8. アンラッキーな初授業
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「ミス・ファントム」スネイプがフォーラに対して公的な時に使う呼び方をしてそばに立った。
「はい先生、お久しぶりです。」フォーラがそのように挨拶すると、スネイプは彼女を一瞥してから成績を一通り確認し、再び口を開いた。
「君の成績は大変優秀だ。加えて魔法薬学で『優』を取ったことを誇りに思う。継続を申請している科目は全て今年も続けられるが、それでよろしいかね」
「はい、問題ありません。」
その返答を受けてスネイプは真っ白な羊皮紙を杖先で軽く叩き、新しい授業の詳細が書き込まれた時間割を印字して差し出した。フォーラがそれを受け取ろうとした際、彼女はスネイプの親指と時間割の間に小さな羊皮紙の切れ端が挟まっていることに気付いた。彼女がそれごと受け取って彼を見上げると、彼は既に隣のパンジーの成績を確認する作業に取り掛かっていた。
フォーラがその切れ端をきちんと確認したのはパンジーやルニーと共に大広間を後にした時だった。二人の後ろをついて歩きながら切れ端を裏返してみると、そこにはスネイプの文字で短い言葉が綴られていた。
『例の本に関して手短に話がある。放課後に防衛術の準備室に来なさい。』
フォーラは切れ端をポケットに仕舞いながら『例の本』を思い浮かべた。今朝、トランクの中で視界に入れた本が正しくそれで、エメリア・スイッチといういにしえの魔女がホグワーツの禁書の棚に残したものだった。そこに記されているのは世に出回っていない変身術ばかりだったが、世間からは一つも成功しないという批判を受けた上、中には血を使うものもあり、危険な眉唾物であるという烙印を押されて発行物はその昔に殆ど全て焼き払われたようだった。
ところがフォーラは前学年の時に生き残りのその本を禁書の棚で見つけ、記された術の一つを使えるまでになった。加えてその本を偽物とすり替えてこっそり手元に所蔵して今に至るのだが、それを知るのは彼女以外にスネイプとダンブルドアの二名だけだった。
フォーラがそのような盗みを働いてしまったのは、あの本がどうにも自分のルーツに紐づいているように思えてならなかったからだ。そう感じた理由として、禁書にあったあの本は誰にも見つからないよう自動的に隣同士の本のタイトルを足して割ったような偽りの表紙を創り出していたのだが、中身も含めて本来の状態に戻せたのが現状は彼女だけで、そこに記された術の一つを使えたのも彼女だけだった。そして最後に、本に掲載されていた初老の魔女の容姿がどことなくフォーラと似通っているように見えたことも理由に挙げられた。
スネイプは今日の放課後、あの本について何の話をするつもりなのだろう。手短にと書かれていたし、きっと前学年の末にフォーラが本に書かれていた術を使ってスネイプに変身した時の後遺症がないかを心配しているのかもしれない。彼女はそのように思い、前を歩くパンジーとルニーのお喋りに意識を戻したのだった。
三人はこの曜日の一限目に授業がなかったため、談話室で引き続きお喋りをしたり、今後様々な授業でどれだけ多くの課題を出されるだろうかと震えたり、今日の授業で使う教科書に軽く目を通したりした。きっと今後、この自由時間はレポート作業や予習復習によって息の詰まる重苦しい空気になっていくのだろう。そう思うと三人とも心の中で肩を落とし、まだ授業の始まっていないこの最後の気楽な時間を堪能しにかかったのだった。
さて、時を同じくしてドラコは鞄を肩から下げ、校内の人気 のない廊下をたった一人で足早に歩いていた。彼もこの時間は授業がなかったため、以前から自宅で計画していた事柄を実行するのに丁度良かったのだ。彼は以前も訪れたことのある上階の廊下の突き当りまでやって来た。するとそこには前学年の終わりに見た時と変わらない位置にキャビネットが一つ置かれていた。但し以前と違ったのは、そのキャビネットが扉を開けられないように太いテープで雑に巻かれていることだった。
(よかった、まだあった。やはりどう見てもボージンの店のキャビネットと全く同じ見た目の品だ。以前モンタギューがこのキャビネットに閉じ込められている間に聞いた老人の声は、間違いなくボージンの声だ)
ドラコは例の店の物と目の前の物が一対の『姿をくらますキャビネット』だと改めて確信した。但し今現在は壊れていて、本来行き来できる筈の機能が損なわれている。それを修理すべく彼はこの場所にやって来たのだった。
(これを使う時が来るとすれば、僕が予定している方法でダンブルドアを殺害できた後か、もしくは……失敗した場合の最終手段だろう。どちらにしろ、キャビネットを通じて死喰い人の仲間をこの守りの固いホグワーツに招き入れる必要がある。計画通り殺害が成功していれば後始末の手助けになるし、逆に失敗していれば殺害を強行突破するために手を借りることになる)
ドラコは廊下に誰もいないことを確認すると、キャビネットに向かって杖を振りながら呪文を唱え、それを消失させた。そしてすぐにその場を去ってそのままホグワーツ城の七階の廊下へと向かった。
目的地に到着するとドラコはここでも周囲の人目に気を遣ったのだが、基本的に授業時間であるお陰で通行人は誰一人いなかった。彼は『バカのバーナバスとトロール』が刺繍で描かれた大きなタペストリーの掛かる壁を背にして立ち、正面の長い石壁を見た。
この壁の向こうに、以前ハリーたち学生有志が組織した『ダンブルドア軍団』が集会活動を行っていた場所がある。今は扉も何もないが、ドラコはそこへの入り方や、入った先が自身の望みどおりの場所に変化することをある程度把握していた。それは彼が尋問監親衛隊としてハリーたちを拘束する中で得た情報だった。通称『必要の部屋』と呼ばれるそこは、ドラコが立っている場所を三回行き来しながら自身が何を必要とするかを念じることで扉が現れる仕組みになっていた。
「はい先生、お久しぶりです。」フォーラがそのように挨拶すると、スネイプは彼女を一瞥してから成績を一通り確認し、再び口を開いた。
「君の成績は大変優秀だ。加えて魔法薬学で『優』を取ったことを誇りに思う。継続を申請している科目は全て今年も続けられるが、それでよろしいかね」
「はい、問題ありません。」
その返答を受けてスネイプは真っ白な羊皮紙を杖先で軽く叩き、新しい授業の詳細が書き込まれた時間割を印字して差し出した。フォーラがそれを受け取ろうとした際、彼女はスネイプの親指と時間割の間に小さな羊皮紙の切れ端が挟まっていることに気付いた。彼女がそれごと受け取って彼を見上げると、彼は既に隣のパンジーの成績を確認する作業に取り掛かっていた。
フォーラがその切れ端をきちんと確認したのはパンジーやルニーと共に大広間を後にした時だった。二人の後ろをついて歩きながら切れ端を裏返してみると、そこにはスネイプの文字で短い言葉が綴られていた。
『例の本に関して手短に話がある。放課後に防衛術の準備室に来なさい。』
フォーラは切れ端をポケットに仕舞いながら『例の本』を思い浮かべた。今朝、トランクの中で視界に入れた本が正しくそれで、エメリア・スイッチといういにしえの魔女がホグワーツの禁書の棚に残したものだった。そこに記されているのは世に出回っていない変身術ばかりだったが、世間からは一つも成功しないという批判を受けた上、中には血を使うものもあり、危険な眉唾物であるという烙印を押されて発行物はその昔に殆ど全て焼き払われたようだった。
ところがフォーラは前学年の時に生き残りのその本を禁書の棚で見つけ、記された術の一つを使えるまでになった。加えてその本を偽物とすり替えてこっそり手元に所蔵して今に至るのだが、それを知るのは彼女以外にスネイプとダンブルドアの二名だけだった。
フォーラがそのような盗みを働いてしまったのは、あの本がどうにも自分のルーツに紐づいているように思えてならなかったからだ。そう感じた理由として、禁書にあったあの本は誰にも見つからないよう自動的に隣同士の本のタイトルを足して割ったような偽りの表紙を創り出していたのだが、中身も含めて本来の状態に戻せたのが現状は彼女だけで、そこに記された術の一つを使えたのも彼女だけだった。そして最後に、本に掲載されていた初老の魔女の容姿がどことなくフォーラと似通っているように見えたことも理由に挙げられた。
スネイプは今日の放課後、あの本について何の話をするつもりなのだろう。手短にと書かれていたし、きっと前学年の末にフォーラが本に書かれていた術を使ってスネイプに変身した時の後遺症がないかを心配しているのかもしれない。彼女はそのように思い、前を歩くパンジーとルニーのお喋りに意識を戻したのだった。
三人はこの曜日の一限目に授業がなかったため、談話室で引き続きお喋りをしたり、今後様々な授業でどれだけ多くの課題を出されるだろうかと震えたり、今日の授業で使う教科書に軽く目を通したりした。きっと今後、この自由時間はレポート作業や予習復習によって息の詰まる重苦しい空気になっていくのだろう。そう思うと三人とも心の中で肩を落とし、まだ授業の始まっていないこの最後の気楽な時間を堪能しにかかったのだった。
さて、時を同じくしてドラコは鞄を肩から下げ、校内の
(よかった、まだあった。やはりどう見てもボージンの店のキャビネットと全く同じ見た目の品だ。以前モンタギューがこのキャビネットに閉じ込められている間に聞いた老人の声は、間違いなくボージンの声だ)
ドラコは例の店の物と目の前の物が一対の『姿をくらますキャビネット』だと改めて確信した。但し今現在は壊れていて、本来行き来できる筈の機能が損なわれている。それを修理すべく彼はこの場所にやって来たのだった。
(これを使う時が来るとすれば、僕が予定している方法でダンブルドアを殺害できた後か、もしくは……失敗した場合の最終手段だろう。どちらにしろ、キャビネットを通じて死喰い人の仲間をこの守りの固いホグワーツに招き入れる必要がある。計画通り殺害が成功していれば後始末の手助けになるし、逆に失敗していれば殺害を強行突破するために手を借りることになる)
ドラコは廊下に誰もいないことを確認すると、キャビネットに向かって杖を振りながら呪文を唱え、それを消失させた。そしてすぐにその場を去ってそのままホグワーツ城の七階の廊下へと向かった。
目的地に到着するとドラコはここでも周囲の人目に気を遣ったのだが、基本的に授業時間であるお陰で通行人は誰一人いなかった。彼は『バカのバーナバスとトロール』が刺繍で描かれた大きなタペストリーの掛かる壁を背にして立ち、正面の長い石壁を見た。
この壁の向こうに、以前ハリーたち学生有志が組織した『ダンブルドア軍団』が集会活動を行っていた場所がある。今は扉も何もないが、ドラコはそこへの入り方や、入った先が自身の望みどおりの場所に変化することをある程度把握していた。それは彼が尋問監親衛隊としてハリーたちを拘束する中で得た情報だった。通称『必要の部屋』と呼ばれるそこは、ドラコが立っている場所を三回行き来しながら自身が何を必要とするかを念じることで扉が現れる仕組みになっていた。