8. アンラッキーな初授業
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その後、二人はソファに並び座ると協力してスネイプの難解な課題をどうにかレポートにしたためた。その間彼らは一般的かつ適切な距離を保っていたのだが、昼休憩を目前に課題が片付くと、ドラコが伸びをすると共にフォーラの肩に頭をもたれ掛けた。それを受けた彼女は周囲の何人かの生徒の目を何となく感じつつも、彼の行動を嬉しく思う方が勝 り、そのプラチナブロンドの頭部に自身の頭を軽く重ねるように載せた。その際、彼からシトラスのような爽やかに抜けるいつもの香りがした。
フォーラから見た最近のドラコは、夏に送ってくれた手紙でも、昨日の列車内でも、明らかに以前にも増して甘えた姿を見せるようになっていた。そのきっかけは今思えばドラコの父が投獄された件や、ドラコが行うべき死喰い人としての何等かの活動のストレスによるものだったのだろう。とはいえ今現在の彼はどちらかというと落ち着きと余裕のある様子でこのひと時を堪能しているようだった。きっと昨日の薔薇園で交わした秘密の会話や特別すぎる濃厚なスキンシップが、少しでも彼の余裕を生み出すことに繋がったのかもしれない。
フォーラはそのように結論付けると共に、これから忙しくなるというドラコの環境が、引き続きこうして時たま余裕の持てるものでありますようにと祈るばかりだった。その想いを込めて彼女は二人の間に置かれた彼の手のひらに自身の手を重ねると、彼の細く長い指と指の間を抜けるように自身の華奢な指を絡めた。
それを受けたドラコは指を折り曲げてフォーラの手をギュッと握り、そこから伝わってくる温かさや、彼女からほのかに香るバニラビーンズのような甘い匂いに幸福感を募らせた。その際、彼女の肩に載せていた自身の頭を何の気なしにのそのそと動かしてみると、彼女の白く透き通るような首筋が視界に入った。しかも自身の鼻先が彼女の肌に近付いたことで一層甘い香りを強く感じたものだから、それにそそられた彼は興味本位でその首筋にチュッと音を立てて口付けた。すると途端に彼女の背筋がビクリと跳ねた―――何せ彼女はそんな所にキスをされたのが初めてだったし、あまりにも不意打ちすぎたのだ。
フォーラが微動だにしなくなったためドラコが頭を上げて様子を確認してみると、彼女の頬はこの一瞬の間にすっかり赤く色付いて瞳は動揺で揺らぎ、何とかギリギリ彼と視線を合わせているような感じだった。ドラコは心の中で『昨日あれだけ乱れたキスをしたのに、これも恥ずかしいのか?』とは思ったが、彼女のその様子を可愛いと思う気持ちの方が勝 った。そのため彼は胸の内からズクズクとせり上がる欲望に任せて、人目も憚らずもう一度同じ場所にキスしたくなった。
ところが丁度そのタイミングで昼休憩を告げる鐘が鳴った。途端にフォーラはドラコと繋いでいた手を放してその場にパッと立ち上がると、先程彼がキスした部分を片手で隠した。
「もう、ドラコが午後や明日以降も頑張れるようにと思って身を寄せたのに。そのいたずら具合だと十分元気に頑張れそうだし、必要なかったかもしれないわね。」
フォーラが先程のキスや自身の反応を気恥ずかしく思い、まだ赤い顔で唇の先を少々ツンと尖らせて軽くそっぽを向いた。するとドラコも立ち上がって彼女を宥めあやすように肩を抱くと、顔を自身の方に向かせて囁くようにした。
「すまない、少し調子に乗ってしまった。だけどおかげで十分頑張れそうだ。だからといって君との交流は必要だから、そこは訂正しておきたい」
その距離が大層近かったものだから、フォーラはまた人前で何処かに口付けられるのではと思い、慌てて彼の胸板を軽く押して距離をとった。
「そう言ってもらえて嬉しいけれど。昨日や今みたいに過度なことは、人目のないところがいいわ……。」
フォーラは最後の方を消え入りそうな声で告げると、机の上をサッと杖の一振りで片付けて「さあ、昼食に行きましょう。」とドラコの方を見ずに発言し、先に廊下へ続く扉に向かった。一方の彼は、彼女の後ろ髪から覗いた耳までもがすっかり赤くなっていることを視認した。
(昨日に加えて、今も君のそんな反応を見られただけで、もう既にこの一週間を乗り切れそうだ。何ならあのお方からのご命令だって早くに完遂できそうな気すらしてくる)
ドラコは手早く卓上を片付けると、フォーラの後ろ姿を追いながら声を掛けたのだった。
さて、午後一番目の授業は二限続きの魔法薬学だった。フォーラは昼食後、同じ授業を受けるドラコとセオドール、ブレーズと共に、これまで長い間スネイプが管理していた地下牢教室に向かって通い慣れた通路を下りていった。教室の前の廊下に並んで待機している生徒を見てみると、いもりレベルに進んだのはたった十二人しかいなかった。スリザリンからは今やって来たフォーラを含む四名、レイブンクローから四名、ハッフルパフから一名、そしてグリフィンドールからはハリー、ロン、ハーマイオニーのいつもの三名が揃っていた。
フォーラは最後に挙げた三名となるべく目を合わせたくなくて視線を逸らすつもりだったのだが、その努力の必要は早々になくなった。というのも程なくして扉が開き、スラグホーンが教室から出てきたのだ。彼は生徒たちが列を成して教室に入るのをニッコリ微笑んで迎え、特にハリー、ブレーズ、そしてフォーラに熱烈な挨拶をした。
教室の中は常日頃と違って既に蒸気や風変りな臭気に満ちていて、幾つかある調合台のそれぞれ近くに一つずつ置かれた鍋の中で魔法薬がグツグツと煮え立っていた。生徒たちは四人一組で纏まって座った。その際、スリザリン生が選んだのは蠱惑的な香りを発散する鍋の近くだった。
フォーラから見た最近のドラコは、夏に送ってくれた手紙でも、昨日の列車内でも、明らかに以前にも増して甘えた姿を見せるようになっていた。そのきっかけは今思えばドラコの父が投獄された件や、ドラコが行うべき死喰い人としての何等かの活動のストレスによるものだったのだろう。とはいえ今現在の彼はどちらかというと落ち着きと余裕のある様子でこのひと時を堪能しているようだった。きっと昨日の薔薇園で交わした秘密の会話や特別すぎる濃厚なスキンシップが、少しでも彼の余裕を生み出すことに繋がったのかもしれない。
フォーラはそのように結論付けると共に、これから忙しくなるというドラコの環境が、引き続きこうして時たま余裕の持てるものでありますようにと祈るばかりだった。その想いを込めて彼女は二人の間に置かれた彼の手のひらに自身の手を重ねると、彼の細く長い指と指の間を抜けるように自身の華奢な指を絡めた。
それを受けたドラコは指を折り曲げてフォーラの手をギュッと握り、そこから伝わってくる温かさや、彼女からほのかに香るバニラビーンズのような甘い匂いに幸福感を募らせた。その際、彼女の肩に載せていた自身の頭を何の気なしにのそのそと動かしてみると、彼女の白く透き通るような首筋が視界に入った。しかも自身の鼻先が彼女の肌に近付いたことで一層甘い香りを強く感じたものだから、それにそそられた彼は興味本位でその首筋にチュッと音を立てて口付けた。すると途端に彼女の背筋がビクリと跳ねた―――何せ彼女はそんな所にキスをされたのが初めてだったし、あまりにも不意打ちすぎたのだ。
フォーラが微動だにしなくなったためドラコが頭を上げて様子を確認してみると、彼女の頬はこの一瞬の間にすっかり赤く色付いて瞳は動揺で揺らぎ、何とかギリギリ彼と視線を合わせているような感じだった。ドラコは心の中で『昨日あれだけ乱れたキスをしたのに、これも恥ずかしいのか?』とは思ったが、彼女のその様子を可愛いと思う気持ちの方が
ところが丁度そのタイミングで昼休憩を告げる鐘が鳴った。途端にフォーラはドラコと繋いでいた手を放してその場にパッと立ち上がると、先程彼がキスした部分を片手で隠した。
「もう、ドラコが午後や明日以降も頑張れるようにと思って身を寄せたのに。そのいたずら具合だと十分元気に頑張れそうだし、必要なかったかもしれないわね。」
フォーラが先程のキスや自身の反応を気恥ずかしく思い、まだ赤い顔で唇の先を少々ツンと尖らせて軽くそっぽを向いた。するとドラコも立ち上がって彼女を宥めあやすように肩を抱くと、顔を自身の方に向かせて囁くようにした。
「すまない、少し調子に乗ってしまった。だけどおかげで十分頑張れそうだ。だからといって君との交流は必要だから、そこは訂正しておきたい」
その距離が大層近かったものだから、フォーラはまた人前で何処かに口付けられるのではと思い、慌てて彼の胸板を軽く押して距離をとった。
「そう言ってもらえて嬉しいけれど。昨日や今みたいに過度なことは、人目のないところがいいわ……。」
フォーラは最後の方を消え入りそうな声で告げると、机の上をサッと杖の一振りで片付けて「さあ、昼食に行きましょう。」とドラコの方を見ずに発言し、先に廊下へ続く扉に向かった。一方の彼は、彼女の後ろ髪から覗いた耳までもがすっかり赤くなっていることを視認した。
(昨日に加えて、今も君のそんな反応を見られただけで、もう既にこの一週間を乗り切れそうだ。何ならあのお方からのご命令だって早くに完遂できそうな気すらしてくる)
ドラコは手早く卓上を片付けると、フォーラの後ろ姿を追いながら声を掛けたのだった。
さて、午後一番目の授業は二限続きの魔法薬学だった。フォーラは昼食後、同じ授業を受けるドラコとセオドール、ブレーズと共に、これまで長い間スネイプが管理していた地下牢教室に向かって通い慣れた通路を下りていった。教室の前の廊下に並んで待機している生徒を見てみると、いもりレベルに進んだのはたった十二人しかいなかった。スリザリンからは今やって来たフォーラを含む四名、レイブンクローから四名、ハッフルパフから一名、そしてグリフィンドールからはハリー、ロン、ハーマイオニーのいつもの三名が揃っていた。
フォーラは最後に挙げた三名となるべく目を合わせたくなくて視線を逸らすつもりだったのだが、その努力の必要は早々になくなった。というのも程なくして扉が開き、スラグホーンが教室から出てきたのだ。彼は生徒たちが列を成して教室に入るのをニッコリ微笑んで迎え、特にハリー、ブレーズ、そしてフォーラに熱烈な挨拶をした。
教室の中は常日頃と違って既に蒸気や風変りな臭気に満ちていて、幾つかある調合台のそれぞれ近くに一つずつ置かれた鍋の中で魔法薬がグツグツと煮え立っていた。生徒たちは四人一組で纏まって座った。その際、スリザリン生が選んだのは蠱惑的な香りを発散する鍋の近くだった。