大丈夫……」
自分に言い聞かせるかのようにドラコは何度もフォーラにそう言った。そしてどれだけ時間が経っただろうか、実際はそんなに経ってはいないだろうが―――途端に消えていたランプが灯り、列車が再び動き出した。二人はそれを理解すると、どちらからでもなく俯いていた顔を上げ、無意識に背筋を伸ばし、互いにしがみついたまま顔を見合わせた。
「「よ、よかった……」」
二人はまたもやへにゃりと崩れそうになって安堵した。先程の事があった後では、お互いに触れていることに随分落ち着きを感じるのは仕方のないことだった。そのため二人はどちらからも包容を解こうともせず、その場に座り込んでいたのだった。
それから間もなくして突然コンパートメントの引き戸が開いた。
「ドラコ、フォーラ、大丈夫だった―――っ!?」
中に入ってきたのは、パンジーを先頭にしてルニーやクラッブ、ゴイルだった。彼らは全員が多かれ少なかれ驚きの表情をこちらに向けていた。ドラコはその視線に気が付くと、今の自分たちの状況を改めて理解し、その瞬間に彼はサッとフォーラから離れた。流石にフォーラの方もこれには少々恥ずかしさを感じていた。何せ、怖さで幼馴染にすがりついて安堵する幼稚な姿を、友人たちに見られてしまったのだから。
「もう、ドラコったら、怖いならフォーラじゃなくて私に抱きつかなきゃ!」パンジーが少し膨れて言った。
「なっ……馬鹿、今のは違う!」
「ドラコ、顔が真っ赤だけど?本当に怖かったわけじゃないの?」ルニーがくすりと笑いながらそう言えば、今度のドラコは勢いよく立ち上がって「全く違う!」と強く訴えたのだった。
そしてドラコは、気付けば咄嗟に廊下側の窓のブラインドを下ろし、パンジーたちに自分たちの姿が見つからないようにしてしまっていた。彼はその事をフォーラに黙っておこうと思った。
(あれは腕が勝手に。それにパーキンソンたちに見つかったら、寝ているフォーラを起こしてしまうことになったし―――)
「あら……なんだか汽車が」
フォーラはふと汽車が速度を落とし始めていることに気が付いた。時間的にはまだホグワーツに着くまで余裕がある筈だ。そのためドラコは何が起こったか確認しようと、廊下からの視界を遮っていたブラインドを上げた。
「ドラコ!やっと見つけたわ!」
すると、丁度扉の直ぐ向こう側の廊下を歩いていたパンジーがドラコに気付き、こちらに手を振った。ドラコは少々驚きながらも引き戸を開けると彼女に尋ねた。
「パーキンソン、久しぶりだ。まだ汽車の着く時間じゃないよな」
「ええ、多分まだかかるわよ。でも列車の速度が随分落ちて―――ああ、フォーラ!久しぶりね!二人共一緒にいてくれてよかったわ。一番前の車両のコンパートメントにルニーたちもいるのよ。こっちの方が広いし、みんなを呼んでくるわね!」
そう言ってパンジーは足速に廊下を進んでその場から見えなくなった。ドラコは彼女が嵐のように去っていったものだから、何だか脱力した様子で引き戸を閉めた。
するとそれと同時に、今や列車はガクンという音を起てて完全に止まってしまった。
「ねえドラコ。止まってしまったけど、大丈夫かしら―――」フォーラがドラコ同様に椅子から立ち上がった。「あら?明かりが……きゃっ!」
突如、何の前触れもなく列車中の明かりが一斉に消え、辺りが真っ暗闇になった。フォーラはその闇に対してはまだ冷静だったが、その直ぐ後で途端に何かがこちらにしがみついて来たものだから、短い悲鳴を上げた。
(……あれ、この香り)
「ドラコ?」フォーラは彼の柔らかい香りを感じ取って、自分に触れているのが彼本人か念のため確認した。少しの間フォーラにしがみついていたドラコは、彼女の問いかけにハッとして顔を上げた。暗闇のせいで互いの顔はなんとなくしか認識できなかったが、ドラコは自分とフォーラの顔が目の前の近すぎる位置にあることを察した。
(ち、近い!)
ドラコは反射的にフォーラからパッと離れた。彼は幼馴染の前で突然の暗闇に驚いてしまったことへの羞恥と、つい先程までのフォーラとの距離のせいで心臓がうるさかった。
「ドラコ、大丈夫?」
暗闇で視界が悪く、フォーラはドラコがいる場所を少々手探りで確認しなければならなかった。
「だ、大丈夫だ。ただ少し驚いただけだ!フォーラの方こそ大丈夫か?」さっきの失態をごまかそうと、ドラコの語尾が少々強まった。
「ええ、私は大丈夫よ。―――……ねえドラコ、なんだか廊下の向こうが騒がしい気がするわ……列車の入口の方向かしら。」
二人はその場に立ったまま廊下側の窓の方を見つめた。するとその騒がしさはこちらにどんどん広がってきている気がした。そしてその騒ぎ声がピークに達しようとした時、途端にその騒めきが妙な静けさに変わったではないか。この時フォーラはようやく暗闇に目が慣れてきていたのだが、突如目の前に現れた光景については、絶対見えないままの方がよかったと心の底から思った。
廊下には、マントを纏い天井までも届きそうな背格好をした黒い影が現れた。どうやら先程までの騒がしさは、この影が列車の入口からここまで進んできたせいだったのだろう。フォーラとドラコはその影を見た瞬間、どちらからでもなく直ぐさま互いに身を寄せて縮こまった。そして同時に、周囲の喧騒が急に静まり返った真の理由も理解した。
頭巾で覆われた得体の知れないその何者かが、ゆっくり廊下を進みながらガラガラと音を立てて深く長く息を吸い込んだ。それはまるで、周囲から空気以外の何かを吸収しようとしているようだった。途端にぞーっとするような冷気がドアの隙間から入り込み、二人を襲った。寒気が皮膚の下深く潜り込み、更に胸へと入ってくるような感じだ……。
その影は奇妙な呼吸をしながら更に奥の車両へと進んでいった。それが見えなくなると途端にフォーラとドラコは身体の力が抜け、互いに抱き合ったままへにゃりとその場に力無く座り込んだ。辺りはまだ真っ暗闇だった。
「……ど、ドラコ……」
後から恐ろしさが来たようで、フォーラの身体は小さく震えていた。ドラコはそれを落ちつかせるかのように、自身の力の入らない腕に無理矢理力を込めると、彼女をきつく抱き寄せて背中を擦った。
「も、もう大丈夫……。大丈夫だ。大丈夫……」
自分に言い聞かせるかのようにドラコは何度もフォーラにそう言った。そしてどれだけ時間が経っただろうか、実際はそんなに経ってはいないだろうが―――途端に消えていたランプが灯り、列車が再び動き出した。二人はそれを理解すると、どちらからでもなく俯いていた顔を上げ、無意識に背筋を伸ばし、互いにしがみついたまま顔を見合わせた。
「「よ、よかった……」」
二人はまたもやへにゃりと崩れそうになって安堵した。先程の事があった後では、お互いに触れていることに随分落ち着きを感じるのは仕方のないことだった。そのため二人はどちらからも包容を解こうともせず、その場に座り込んでいたのだった。
それから間もなくして突然コンパートメントの引き戸が開いた。
「ドラコ、フォーラ、大丈夫だった―――っ!?」
中に入ってきたのは、パンジーを先頭にしてルニーやクラッブ、ゴイルだった。彼らは全員が多かれ少なかれ驚きの表情をこちらに向けていた。ドラコはその視線に気が付くと、今の自分たちの状況を改めて理解し、その瞬間に彼はサッとフォーラから離れた。流石にフォーラの方もこれには少々恥ずかしさを感じていた。何せ、怖さで幼馴染にすがりついて安堵する幼稚な姿を、友人たちに見られてしまったのだから。
「もう、ドラコったら、怖いならフォーラじゃなくて私に抱きつかなきゃ!」パンジーが少し膨れて言った。
「なっ……馬鹿、今のは違う!」
「ドラコ、顔が真っ赤だけど?本当に怖かったわけじゃないの?」ルニーがくすりと笑いながらそう言えば、今度のドラコは勢いよく立ち上がって「全く違う!」と強く訴えたのだった。