1. 印(しるし)
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「お前の言うとおり、今回ルシウスに重要な全ての指揮を任せたのは失敗だった。俺様はルシウスを信頼していたが、彼奴は俺様に成果を提供しなかった。迷惑を被ったその損失は計り知れない」
その言葉に冷や汗をかいたのはナルシッサとドラコだけではなかった。ベラトリックスは魔法省での戦いに参加していた分、事を成し遂げられなかった責任をこの場の誰よりも強く感じていた。実際こうしてヴォルデモートの足元に侍っていても、彼女は先程から一度も愛する人に目を合わせてもらえていなかった。彼女が二週間前に旅の同行を断られたのも、昨日久しぶりに面会したというのに早々にマルフォイ邸へ帰されたのも、それらはヴォルデモートがルシウスに対してだけでなく、ベラトリックスにも失望していることを意味した。
「今回の事を俺様がどれだけ残念に思っているか、ナルシッサ、それをよく覚えておくことだ」
「はい、勿論でございます」ナルシッサが即座に答えた。
「分かっているのならばそれでよい。それに、本来伝えたかったのは冒頭に話したとおり、俺様がお前の心身を案じているということだ。何、ルシウスのことを心配する必要はない。アズカバンの看守の吸魂鬼はもう我らの手中にある。長く待たずして、あの監獄からルシウスや他の死喰い人を救い出せるだろう」
それを聞いたナルシッサはパッとヴォルデモートを見据え、声を震わせて涙を流した。
「ああ、ありがとうございます、ありがとうございます。感謝してもしきれません」
ヴォルデモートはナルシッサを一瞥した後で、足元を這う雌蛇のナギニの頭に手を伸ばし、自身の膝の上に導くと何度か撫でた。たとえそれが人を丸呑みできそうな大蛇でも、ドラコの瞳には闇の帝王がそのように動物を愛でる姿が意外に映った。何シェードラコは母が過剰なまでに闇の帝王を恐れる姿を昨日からその目でしかと見ていたし、その影響で闇の帝王がどれだけ無常な人なのだろうかと身構えていたからだ。
しかし、目の前の闇の帝王はマルフォイ家に失望したと話しながらも、一家を気遣う言葉を掛けてくれていた。そのためドラコとしては母が闇の帝王に抱いている印象とは違うものを感じ取っていた。確かに闇の帝王はこれまでドラコが出会った誰よりも強い恐ろしさを感じさせる人ではある。しかし母だけが過敏になり過ぎている可能性もあり得るとドラコは思った。何せ叔母の方は闇の帝王に恐れよりも渇望の眼差しを強く向けていて、ナギニの座に嫉妬しているくらいなのだから。それに何より、闇の帝王はそもそも父が慕っているお方でもある……。するとヴォルデモートがナギニを撫でながら言葉を続けた。
「正直言って、ルシウスがミスした直後の俺様は、彼奴に強い怒りを感じていた。アズカバンにそのまま捨て置こうかと思うほど頭に血が上っていたのは否めぬ。……だが、セブルスがそれを諫めた。セブルスは時に、勇敢にもこの俺様に正論を説き、その十分に納得できる理屈をもって俺様を冷静にさせる。つまり今計画しているルシウスの脱獄の手助けに関しては、セブルスに礼を言うのが適切だろう」
「そうでしたか……」ナルシッサが心から安堵した声色になった。
しかしその一方で、姉の方は『セブルス』という単語を聞いた途端、どういうわけか眉間に皺を寄せ、その表情を憎しみのこもったものに変えた。ヴォルデモートが再び口を開いた。
「セブルスのおかげで俺様はルシウスへの慈悲の心を思い出せた。そして冷静になった今、俺様は改めてルシウスの投獄を嘆き、それと同時に彼奴をそのようにした『不死鳥の騎士団』などという穢れた集団に強い憎しみを感じている」
ヴォルデモートは相変わらず膝の上で丁寧にナギニを撫で、そばに侍っているベラトリックスの方を見ようともしなかった。彼が続けた。
「ルシウスの恨みを晴らすのに最も相応しく、敵に最も打撃を与える方法は、もう俺様の方で既に考えてある。そしてそれは、ダンブルドアを殺すことだと、そう考える」
ドラコとナルシッサは思わず固唾を吞み、ベラトリックスは待望の言葉にパッと顔を明るくした。するとその時、ヴォルデモートがナギニを撫でる手をピタリと止め、その赤い瞳をある一点に向けた。その視線の先には明らかにドラコがいて、それに気付いた姉妹は一体何事だろうと再び視線をヴォルデモートに戻した。
「ところで、残念なことに死喰い人の間では、ルシウスの評判と地位がもうすっかり地に落ちてしまっている。これでは俺様がアズカバンからルシウスを救い出しても、以前のように彼奴に付き従う仲間はいないだろう。……だからこそ、ドラコ、俺様はルシウスの息子であるお前に、父親の敵を討ってほしいのだ」
その言葉を聞いた瞬間、ナルシッサは信じられないといった表情になり、先程まで幾らか落ち着いていた筈の涙を再びボロボロと零した。そしてベラトリックスの方も随分驚いた様子だったが、妹とは一変してヴォルデモートを寛大な心の持ち主として敬う表情になった。
そして当事者のドラコはというと、まさか闇の帝王から直々にそのような言葉を向けられるとは思わず、正直言って大層混乱して狼狽えた。何せダンブルドアを殺せと言われても、あの人は老いてもなお魔法や魔術の手練れとして魔法界の頂点に君臨するに等しい存在だ。そんな人物をどうこうするなどドラコには現実味がなさすぎて、全くもって想像がつかなかったのだ。するとそれを察したヴォルデモートが言葉を続けた。
「ドラコ。ダンブルドア程の存在を討つというのは、当然ながら容易いものではない。しかし、俺様はお前にその見込みがあると踏んでいる……。何せお前の賢さはルシウスから随分聞き及んでいるのだから。そしてお前が奴を葬り去ることに成功した暁には、落ちたマルフォイの名が再び花開くことは約束されたも同然だろう」
その言葉に冷や汗をかいたのはナルシッサとドラコだけではなかった。ベラトリックスは魔法省での戦いに参加していた分、事を成し遂げられなかった責任をこの場の誰よりも強く感じていた。実際こうしてヴォルデモートの足元に侍っていても、彼女は先程から一度も愛する人に目を合わせてもらえていなかった。彼女が二週間前に旅の同行を断られたのも、昨日久しぶりに面会したというのに早々にマルフォイ邸へ帰されたのも、それらはヴォルデモートがルシウスに対してだけでなく、ベラトリックスにも失望していることを意味した。
「今回の事を俺様がどれだけ残念に思っているか、ナルシッサ、それをよく覚えておくことだ」
「はい、勿論でございます」ナルシッサが即座に答えた。
「分かっているのならばそれでよい。それに、本来伝えたかったのは冒頭に話したとおり、俺様がお前の心身を案じているということだ。何、ルシウスのことを心配する必要はない。アズカバンの看守の吸魂鬼はもう我らの手中にある。長く待たずして、あの監獄からルシウスや他の死喰い人を救い出せるだろう」
それを聞いたナルシッサはパッとヴォルデモートを見据え、声を震わせて涙を流した。
「ああ、ありがとうございます、ありがとうございます。感謝してもしきれません」
ヴォルデモートはナルシッサを一瞥した後で、足元を這う雌蛇のナギニの頭に手を伸ばし、自身の膝の上に導くと何度か撫でた。たとえそれが人を丸呑みできそうな大蛇でも、ドラコの瞳には闇の帝王がそのように動物を愛でる姿が意外に映った。何シェードラコは母が過剰なまでに闇の帝王を恐れる姿を昨日からその目でしかと見ていたし、その影響で闇の帝王がどれだけ無常な人なのだろうかと身構えていたからだ。
しかし、目の前の闇の帝王はマルフォイ家に失望したと話しながらも、一家を気遣う言葉を掛けてくれていた。そのためドラコとしては母が闇の帝王に抱いている印象とは違うものを感じ取っていた。確かに闇の帝王はこれまでドラコが出会った誰よりも強い恐ろしさを感じさせる人ではある。しかし母だけが過敏になり過ぎている可能性もあり得るとドラコは思った。何せ叔母の方は闇の帝王に恐れよりも渇望の眼差しを強く向けていて、ナギニの座に嫉妬しているくらいなのだから。それに何より、闇の帝王はそもそも父が慕っているお方でもある……。するとヴォルデモートがナギニを撫でながら言葉を続けた。
「正直言って、ルシウスがミスした直後の俺様は、彼奴に強い怒りを感じていた。アズカバンにそのまま捨て置こうかと思うほど頭に血が上っていたのは否めぬ。……だが、セブルスがそれを諫めた。セブルスは時に、勇敢にもこの俺様に正論を説き、その十分に納得できる理屈をもって俺様を冷静にさせる。つまり今計画しているルシウスの脱獄の手助けに関しては、セブルスに礼を言うのが適切だろう」
「そうでしたか……」ナルシッサが心から安堵した声色になった。
しかしその一方で、姉の方は『セブルス』という単語を聞いた途端、どういうわけか眉間に皺を寄せ、その表情を憎しみのこもったものに変えた。ヴォルデモートが再び口を開いた。
「セブルスのおかげで俺様はルシウスへの慈悲の心を思い出せた。そして冷静になった今、俺様は改めてルシウスの投獄を嘆き、それと同時に彼奴をそのようにした『不死鳥の騎士団』などという穢れた集団に強い憎しみを感じている」
ヴォルデモートは相変わらず膝の上で丁寧にナギニを撫で、そばに侍っているベラトリックスの方を見ようともしなかった。彼が続けた。
「ルシウスの恨みを晴らすのに最も相応しく、敵に最も打撃を与える方法は、もう俺様の方で既に考えてある。そしてそれは、ダンブルドアを殺すことだと、そう考える」
ドラコとナルシッサは思わず固唾を吞み、ベラトリックスは待望の言葉にパッと顔を明るくした。するとその時、ヴォルデモートがナギニを撫でる手をピタリと止め、その赤い瞳をある一点に向けた。その視線の先には明らかにドラコがいて、それに気付いた姉妹は一体何事だろうと再び視線をヴォルデモートに戻した。
「ところで、残念なことに死喰い人の間では、ルシウスの評判と地位がもうすっかり地に落ちてしまっている。これでは俺様がアズカバンからルシウスを救い出しても、以前のように彼奴に付き従う仲間はいないだろう。……だからこそ、ドラコ、俺様はルシウスの息子であるお前に、父親の敵を討ってほしいのだ」
その言葉を聞いた瞬間、ナルシッサは信じられないといった表情になり、先程まで幾らか落ち着いていた筈の涙を再びボロボロと零した。そしてベラトリックスの方も随分驚いた様子だったが、妹とは一変してヴォルデモートを寛大な心の持ち主として敬う表情になった。
そして当事者のドラコはというと、まさか闇の帝王から直々にそのような言葉を向けられるとは思わず、正直言って大層混乱して狼狽えた。何せダンブルドアを殺せと言われても、あの人は老いてもなお魔法や魔術の手練れとして魔法界の頂点に君臨するに等しい存在だ。そんな人物をどうこうするなどドラコには現実味がなさすぎて、全くもって想像がつかなかったのだ。するとそれを察したヴォルデモートが言葉を続けた。
「ドラコ。ダンブルドア程の存在を討つというのは、当然ながら容易いものではない。しかし、俺様はお前にその見込みがあると踏んでいる……。何せお前の賢さはルシウスから随分聞き及んでいるのだから。そしてお前が奴を葬り去ることに成功した暁には、落ちたマルフォイの名が再び花開くことは約束されたも同然だろう」