1. 印(しるし)
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どうやらベラトリックスの話によると、彼女は常にこの屋敷に留まっているわけではなさそうだった。先日は魔法省の役員による家宅捜索があったくらいだ。ベラトリックスはそういった目をかいくぐって、このマルフォイ邸やヴォルデモートが用意した他の隠れ家に代わるがわる身を潜めているようだった。そしてそのように魔法省職員の目をタイミング良く欺けるということは、魔法省やそれ以外の場所にも何人か闇の陣営の魔法使いや魔女が潜伏していることを意味した。
ベラトリックスがそのように話している間、ナルシッサは随分浮かない顔をしていた。それらからドラコが一つ感じたのは、母が姉の定期的な訪問を歓迎していないのでは?ということだった。ドラコにはその明確な理由が分からなかったが、幾つか想定することはできた。母が姉と元から不仲であるか、それとも単に身内のお節介を煩わしいと思っているか。もしくは、姉に監視されているようだと感じているか。
ドラコはまだホグワーツにいた二週間前、父が捕まったと母の手紙で知らされた時のことを思い出した。その手紙には、父の失敗によって自分たちが今後どういう状況に立たされるかの推測が書かれていた。
『私たち一家はこれから厳しい目に晒されてしまうでしょう。世間からも、何よりあのお方からも……。』
あのお方は父を信頼していた筈だ。母の手紙どおり、この度のルシウスの失敗をあのお方は許していないのだろうか。そして寵愛を失ったマルフォイ家が逃げ出すことのないよう、監視の目としてベラトリックスを寄越したのだろうか。いや、それは考え過ぎで、あのお方はルシウスを見限っていないし変わらず大切に思っていて、その妻であるナルシッサを純粋に気遣って姉を寄越したのだろうか。ドラコはそのように思案した。するとベラトリックスが話を続けた。
「ところで今日、ついさっきまで私は久しぶりにあの方にお呼びいただき、お顔を拝見してきた」ベラトリックスが闇の帝王を思い浮かべてうっとりした表情になった後、じわじわと喜びを高ぶらせた。
「あのお方は明日、この屋敷を訪れる!」
それを聞いたナルシッサは青白い顔を今以上に蒼白とさシェードラコの方は現実身のない唐突な話に唯々混乱した。何シェードラコは闇の帝王を直に見たことなど一度もないのだから、そのような反応をするのは当然だった。すると、間髪入れずナルシッサが声を荒げてベラトリックスに尋ねた。
「何故!?どうしてそんな……いきなりすぎるわ!ベラ、あの方は一体何をしにいらっしゃるの?」
妹の狼狽えように、ベラトリックスは彼女を随分失礼な奴だという目で見た。
「シシー、あんたはあのお方がどれだけお忙しいか分かっちゃいない。そんな中、自らお時間を捻出して、わざわざこの屋敷に足を運んでくださるんだよ?それがどれだけ名誉なことか!だからいきなりもへったくれもない。その失礼な口を慎むことだね」ベラトリックスは苛立った様子で脚を組み直すと話を続けた。
「あのお方が何故ここへ立ち寄ってくださるのか、詳しくはお話にならなかった。明日話すとだけお伝えされた……。だが今確実に言えるのは、あのお方がルシウスの失態を大層残念に思っておいでだということさ。それに魔法省で戦った他の死喰い人もアズカバンに投獄されて、次の行動に移すには人手が足りない。きっとあのお方は、その手のことでお前たちや私の力を必要としていらっしゃるのかもしれない」
それを聞いたナルシッサは一層顔色を悪くしてブツブツと呟き、様々な最悪の事態を想定しているようだった。一方のドラコはそんな母の様子を見て、それ程までに恐ろしい闇の帝王が明日この屋敷を訪れるということを少しずつ実感していった。とはいえ闇の帝王がルシウスの失態によってマルフォイ家をどれ程厳しい目で見ているのか、叔母のいうとおり本当に手を差し伸べようとしてくれているのかは分からなかった。
しかしドラコは父の逮捕を知ってからというもの、自身の明るい未来を取り戻すため、父が尊敬する闇の帝王の傘下に入って死喰い人として尽力することを渇望していた。よってこの度のベラトリックスの知らせは、ドラコにとってはとんでもなくタイミングのいいものに違いなかったのだ。
そしてその翌日の午前中、ドラコは母と共に自身の住まう屋敷のリビングルームに姿勢を正して並び立っていた。母の方は昨日よりも顔色が悪く、全く視線が定まっていなかった。一方のドラコは緊張気味に真正面の少し離れた床の辺りをじっと見つめては、そのそばのソファの方に視線を向けたりしていた。ドラコの瞳には恐れの色が浮かんでいて、その視線の先の絨毯の上には何と大蛇が床を這っていたのだ。その大蛇は鎌首をもたげ、直ぐ近にいるベラトリックスの方に鋭い目を向けた。そしてそのベラトリックスはというと、チンツ張りのソファに深く座っている人物のそばに膝を付いて侍り、その人をうっとりと見上げていた。
そのソファの人物は、七月だというのに手足まで隠れる黒の長いローブを纏っていた。肌は青白く死人のようで、鼻は形を成しておらず平たく、鼻腔は無理矢理切り込みを入れたようだった。さらに特徴的だったのはその瞳で、色は赤く、瞳孔は縦に細長かった。まるで蛇のようだと表現するのがしっくりくる彼は、正にヴォルデモートその人だった。
「それで」ヴォルデモートがリビングルームに冷たく静かに響く声を発した。
「ナルシッサ、随分久しい。ルシウスが投獄されてから随分心細い思いをしていたのではないか?」
その声は冷たい色をしている筈なのに、ドラコにはどこか慈愛のような雰囲気が感じられた。緊張でそのように錯覚したのだろうか?一方のナルシッサは相変わらず不安げで怯えた様子だった。
「わが君、お気遣いくださり誠に光栄ですわ……。確かに貴方様のおっしゃるとおり、この二週間は大変心細いものでした。しかし、この度の失敗で貴方様にご迷惑をお掛けしたことに比べれば……」
「ああ」するとヴォルデモートから冷笑が聞こえた。そのことにナルシッサもドラコも思わず反射的にビクリと肩を震わせた。
ベラトリックスがそのように話している間、ナルシッサは随分浮かない顔をしていた。それらからドラコが一つ感じたのは、母が姉の定期的な訪問を歓迎していないのでは?ということだった。ドラコにはその明確な理由が分からなかったが、幾つか想定することはできた。母が姉と元から不仲であるか、それとも単に身内のお節介を煩わしいと思っているか。もしくは、姉に監視されているようだと感じているか。
ドラコはまだホグワーツにいた二週間前、父が捕まったと母の手紙で知らされた時のことを思い出した。その手紙には、父の失敗によって自分たちが今後どういう状況に立たされるかの推測が書かれていた。
『私たち一家はこれから厳しい目に晒されてしまうでしょう。世間からも、何よりあのお方からも……。』
あのお方は父を信頼していた筈だ。母の手紙どおり、この度のルシウスの失敗をあのお方は許していないのだろうか。そして寵愛を失ったマルフォイ家が逃げ出すことのないよう、監視の目としてベラトリックスを寄越したのだろうか。いや、それは考え過ぎで、あのお方はルシウスを見限っていないし変わらず大切に思っていて、その妻であるナルシッサを純粋に気遣って姉を寄越したのだろうか。ドラコはそのように思案した。するとベラトリックスが話を続けた。
「ところで今日、ついさっきまで私は久しぶりにあの方にお呼びいただき、お顔を拝見してきた」ベラトリックスが闇の帝王を思い浮かべてうっとりした表情になった後、じわじわと喜びを高ぶらせた。
「あのお方は明日、この屋敷を訪れる!」
それを聞いたナルシッサは青白い顔を今以上に蒼白とさシェードラコの方は現実身のない唐突な話に唯々混乱した。何シェードラコは闇の帝王を直に見たことなど一度もないのだから、そのような反応をするのは当然だった。すると、間髪入れずナルシッサが声を荒げてベラトリックスに尋ねた。
「何故!?どうしてそんな……いきなりすぎるわ!ベラ、あの方は一体何をしにいらっしゃるの?」
妹の狼狽えように、ベラトリックスは彼女を随分失礼な奴だという目で見た。
「シシー、あんたはあのお方がどれだけお忙しいか分かっちゃいない。そんな中、自らお時間を捻出して、わざわざこの屋敷に足を運んでくださるんだよ?それがどれだけ名誉なことか!だからいきなりもへったくれもない。その失礼な口を慎むことだね」ベラトリックスは苛立った様子で脚を組み直すと話を続けた。
「あのお方が何故ここへ立ち寄ってくださるのか、詳しくはお話にならなかった。明日話すとだけお伝えされた……。だが今確実に言えるのは、あのお方がルシウスの失態を大層残念に思っておいでだということさ。それに魔法省で戦った他の死喰い人もアズカバンに投獄されて、次の行動に移すには人手が足りない。きっとあのお方は、その手のことでお前たちや私の力を必要としていらっしゃるのかもしれない」
それを聞いたナルシッサは一層顔色を悪くしてブツブツと呟き、様々な最悪の事態を想定しているようだった。一方のドラコはそんな母の様子を見て、それ程までに恐ろしい闇の帝王が明日この屋敷を訪れるということを少しずつ実感していった。とはいえ闇の帝王がルシウスの失態によってマルフォイ家をどれ程厳しい目で見ているのか、叔母のいうとおり本当に手を差し伸べようとしてくれているのかは分からなかった。
しかしドラコは父の逮捕を知ってからというもの、自身の明るい未来を取り戻すため、父が尊敬する闇の帝王の傘下に入って死喰い人として尽力することを渇望していた。よってこの度のベラトリックスの知らせは、ドラコにとってはとんでもなくタイミングのいいものに違いなかったのだ。
そしてその翌日の午前中、ドラコは母と共に自身の住まう屋敷のリビングルームに姿勢を正して並び立っていた。母の方は昨日よりも顔色が悪く、全く視線が定まっていなかった。一方のドラコは緊張気味に真正面の少し離れた床の辺りをじっと見つめては、そのそばのソファの方に視線を向けたりしていた。ドラコの瞳には恐れの色が浮かんでいて、その視線の先の絨毯の上には何と大蛇が床を這っていたのだ。その大蛇は鎌首をもたげ、直ぐ近にいるベラトリックスの方に鋭い目を向けた。そしてそのベラトリックスはというと、チンツ張りのソファに深く座っている人物のそばに膝を付いて侍り、その人をうっとりと見上げていた。
そのソファの人物は、七月だというのに手足まで隠れる黒の長いローブを纏っていた。肌は青白く死人のようで、鼻は形を成しておらず平たく、鼻腔は無理矢理切り込みを入れたようだった。さらに特徴的だったのはその瞳で、色は赤く、瞳孔は縦に細長かった。まるで蛇のようだと表現するのがしっくりくる彼は、正にヴォルデモートその人だった。
「それで」ヴォルデモートがリビングルームに冷たく静かに響く声を発した。
「ナルシッサ、随分久しい。ルシウスが投獄されてから随分心細い思いをしていたのではないか?」
その声は冷たい色をしている筈なのに、ドラコにはどこか慈愛のような雰囲気が感じられた。緊張でそのように錯覚したのだろうか?一方のナルシッサは相変わらず不安げで怯えた様子だった。
「わが君、お気遣いくださり誠に光栄ですわ……。確かに貴方様のおっしゃるとおり、この二週間は大変心細いものでした。しかし、この度の失敗で貴方様にご迷惑をお掛けしたことに比べれば……」
「ああ」するとヴォルデモートから冷笑が聞こえた。そのことにナルシッサもドラコも思わず反射的にビクリと肩を震わせた。