6. 冷徹なスリザリン生
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「ペトリフィカス・トルタス!石になれ!」
ドラコが不意を突いて放った呪文は荷物棚の上の見えない何かに直撃した。それは棚から転げ落ちて床を震わせるほどの鈍い衝撃音を発した。ドラコの足元には、脱げた『透明マント』を身体の下敷きにして、脚を海老のように丸めてうずくまった滑稽なハリーの姿があった。ハリーは一筋の筋肉すらも動かせないようだった。
「やはりそうか」ドラコが笑みを浮かべ、酔いしれたように言った。「ゴイルのトランクがお前にぶつかったのが聞こえた。それにフォーラとザビニが戻ってきた時、何か白い物が一瞬、空中に光るのを見たような気がした……」
ドラコはハリーのスニーカーに暫く目を止めた。
「あの時ドアをブロックしたのは、お前だったんだな?」
ドラコはどうしてやろうかとハリーを眺めた。荷物棚に彼がいると予想していたからこそ、ドラコはあえて『あの人』が追々自分に何かをさせたがっているかもしれない、というぼかした表現をした。それを聞いていたハリーがさぞ荷物棚の上で喜んでいただろうことが、ドラコには手に取るように分かっていたのだ。
実際は『させたがっている』どころか、もうとっくに『あの人』からの命をドラコは受けていたが、それについてはそもそも、ハリーだけでなく自身の友人たちにすら事の真相を打ち明けるつもりがなかった。
「ポッター、お前は、僕が聞かれて困るようなことを何も聞いちゃいない。しかし、折角ここにお前がいるうちに……」
ドラコは先程からハリーを見ていると、これまでの彼に対する恨みつらみが酷く増幅するのを感じていった。そもそも入学時からハリーのことが気にくわなかったのは大前提として、最近では彼によって父のルシウスが死喰い人であることが公表され、挙句、魔法省での戦いで投獄された。ルシウスは『あの人』が目指すような、魔法族がマグルの前でも堂々としていられる世界を作るために助力していたというのに。ドラコは自身の尊敬する人が邪魔をされ、挙句の果てに傷つけられたことに夏の間ずっと深い憎しみを抱えていた。
そしてドラコは今や、父の代わりに『あの人』の期待を背負ってこの場に立っていた。
(『あの人』は、まだ十六歳の僕を頼ってくださった。それは『あの人』がマルフォイ家を想い、その家の代表として自分を扱ってくださっているからに他ならない。ただし、本当はその期待に応えるのは父上だった筈なのに……)
ドラコはそう思うと余計にハリーに対して憎しみを強めた。そしてその怒りに任せてハリーの顔を思い切り踏みつけた。その際ハリーは自身の鼻が折れるのを感じたし、そこら中に血が飛び散った。
「今のは僕の父上からだ。さてと……」
ドラコは動けないハリーの身体の下からマントを引っ張り出し、ハリーを覆った。
「汽車がロンドンに戻るまで、誰もお前を見つけられないだろうよ」ドラコが低い声で言った。「また会おう、ポッター……それとも、もう会わないかな」
最後にドラコはわざとハリーの指を踏みつけ、コンパートメントを後にしたのだった。
「ドラコ、遅かったじゃない。何かあったの?」
ドラコがフォーラたちと合流したのは、ホグズミード駅からホグワーツを行く馬車の乗車待ち列に追いついた時だった。パンジーの問いを受け、ドラコは満足そうな様子で「ああ、面白いことがあった」と返答した。一同が疑問符を浮かべたのを機に、彼は先程のコンパートメントにハリーが忍び込み、自分たちの話を盗み聞きしていたことを説明した。それを聞いた一同は当然驚きの反応を見せたし、女子たちは不安と不満の声を上げた。
「幾らドラコと犬猿の仲だからって、中に入ってまで盗み聞きして弱みを握ろうなんて、最っ低!」ルニーが苦虫を噛み潰したような表情で言った。
「ああ。あいつは僕が『あの人』のことで何か怪しい情報を持っていないか知りたかったに違いない。だからこそ、わざわざザビニを突き飛ばして、荷物棚の上に身を潜めてまでその場に留まった。全く馬鹿な奴だ……。あいつは魔法省の件で調子に乗りすぎた。自分こそが正義だと思って疑わないからこそ、こんなにも失礼で大胆な行動を取れたんだと思うよ」
そしてドラコはハリーへの制裁として、思い切り顔を踏みつけてやったことも説明した。それには友人らから喝采の声が上がった。
「当然の報いよ。フォーラもそう思わない?」
ルニーがそう尋ねた時、ドラコは一瞬、フォーラが自分の行動を『やりすぎだ』と注意する可能性が浮かんだ。しかしその想像に反し、彼女は無表情のまま静かに次のように答えた。
「ええ、本当にそう思うわ。人を陥れるために正義感を振りかざしてそこまでするなんて……。ドラコや私たちのプライバシーを侵害して、率直に言って不快ね。」
フォーラのそのような雰囲気を目の当たりにして、ドラコだけでなく周囲の友人たちも少々驚いたようだった。傍から見ればフォーラは冷静に発言しているだけだったが、普段から距離の近い友人たちからすれば、彼女が怒りをあらわにしていることが十分に理解できたのだ。
(ハリーと夏休みの間に一度だけ顔を合わせた時の様子から、私の目にはハリーがドラコのことを正したいわけではなくて、ただ純粋に痛い目に遭わせたいだけにしか見えなかった。今日のことでやっぱりその考えは間違っていなかったと分かったわ。……ハリー、貴方の勝手な行動が、またドラコを苦しめて救いの機会を逃すかもしれないと思うと、心の底から腹立たしいのよ)
その時フォーラは、かつてドラコに距離を置かれていた五年生の頃の自分も、ドラコの身に危険が及んでいないかを知るために、目くらまし術とアニメーガスの力を組み合わせて彼の近況を盗み聞きしたことがあったのを思い出した。あの時の自分の行動は今回のハリーの行動と何ら変わらない。自分だって相手に不快感を与えかねない行いをしたのだ。彼女はそれを後ろめたく思ったが、それと同時に、自分とハリーの違いはドラコを想って行動したか否かなのだと、無理矢理にでも自身の倫理が正であると結論付けたのだった。
ドラコが不意を突いて放った呪文は荷物棚の上の見えない何かに直撃した。それは棚から転げ落ちて床を震わせるほどの鈍い衝撃音を発した。ドラコの足元には、脱げた『透明マント』を身体の下敷きにして、脚を海老のように丸めてうずくまった滑稽なハリーの姿があった。ハリーは一筋の筋肉すらも動かせないようだった。
「やはりそうか」ドラコが笑みを浮かべ、酔いしれたように言った。「ゴイルのトランクがお前にぶつかったのが聞こえた。それにフォーラとザビニが戻ってきた時、何か白い物が一瞬、空中に光るのを見たような気がした……」
ドラコはハリーのスニーカーに暫く目を止めた。
「あの時ドアをブロックしたのは、お前だったんだな?」
ドラコはどうしてやろうかとハリーを眺めた。荷物棚に彼がいると予想していたからこそ、ドラコはあえて『あの人』が追々自分に何かをさせたがっているかもしれない、というぼかした表現をした。それを聞いていたハリーがさぞ荷物棚の上で喜んでいただろうことが、ドラコには手に取るように分かっていたのだ。
実際は『させたがっている』どころか、もうとっくに『あの人』からの命をドラコは受けていたが、それについてはそもそも、ハリーだけでなく自身の友人たちにすら事の真相を打ち明けるつもりがなかった。
「ポッター、お前は、僕が聞かれて困るようなことを何も聞いちゃいない。しかし、折角ここにお前がいるうちに……」
ドラコは先程からハリーを見ていると、これまでの彼に対する恨みつらみが酷く増幅するのを感じていった。そもそも入学時からハリーのことが気にくわなかったのは大前提として、最近では彼によって父のルシウスが死喰い人であることが公表され、挙句、魔法省での戦いで投獄された。ルシウスは『あの人』が目指すような、魔法族がマグルの前でも堂々としていられる世界を作るために助力していたというのに。ドラコは自身の尊敬する人が邪魔をされ、挙句の果てに傷つけられたことに夏の間ずっと深い憎しみを抱えていた。
そしてドラコは今や、父の代わりに『あの人』の期待を背負ってこの場に立っていた。
(『あの人』は、まだ十六歳の僕を頼ってくださった。それは『あの人』がマルフォイ家を想い、その家の代表として自分を扱ってくださっているからに他ならない。ただし、本当はその期待に応えるのは父上だった筈なのに……)
ドラコはそう思うと余計にハリーに対して憎しみを強めた。そしてその怒りに任せてハリーの顔を思い切り踏みつけた。その際ハリーは自身の鼻が折れるのを感じたし、そこら中に血が飛び散った。
「今のは僕の父上からだ。さてと……」
ドラコは動けないハリーの身体の下からマントを引っ張り出し、ハリーを覆った。
「汽車がロンドンに戻るまで、誰もお前を見つけられないだろうよ」ドラコが低い声で言った。「また会おう、ポッター……それとも、もう会わないかな」
最後にドラコはわざとハリーの指を踏みつけ、コンパートメントを後にしたのだった。
「ドラコ、遅かったじゃない。何かあったの?」
ドラコがフォーラたちと合流したのは、ホグズミード駅からホグワーツを行く馬車の乗車待ち列に追いついた時だった。パンジーの問いを受け、ドラコは満足そうな様子で「ああ、面白いことがあった」と返答した。一同が疑問符を浮かべたのを機に、彼は先程のコンパートメントにハリーが忍び込み、自分たちの話を盗み聞きしていたことを説明した。それを聞いた一同は当然驚きの反応を見せたし、女子たちは不安と不満の声を上げた。
「幾らドラコと犬猿の仲だからって、中に入ってまで盗み聞きして弱みを握ろうなんて、最っ低!」ルニーが苦虫を噛み潰したような表情で言った。
「ああ。あいつは僕が『あの人』のことで何か怪しい情報を持っていないか知りたかったに違いない。だからこそ、わざわざザビニを突き飛ばして、荷物棚の上に身を潜めてまでその場に留まった。全く馬鹿な奴だ……。あいつは魔法省の件で調子に乗りすぎた。自分こそが正義だと思って疑わないからこそ、こんなにも失礼で大胆な行動を取れたんだと思うよ」
そしてドラコはハリーへの制裁として、思い切り顔を踏みつけてやったことも説明した。それには友人らから喝采の声が上がった。
「当然の報いよ。フォーラもそう思わない?」
ルニーがそう尋ねた時、ドラコは一瞬、フォーラが自分の行動を『やりすぎだ』と注意する可能性が浮かんだ。しかしその想像に反し、彼女は無表情のまま静かに次のように答えた。
「ええ、本当にそう思うわ。人を陥れるために正義感を振りかざしてそこまでするなんて……。ドラコや私たちのプライバシーを侵害して、率直に言って不快ね。」
フォーラのそのような雰囲気を目の当たりにして、ドラコだけでなく周囲の友人たちも少々驚いたようだった。傍から見ればフォーラは冷静に発言しているだけだったが、普段から距離の近い友人たちからすれば、彼女が怒りをあらわにしていることが十分に理解できたのだ。
(ハリーと夏休みの間に一度だけ顔を合わせた時の様子から、私の目にはハリーがドラコのことを正したいわけではなくて、ただ純粋に痛い目に遭わせたいだけにしか見えなかった。今日のことでやっぱりその考えは間違っていなかったと分かったわ。……ハリー、貴方の勝手な行動が、またドラコを苦しめて救いの機会を逃すかもしれないと思うと、心の底から腹立たしいのよ)
その時フォーラは、かつてドラコに距離を置かれていた五年生の頃の自分も、ドラコの身に危険が及んでいないかを知るために、目くらまし術とアニメーガスの力を組み合わせて彼の近況を盗み聞きしたことがあったのを思い出した。あの時の自分の行動は今回のハリーの行動と何ら変わらない。自分だって相手に不快感を与えかねない行いをしたのだ。彼女はそれを後ろめたく思ったが、それと同時に、自分とハリーの違いはドラコを想って行動したか否かなのだと、無理矢理にでも自身の倫理が正であると結論付けたのだった。