8. アンラッキーな初授業
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スラグホーンは最初にレイブンクロー生の調合台をゆっくりと見てまわり、次にスリザリン生のいる所へやってきた。殆どの鍋に少しばかり透明感のある紫色の薬が入っていたが、彼はフォーラの薬を見た時、思わず声を上げた。
「初回の授業でここまでやるとは素晴らしい!流石はお父上が魔法薬に長けているだけある。シェードがかつて卒業後に真実薬の発明に貢献したと耳にした時も驚いたが、フォーラ、君が学生の時点でここまでやってのけるとあっては、将来お父上のライバルとなる日もそう遠くはないかもしれない!」
「あの、ありがとうございます。」
フォーラは褒めちぎられたことで周囲の視線を受け、思わず頬を染めて肩をすくめた。スラグホーンはその謙虚な様子にニッコリ微笑み、次にグリフィンドールとハッフルパフの生徒がいる調合台に移った。スリザリンの他の三人ともフォーラが魔法薬学を得意としていることを勿論把握していたため、心の何処かでフェリックスを手にするのは彼女かもしれないと考えていた。そのため特にフェリックスを渇望していたドラコですら、小声で彼女に称賛を伝えた。
「もうこれは君の一人勝ちかもな」
「ありがとう、だけどもしそうなったら私―――」フォーラはフェリックス薬をドラコと半分ずつ使いたい旨を伝えようとした。するとその時、向こうの調合台からスラグホーンの声が響いた。
「紛れもない勝利者だ!」
フォーラもドラコもその声にパッとそちらを見やった。二人の脳裏によぎったのはハーマイオニーが薬を完成させたのではということだったが、その予想は大きく外れた。
「すばらしい、素晴らしい、ハリー!なんと君は明らかに母親の才能を受け継いでいる。彼女は魔法薬の名人だった。あのリリーは!さあ、さあ、これを―――約束のフェリックス・フェリシスの瓶だ。上手に使いなさい!」
何と最も薬を上手く調合したのはハリーだったのだ。これにはロンは驚き、ハーマイオニーはガッカリした反応を示した。そしてフォーラもドラコも、ブレーズとセオドールも思わず顔を見合わせずにはいられなかった。何せフォーラの薬はハーマイオニーが堅実に教科書どおり調合した物よりも確実に出来が良かったにも関わらず、ふくろう試験の成績が『良』だったハリーよりも劣ったのだ。フォーラはその結果が信じがたく受け入れられなかった。何なら屈辱にすら感じている自分がいることに気付き、そう思っていることがショックでもあり、自分の方が明らかに努力してきたのだから悔しいと感じるのは当然だとも思った。そういった複雑な感情が珍しく固い表情となってフォーラの顔に表れていたものだから、ドラコは彼女に掛けるべき上手い言葉を見つけられなかった。
その後は生徒たちが水薬を小瓶に詰めてサンプルとして教卓に提出し、フォーラも同じようにした。ざっと見る限り紫色の薬が大半で、中には濃紺だったり、タール状の物もあったりした。そして一段と透明感のある薬が正 しく今日ハリーが調合した代物だった。フォーラは自身の作った薄ピンクで透明感のある薬の小瓶を提出した際、確かにどう見てもハリーの物の方が優れているという事実に、『どうして?』という疑念が湧いて心の炎がチリチリと燃えた。
フォーラはフェリックス薬を手に入れられなかったことを残念に思っていたが、最早それについてはそのような対抗心を燃やす理由になり得なかった。学年の誰よりも魔法薬への知見が深いという自負があった分、自分より確実に知識の劣る人に先を越されたことの方が悔しくて仕方なかったのだ。ハリーが事前に努力したことで結果を残せたのならその口惜しさも受け入れられただろうが、今回、明らかに彼は今日この場で初めて教科書に目を通していた。それが尚更彼女の対抗心を逆撫でした。
授業終わりにフォーラやドラコの近くをハリーが通った時、ロンが彼に尋ねる声が聞こえた。
「どうやったんだ?」
「ラッキーだったんだろう」ハリーが答えた。
(ラッキー?本当に?仮にそうだったとしても、薬を完成させるには、よっぽど相当なラッキーの重なりが必要だわ。そんなこと、どれだけ確立の低い話かは明らかなのに)
フォーラはハリーたちの後ろ姿を一瞥した後、ドラコとその場で別れ、スラグホーンの方へと向かった。
「スラグホーン先生?少しお時間よろしいでしょうか?」
教卓の片付けのために杖を振り終えたスラグホーンは、フォーラの呼び掛けを受けて歓迎の表情で振り返った。
「ああフォーラ、どうしたんだね?」
「はい先生。先程の『屍の水薬』の調合について分からないところがあって。よろしければ助言をいただけないかと思ったんです。」フォーラがしおらしい雰囲気で言った。
スラグホーンはお気に入りの生徒に頼られている状況に大層機嫌を良くした。
「いやはや、君は随分謙虚でありながら探求心もあるようだ!是非覚えておこう。先程の君の薬は本当に良い出来だった。ハリーがあそこまで完璧な物を仕上げていなければ、フェリックスは君の手にあったと断言できる程にね。それで、どの部分に関して質問があるのかね?」
「はい、ありがとうございます。この仕上げの攪拌作業なのですが―――」
フォーラはこの作業までは自身の工夫も加えたことで薬が教科書どおりの色味になったことや、逆方向の攪拌を加えてみたことなどを伝えた。そしてスラグホーンであればどのように仕上げの調合をするかの意見を仰ぎたい旨を話すと、彼は快く自身の見解を述べたのだった。
「私ならこの段階で―――とするかな。これは催眠豆を使う場合――――という理屈を当てはめることができる。だから確かに君の言うとおり、この教科書どおりにするだけでは要所要所に不足が生じる場合もあるだろう。君がこれまでセブルスの教えの中から拾い上げてきたように、時には過去の調合を参考にして取り入れていくことも必要だし、新しい部分を学んでいくことも当然必要だ。いもりレベルではそういったことが求められる」
「初回の授業でここまでやるとは素晴らしい!流石はお父上が魔法薬に長けているだけある。シェードがかつて卒業後に真実薬の発明に貢献したと耳にした時も驚いたが、フォーラ、君が学生の時点でここまでやってのけるとあっては、将来お父上のライバルとなる日もそう遠くはないかもしれない!」
「あの、ありがとうございます。」
フォーラは褒めちぎられたことで周囲の視線を受け、思わず頬を染めて肩をすくめた。スラグホーンはその謙虚な様子にニッコリ微笑み、次にグリフィンドールとハッフルパフの生徒がいる調合台に移った。スリザリンの他の三人ともフォーラが魔法薬学を得意としていることを勿論把握していたため、心の何処かでフェリックスを手にするのは彼女かもしれないと考えていた。そのため特にフェリックスを渇望していたドラコですら、小声で彼女に称賛を伝えた。
「もうこれは君の一人勝ちかもな」
「ありがとう、だけどもしそうなったら私―――」フォーラはフェリックス薬をドラコと半分ずつ使いたい旨を伝えようとした。するとその時、向こうの調合台からスラグホーンの声が響いた。
「紛れもない勝利者だ!」
フォーラもドラコもその声にパッとそちらを見やった。二人の脳裏によぎったのはハーマイオニーが薬を完成させたのではということだったが、その予想は大きく外れた。
「すばらしい、素晴らしい、ハリー!なんと君は明らかに母親の才能を受け継いでいる。彼女は魔法薬の名人だった。あのリリーは!さあ、さあ、これを―――約束のフェリックス・フェリシスの瓶だ。上手に使いなさい!」
何と最も薬を上手く調合したのはハリーだったのだ。これにはロンは驚き、ハーマイオニーはガッカリした反応を示した。そしてフォーラもドラコも、ブレーズとセオドールも思わず顔を見合わせずにはいられなかった。何せフォーラの薬はハーマイオニーが堅実に教科書どおり調合した物よりも確実に出来が良かったにも関わらず、ふくろう試験の成績が『良』だったハリーよりも劣ったのだ。フォーラはその結果が信じがたく受け入れられなかった。何なら屈辱にすら感じている自分がいることに気付き、そう思っていることがショックでもあり、自分の方が明らかに努力してきたのだから悔しいと感じるのは当然だとも思った。そういった複雑な感情が珍しく固い表情となってフォーラの顔に表れていたものだから、ドラコは彼女に掛けるべき上手い言葉を見つけられなかった。
その後は生徒たちが水薬を小瓶に詰めてサンプルとして教卓に提出し、フォーラも同じようにした。ざっと見る限り紫色の薬が大半で、中には濃紺だったり、タール状の物もあったりした。そして一段と透明感のある薬が
フォーラはフェリックス薬を手に入れられなかったことを残念に思っていたが、最早それについてはそのような対抗心を燃やす理由になり得なかった。学年の誰よりも魔法薬への知見が深いという自負があった分、自分より確実に知識の劣る人に先を越されたことの方が悔しくて仕方なかったのだ。ハリーが事前に努力したことで結果を残せたのならその口惜しさも受け入れられただろうが、今回、明らかに彼は今日この場で初めて教科書に目を通していた。それが尚更彼女の対抗心を逆撫でした。
授業終わりにフォーラやドラコの近くをハリーが通った時、ロンが彼に尋ねる声が聞こえた。
「どうやったんだ?」
「ラッキーだったんだろう」ハリーが答えた。
(ラッキー?本当に?仮にそうだったとしても、薬を完成させるには、よっぽど相当なラッキーの重なりが必要だわ。そんなこと、どれだけ確立の低い話かは明らかなのに)
フォーラはハリーたちの後ろ姿を一瞥した後、ドラコとその場で別れ、スラグホーンの方へと向かった。
「スラグホーン先生?少しお時間よろしいでしょうか?」
教卓の片付けのために杖を振り終えたスラグホーンは、フォーラの呼び掛けを受けて歓迎の表情で振り返った。
「ああフォーラ、どうしたんだね?」
「はい先生。先程の『屍の水薬』の調合について分からないところがあって。よろしければ助言をいただけないかと思ったんです。」フォーラがしおらしい雰囲気で言った。
スラグホーンはお気に入りの生徒に頼られている状況に大層機嫌を良くした。
「いやはや、君は随分謙虚でありながら探求心もあるようだ!是非覚えておこう。先程の君の薬は本当に良い出来だった。ハリーがあそこまで完璧な物を仕上げていなければ、フェリックスは君の手にあったと断言できる程にね。それで、どの部分に関して質問があるのかね?」
「はい、ありがとうございます。この仕上げの攪拌作業なのですが―――」
フォーラはこの作業までは自身の工夫も加えたことで薬が教科書どおりの色味になったことや、逆方向の攪拌を加えてみたことなどを伝えた。そしてスラグホーンであればどのように仕上げの調合をするかの意見を仰ぎたい旨を話すと、彼は快く自身の見解を述べたのだった。
「私ならこの段階で―――とするかな。これは催眠豆を使う場合――――という理屈を当てはめることができる。だから確かに君の言うとおり、この教科書どおりにするだけでは要所要所に不足が生じる場合もあるだろう。君がこれまでセブルスの教えの中から拾い上げてきたように、時には過去の調合を参考にして取り入れていくことも必要だし、新しい部分を学んでいくことも当然必要だ。いもりレベルではそういったことが求められる」