7. 貴方の懐で愛を囁く理由
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就寝前の時間、ドラコはフォーラの手を引いて廊下に繰り出した。二人は特に目的地を決めていたわけではなかったため、一先ず地下から地上に出た。そして人々の行き交う玄関ホールの樫の大扉を抜けて暗い校庭へと向かった。それまでの道中、二人は何処まで行こうかと話し合った他、フォーラが前学年の末にアニメーガスの力を使えなくなってしまったことについても少し言葉を交わした。
「帰りのホグワーツ特急で変身できないと分かってから、今日までの間に力は取り戻せたのか?」ドラコが心配そうに尋ねた。
「いいえ、駄目だったわ。自宅で何度も試してみたけれど、黒猫の耳一つすら生えなくて。」
「それは、残念だったな。折角君が習得した特別な力だったのに。だけど、まだ完全に取り戻せないと決まったわけじゃないんだろう?」
「ええ、可能性はあるかもしれないわ。家族や知り合いの大人に相談してみたら、もしかすると変身できる動物が変化している可能性があるらしいの。それが何か分かった方が、アニメーガスの変身に有利だと聞いて……。守護霊の呪文で作り出す動物とアニメーガスの力で変身できる動物は同じみたいだから、力を取り戻す糸口が掴めないうちは、守護霊の呪文を練習することにしようと思ったわ。」
「そうか、上手くいくといいな」ドラコが慈愛に満ちた表情で返答すると続けた。「呪文はまだ自宅では練習していないのか?」
「いいえ、実はもう夏休みの間に何度も練習してみたの。ほら、以前ドラコが言っていたとおり、魔法族を親に持つ未成年は学校外で魔法を使っても親の監視下にあるから、魔法省からの摘発を見逃がされるって。実際、家族や使用人はそれを分かった上で練習を了承してくれたわ。その際に、みんなにアドバイスをもらったり、手伝ってもらったりしたのだけど……。私には銀色の霞が作り出せる程度で、どうしても動物の形にはならなかったわ。」
気落ちした様子のフォーラにドラコは再び心配の視線を向けた。そして彼女を励ますように、繋いでいる手をしっかりと握り直した。
「だけど、まだ完全に守護霊を作れないと決まったわけじゃないだろう。それに、仮に作り出せなくて対象の動物が分からなくたって、何かの拍子にアニメーガスの力が戻るかもしれない。そういうことは焦らずゆっくりやるのが、きっと一番だと思う」
「ええ、きっとそうね。ドラコ、ありがとう……。」
フォーラの表情がようやく柔らかさを取り戻すと、ドラコも幾らか安心したように笑みを返した。とはいえ彼女が力を失った理由は原因不明だったため、彼の本心としては気掛かりで仕方なかった。しかし自分の心配の声よりも応援によって彼女の気分が晴れ、今以上に思い詰めずに済むのなら、彼はそのような本心は伝えずに唯々見守ろうと思ったのだった。
その後の道中、二人はドラコが夏の間をどう過ごしていたかについては、あえてこのタイミングでは話題に出さなかった。というのも一度その件に触れてしまえば、話の行きつく先は死喰い人に関する真面目で重苦しいものになってしまう。そのことをドラコは勿論、フォーラも何となく分かっていたのだ。
それによって道を行く過程で度々無言の時間が発生したのだが、それは特段二人にとって何ら苦でもなかった。寧ろその時間を通じて、久しぶりに互いの手の形や温もりを感じ、夏の間に少し広がった身長差を眺めては、互いに視線を絡めた。せめて今この瞬間だけはこれ以上真面目腐った話をするよりも、ようやく訪れた二人きりの時間を堪能したい。二人とも口には出さずとも同じ思いだった。
そして数多の星が瞬く校庭に出てみると、玄関ホールよりは周囲の人気 が落ち着き、何人かの生徒がベンチや街灯の下でたむろしている程度になった。するとフォーラは歩みを続けながらドラコと繋いでいる手をするりと離し、彼の腕に自身の腕を絡め直して、先程よりも身体を密着させてトクトクと静かに胸を高鳴らせた。一方のドラコは突然押し寄せた彼女の柔らかさにビクリと肩を小さく揺らし、そのような初心 な反応をしてしまったことを内心恥じた。そして強い鼓動を胸の内に感じつつ、そっと彼女の方に目をやると、夜空の星と城から漏れ出た明かりがその何とも言えない恥じらいのある横顔を間近に照らした。そんな彼女が視線に気付き、こちらを見上げて気恥ずかしそうに微笑んできたものだから、ドラコは愛おしさで胸の辺りがギュッと締め付けられる感じがしたし、思わず口元を緩ませた。
その後、二人は遠くから聞こえる秋の心地よい虫のさざめきを耳に入れながら、程なくして校庭の片隅にある背の高い薔薇の垣根までやってきた。くねくねと入り組んだこの場所は、三校対抗試合があった年のクリスマスにフォーラがジョージに連れられて訪れたのと同じ場所だった。あの時はクリスマスムードも合わさって何人かのカップルがたむろしていたし、妖精の明かりが幻想的な雰囲気を辺りに作り出していた。しかし、今はそのような装飾がないせいか見渡す限り誰もおらず、辺りを照らしているのは先程と同じく数多の星と城の窓明かりだけだった。
薔薇の垣根の最奥まで来た二人は、そこに二人掛けのベンチが設けられていることに気付いた。
「ドラコ、少し座らない?」フォーラが彼の腕から手を離しながら尋ねた。
「ああ、そうだな」ドラコが同意してベンチに腰掛けようとした時、フォーラの方を見やると彼女は今来た方向に杖を振り、道を塞ぐようにして周囲と同じような生垣を地面からワサワサと生やしていた。
「帰りのホグワーツ特急で変身できないと分かってから、今日までの間に力は取り戻せたのか?」ドラコが心配そうに尋ねた。
「いいえ、駄目だったわ。自宅で何度も試してみたけれど、黒猫の耳一つすら生えなくて。」
「それは、残念だったな。折角君が習得した特別な力だったのに。だけど、まだ完全に取り戻せないと決まったわけじゃないんだろう?」
「ええ、可能性はあるかもしれないわ。家族や知り合いの大人に相談してみたら、もしかすると変身できる動物が変化している可能性があるらしいの。それが何か分かった方が、アニメーガスの変身に有利だと聞いて……。守護霊の呪文で作り出す動物とアニメーガスの力で変身できる動物は同じみたいだから、力を取り戻す糸口が掴めないうちは、守護霊の呪文を練習することにしようと思ったわ。」
「そうか、上手くいくといいな」ドラコが慈愛に満ちた表情で返答すると続けた。「呪文はまだ自宅では練習していないのか?」
「いいえ、実はもう夏休みの間に何度も練習してみたの。ほら、以前ドラコが言っていたとおり、魔法族を親に持つ未成年は学校外で魔法を使っても親の監視下にあるから、魔法省からの摘発を見逃がされるって。実際、家族や使用人はそれを分かった上で練習を了承してくれたわ。その際に、みんなにアドバイスをもらったり、手伝ってもらったりしたのだけど……。私には銀色の霞が作り出せる程度で、どうしても動物の形にはならなかったわ。」
気落ちした様子のフォーラにドラコは再び心配の視線を向けた。そして彼女を励ますように、繋いでいる手をしっかりと握り直した。
「だけど、まだ完全に守護霊を作れないと決まったわけじゃないだろう。それに、仮に作り出せなくて対象の動物が分からなくたって、何かの拍子にアニメーガスの力が戻るかもしれない。そういうことは焦らずゆっくりやるのが、きっと一番だと思う」
「ええ、きっとそうね。ドラコ、ありがとう……。」
フォーラの表情がようやく柔らかさを取り戻すと、ドラコも幾らか安心したように笑みを返した。とはいえ彼女が力を失った理由は原因不明だったため、彼の本心としては気掛かりで仕方なかった。しかし自分の心配の声よりも応援によって彼女の気分が晴れ、今以上に思い詰めずに済むのなら、彼はそのような本心は伝えずに唯々見守ろうと思ったのだった。
その後の道中、二人はドラコが夏の間をどう過ごしていたかについては、あえてこのタイミングでは話題に出さなかった。というのも一度その件に触れてしまえば、話の行きつく先は死喰い人に関する真面目で重苦しいものになってしまう。そのことをドラコは勿論、フォーラも何となく分かっていたのだ。
それによって道を行く過程で度々無言の時間が発生したのだが、それは特段二人にとって何ら苦でもなかった。寧ろその時間を通じて、久しぶりに互いの手の形や温もりを感じ、夏の間に少し広がった身長差を眺めては、互いに視線を絡めた。せめて今この瞬間だけはこれ以上真面目腐った話をするよりも、ようやく訪れた二人きりの時間を堪能したい。二人とも口には出さずとも同じ思いだった。
そして数多の星が瞬く校庭に出てみると、玄関ホールよりは周囲の
その後、二人は遠くから聞こえる秋の心地よい虫のさざめきを耳に入れながら、程なくして校庭の片隅にある背の高い薔薇の垣根までやってきた。くねくねと入り組んだこの場所は、三校対抗試合があった年のクリスマスにフォーラがジョージに連れられて訪れたのと同じ場所だった。あの時はクリスマスムードも合わさって何人かのカップルがたむろしていたし、妖精の明かりが幻想的な雰囲気を辺りに作り出していた。しかし、今はそのような装飾がないせいか見渡す限り誰もおらず、辺りを照らしているのは先程と同じく数多の星と城の窓明かりだけだった。
薔薇の垣根の最奥まで来た二人は、そこに二人掛けのベンチが設けられていることに気付いた。
「ドラコ、少し座らない?」フォーラが彼の腕から手を離しながら尋ねた。
「ああ、そうだな」ドラコが同意してベンチに腰掛けようとした時、フォーラの方を見やると彼女は今来た方向に杖を振り、道を塞ぐようにして周囲と同じような生垣を地面からワサワサと生やしていた。