8. アンラッキーな初授業
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新入生歓迎の晩餐会を終えた翌朝、フォーラたち女子寮のメンバーは今日から始まる授業のために制服に腕を通しているところだった。するとフォーラの隣のベッドで着替えていたパンジーがこっそり耳打ちした。
「そういえば、昨日は列車でドラコが随分あなたに甘えたがっているような感じだったけど、夜はちゃんと甘やかしてあげられたの?」
「えっ?」フォーラは喉から出た声が裏返っていて自分でも驚いてしまった。
フォーラは昨晩、就寝時間の間際にドラコと共に校庭の薔薇園からスリザリンの談話室に戻ってきたのだが、その頃には女子寮のみんなはすっかり眠りについていた。列車の長旅があったのだから当然だろう。そのためパンジーは今こうして、昨日フォーラが寮に戻ってきたら聞こうと思っていたことを尋ねたのだ。
フォーラは一瞬のうちに昨晩ドラコと過ごした薔薇園での時間を自然と思い返せた。ドラコが死喰い人になったかもしれないと知ってショックを感じつつも表面上は受け入れたことや、彼のすべきことが自分には分からなくとも応援すると後押ししたこと、そして、今までギリギリのところで抗っていた深く激しい大人のキスを交わしたことも……。
「えっと、その……」
最後の出来事は特に鮮明で、今思い出すだけでも顔から火が出そうなくらいだった。すると女子寮の他のメンバーが身支度を終えて談話室へと出ていったのを機に、フォーラの様子に気付いたルニーが興味津々で飛ぶようにやってきた。パンジーとルニーはフォーラの真っ赤な顔や落ち着かない反応を見て何やら破廉恥な勘違いをしたようで、ソワソワ、ドキドキとしたピンク色のオーラを纏った視線を向けていた。それに気付いたフォーラは急いで訂正した。
「ふ、二人でお話して、少しキスしただけよ……。」
正直フォーラは昨日のアレが『少し』どころではなかったと思ったが、あえてそのようなマイルドな表現に留めた。するとその回答を受けた彼女たちがキャーッと黄色い声を上げた。フォーラは顔の熱を冷ますために両手で急いで扇ぎ、引き続き制服への更衣に戻った。
パンジーとルニーは実のところ色々と過度に期待しすぎた自覚はあったし、貞操観念がしっかりしていそうなドラコとフォーラが校内で風紀を極限まで乱すような男女のいかがわしい行為などしないだろうと踏んでいた。とはいえ去年までの二人が長くすれ違っていたのをパンジーとルニーは間近に長く見てきた分、少しでも彼らが恋人としての距離を縮めて仲睦まじくしているという安心感を得たかったのだ。
「ところで」するとフォーラがこの独特の空気感を一掃するように、気を取り直して二人に声を掛けた。
「パンジーとルニーに渡さないといけない物があるの。昨日はすっかり機会を逃してしまったから。」
そうしてフォーラが自身のトランクを探って内側のサイドポケットを見た。そこに大事に収まっているインスタント煙幕や、透明の小袋に入れた羊皮紙の切れ端二枚、それに一冊の不思議なタイトルの本の隣から、彼女は三本の小瓶だけを取り出した。中はどれも同じ液体で満たされていた。
「夏休みの終わりにダイアゴン横丁で二人に会った時に、私の父様が約束していた物よ。」
「あっ、もしかしておじさまは本当に惚れ薬の解毒薬を作ってくださったの?ありがとう!」パンジーが興味津々に小瓶を受け取りながら尋ねた。するとルニーが続いた。
「わあ!凄いわ、ありがとう。確かにウィーズリーの店の惚れ薬は随分流行っていそうだったもんね。あの時は女性客が群がっていたけど、確か男性客も買っていくとか?」
「ええ、性別に関係なく需要があるとジョージが言っていたわ。とはいえ惚れ薬を使われれば犯人に惚れてしまうわけだし、悪さをした人がすぐ特定できるでしょうから……。きっと校内で使う人は殆どいないと思うし、この薬の栓を抜くこともそうない筈だけれどね。」
「少なくともお守り代わりに常に携帯しておくに越したことはないわね。自分以外の誰かが被害に遭ってもすぐに飲ませられるように」
パンジーがそう言って羽織っているローブの内ポケットに小瓶を仕舞ったため、それに倣うように他の二人も同じ動きをしたのだった。
その後は三人揃って朝食の席に向かい、大広間の長テーブルでドラコとその友人たちに合流した。昨晩ぶりに顔を合わせたドラコとフォーラは互いを視界に入れると、どちらも途端に昨日の信頼深い時間を思い出した。何なら双方共に朝から度々あの時のことが脳裏をよぎっていた程で、二人はいつにも増して愛しい瞳で「おはよう」と挨拶を交わした。
食事が終わると生徒たちはみんなその場に留まり、寮監が教職員テーブルから降りてくるのを待った。スリザリン寮にはスネイプがやってきて、一年生から五年生までそれぞれ決まった時間割を手早く配った。そして次に六年生の所へ来ると一人一人順番に、個人が希望する『いもりレベル』の授業を受講するのに必要な『ふくろう試験』の合格点を満たしているかが確認され、その都度時間割が作られた。
既に時間割を渡された生徒は一限目の授業の教室に向かったり、その時間が授業なしの自由時間だった場合は談話室や図書室に向かったりして次々に大広間を後にした。そして今度のスネイプはドラコの所へ近付き、これまで同様に個人用の時間割を作成すべく言葉を交わした。その会話の様子をフォーラは自席から容易に確認できたのだが、何というべきか、ドラコがスネイプに対して幾らかぶっきらぼうな態度を取っているように見えた。
(そういえば昨日の晩餐の場で、セブルスさんが防衛術の担当になったとダンブルドア先生が説明した時に、ドラコは拍手をしていなかった気がするわ。前学年までずっと恩師として仰いでいた筈なのに。今も何だか返事が冷たい感じがするし、急にどうしたのかしら……)
フォーラはその答えを知ることなく、ドラコがスネイプから時間割を受け取って早々にその場を立ち去る姿を見送るしかなかった。そうして何人かの生徒の後でようやくフォーラの番がやってきた。
「そういえば、昨日は列車でドラコが随分あなたに甘えたがっているような感じだったけど、夜はちゃんと甘やかしてあげられたの?」
「えっ?」フォーラは喉から出た声が裏返っていて自分でも驚いてしまった。
フォーラは昨晩、就寝時間の間際にドラコと共に校庭の薔薇園からスリザリンの談話室に戻ってきたのだが、その頃には女子寮のみんなはすっかり眠りについていた。列車の長旅があったのだから当然だろう。そのためパンジーは今こうして、昨日フォーラが寮に戻ってきたら聞こうと思っていたことを尋ねたのだ。
フォーラは一瞬のうちに昨晩ドラコと過ごした薔薇園での時間を自然と思い返せた。ドラコが死喰い人になったかもしれないと知ってショックを感じつつも表面上は受け入れたことや、彼のすべきことが自分には分からなくとも応援すると後押ししたこと、そして、今までギリギリのところで抗っていた深く激しい大人のキスを交わしたことも……。
「えっと、その……」
最後の出来事は特に鮮明で、今思い出すだけでも顔から火が出そうなくらいだった。すると女子寮の他のメンバーが身支度を終えて談話室へと出ていったのを機に、フォーラの様子に気付いたルニーが興味津々で飛ぶようにやってきた。パンジーとルニーはフォーラの真っ赤な顔や落ち着かない反応を見て何やら破廉恥な勘違いをしたようで、ソワソワ、ドキドキとしたピンク色のオーラを纏った視線を向けていた。それに気付いたフォーラは急いで訂正した。
「ふ、二人でお話して、少しキスしただけよ……。」
正直フォーラは昨日のアレが『少し』どころではなかったと思ったが、あえてそのようなマイルドな表現に留めた。するとその回答を受けた彼女たちがキャーッと黄色い声を上げた。フォーラは顔の熱を冷ますために両手で急いで扇ぎ、引き続き制服への更衣に戻った。
パンジーとルニーは実のところ色々と過度に期待しすぎた自覚はあったし、貞操観念がしっかりしていそうなドラコとフォーラが校内で風紀を極限まで乱すような男女のいかがわしい行為などしないだろうと踏んでいた。とはいえ去年までの二人が長くすれ違っていたのをパンジーとルニーは間近に長く見てきた分、少しでも彼らが恋人としての距離を縮めて仲睦まじくしているという安心感を得たかったのだ。
「ところで」するとフォーラがこの独特の空気感を一掃するように、気を取り直して二人に声を掛けた。
「パンジーとルニーに渡さないといけない物があるの。昨日はすっかり機会を逃してしまったから。」
そうしてフォーラが自身のトランクを探って内側のサイドポケットを見た。そこに大事に収まっているインスタント煙幕や、透明の小袋に入れた羊皮紙の切れ端二枚、それに一冊の不思議なタイトルの本の隣から、彼女は三本の小瓶だけを取り出した。中はどれも同じ液体で満たされていた。
「夏休みの終わりにダイアゴン横丁で二人に会った時に、私の父様が約束していた物よ。」
「あっ、もしかしておじさまは本当に惚れ薬の解毒薬を作ってくださったの?ありがとう!」パンジーが興味津々に小瓶を受け取りながら尋ねた。するとルニーが続いた。
「わあ!凄いわ、ありがとう。確かにウィーズリーの店の惚れ薬は随分流行っていそうだったもんね。あの時は女性客が群がっていたけど、確か男性客も買っていくとか?」
「ええ、性別に関係なく需要があるとジョージが言っていたわ。とはいえ惚れ薬を使われれば犯人に惚れてしまうわけだし、悪さをした人がすぐ特定できるでしょうから……。きっと校内で使う人は殆どいないと思うし、この薬の栓を抜くこともそうない筈だけれどね。」
「少なくともお守り代わりに常に携帯しておくに越したことはないわね。自分以外の誰かが被害に遭ってもすぐに飲ませられるように」
パンジーがそう言って羽織っているローブの内ポケットに小瓶を仕舞ったため、それに倣うように他の二人も同じ動きをしたのだった。
その後は三人揃って朝食の席に向かい、大広間の長テーブルでドラコとその友人たちに合流した。昨晩ぶりに顔を合わせたドラコとフォーラは互いを視界に入れると、どちらも途端に昨日の信頼深い時間を思い出した。何なら双方共に朝から度々あの時のことが脳裏をよぎっていた程で、二人はいつにも増して愛しい瞳で「おはよう」と挨拶を交わした。
食事が終わると生徒たちはみんなその場に留まり、寮監が教職員テーブルから降りてくるのを待った。スリザリン寮にはスネイプがやってきて、一年生から五年生までそれぞれ決まった時間割を手早く配った。そして次に六年生の所へ来ると一人一人順番に、個人が希望する『いもりレベル』の授業を受講するのに必要な『ふくろう試験』の合格点を満たしているかが確認され、その都度時間割が作られた。
既に時間割を渡された生徒は一限目の授業の教室に向かったり、その時間が授業なしの自由時間だった場合は談話室や図書室に向かったりして次々に大広間を後にした。そして今度のスネイプはドラコの所へ近付き、これまで同様に個人用の時間割を作成すべく言葉を交わした。その会話の様子をフォーラは自席から容易に確認できたのだが、何というべきか、ドラコがスネイプに対して幾らかぶっきらぼうな態度を取っているように見えた。
(そういえば昨日の晩餐の場で、セブルスさんが防衛術の担当になったとダンブルドア先生が説明した時に、ドラコは拍手をしていなかった気がするわ。前学年までずっと恩師として仰いでいた筈なのに。今も何だか返事が冷たい感じがするし、急にどうしたのかしら……)
フォーラはその答えを知ることなく、ドラコがスネイプから時間割を受け取って早々にその場を立ち去る姿を見送るしかなかった。そうして何人かの生徒の後でようやくフォーラの番がやってきた。