2. ベラトリックスの教え
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三歳、ドラコは屋敷の庭で笑顔の父に抱き上げられ、そのそばで母も幸せそうに微笑んでいた……。場面が変わった。初めて訪れたとある屋敷は美しい温室や茶畑が広がっていて、そこで初めて同い年の女の子に出会った……。再び場面が変わった。マルフォイ邸の庭に咲く薔薇を一輪、その小さな女の子に差し出すと、それを受け取った彼女が嬉しそうにしたものだから、ドラコも凄く嬉しかった……。五歳、母から教わった読み書きの出来栄えを父が褒めてくれた。その自分に向けられる優しさとは裏腹に、父が屋敷しもべ妖精のドビーにつらく当たっていたのが印象的だった……。十一歳、例の女の子がホグワーツでの組分けを終えて、スリザリン寮のテーブルにいる自分の元へ安堵の表情でやってきた……。ハリー・ポッターが一年生で例外的にクィディッチ選手に選ばれた。悔しくて羨ましかった……。
ベラトリックスはドラコに杖を向けたままで、一方のドラコは杖を持たない無抵抗な状態で苦痛に顔を歪めていた。一瞬、その走馬灯のような記憶の流れが鮮明さを失って霞がかったようになったが、再びくっきりとした色を取り戻し始めた。
「さあ、早く私を追い出さないと、お前の心の深くにある見られたくない記憶まで到達してしまうよ」
ドラコの脳裏にベラトリックスの真剣な声が、遠く彼方からぼんやりと入ってきた。ドラコは朦朧 とする意識を保つために集中しようとした。
十三歳、クィディッチの試合でスニッチを掴んでそのまま観客席に激突した。身体中痛かったが、試合に勝てた喜びの方が勝っていた……。十四歳、ワインレッド色のドレスを着た女の子が自分以外の上級生の男と並んでいて、ドラコは嫉妬心で胸が張り裂けそうだった……。四年生最後の日、消灯後の星空で満たされた中庭で、その女の子にすがるようにして大粒の涙を流した。あの時のようなつらい気持ちはもう経験したくない……これ以上僕の記憶を掘り起こさないでくれ……。
十六歳になる直前、湖畔でその女の子と見つめ合った。ドラコが片手を彼女の頬に添え、その手のひらに彼女が甘えるように頬をもたせ掛けている……。いけない、この先の記憶は見せたくない。人生で最も幸せと言っても過言ではない瞬間の記憶は、僕と彼女だけのものだ……。鮮明な記憶が再び大きく揺らぐように崩れ、その場面は完全に霞となった。
しかしまた次の記憶が現れた。空き教室で例の女の子と二人きりの状態で、ドラコと彼女は互いに杖を向け合った。一方の呪文が上手くいくと、互いに練習の成果を喜び合った。暖かい日差しが窓から入り込む中で練習を繰り返したことで、二人共が少々汗ばんでいて、そして……。
その瞬間、ドラコは最後に見たその記憶を完全に霧散させ、心の奥底に仕舞い込んだ。自分が大切にしている彼女との特別な記憶を、これ以上他人の目に晒して穢されたくなかった。
ドラコはベラトリックスに術を掛けられている間、様々な記憶の喜怒哀楽につられて心が揺さぶられていた。しかしそれらの思い出の殆どが大切な幼馴染で埋め尽くされていたことで、彼は改めて自分が彼女を守らなくてはならないのだと冷静になれた。両親と同じくらい特別な存在である彼女のためにも、自分は闇の帝王からの命令を達成しなければならないのだと。
そしてこの時、ドラコは完全に心を閉ざすことに成功した。ベラトリックスがその後何度かドラコに向かって「レジリメンス!」と唱えて杖を振っても、再び彼の心の中を覗けることはなかった。
「ドラコ、驚いた……お前はこの短時間でもう閉心術を習得したんだよ、しかも完璧にね」ベラトリックスがドラコを探るような目で見た。それを聞いてナルシッサも随分驚いているようだった。
ドラコはその場に立ったまま、いつの間にか閉じていた瞳を開けて正面の叔母の姿を捉えた。彼の額には僅かに汗が滲んでいて、疲労感こそあったものの、それ以外は特段変わった様子はなかった。彼は一つ深いため息を吐くと質問した。
「ベラトリックス、あなたは……僕が今見た記憶を全て見たのか?」
「いいや?所々だね。だが随分面白いものを見せてもらった」ベラトリックスが意地悪な笑みを浮かべて続けた。「お前には随分良さそうな恋人がいるんだねえ」
それを聞いてドラコは思わずビクリと肩を震わせた。そしてナルシッサも姉が想定外の発言をしたものだから、反射的に息子の方を見た。
「聞くまでもないが、当然あの子は純血なんだろうね?」
「ドラコ、それは一体誰のことなの?」ベラトリックスの声に続いてナルシッサが不安げに尋ねた。ドラコは叔母と母の問いに回答せざるを得ない状況に、軽く眉間に皺を寄せて小さくため息を吐いた。
「……フォーラ・ファントム……純血の家系で、僕の幼馴染で、そして数か月前から、僕の恋人でもある」
ベラトリックスはファントムの姓を聞いてそれなりに満足したようだった。何せ彼女は学生時代のルシウスが、その由緒正しい純血の姓の男子と仲良くしているのを知っていたからだ。今の代のファントム家は純血主義と反純血主義どちらにも口出ししない中立的な立場だが、ベラトリックスはどうやらドラコの相手が純血で、かつ反純血主義者でないのなら一先ず大きな文句はなさそうだった。
ドラコは両親を守りたいと思うと同時に、フォーラを争いごとから遠ざけたいと強く思っていた。そのため敵対しているダンブルドア側の勢力に、自分の弱みが彼女であることを知られるのは当然避けたかった。とはいえ、実のところそれは死喰い人に対しても同じ気持ちだった。
ドラコは叔母を含む死喰い人にフォーラの容姿を特定されることや、自分が彼女をどれだけ大事に想っているかなど、彼女に関する情報をできる限り長く伏せておきたかった。本来なら叔母や死喰い人は味方側だが、その死喰い人がルシウスを蔑 んでいると知った今、幼馴染の彼女が自分の弱みとして認知されるのは敵味方関係なく避けたかったのだ。
ベラトリックスはドラコに杖を向けたままで、一方のドラコは杖を持たない無抵抗な状態で苦痛に顔を歪めていた。一瞬、その走馬灯のような記憶の流れが鮮明さを失って霞がかったようになったが、再びくっきりとした色を取り戻し始めた。
「さあ、早く私を追い出さないと、お前の心の深くにある見られたくない記憶まで到達してしまうよ」
ドラコの脳裏にベラトリックスの真剣な声が、遠く彼方からぼんやりと入ってきた。ドラコは
十三歳、クィディッチの試合でスニッチを掴んでそのまま観客席に激突した。身体中痛かったが、試合に勝てた喜びの方が勝っていた……。十四歳、ワインレッド色のドレスを着た女の子が自分以外の上級生の男と並んでいて、ドラコは嫉妬心で胸が張り裂けそうだった……。四年生最後の日、消灯後の星空で満たされた中庭で、その女の子にすがるようにして大粒の涙を流した。あの時のようなつらい気持ちはもう経験したくない……これ以上僕の記憶を掘り起こさないでくれ……。
十六歳になる直前、湖畔でその女の子と見つめ合った。ドラコが片手を彼女の頬に添え、その手のひらに彼女が甘えるように頬をもたせ掛けている……。いけない、この先の記憶は見せたくない。人生で最も幸せと言っても過言ではない瞬間の記憶は、僕と彼女だけのものだ……。鮮明な記憶が再び大きく揺らぐように崩れ、その場面は完全に霞となった。
しかしまた次の記憶が現れた。空き教室で例の女の子と二人きりの状態で、ドラコと彼女は互いに杖を向け合った。一方の呪文が上手くいくと、互いに練習の成果を喜び合った。暖かい日差しが窓から入り込む中で練習を繰り返したことで、二人共が少々汗ばんでいて、そして……。
その瞬間、ドラコは最後に見たその記憶を完全に霧散させ、心の奥底に仕舞い込んだ。自分が大切にしている彼女との特別な記憶を、これ以上他人の目に晒して穢されたくなかった。
ドラコはベラトリックスに術を掛けられている間、様々な記憶の喜怒哀楽につられて心が揺さぶられていた。しかしそれらの思い出の殆どが大切な幼馴染で埋め尽くされていたことで、彼は改めて自分が彼女を守らなくてはならないのだと冷静になれた。両親と同じくらい特別な存在である彼女のためにも、自分は闇の帝王からの命令を達成しなければならないのだと。
そしてこの時、ドラコは完全に心を閉ざすことに成功した。ベラトリックスがその後何度かドラコに向かって「レジリメンス!」と唱えて杖を振っても、再び彼の心の中を覗けることはなかった。
「ドラコ、驚いた……お前はこの短時間でもう閉心術を習得したんだよ、しかも完璧にね」ベラトリックスがドラコを探るような目で見た。それを聞いてナルシッサも随分驚いているようだった。
ドラコはその場に立ったまま、いつの間にか閉じていた瞳を開けて正面の叔母の姿を捉えた。彼の額には僅かに汗が滲んでいて、疲労感こそあったものの、それ以外は特段変わった様子はなかった。彼は一つ深いため息を吐くと質問した。
「ベラトリックス、あなたは……僕が今見た記憶を全て見たのか?」
「いいや?所々だね。だが随分面白いものを見せてもらった」ベラトリックスが意地悪な笑みを浮かべて続けた。「お前には随分良さそうな恋人がいるんだねえ」
それを聞いてドラコは思わずビクリと肩を震わせた。そしてナルシッサも姉が想定外の発言をしたものだから、反射的に息子の方を見た。
「聞くまでもないが、当然あの子は純血なんだろうね?」
「ドラコ、それは一体誰のことなの?」ベラトリックスの声に続いてナルシッサが不安げに尋ねた。ドラコは叔母と母の問いに回答せざるを得ない状況に、軽く眉間に皺を寄せて小さくため息を吐いた。
「……フォーラ・ファントム……純血の家系で、僕の幼馴染で、そして数か月前から、僕の恋人でもある」
ベラトリックスはファントムの姓を聞いてそれなりに満足したようだった。何せ彼女は学生時代のルシウスが、その由緒正しい純血の姓の男子と仲良くしているのを知っていたからだ。今の代のファントム家は純血主義と反純血主義どちらにも口出ししない中立的な立場だが、ベラトリックスはどうやらドラコの相手が純血で、かつ反純血主義者でないのなら一先ず大きな文句はなさそうだった。
ドラコは両親を守りたいと思うと同時に、フォーラを争いごとから遠ざけたいと強く思っていた。そのため敵対しているダンブルドア側の勢力に、自分の弱みが彼女であることを知られるのは当然避けたかった。とはいえ、実のところそれは死喰い人に対しても同じ気持ちだった。
ドラコは叔母を含む死喰い人にフォーラの容姿を特定されることや、自分が彼女をどれだけ大事に想っているかなど、彼女に関する情報をできる限り長く伏せておきたかった。本来なら叔母や死喰い人は味方側だが、その死喰い人がルシウスを