7. 貴方の懐で愛を囁く理由
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二人の抱擁が解かれると、フォーラはドラコの本来アイスブルー色をしている瞳をじっと見つめた。今は暗がりで群青色をしているその宝石のような目は、真っすぐ彼女だけを見つめ返していた。そして彼女は自身の瞳に慈愛の色を浮かべ、彼の髪を優しくひと撫でした。
「夏の間、ルシウスさんがいなくてドラコはきっと本当につらかったわよね。それに手紙にも書いてくれていたけれど、ナルシッサさんのことも支えながら……。偉いわ。よく頑張ったのね。」
フォーラが再びドラコの髪を撫でると、彼は自然と彼女の手の方に少々頭を傾けた。そして一度視線を伏せた後で彼女を見やると、言葉を選ぶようにして口を開いた。
「ありがとう。……本当に、苦しい夏休みだった。毎日毎日、色々と頑張っていたんだ。僕は父上の代わりとして、家の代表として期待されていたから」
「それは……今日コンパートメントで話していたことと―――来年、ドラコがホグワーツにいないかもしれないということと、関係があるの?」
フォーラの核心を突く質問にドラコは内心ドキリとした。しかし彼女にだけは、ある程度濁してでも事の真実を幾らか打ち明けておく必要があると考えていた。
ルシウスの投獄を機にドラコが死喰い人への志願を決めたのは、父の望んだ魔法族中心のあるべき姿を取り戻すことと、彼の仇を打つためだった。自分の行いで全てが上手くいけば家の汚名は返上され、堂々と純血名家の出であるフォーラと共にいられると信じて。そしてその考えを当時の彼女に話したところ、否定をされるどころかその後も変わらず自分を想ってくれていたのだった。
そんなフォーラと今後の人生を共にする覚悟を殆ど固めているドラコとしては、だからこそ自分の現状を彼女に知っていてほしかった。ダンブルドアの殺害が目下の目標であることについては、『あの人』に他言無用と指示されているため絶対に話せはしないが、それ以外なら……。
「……ここからの事は君にしか話さないから、誰にも黙っていてほしいんだが……僕が来年ホグワーツにいない可能性は、確実ではないにしろ高いと思う」
その言葉を聞いたフォーラの表情が不安に歪んだが、ドラコは安心させるように続けた。
「大丈夫、もしそうなっても僕は絶対に君から離れる気はない。具体的には話せないが、僕は今、ある人からとある使命を与えられている。この一年が正念場なんだ。その働きが認められたら、父上が望んだような―――いや、魔法族なら誰もが一度は望んだことのある、マグルによって肩身の狭い思いをせずに済む世を作るために、きっと僕も貢献できると思う。そして世間から非難されているマルフォイの名は名誉を取り戻すし、君の隣に立っても恥ずかしくない存在になれるんだ」
フォーラはドラコの言葉に小さく固唾を呑んだ。
「使命というのは、それは……。死喰い人として?」
ドラコはその問いに頷きも否定もせず、唯々フォーラの瞳を真っすぐ見つめていた。彼女はそんな彼をじっと見つめ返し、あえて穏やかな声色で再び尋ねた。
「貴方が誰に何を命じられているのか、私には話してもらえないのね?」
ドラコが小さく頷いた。この時のフォーラの脳裏には、夏の間に自宅でダンブルドアから伝えられた言葉が自然と強く思い出されていた。
『闇の勢力が猛威を振るう間は、お主が素性を隠してでもドラコと共にあろうとしているのを儂も既に把握しておる。すっかり彼の懐にいるお主なら、彼が何か良からぬことや危険に晒された場合に気付けることがあるかもしれぬ。じゃからして、彼を心から愛し、心の支えとなり、彼の身が安全であるためにできる範囲のことをしてくれれば助かる』
(先生はあの時、具体的に私にどうすればいいかまでは教えてくださらなかった。だけどドラコの今の発言や反応が、先生のおっしゃったとおり本当に『良からぬこと』に繋がっているのなら……。今、正にこの瞬間から、私が先生のお願いを実行に移す時なんだわ)
まだ十六歳のドラコが死喰い人になってしまったかもしれない。その可能性を嘆いている暇はフォーラにはなかった。ドラコに一番近い自分が、彼の懐で出来得る限りの情報を掴み、彼を安全なところへ導く手助けをしなければならないのだから。
ただしそれを決意すると同時に、フォーラとしてはドラコがもし恋人の暗躍を知ってしまったら、そしてその恋人がマグル生まれかつ養子であることを知ってしまったら、彼の失望はどれだけ計り知れないだろうと思わずにはいられなかった。その懸念は最早今に始まったことではないが、先程ドラコが『僕は絶対に君から離れる気はない』とまで言ってくれたことを思うと、どうしても後ろめたい気持ちが深く渦巻いていけなかった。
とはいえフォーラは、ドラコの安全を最優先にするためには必要な嘘なのだと思い直すことで、その心苦しさを何とか頭の片隅に追いやれた。彼が目標のために邁進 するように、自分も手段を選んでなどいられない。本当の自分を隠して嘘を吐いていても、彼への想いだけは本物だ。それだけが今の彼女を突き動かしていた。いつか平和が訪れた時に真実を打ち明けて、彼に見かぎられたとしても。
「ドラコ、以前も話したことがあるけれど、私は貴方が最終的に幸せになれるような選択をしているなら、それが何であれ応援するつもりよ。……だけどもし何か困ったことがあるなら、いつでも私を頼ってね……。」
その言葉と共に慈愛に満ちた笑みを向けられた時、ドラコの瞳には城から漏れ出た明かりが途端に煌めいた。フォーラは恐らく、ドラコ自身が既に死喰い人になったか、もしくは死喰い人と深く関わっていることに確実に気付いただろう。彼はそう確信していた。彼がそのようにあえて悟らせるような態度を取ったのは、既に彼の事情を知っている彼女なら、きっと引き続き自分のそばにいてくれるという自信があったからだ。
「夏の間、ルシウスさんがいなくてドラコはきっと本当につらかったわよね。それに手紙にも書いてくれていたけれど、ナルシッサさんのことも支えながら……。偉いわ。よく頑張ったのね。」
フォーラが再びドラコの髪を撫でると、彼は自然と彼女の手の方に少々頭を傾けた。そして一度視線を伏せた後で彼女を見やると、言葉を選ぶようにして口を開いた。
「ありがとう。……本当に、苦しい夏休みだった。毎日毎日、色々と頑張っていたんだ。僕は父上の代わりとして、家の代表として期待されていたから」
「それは……今日コンパートメントで話していたことと―――来年、ドラコがホグワーツにいないかもしれないということと、関係があるの?」
フォーラの核心を突く質問にドラコは内心ドキリとした。しかし彼女にだけは、ある程度濁してでも事の真実を幾らか打ち明けておく必要があると考えていた。
ルシウスの投獄を機にドラコが死喰い人への志願を決めたのは、父の望んだ魔法族中心のあるべき姿を取り戻すことと、彼の仇を打つためだった。自分の行いで全てが上手くいけば家の汚名は返上され、堂々と純血名家の出であるフォーラと共にいられると信じて。そしてその考えを当時の彼女に話したところ、否定をされるどころかその後も変わらず自分を想ってくれていたのだった。
そんなフォーラと今後の人生を共にする覚悟を殆ど固めているドラコとしては、だからこそ自分の現状を彼女に知っていてほしかった。ダンブルドアの殺害が目下の目標であることについては、『あの人』に他言無用と指示されているため絶対に話せはしないが、それ以外なら……。
「……ここからの事は君にしか話さないから、誰にも黙っていてほしいんだが……僕が来年ホグワーツにいない可能性は、確実ではないにしろ高いと思う」
その言葉を聞いたフォーラの表情が不安に歪んだが、ドラコは安心させるように続けた。
「大丈夫、もしそうなっても僕は絶対に君から離れる気はない。具体的には話せないが、僕は今、ある人からとある使命を与えられている。この一年が正念場なんだ。その働きが認められたら、父上が望んだような―――いや、魔法族なら誰もが一度は望んだことのある、マグルによって肩身の狭い思いをせずに済む世を作るために、きっと僕も貢献できると思う。そして世間から非難されているマルフォイの名は名誉を取り戻すし、君の隣に立っても恥ずかしくない存在になれるんだ」
フォーラはドラコの言葉に小さく固唾を呑んだ。
「使命というのは、それは……。死喰い人として?」
ドラコはその問いに頷きも否定もせず、唯々フォーラの瞳を真っすぐ見つめていた。彼女はそんな彼をじっと見つめ返し、あえて穏やかな声色で再び尋ねた。
「貴方が誰に何を命じられているのか、私には話してもらえないのね?」
ドラコが小さく頷いた。この時のフォーラの脳裏には、夏の間に自宅でダンブルドアから伝えられた言葉が自然と強く思い出されていた。
『闇の勢力が猛威を振るう間は、お主が素性を隠してでもドラコと共にあろうとしているのを儂も既に把握しておる。すっかり彼の懐にいるお主なら、彼が何か良からぬことや危険に晒された場合に気付けることがあるかもしれぬ。じゃからして、彼を心から愛し、心の支えとなり、彼の身が安全であるためにできる範囲のことをしてくれれば助かる』
(先生はあの時、具体的に私にどうすればいいかまでは教えてくださらなかった。だけどドラコの今の発言や反応が、先生のおっしゃったとおり本当に『良からぬこと』に繋がっているのなら……。今、正にこの瞬間から、私が先生のお願いを実行に移す時なんだわ)
まだ十六歳のドラコが死喰い人になってしまったかもしれない。その可能性を嘆いている暇はフォーラにはなかった。ドラコに一番近い自分が、彼の懐で出来得る限りの情報を掴み、彼を安全なところへ導く手助けをしなければならないのだから。
ただしそれを決意すると同時に、フォーラとしてはドラコがもし恋人の暗躍を知ってしまったら、そしてその恋人がマグル生まれかつ養子であることを知ってしまったら、彼の失望はどれだけ計り知れないだろうと思わずにはいられなかった。その懸念は最早今に始まったことではないが、先程ドラコが『僕は絶対に君から離れる気はない』とまで言ってくれたことを思うと、どうしても後ろめたい気持ちが深く渦巻いていけなかった。
とはいえフォーラは、ドラコの安全を最優先にするためには必要な嘘なのだと思い直すことで、その心苦しさを何とか頭の片隅に追いやれた。彼が目標のために
「ドラコ、以前も話したことがあるけれど、私は貴方が最終的に幸せになれるような選択をしているなら、それが何であれ応援するつもりよ。……だけどもし何か困ったことがあるなら、いつでも私を頼ってね……。」
その言葉と共に慈愛に満ちた笑みを向けられた時、ドラコの瞳には城から漏れ出た明かりが途端に煌めいた。フォーラは恐らく、ドラコ自身が既に死喰い人になったか、もしくは死喰い人と深く関わっていることに確実に気付いただろう。彼はそう確信していた。彼がそのようにあえて悟らせるような態度を取ったのは、既に彼の事情を知っている彼女なら、きっと引き続き自分のそばにいてくれるという自信があったからだ。